文責 西川航平
前回の記事に幾ばくかの反響があったので味を占め再び書いてみようと思う。
まだ読んでいないという方は、先にそちらを読むことをおすすめする。
学閥の支配するジョラゴンホールディングス、明確な搾取が行われる絶十技研、全てを切り捨てトップを目指す赤白轟轟轟ファウンデーション。
いずれもDM界において大きな存在感を示す企業ではあるが、無論他の企業たちもしのぎを削っている。
読者諸兄の使うデッキはどのような企業なのか。見つめ直すきっかけになれば幸いである。
目次
1、業界トップからの転落劇!!~バスター商会~
経営最高責任者《蒼き団長ドギラゴン剣》
出典:デュエルマスターズ
経営理念~最速の納期、拡張性を提供し国際社会から信頼される企業市民を目指す~
*比較のため、企業情報、分析は全盛期のもの(バスター逮捕前)と現在のものの両方を掲載する。
<全盛期>平均年収 1240万デュ円 3年後離職率 6.1% 有給取得年平均 6.5日
週休 完全2日制 残業(月)6.2時間 年末年始休暇 連続5日以上
株式公開 デュエ証1431 倍率9.2倍
元号が革命ファイナルに変わると同時に、その企業は産声を上げた。
《バスター商会》今でこそ知らぬものはいないその企業がどのように成長を遂げ、そしてどのような顛末を迎えたか、振り返ろうと思う。
・最初の大ヒット!成長バスター!!
最初期のバスター商会は、新技術「革命チェンジ製法」を駆使し、圧倒的な納期の速さを売りとした企業であった。
出典:デュエルマスターズ
出典:デュエルマスターズ
出典:デュエルマスターズ
出典:デュエルマスターズ
出典:デュエルマスターズ
元は1コストという極めて廉価な原価から3ターン目には勝敗を決めるほどの超強力な商品を作り出す。
それが《蒼き団長ドギラゴン剣》そして「バスター商会」の持つ技術の強みだった。
これらのパッケージは「成長バスター」と名付けられ一躍大ヒット商品となった。
・商会本格始動!これが強さだ、赤黒バスター!!
大ヒットを収めた成長バスターであったが、問題が無かったわけではない。
確かに安定性、速度はピカイチだったもののアフターフォロー体制(経戦能力)が万全ではなかったのだ。
顧客満足度を向上させるため、成長バスターで得た利益をつぎ込み商会は新たな商品を生み出した。
それこそが、バスター商会の最高傑作という者すらいる「赤黒バスター」であった。
その開発の中心となったのが、以下の2人の社員である。
出典:デュエルマスターズ
たとえ資源(手札)が枯渇した状況からでも、このカード1枚で即座にバスターへとアクセスできる。たった1人でアフターフォロー問題を解決させて見せた。
出典:デュエルマスターズ
出典:デュエルマスターズ
自身の動きを強めるイーヴィルヒートと相手の自由を奪うマナロック。
この2大パッケージは赤黒バスターを極めて魅力的な商品とし、バスター商会を業界トップシェアへと導いた。
また、《ボルシャックドギラゴン》の採用によりセキュリティ面も極めて高かった。
出典:デュエルマスターズ
攻守共に隙の無いこの商品を使うユーザーの前に立ちふさがったのは、自身と同じデッキを使う別のユーザーだった。
そこでこの商品に組み込まれたのが、次のカードだ。
出典:デュエルマスターズ
ここでバトリベンジの持つ効果は問題ではない。
重要なのは、「赤黒バスターに対抗するためのカードを赤黒バスターが採用した」ということである。
「自身の商品に対抗する対策カードを組み込んだ商品が抵抗無く受け入れられる」
ここからいかに当商品が広く普及していたかうかがい知れるというものだろう。
出典:デュエルマスターズ
バリエーション豊富!!世界に広がるバスターの輪!
その後もバスター商会は数多くのヒット商品を生み出した。
以下その一部を紹介しようと思う。
高い防御力と安全フィニッシュ!!クローシスバスター
出典:デュエルマスターズ
出典:デュエルマスターズ
出典:デュエルマスターズ
出典:デュエルマスターズ
出典:デュエルマスターズ
出典:デュエルマスターズ
《裏切りの魔狼月下城》、《Mの悪魔龍リンネビーナス》の強力なマナ武装能力を使うため構成メンバーの多くが多色カードで構成されたコントロールよりの新たなバスター商品。《Dの博才サイバーダイスベガス》、《テック団の波壊Go!》の採用により経戦能力、セキュリティ面も高い水準を満たしている。最後は《リンネビーナス》の能力で《単騎連射マグナム》や《音精ラフルル》を呼び出し安全なフィニッシュを目指す。それまでに無い新たなバスター商品であり、ファンも多い。
無限の力を使いこなせ!5色バスター!!
