かねてよりコントロールデッキとして認知されてきたランデスデッキだったが、ここ最近のデュエル・マスターズではその息を完全に潜めつつある。
一方、同じコントロールデッキとして長い間凌ぎを削ってきたハンデスデッキと言えば、未だに活躍の場を与えられる機会も多く、本年度も年末環境でメタゲームへの参入を果たしていた。
もしもこのようなランデスデッキの体たらくが西のボルザードに知れたら、大地は割れ天が裂けることは免れられないだろう。
しかし、一体どこでこんな差が生まれてしまったのか。
今回はそんな『何故ランデスデッキは消えたのか』といった疑問を解消するとともに、
ランデスという妨害行為が現代のデュエマにおいて、どのような意義を持ち、そして将来的にどうなっていくのかを論じていこうと思う。
目次
ランデスデッキが消えた理由
1.押さえ込むのが難しくなった
出典:デュエル・マスターズ
本題における最大の要点は、このゲームの平均的なキルターンが早くなったことにある。
デュエマのマナシステムは、0から始まり、ターンが進まなければ伸びていかないシステムなので、
キルターンが早まるということは、マナが少ない状態でキルできるゲームになる
と同義である。
現に、フィニッシュに7マナ~11マナを必要としていた数年前と違い、
現デュエル・マスターズのデッキ群は、フィニッシュに4マナ~7マナしか必要としていない。
このため、インフレによってキルターンが早まった現代のデュエル・マスターズでは、
《水上第九院シャコガイル》のような大型フィニッシュまで
「ランデスの連打で相手のフィニッシュを押さえ込む」といったプランが通りづらくなっているのだ。
2.大きなマナ差をつける必要が無くなった
出典:デュエル・マスターズ
しかも、ランデスデッキの逆風はそれだけではない。
ランデスデッキの構築意義は、先に挙げたように「相手のメインストリームを封じる・遅らせる」ことに集約されるのだが、
これによって生まれる「マナ差」こそ、ランデスデッキが実際の武器にしている部分である。
当然ながら、実ゲームはランデスの連打だけで相手を完封し、勝ち切れる試合ばかりではない。
一方で、このマナ差を利用して相手よりも先に大型脅威をぶつけ、ゲームを有利に運ぶことには、高い再現性を持っており、
実際、フィニッシュに大きいマナを支払っていた昔の環境では、これがランデスデッキの強みの一つとなっていた。
しかし、現デュエル・マスターズが持つフィニッシュは4~6ターン目。
このマナ域であれば、到達するためにわざわざ「ランデスを連打して大きなマナ差をつける」という大仰な行動を取る必要は無い。
そんな大きなマナ差をつけ、10コスト前後もかかる大型脅威を出すよりかは、
6ターン目のフィニッシュに向かっていち早く自分の準備を進める方が、強いゲームを演出できるのは明白だからだ。
現代水準のゲーム感では、この「ランデスを連打して大きなマナ差をつける意義」が薄くなったことも、戦略としてランデスを採用するデッキへの逆風となっていた。
3.デッキスロットを圧迫する
出典:デュエル・マスターズ
以上、二つのマイナス要素を抱えた上で迎える、ランデスデッキの最後の弱みがスロット圧迫の大きさだ。
ランデスを主戦略にする以上、ハンデスデッキと同様に、ランデスカードの連打が前提となるが、そのためには
『ランデスカード複数スロット+これらを連打するカード』
と結構なデッキスロットを消費する。
このためランデスを主戦略に置こうとすると、どうしても現代デュエマが持つ4~6ターン目のフィニッシュプランをデッキに組み込むことが難しくなり、結果的に一線級の速度で戦うのが難しいデッキになってしまうのだ。
ランデス戦術の価値
出典:デュエル・マスターズ
といったようにインフレの影響から、
- ランデスだけで相手のメインストリームを押さえ込むのが難しくなった
- 大きくマナ差をつける意義が薄くなった
- デッキスロット喰いすぎてその分フィニッシュが遅い
とあらゆる構築意義を失っていた。環境から消えるのも至極当然である。