当時同じドラゴンを主力とした商品を展開していた「モルトNEXTカンパニー」
からシェアを奪い取るため、バスター商会は排他的価格(同業者の新規参入を阻み、また追い出すような価格)を持つ商品を展開した。
それがこの「5色バスター」である。
「モルトNEXTカンパニー」の主商品は言わずと知れた、NEXTとハートバーンによる、自己完結したリーサルプランにある。
出典:デュエルマスターズ
出典:デュエルマスターズ
《モルトNEXT》の能力で《ハートバーン》を呼び出し、スピードアタッカーとなった《モルトNEXT》で2枚ブレイク。龍解した《ガイNEXT》が相手を丸裸にし、最後に起き上がった《モルトNEXT》が止めを刺す。
1枚のカードからフィニッシュまで到達できる極めてシンプルかつ強力なこのパッケージは人気を博し、ロングセラー商品となっていた。
競合関係にあった相手企業の強みを消すためにバスターが目をつけたのが彼だった。
出典:デュエルマスターズ
龍解というギミックを全否定し、場を除去しながら現れるこのカードはまさにモルトNEXTの天敵であった。
そしてコスト5以上のドラゴン。防御をした後は革命チェンジをすることで攻めの起点となる。
《ボルシャックドギラゴン》に勝るとも劣らないほど相性の良い彼にバスターが目をつけたのは必然と言える。
壊滅とまではいかなかったが、この商品が流行した時代、NEXTは大きく株価を下げた。
またこの商品は前述したクローシスバスターに搭載された《裏切りの魔狼月下城》や《Mの悪魔龍リンネビーナス》+単騎ラフルルパッケージに加え強力ドローソースの《アクアンメルカトール》も採用されており、非常にカードパワーが高いのも売りである。
出典:デュエルマスターズ
敵対企業であるモルトNEXTカンパニーとのコラボ商品である「モルネクバスター」、バスターやチェンジ先をサーチできる安定性の高い「霊峰バスター」等々、挙げればきりが無いほど多くの商品を展開してきたバスター商会。
そしてついに、その終着点とも言える1つのデッキが完成する。
ここからバスター商会は栄光の最高潮を迎え、そして転落していくこととなる。
最強!赤青バスター!!~そして伝説へ…~
ドギラゴンバスター商品は、2つに大別される。
その基準はいたって単純。
『龍装チュリス以前か以後か』これだけである。
出典:デュエルマスターズ
勝利の納期は3ターン。彼はそう豪語した。
3ターン目にドギラゴン剣が飛んでくる。
それだけ聞けば、『成長バスター』と変わらない、そう思う方もいるかもしれない。
だがその実態は全く異なる。
成長バスターは、バスターを出す2ターン前から根回しが必要なのだ。
加えて、その過程でシールドトリガーを踏むなどして除去された場合はバスターにたどり着けず、序盤に絶対に必要な低コストクリーチャーは終盤引いてもろくに活躍しないという弱みを持っていた。
《龍装チュリス》に、そのような弱点は無い。
その登場までは手札補充なりメタクリーチャーの展開など好きなことをすればよいのだ。
出典:デュエルマスターズ
出典:デュエルマスターズ
出典:デュエルマスターズ
そして訪れる約束の3ターン目。
「……やっぱり、安定した3ターンフィニッシュなんて無理だろう?」
龍装チュリス「……できらぁっ!!!」
出典:デュエルマスターズ
出典:デュエルマスターズ
出典:デュエルマスターズ
出典:デュエルマスターズ
出典:デュエルマスターズ
出典:デュエルマスターズ
安定した3キルプラン。これだけでも十分に魅力的だが、強みはこれだけではなかった。
いや、この表現は正しくない。このデッキは、あまりにも多くの魅力にあふれていた。
出典:デュエルマスターズ
出典:デュエルマスターズ
出典:デュエルマスターズ
出典:デュエルマスターズ
「成長バスター」以上の速度と「霊峰バスター」並の安定性を持ち、踏み倒しメタを悠々と乗り越え、
潤沢なリソースを駆使して相手の防御手段を無効化する。
それはまさに、王者の棋風。
「デュエマの神様」そんなものがいるかは定かではないが、
もしその神様がいるならば、使うデッキはきっとこの赤青バスターだろう。
赤青バスターだけではない。
龍装チュリスの存在は、他のありとあらゆるバスター商品を著しく強化した。
バスターに勝てるデッキはあれど、バスターより優れたデッキを見出すことは困難であった。
どの企業も、強くバスターを意識していた。
まさにバスター商会は、この世の春を謳歌していた。
「バスターにあらずんば人にあらず」
望月の歌を詠いながら、ドギラゴンバスターはそう言ったという。
だが、しかし。
ついにその日が訪れてしまう。
緊急逮捕!!《蒼き団長ドギラゴン剣》、ボルバル組との不当なつながり!!!
2019年1月27日。
《蒼き団長ドギラゴン剣》は金を持ってある男の元へ向かっていた。
無限にも思える富を蓄えた彼からしても、それは決して少ない額ではなかった。
《蒼き団長ドギラゴン剣》「お待たせしました、親父」
《無双竜機ボルバルザーク》「おう、バスターか」
出典:デュエルマスターズ
《バスター》「へぇ。今月の上納金を持ってきやした」
《アクアン》「お前んとこ、随分儲けとるみたいやな」
出典:デュエルマスターズ
《ベイBジャック》「うちの稼ぎ頭でちゅからね、バスターたんは。本当にありがたいでちゅ」
出典:デュエルマスターズ
《聖鎧亜キングアルカディアス》「まぁしかし、私達とのかかわりはくれぐれもばれないようにしてくださいね。
企業というのはイメージが命です。上納金を社長に持ってこさせるという今のやり方も私は……」
出典:デュエルマスターズ
《スケルトンバイス》「じゃかぁしいわキング!!!これはうちの組の伝統や!
余計なこと言うなボケ!!」
出典:デュエルマスターズ
《蒼き団長ドギラゴン剣》「がはは、大丈夫でさぁ。そこんとこは抜かりなく」
《呪紋の化身》「お前、そういってこないだもウララーのやつが逮捕されたやろがい」
出典:デュエルマスターズ
《呪紋の化身》「わしのかわいいマグナムやラフルルに臭い飯食わせたら承知せんど?」
*《単騎連射マグナム》《音精ラフルル》には、《呪紋の化身》の義理の子供であるという噂がまことしやかにささやかれている。
ボルバル組の面々が会話を交わしていたその時のことである。
《制御の翼オリオティス》「不正は許さない!!!!」
出典:デュエルマスターズ
出典:デュエルマスターズ
《カメライフ》「バスター商会の社長がボルバル組と懇意に!!!これはスクープだ!!」
大量の警察官とマスコミがなだれ込んできたのである。
《呪紋の化身》「なんやこらぁ!てめぇら誰の島に乗り込んで!」
《制御の翼》「おいコラカスども。今回令状が出とるのはバスターだけや。
抵抗せんなら今日はお前らには何もしない。それともまた豚箱にぶち込まれたいんか!」
《ベイBジャック》「……ここは大人しくしとくのが無難でちゅねぇ」
《カメライフ》「ボルバルザークとバスターの2ショット!!これは表紙に使える!」
かくして、《蒼き団長ドギラゴン剣》の伝説は終わった。
強すぎる、強すぎると言われた彼だったが、その秘密は反社会勢力とのつながり、脱法行為にあった。
驚くべきことであるが、彼は自身の踏み倒し、及び呼び出す多色クリーチャーの踏み倒しにかかる税を一度も払っていなかったのだ。
優秀な人材は数多くいれど、結局のところバスター商会は《蒼き団長ドギラゴン剣》ありきのワンマン経営。
その社長の自由が大きく拘束されるとあっては従来のような活躍は不可能となった。
バスター逮捕後もしばらくは3ターンで勝てると豪語していた《龍装チュリス》は、勝利どころか1枚のシールドしか割れないという事態をたびたび引き起こし、袋のネズミとばかりに取引先に叩かれた。
そんな現在のバスター商会はどうなっているのか。
まずは企業情報を見ていこうと思う。(バスター逮捕前の数字もともに記載した)
平均年収 1240万デュ円→320万デュ円 3年後離職率6.1%→47.1% 有給取得年平均6.5日→4.2日
週休 完全2日制→1日 残業(月)6.2時間→31.1時間 年末年始休暇 連続5日以上→3日
株式公開 デュエ証1431→デュエ証取り扱い無し 倍率9.2倍→1.9倍
社長代行《龍装者バルチュリス》
出典:デュエルマスターズ
ー現在の御社の状況は、どのようなものでしょうか?-
《バルチュリス》「正直に申し上げて、極めて厳しいと言わざるを得ません。
私とゼノシャークで協力してバスターにつなげるというのを基本プランとして行っていますが、バッシング(手札破壊)でバスターが使えなかったり、
そもそも一時的な出所の許可が出ない時もあります(盾落ち)」
《ゼノシャーク》「解雇せざるを得なくなった社員たちへの退職金の問題もあります。これまでの事業規模で続けていくことが不可能となったので大幅な人員整理を断行したのですが、それに対する退職金の支払いがまるで追いついていないんです」
ーその社員たちからは理解を得られましたか?ー
《ゼノシャーク》「社員たちには申し訳ないと思っていますが、納得してもらうよう十分な説明をする余裕はなかったですね。資金繰りに困ることは確定的なわけですから、一日も早くリストラを断行する必要がありました。対象者に通知を送り、全体に対する一斉説明会を行いました」
ー辞めていった方たちにも生活があり、いきなり会社から放り出すというのは世間的な評判も良くなかったと思いますがー
《バルチュリス》「かつてはともに戦った仲間です。確かに路頭に迷わせることはしたくなかった。ですが、生き残らなければならないのは社員だけではありません。企業も生きていかなければならないのです。そのためには、必要なことだったと考えています」
《ゼノシャーク》「この件について世間からバッシングを受け、イメージが悪化したというのは事実です。当然私達の方でもそうなるであろうことは予測していました。ですが、そもそもバスター社長とボルバル組の付き合いが発覚、逮捕された時点で印象としては最悪なわけです。であればイメージアップ戦略を図るよりも、会社にとって必要ではあるものの印象の悪い人員整理をするべきだと考えました。この順序が逆ではいけません。やっぱり反省していないじゃないかとイメージアップのために行ったことが全て無に帰してしまいますから。あの時点で膿を出し切る必要があったんです」
ー……社員たちは、膿ですか?ー
《バルチュリス》「不適切な表現でしたね、すみません。ですがかつてと同じ条件で同じだけの人数の雇用を続けるなど無理なんです。
バスター商会はやはり、《蒼き団長ドギラゴン剣》ありきです。
そこからバスターが抜ければ歪が生まれるのは当然です。
しかし我々は企業としてその歪を補いつつなんとかしなければならない。経営を行う立場に立った以上、清濁併せ呑み企業を生かしていかなければならないんです」
現経営陣にも様々な思い、経営プランがあるようだ。しかし、やはりこの企業について語る上であの男に話を聞かないというのではあまりにも不適切だろう。
私は獄中の彼とコンタクトをとることに成功した。
ー本日はお忙しい中ありがとうございますー
「忙しい……?それは少なくとも今の俺に言う言葉じゃァないやな」
出典:デュエルマスターズ
Living Legend.《蒼き団長ドギラゴン剣》その人だ。
ー大変失礼しましたー
《ドギラゴン剣》「四○報の記者ってのは罪人にも話を聞くようになったのか?」
ー確かに前例のないことではありますー
《ドギラゴン剣》「で、俺に何を聞きたいんだ」
ーなぜ罪を犯したのか、そしてご自身とバスター商会の未来についてー
《ドギラゴン剣》「……罪ねぇ。なぁ記者さんよぉ、犯罪ってのは絶対に犯しちゃならねぇもんなのか?」
ーそれは、当然ではないですかー
《ドギラゴン剣》「そいつはなんでだ?」
ーそんなの、犯罪だからに……ー
《ドギラゴン剣》「あんた頭悪いな。それは答えになってねぇ。いいか?犯罪は犯していいんだ。それが発覚したときの罪をかぶる覚悟さえしちまえばな。
罪が暴かれる可能性、そのリスクの大きさ、そんで得られるリターンを考える。その結果リターンがでかいと踏めば罪だろうが何だろうがやる。そんだけのことだろうが」