しかし待てよ。
近代でも《勝利のリュウセイ・カイザー》《ドリル・スコール》《リアリティ・ヴォイド》といったランデスカード自体は、局所的ながら活躍している。
と思った方もいるだろう。
そうなのだ。"戦略"としてのランデスこそ、上記の通り構築意義を失ってはいるが、"戦術"としてのランデスは、近代のデュエル・マスターズにおいても通用する妨害行為として認識されている。
それもそのはず。
ランデスという妨害行為自体は、驚くことに以前よりも1プレイ当たりの費用対効果量を高めているのだ。
これは割と単純な話で、キルターンが早くなり、平均的な到達マナが下がっていくと、相対的に1マナ当たりの価値が高まっていくためである。
分かりやすいように例を挙げよう。
フィニッシュに6マナ必要な環境と、10マナ必要な環境があったとする。
前者の環境において、先行4ターン目に《マナ・クライシス》をプレイし、相手のマナを3→2にするのと、
後者の環境において、先行4ターン目に相手のマナを3→2にするのとでは、
ゲームへの影響度が違うといったものだ。
前者の環境は、キルターンが早いために1マナ当たりの価値が重く、この《マナ・クライシス》が取り返しのつかない一手になる場合も多いが、
後者の環境では、1マナ当たりの価値が比較的軽いため、《マナ・クライシス》を撃たれた側が先に10マナに到達するチャンスは前者より多い。
ちなみに、《フェアリー・ライフ》等のマナを伸ばすカードも、同様の理由で1枚当たりのパフォーマンスを伸ばしている。昔のデュエマに比べ「2ターンブーストが無いから負けた」が頻発する気がするのは、気のせいではないのだ。
これは極端な例なので、実戦においてこの1マナの価値がどれほどの影響値を及ぼすかはわからないが、
とりあえずこの場では、ランデスという妨害行為そのものの価値が低くなった訳ではなさそうだ、と認識してもらうだけで充分だ。
これからのランデス
出典:デュエル・マスターズ
以上より本題をまとめると、
- ランデスそのものの価値はむしろ前より高まっている
- しかし、ランデスデッキにすると、3つの致命的な欠陥から、強くならない。
と言うことは、デッキ単位で無理に遂行力を高めようとせず、4~6ターンにフィニッシュできる現代水準のデッキに、雑に1スロット挿すような使い方であれば、今の時代でもランデスは輝ける可能性があるわけだ。
実際、本年度の環境でも、各所で《マナ・クライシス》や《リアリティ・ヴォイド》が話題に挙げられていた。
そして私が思うに、このワンポイント起用のランデス群は、本年度よりも来年度に活躍できる見込みが大きい。
これらワンポイント起用のランデス群に求められる役割は、相手の1ターンをスキップさせることにある。
つまり、競合相手は同様に相手から1ターンをもぎ取る《「本日のラッキーナンバー!」》や《奇天烈シャッフ》なのだ。
《「本日のラッキーナンバー!」》殿堂直後の【カリヤドネ】おいて、《リアリティ・ヴォイド》にその代役を任せようとしたユーザーの動きを振り返るとわかりやすいだろう。
そうすると、《「本日のラッキーナンバー!」》が殿堂したこれからの環境では、《リアリティ・ヴォイド》のように代役としてこれらランデスカードにお呼びが掛かる可能性がある、といった算段だ。
終わりに
出典:デュエル・マスターズ
西のボルザードは泣いた。鳴いたのではなく、泣いた。
一度インフレの輪に入ったこのゲームにおいては、ランデスが"戦略"としてメタゲームに復帰することは、下手すると未来永劫無いかもしれない。
こんな記事を書いているものの、私自身長年【5cランデス】を愛用していたこともあり、子を殺すような心持ちだ。
それこそ、前提条件無しの7~8マナくらいで「出したら勝ち」って書いてある壊れカードでもリリースされた日には、ランデスデッキがtier1に登ることもあるだろうが、流石に現実的ではない…
いつか誰か、西のボルザードを笑顔にさせるヒーローが現れることを心待ちにしよう。