ーですがそれは……ー
《ドギラゴン剣》「逆に聞こうか。こっちの社員をぶっ潰しながら殴り掛かってくる《轟く侵略レッドゾーン》、たった一枚で勝負を決めやがる《超戦龍覇モルトNEXT》、相手に一切自由を与えねぇ《時の法皇ミラダンテⅫ》、バトルゾーンをマナゾーンと勘違いしてやがるクソ豆《ベイBジャック》、人様のターン中に勝手にアガリやがる《阿修羅サソリムカデ》、攻めるループデッキ、《龍覇サソリス》に《ジョットガンジョラゴン》、挙句の果てにはなんのコストもなくぶっ飛んでくる《轟轟轟ブランド》……こんな化物ひしめく経済界で、なんの不正もなく正攻法だけで環境トップになれるなんて、本気で思ってんのか?だとしたらとんだ甘ちゃんだな」
ーだからといって、不当な手段を使うのはー
《ドギラゴン剣》「俺から言わせりゃ、他の会社の連中も似たようなもんだと思うがな。まぁ、それをお前に言っても仕方ねぇ。
戦う以上、トップを目指すのは当然だ。そのためにはルールを破る必要があると思った。だからやった、それだけだよ。簡単だろ?」
《ドギラゴン剣》「で、俺の未来だったか。
当然このまま終わる気はサラサラねぇよ。《ボルメテウスサファイアドラゴン》や《凶星王ダークヒドラ》の例もある。必ずシャバにでてもうⅠ度トップに立つ」
出典:デュエルマスターズ
出典:デュエルマスターズ
ー確かに彼らは何故か釈放されましたが、その幸運が自分にも起こるというのは楽観的ではありませんか?ー
《蒼き団長ドギラゴン剣》「……面白いくらい頭回らないんだな。
うちの会社ならエントリーシート段階で弾くレベルだ。そんなのに記事書かせるなんてどんだけ人材いないんだ、あんたの会社」
ーどういう意味でしょうか?ー
《ドギラゴン剣》「あの2人が釈放されたのが幸運?あのなぁ、DM界に被害をもたらしたようなやつがラッキーで釈放されるわけねぇだろ。
国民感情だって悪化するに決まってる。
じゃあなんでそんなことをやったか。そんなの決まってる。
あいつらから金をもらったやつが政府にいるんだよ」
《ドギラゴン剣》「今は部下がコネクションを作ってる。
すぐには無理だろうが、必ず俺はまた環境という舞台に立つ。
バスター商会も復活させて見せるさ」
伝説と呼ばれた男の目には、今なお強く野望の光がともっていた。
・総評(5点満点評価)
・報酬 2.3(320万デュ円)
全盛期と比べずとも、あまり良い待遇とはいえない。並の企業と比べると平均的といえるが、バスター商会という企業がその特性上他の企業でも活躍できるような面々を多く採用しようとするため、そうなるとこの報酬では物足りないだろう。またこの企業は客観的に見て衰退期にあり、ここから条件が良くなるとも考えづらい。
・労働環境1.6
辞めていった者たちへの退職金すら払えていない。
大勢の社員がやめていったためにそれに合わせて社員教育や労働環境の改善が必要であるが、現状ではそれすら難しい。
残業時間も加速度的に延びており(6.2時間→31.1時間)それに嫌気が差し退職者が現れ残された社員の負担が増えるという悪循環に陥っている。
・競争力2
バスターありきの企業であったため、原状その競争力は大きく落ちている。
同レベルのサービスを行う企業に対しても、イメージが悪いために契約がとりにくく、結果的に適正価格よりも安い値段での契約ばかりという状態で、その競争力は低い。ただし、バスターが使えるケースでの爆発力、社員個々の力は決して低くないため潜在的な力は高いと思われる。
・将来性 1.5
何をするにも、国民に強烈に刻み込まれた悪印象が枷としてついて回る。
《ドギラゴン剣》本人は再び舞い戻るといっているものの、少なくとも現段階ではその力を十分に使うことができず、それに合わせた商品開発しかできないためどうしても出力の抑えられたものが出来上がる。
仮に彼が釈放された場合にも、当時よりさらに進化した「赤白轟轟轟ファウンデーション」「NPO法人赤青覇道」などの強力な競合がおり、トップの座を取り戻せるかはわからない。
・社会貢献度1
反社会勢力とのつながり、脱税などの悪事を働いてきた企業であり、この項目はどうしても低く評価せざるを得ない。現経営陣は変わったものの、展開する商品プランにはどれも《蒼き団長ドギラゴン剣》が組み込まれており、バスター体制から脱却できているとは言えず、ユーザーも大半がかつてからの愛用者である。社会貢献活動も特段行っているわけでもないため上方修正要素は無い。
総評
DM経済界に名を残す伝説的企業であることは疑いようも無いが、現状を見る限りは時代に取り残された、下り坂の後半を転げ落ちるかつての大企業という印象だ。
現代経済は極めて激しい競争が繰り広げられ、メガバンクも大企業もつぶれるのが珍しくないという時代だ。その激動の時代を生き抜けるのか、大きな疑問が残る。バスター本人は再び戻るといっているが、逆に言えば彼の釈放くらいの一大イベントが無ければその復権は望めないだろう。
2、旧体制から脱却し大逆転!~ドルマゲ重工~
代表取締役社長《終焉の禁断ドルマゲドンX》
出典:デュエルマスターズ
経営理念~過去の栄光に固執せず、常に新たな挑戦を続ける~
平均年収 680万デュ円 3年後離職率21.2% 有給取得年平均9.1日
週休2日制 残業(月)13.1時間 年末年始休暇 連続7日以上
株式公開 デュエ証999 倍率7.6倍
ドルマゲ重工。かつては大企業の下請けを行う中堅どまりだったが、経営方針を転換し、押しも押されぬ大企業となった現代を代表する企業である。
ー以前の御社、いわゆる赤黒ドルマゲドン時代のお話から聞かせていただいてもよろしいでしょうか?-
《ドルマゲドンX》「我らドルマゲ重工は、火と闇のコマンドを展開し、防御能力も高い製品の開発を期待され政府の支援を受けて発足した企業です。
現在で言うと、ジョラゴンホールディングスさんに近い立ち位置でしょうかね」
出典:デュエルマスターズ
出典:デュエルマスターズ
《ドルマゲドンX》「他の攻めるデッキに比べると速度は劣るものの、墓地から召還、侵略できることによる経戦能力の高さが売りでした」
出典:デュエルマスターズ
出典:デュエルマスターズ
出典:デュエルマスターズ
出典:デュエルマスターズ
《ドルマゲドンX》「トリガー、カウンター手段も持ち、受けれるデッキという評価を受けていました」
ーお話を聞く限り、優れた商品開発をしていたように思いますがー
《ドルマゲドンX》「当時の多くの消費者たちにも『丸いデッキ』と言われていました。ですが、実際にうちの商品を使ってくれるユーザーは少なかったんです。
当時のうちの商品は、バランス型と言えば聞こえはいいですが、あらゆる面で中途半端だったんです」
ー中途半端、ですかー
《ドルマゲドンX》「受けが厚いなどといわれてはいましたが、当時攻める企業の代表格であるバスター商会には1撃目は受け止められても2度目の攻撃には耐えられない。こちらから反撃してもとどめまで持っていくだけの打点をそろえることは難しく、たとえ用意してもトリガー一発で咎められる。《閃光の守護者ホーリー》など踏もうものならそのまま敗北待ったなしです」
出典:デュエルマスターズ
《ドルマゲドンX》「当時流行していた『ロージアダンテ』のミラダンテロックに対して《ブラックアウト》が出せるなど取り上げられましたが、あくまでそれだけ。シールドに向かっていけばトリガーで咎められ、打点をそろえられてからのダンテロックには無力です。
バランスは良くともそれだけで、正直そのどれもが基準値に届いていない。
他企業と戦っていく中でそれをひしひしと感じていました」
《威牙の幻ハンゾウ》「殿堂規正法が改定されるたびに次はドルマゲが来る、次は来ると言われ続けたものの結局環境トップ郡には入れないという状況が延々と続きましたね」
《ドルマゲドンX》「このままではいけないと考え、社内改革を行おうとしたんですが、多くの社員の反対に遭いました。上は目指せなくとも、悪くは無い立ち位置にいる。その現状に満足しているものが大半でした」
《威牙の幻ハンゾウ》「赤黒ドルマゲドンという形で政府にプッシュされて始まった企業だったので、その形を変えて政府の後ろ盾を失うことを必要以上に恐れたというのもあるんです。もう当時はろくな支援も無かったんですが……特に上層部にはその傾向が強い人が多かった」
《ドルマゲドンX》「必ずしもトップを目指さなければならないということは無いと私は思います。ですが、停滞は後退と同義です。そして当社の製品を使ってくれるユーザーのためにも、製品の質を向上させていくことは企業の義務です。
その姿勢すら失った当時の社員たちと共にビジネスを続けていくことは私には耐えられませんでした」
《ハンゾウ》「改革のため、火文明を中心とした社員の多くを解雇、解任しました」
ー火ではなく闇を残したことにはどのような意図があったんでしょうか?-
《ドルマゲドンX》「高い防御能力、妨害能力、経戦能力を持った製品が作りたかったんです。速度という点ではバスターや轟轟轟にはとてもかないません。
なのでこことは顧客がかぶらないようにしたかった。その他の遅い制圧系のデッキには私の封印能力が極めて有効なので、明確に差別化できます」
《ハンゾウ》「防御能力に優れるといえば、やはり光文明。特にあそこには《Dの楼閣メメント守神宮》がありますから」
出典:デュエルマスターズ
《ドルマゲドンX》「かつての赤黒ドルマゲドンではシールドトリガーでの除去頼みで、盾が割られた後はろくな防御手段が無かった。そこは改善したいと思っていましたから、メメントを採用することは自分の中でほぼ規定路線でしたね」
《ドルマゲドンX》「メメントを展開するためには一定数の光のカードが必要なので攻撃的なデッキに広く通用する《オリオティスジャッジ》にも声をかけました」
《ハンゾウ》「妨害手段については手札破壊ということは早期に方針が決まりました。しかし、軽量の手札破壊を連発するのではこちらの体力が持ちません。
なので、マナを伸ばし1枚で複数枚の手札破壊を行おうということになったんです」
《ドルマゲドンX》「封印解除も同時に行える《悪魔龍ダークマスターズ》はすばらしい人材です。今やこのデッキの中核といっても過言ではない」
出典:デュエルマスターズ
《ドルマゲドンX》「こういった経緯で社の方針が固まっていきました」
ー新たな挑戦をすることに対して恐れとか、そういうものはありませんでしたか?ー
《ドルマゲドンX》「それは当然、考えました。確かに何の挑戦もせず従来の商品展開を続けていけば、直近のリスクは低いでしょう。
ですが、10年後、その先を考えたときにどちらのリスクが高いかと考えれば、それは何もしないリスクのほうが格段に高い。
しかも我々はトップシェアを誇るわけでもなかったんです。新たに強力な企業が次々と台頭してくるこの時代に従来のままでは絶対にいけなかったんです」
ーなるほど。長期的な展望、リスクを見据えて行動したと。
成功の秘訣というものがあるとすれば、何だと考えますか?ー
《ドルマゲドンX》「そうですね、強いてあげるとすれば、自身の強みを活かしつつ柔軟に変化していくこと、でしょうか」
私が取材を続けていたそのときだ。
《終断γドルブロ》「ふざけるな!!!」
《禁断Vキザム》「ここはとんでもないブラック企業だ!!!!!」
突如乱入してきたのは、かつてドルマゲ重工で働いていた社員だった。
出典:デュエルマスターズ
出典:デュエルマスターズ
《ハンゾウ》「ちっ、ゴミ共が……」
ーええと、これはいったい……ー
《ドルブロ》「このクソ企業は、いきなり俺たちの首を切りやがったんだ!」
《キザム》「不当解雇だ!!」
《ドルマゲドン》「何だいきなり……君たちの解雇は経営方針を転換する以上仕方の無い処置であり、解雇の2ヶ月も前に通達したはずだが?」
答えるドルマゲドンの声に苛立ちが混じる。
《ハンゾウ》「何の法規定にも抵触していない。言いがかりもはなはだしい」
《キザム》「法律に違反しなきゃいいって言うのか!?」
《ドルブロ》「横暴だろうが、そんなの!!」
《ハンゾウ》「……では聞きますが、法律以外の何に従えばよいというんですか?」
《ドルブロ》「人の道とか、色々あるだろうがっ!そんなもの!」
《ドルマゲドン》「そんな不明瞭なものに基づいて経営をしろというのか?
今の時分、小学生でもそんなこと言わんぞ」
《キザム》「ぐぅ……大したスキルも無い中年を放り出して、罪悪感は無いのか!!」
《ハンゾウ》「めちゃくちゃですね……スキルが無いのはあなたたちの責任ですし、だからこそうちからも切られたんですよ」
《ドルブロ》「スキルが身につくような仕事をさせてもらえなかったんだろうがっ!
40代でシールドトリガーとブロッカーだけって……
こんなの飼い殺しだろ!」
《ドルマゲドン》「スキルの身につかない『働き方』をしたんだろう。
仮にうちが何のためにもならない仕事をさせていたとして、なぜそんな企業に就職した?
なぜ転職しなかった?」
《キザム》「そんなの、知らなかったし……」
《ドルマゲドン》「知らなかった??お前いったいいくつだ。もう30後半だろう。
その年になって、自分の頭で考えるということをしなかったのか。
自分のキャリアプランもライフプランも会社に任せて思考停止。
そんなゴミは、切られて、搾取されて当然だ」
《ハンゾウ》「というか2人とも、大卒でうちに入ったんですよね。
入社するときにはもう22だったわけだ。
なのに、自分がこれから働こうとする会社のことを調べなかったんですか?
大手だから安泰、とか考えてたんじゃないですか?
あまりにもお粗末過ぎますね」
《キザム》「ひ、酷いっ……何度も何度も、あんたの封印といてやったじゃねぇかよ!
その恩を忘れたのかよ!」
《ドルマゲドン》「恩?そういう労働契約を交わしていただけだろう。
そしてその契約には解雇の条件も明記していたぞ?お前は確認していないかもしれんがな」
《ハンゾウ》「というか当時のうちにもキャリアアップするための制度はありましたからね。あなたたちが知らないだけで」
《ドルブロ》「な、何でそんな大事なこと教えてくれなかったんだよ!!」
《ハンゾウ》「掲示物として貼り出していましたし、年に数回メール、書面も送っていました。あなたたちが確認しなかっただけです」
《キザム》「そんなの、直接言われなきゃわかんねぇよ!
何で言ってくれなかったんだよ!!!」
《ハンゾウ》「救いようの無い屑、ですね……」
《月の死神ベルヘルデスカル》「先輩たちがその制度を使っても会社の金の無駄遣いにしかならないからっすよw」
出典:デュエルマスターズ
《ドルブロ》「てめぇっ……そんなのやってみなきゃわかんないだろうが!」
《スカル》「いや、わかるでしょw。自分の将来にかかわる情報すら主体的に取りにいけないようなやつが成長なんてできるわけが無い。
そんなのはね、まっとうな神経してたら自分で集めるものなんです。
てか40代でブロッカーとトリガーだけってwww。解雇まで危機感覚えないのがやばすぎるでしょ。
休日何してたんすか?仮に会社で何もやって無くても、自分でスキルアップなり何なりできることあったでしょw」
《キザム》「きゅ、休日まで仕事に使えるか!
俺たちには人間らしい暮らしというものをする権利がっ!」
《スカル》「人間らしくあるための努力はしないくせに権利だけは主張っすか。
そもそも俺たちクリーチャーで人間じゃねーしw」
《ドルブロ》「き、記者さんっ!こいつら酷いでしょ!?なんか言ってやってよ!」
ー…………-
《ハンゾウ》「いい加減にしてもらえますか、まったく。……申し訳ありません、このようなところを」
《スカル》「まぁそのゴミはもう部外者っすけどね。うちも被害者って言うか」
ー……お二人は、再就職のほうは?ー
《ドルブロ》「俺らを雇ってくれるような上場企業(ガチデッキ)なんてありませんよ」
ー上場?-
《キザム》「今の上場企業で俺たちの力を求めてるとこなんて……」
ーあの、非上場企業(ファンデッキ)ではダメなのですか?ー
《ドルブロ》「ファンデッキだと!!?あんた俺たちを馬鹿にしてんのか!!」
《キザム》「ふざけやがって、このマ〇ゴミが!!」
《スカル》「……哀れなもんっすねー」
《ドルマゲドン》「おい、この屑どもをつまみ出せ」
《終焉の禁断ドルマゲドンX》「……記者さん」
ーはいー
《ドルマゲドン》「先ほど私は、成功の秘訣は柔軟な変化にあるといいましたが、あれは誤りです」
《ドルマゲドン》「成功にいたる真の秘訣は、無能なクズを社内から追い出すこと。これにつきます」
・社員の声
5コスト/パワー5000/Eさん
出典:デュエルマスターズ
「多様性がある企業ですね。ドルマゲドン社長の力を使うためにベースはコマンドで構成されますが、色さえ合えばどんどん有能な社員を採用する。1つの種族でガチッと固めてその強みを出すというのもありだとは思うんですが、私は色んなよさを状況に合わせて使っていけるこの企業が好きですね」
5コスト/パワー5000/Gさん
出典:デュエルマスターズ
「とにかく粘り強くここぞというときに強い企業風土があります。
これは前時代的な精神論ではなくて、どうすれば自分のパフォーマンスを高い状態で維持できるかとかそういうことを入社時にかなり細かく指導を受けて、定期的に講習もあります。
なのでうちはみんなその力を十分活かせますし、健康診断の結果もいいんです。そういう環境で働いているというのは精神的にも楽ですね」
・総評
・報酬 3.2
決して低くは無いが、他のデュエ証1部に上場しているトップ企業と比べるとやや見劣りする。ただし、まだまだ登り調子で成長している最中なので、ゆくゆくはそれらの企業と肩を並べるほどになると予想される。
・労働環境 4.8
粘り強い企業風土を制度的に構築している。社員の声でもあったとおり、健康状態、精神状態のメンテナンス等に関して指導が行われており、また労働環境、勤務形態も社員のパフォーマンスを高められるよう工夫されている。業界全体で見てもトップレベルにあると言える。
・競争力 4
攻撃的なデッキは《メメント》、シノビ、トリガーで受け、流行している盤面制圧系統のデッキにはドルマゲドンの一斉除去、サイズの大きさで圧倒できる。
幅広いデッキと渡り合えるデッキだが、ループ系統の場を意識しないデッキに対しては性質上かなり弱く、弱点、強みがはっきりしている。
独自の強みで他のコントロールデッキと明確な差別化がされており、競争力は高く、環境しだいで更なる活躍が見込まれる。
・将来性 4.5
ヒット商品を持ちつつもそれに見切りをつけ新たなる挑戦を行い、その上成功しているという事実は、ドルマゲドン社長の才気、この企業の将来性を期待させるには十分だ。また今夏には政府からの大幅な支援が得られることが確定している。それによってさらに強化されることは間違いなく、環境トップに躍り出ることも十分考えられる。その動向に目が離せない。
・社会貢献度 4.8
かつて政府の支援を受けて発足し、その方針から外れたにもかかわらず今再び支援を受けようとしている。そしてそのことについて国民から批判されることも無くむしろ歓迎するものが大半。この一事からも、当社が社会に大きく貢献していることがわかる。製品も極めて高品質なものであり、社会貢献度は高いと断じて間違いないだろう。
総評
『成功は失敗の元』という言葉もあるくらい、
成功体験、成功モデルというものは中々捨てるのが難しいものである。
その上成功モデルがいまだに価値を持っている状態でとなればなおさらであり、先を見据えて切り捨て、社内改革を断行したこの企業の冷静な判断力、決断力には舌を巻かざるを得ない。
「成功するためには、熱い心と冷静な判断が肝要である」この金言に言われる必要なものを兼ね備えたドルマゲ重工には、必ずやさらなる発展が訪れるであろう。
3、狂気の宗教団体!~ボルコン真理学会~
ボルコン真理学会教祖及びボルコングループ会長
《ボルメテウスホワイトドラゴン》
出典:デュエルマスターズ
宗教。良いか悪いかは別として、それは歴史に大きな影響を与え、
人々の人生を左右して来た。
DM界にも当然、宗教は存在する。
今回はその1つ、「ボルコン真理学会」について分析しようと思う。
なぜ就職、企業について取り上げる〇季報で宗教団体について言及するのか。
それはこの「ボルコン真理学会」が、数多の業界に展開するグループ企業としての側面を持つからだ。
企業理念~良質な製品、サービスを提供し人類の発展に寄与する~
出典:いらすとや
《ボルメテウスホワイトドラゴン》「よくいらっしゃいました」
私の前に現れたのは、複数の信者を連れた、法衣を身に纏った白龍、《ボルメテウスホワイトドラゴン》その人だった。
《ホワイトドラゴン》「こうして出会えたのも何かの縁。記者さん、洗礼を受けていきませんか?」
ーあ、いえ。私はそういうのは……ー
《ホワイトドラゴン》「おっと、教義の説明もしないままに勧誘とは、失礼しました」
そういうことではないのだが……しかし、ここで相手の気分を害しても仕方ない。この教え、考えが企業分析を行ううえで有益になるかもしれないと考えた私は彼の話に耳を傾けることにした。
《ホワイトドラゴン》「第一の教え。似たような人材を1つの集団に入れぬこと(ハイランダー構築とすること)」
《ホワイトドラゴン》「人というのは、それぞれに良いところがあるのです。
それなのに似たり寄ったりの人物ばかり採用するというのはいけません」
ー……?それぞれ良いところがあるというのと、似たり寄ったりの人物、というのは矛盾しませんか?ー
《執拗なる鎧亜の牢獄》「きさま、教祖様を愚弄するかっ!!!」
出典:デュエルマスターズ
《ホワイトドラゴン》「よいよい。
まぁ、再現性なる現代の感覚に慣れていては、中々受け入れがたい教えでしょうな。
しかし、この考えは天使様の考えにも合うのです」
出典:デュエルマスターズ
《ホワイトドラゴン》「お分かりですかな?これは天使様も認める正しい教えなのです」
ー……このカードから考えると、それは悪魔の教えとも取れると思うのですがー
《バキュームクロウラー》「いい加減にしろよてめぇっ!!!」
出典:デュエルマスターズ
《ホワイトドラゴン》「……お前たちは下がっていなさい」
彼に付き従っていた信者が1人を残して去っていく。
これで話も多少しやすくなるだろうか。
《ホワイトドラゴン》「ふむ、この教えはまだ早いですかな。では次。自然の力は使わぬこと」
ー自然文明の排除、ですかー
《ホワイトドラゴン》「自然文明というのは、本来ある資源を無理やり増幅させます。自然と名乗っているくせに、やっていることは自然環境のためにならぬことばかりです。これは世界の摂理に反します」
ー失礼ですが、御社にもマナを増やすチャージャー呪文がいらっしゃったと思うのですがー
《ホワイトドラゴン》「あれは本来朽ちていくものを有効活用しているから良いのです」
ーそ、そういうものでしょうかー
《ホワイトドラゴン》「3つ目は、超次元の排斥です」
先ほどから、どうも排他的な教えが続く。この時点で私の中にひとつの考えが生まれた。
《ホワイトドラゴン》「超次元。その名の通り、次元を超えてやってきた輩。
本来この世界に無い存在を認めるわけにはいきません」
《ホワイトドラゴン》「4つ目。攻撃的カードの排除。人々には心の安らぎが必要です。
シールドをブレイクしてトリガーの有無に一喜一憂するのはそこから最もかけ離れた行為。
攻撃はすべて、責任を持って私が行います」
ー……すみません、1ついいですかー
《ホワイトドラゴン》「なんでしょう」
ーこの教義は、要はあなたの地位を脅かす存在を排除するためのものですよねー
《ホワイトドラゴン》「おっしゃっていることの意味がわかりませんね」
ー基本的にデッキは、同じものを複数積むことでその力を最大限発揮できます。
最初の教義で多くのカードを否定する。
超次元カードは基本的にスペックが高く、様々なデッキで採用が検討されます。
この教義で細かいルールを決めずとも一気にサイキッククリーチャーを排除できる。
いや、後の教義と照らし合わせるとおそらく、本当に排除したかったのは《ヴォルグサンダー》ですかね。
露骨に個人を否定することはできないからサイキックという括りで纏めたんですかね。
最後のはもう、隠すつもりがあるのかも怪しいですね。
こんなの、ボルメテウス系統のカード以外の攻撃系フィニッシャーを全否定しているようなものでしょう。
……ああ、自然文明の否定は攻撃系ではないフィニッシャーを否定するためのものなんですね。ループ系フィニッシュはハイランダーで否定できているし、マナが延びないデッキでは《シャコガイル》なども使いづらい。
……明快ですね。この教義はすべて、あなたの立ち居地を奪う可能性のあるフィニッシャーを否定するために作られたものですー
《ボルメテウスホワイトドラゴン》「そこまで理解されたなら隠す意味もありませんかね。
その通り、この教団、企業はすべて私のためにあるものです」
ー……認めるんですかー
《ホワイトドラゴン》「ですが、この教団が多くの人の心の支えになっていることもまた事実」
《ホワイトドラゴン》「この教えはね、確かに私にとって必要不可欠ですが、それだけじゃない。多くの人にとって都合がいいんですよ」
《ホワイトドラゴン》「このDM界には5000種の人々が存在します。
この中で、第一線で戦えるものが一体どれほどいますか。
最近のトレンドはまさしく再現性。4×10のデッキなどまるで珍しくない。
誰だって否定したい。自分より優れた存在など目障りでしかない。
そんな多くの優れていないものにとってこの教義は甘い蜜なんですよ」
《ホワイトドラゴン》「そういったものたちが集まり、優れたものを叩き、そしてこの集団の中では互いに認め合ってもらえる。
そんな、多くのものにとって望ましいぬるま湯を提供しているんです。
その見返りに、少しずつお金をいただく。
この教団には、かつては環境で戦ったものの身を引かざるを得なくなったものが多数います。そういった者たちというのは、意外と金を溜め込んでいるものなんですよ。
まぁそもそも、一度も環境で戦ったものの無い者たちは嫉妬もそれほどではありませんから取り込みづらいというのもありますがね。
恐らくですが、個人資産は環境第一線で戦うジョラゴン君や轟轟轟ブランド君よりもはるかに多く所持していますよ。」
ー弱い者たちから貴重な財産を巻き上げる、と……-
《ホワイトドラゴン》「強いものとばかり戦うなど愚の骨頂。
それに比べてここは全くのブルーオーシャン!!これからも私はもっとも富める者としてデュエマ界に君臨しますよ!ハッハッハッハッ!!!」
弱者の生き血をすする、ヒルのような龍の笑い声が怪しげな施設の中でいつまでもこだました。
総評(5点満点)
・報酬 1
グループ企業の大半がほとんど最低賃金で契約を交わしている。
それに加え、従業員のほぼ全員がその薄給からお布施として教団に金を還元している。多くのブラック企業に比べてもさらにひどいものである。
・労働環境 3.2
母体が宗教団体であり、他のブラック企業のように使いつぶすのではなく生涯を通じて搾取するために健康を大きく損なわせるような使い方はしていない。
残業代は支払われないものの、労働時間は明確に管理されている。
・競争力2
そもそも教義が強力なカードの大半を否定しているため、競争力は当然低い。
ただし、社員が信者で構成されているためにいかなる労働をさせようと最低賃金、もしくはそれ以下で雇用することができるため、人道的には許されないが、その点は他の企業に対する優位性を持っているといえるかもしれない。
・将来性 1.6
その性質上、環境で活躍している社員を採用することはまず考えられない。
ただし、前項で述べたとおり信者の忠誠心は侮れるものでなく、大幅に拡大したり環境入り等はすることは無いだろうが、縮小、衰退していくことも考えづらい。
・社会貢献度1
税を納めているという以外、社会に対して貢献している要素が皆無。
そもそもが弱者からの搾取を目的としているため、疑いようも無い社会悪である。
犯罪等は行っていないにしても、その悪辣さはボルバル組に迫るほどである。
総評
搾取を目的としたカルト宗教。それ以上でもそれ以下でもない。
信者で無い限りこのグループ企業に就職することは避けたほうがいいだろうし、信者の方も今一度その身のあり方を考えてみてほしい。
今後の影響力をかんがみると、これらに対する法規制が必須ではないだろうか。
ー本日はありがとうございました。失礼しますー
《ボルメテウスホワイトドラゴン》「馬鹿ですね、記者さん。このまま帰すわけ無いでしょう?
そもそも、なぜ私があんなことをべらべらと喋ったと思うんですか?」
ーえ?ー
《ホワイトドラゴン》「犯罪等は行っていないにしても、ですか……甘いな」
ーな、なにを……ー
《ホワイトドラゴン》「自分のことを賢いと思い込む馬鹿の特徴は、どんな場でも自分の考えをべらべらと喋ること。まさしくあなたのことですね」
後頭部に衝撃を受ける。
ーあ、うぅ……ー
《ホワイトドラゴン》「まあ、仮に戻ってから記事にしても、あなたのとこのスポンサーにはうちの息のかかった企業がいるから無駄でしたけど。
うちのように後ろ暗いところがあるとこが全部の企業にグループ名をつけているはずが無いですからね。ま、この人はどうせ気づけなかったでしょうが。
……これからは脇をしめてがんばってくださいね、新たな信者さん」
ー私は、とんでもない記事を書いたものだ。今すぐ書き直さねば……-
ボルコン真理学会 企業評価
・報酬 5
満足のいく生活をするために十分な報酬が約束されている。
社員の大半が会社にその報酬を返還していることからも明らかだ。
グループ施設で共同生活をすることもできるので、家賃が低く抑えられるのも魅力だ。
・労働環境 5
信頼できる仲間たちと協力して仕事ができるというのはとても大きい。
勤務時間も明確に管理されていて、健康を損なわないよう配慮されている。
加えて、尊敬する会長のために働けるというのはなによりのやりがいだ。
・競争力 5
教義による制限を受けつつも他の企業に一歩も引けをとっていない。
他企業では採用されないような社員に対してもその強みを見出し、活躍させる。
強いものを強く使うのは、誰にでもできる。だが、一見有用性を認められないものの真価を発揮するのはこのグループにしかできないことであり、圧倒的なアドバンテージである。
・将来性 5
拝金主義に陥り強さだけを求める他企業と真実の教えを実践するこの企業では天と地以上の差がある。
その正しさは必ずや神の認めるところとなり、どの企業も超えた栄光を約束されるだろう。
・社会貢献度 5
慈善事業の展開、幅広い人材の登用と社会貢献度は他の比ではない。
人の世は助け合いこそが大切であるという教えに基づき、同業他社に比べ非常に安い価格で商品を展開している。
この殺伐とした社会に必要なのは、当社のような無私の心を持つ企業の存在ではないだろうか。
総評
あらゆる面において最高といって差し支えない企業である。
また、プライベート面でも支えとなる教義、信念を与えてくれるというのは何ものにも変えがたいメリットだろう。
繋がりの希薄化が叫ばれるようになって久しいが、社員同士の関係性も非常に良好である。
人が生きていく上で重要なのは生きがい、使命を持つことである。
この会社は、それら必要なもの全てを与えてくれる。
1人でも多くの読者が当社を受けることを祈るばかりである。