目次
1.アイツを処理したい
20年ぶりに遊戯王OCGに舞い戻った私は、イジメられていた。
もちろん抵抗はした。知恵を絞り、手段を尽くし、時には心理戦という盤外戦術も採用した。
しかし、ダメだった。
「効果では破壊されない」モンスターに、どうしても膝を屈してしまうことが多かったのだ。
なるほど。確かに私は、自分が手掛けたデッキを扱う喜びに打ち震えていた。目が曇っていたと、認めざるを得ないだろう。
「すごい、昔1枚しか持っていなかった《ブラックホール》を今は3枚持っているぞ!」 「高くて買えなかった《激流葬》がストレージに! これは買いだ!」 「やっと昔みたいに《サンダー・ボルト》が使えるようになった。さっそく投入だ」
「子どもの頃にあこがれていた強いカードをいっぱい使えて、ボクは幸せだなぁ」
そう。思い出も、かつての強カードも、「モンスターの能力のインフレ」という事実の前には、瓦解してしまうのだ。
あいつがにくい
あの強敵を倒したい。
もちろん私は、「破壊できなければリリースしてしまえばいいじゃない」という名言を知っていた。そして、その手段も、持っていた。
攻撃力の低い壊獣を押しつけ、高い壊獣で叩く。舶来テーマたる壊獣の、常とう手段だ。
「だが、ダメだ」
「壊獣」は、自分のフィールドに1体しか表側表示で存在できない。
過酷な現代デュエルにおいて、モンスター1体で支えるのは難しい。よしんば、魔法、罠で援護しようにも――
なんだよこいつ、魔法・罠も止めてくるじゃねえか、チートやチート!
必要なのは相棒。つまり壊獣の隣に立って戦い、ときに不運にも寝返った壊獣を叩くスイーパー。
そのスイーパー役にも、目をつけていた。
【 エクシーズモンスター 】
星 4 / 光 / 戦士族 / 攻0 / 守2500
レベル4モンスター×2
このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。デッキから「ダブル・アップ・チャンス」1枚を手札に加える。その後、「No.39 希望皇ホープ・ダブル」以外の「希望皇ホープ」Xモンスター1体を、自分フィールドのこのカードの上に重ねてX召喚扱いとしてEXデッキから特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力は倍になり、直接攻撃できない。この効果は相手ターンでも発動できる
有名な、
《No.39 希望皇ホープ・ダブル》で《ダブル・アップ・チャンス》をサーチしつつ、《No.39 希望皇ホープ》を特殊召喚。そのまま《No.39 希望皇ホープ》の効果を発動して攻撃力10000で殴る
のコンボだ。
《No.39 希望皇ホープ・ダブル》を雇うには、レベル4モンスターが必要だ。壊獣は今のところ、その全てが上級モンスターであり、下級戦士は存在しない。
どう用意するか・・・
レベル4を2体並べるだけなら、現代遊戯王はごまんと手段がある。ペンデュラム召喚に頼ってもいいし、近代的とは少々言い難いが《二重召喚》を使ってもいい。
しかし、我がデッキは《ブラック・ホール》と《激流葬》を3枚ずつ投入した破壊至上主義デッキ。
「破壊」という、この魅力あふれるギミックを、ぜひとも活用したい。
そんなことを考えて、ふと開けた我が家の段ボール。
その段ボールには、身近にある箱を再利用したストレージ・ボックスが、たくさん入っている。
「リポビタンD」と書かれた箱は、「通常モンスターに関係する」カードばかりを集められたストレージだ。
OCGに出戻った時、通常モンスターが好きで(というか、通常モンスターしかほとんど持っていなくて)、それに関連するカードばかりを集めていたのだ。
手を伸ばす。「デュエルリンクス」ではお世話になっている《凡骨の意地》が目に入る。
凡骨の先に、そのカードはあった。
ストレージ・ボックスの中に、トイ・ボックスが潜んでいたのだ。
【 効果モンスター 】
星 1 / 光 / 機械族 / 攻0 / 守0
このカードが破壊され墓地へ送られた場合、デッキから攻撃力または守備力が0の、カード名が異なる通常モンスター2体を表側守備表示で特殊召喚できる。この効果で特殊召喚したモンスターはシンクロ素材にできず、次の自分のエンドフェイズ時に破壊される。「おもちゃ箱」の効果は1ターンに1度しか発動できない。
「せや、こいつ使ったろ!」
というわけでレシピ。
2.レシピ
見ての通り、オーソドックスな【壊獣】デッキに、《おもちゃ箱》、《レスキューラビット》、「通常モンスター」を入れた構成になっている。
壊獣は《海亀壊獣ガメシエル》、《壊星壊獣ジズキエル》、《怒炎壊獣ドゴラン》の三体を採用。理由はそれぞれ攻撃力が低い、攻撃力が高い、恐竜族。
恐竜族なので、《魂喰いオヴィラプター》でサーチできる。おまけにこいつは《メガロスマッシャーX》も手札に持ってこれる。
《魂喰らい》を採用したのは、完全に個人的な趣味。
レベル4だから、ランク4につなげられるし、何よりモンスターカードだから、《ワン・フォー・ワン》のコストにできる!
なおこのモンスター、みんなに愛されすぎて制限カードになった《魂喰いオヴィラプター》と、頭文字が一致している。
将来【魂喰】がカテゴリ化されて、新規が来た暁には、このデッキが世界を真(まこと)なる闇へと導くであろう。
マジレスすると、《魂喰らい》じゃなくて、攻撃力2000の通常モンスターをいれたほうが良い。というか、レベル4帯なら《魂喰らい》以外のカードを入れたほうがいい。
その通常モンスターたちは、《レスキューラビット》か《おもちゃ箱》で出す。
レベル4恐竜族が2体並べば《エヴォルカイザー・ラギア》を、レベル4水属性が2体並べばバハシャ餅ができるぞ。
【 エクシーズモンスター 】
星 4 / 水 / 水族 / 攻2100 / 守1000
レベル4モンスター×2
「No.101 S・H・Ark Knight」の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードのX素材を2つ取り除き、相手フィールドの特殊召喚された表側攻撃表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターをこのカードの下に重ねてX素材とする。
②:フィールドのこのカードが戦闘・効果で破壊される場合、代わりにこのカードのX素材を1つ取り除く事ができる
不幸にして寝返った壊獣がいる場合は、この《No101 S・H・Ark Knight》のエサにしてもいいし――
【 エクシーズモンスター 】
星 4 / 光 / 天使族 / 攻500 / 守2200
レベル4モンスター×2
このカードがエクシーズ召喚に成功した時、自分の墓地の「おもちゃ箱」1体を選択して特殊召喚できる。自分フィールド上にこのカード以外のモンスターが存在する場合、相手はこのカードを攻撃対象にできず、カードの効果の対象にもできない。また、自分フィールド上の通常モンスターが戦闘またはカードの効果によって破壊され墓地へ送られた場合、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。自分のデッキ・墓地から通常モンスター1体を選んで表側守備表示で特殊召喚する。
墓地に《おもちゃ箱》がいるならば、彼女で蘇生させてもいい。
肝心の《おもちゃ箱》は、基本的に自分の手で破壊して墓地に送る。
ほら、攻撃を悠長に待っていると、遅すぎるから。最近はグラットンとか、裏側表示で除外してくる輩がいるから・・・
破壊手段としては、《妨げられた壊獣の眠り》の他、《ブラックホール》《激流葬》だ。かつてのパワーカードたちだ。
「子どもの頃にあこがれていた強いカードをいっぱい使えて、ボクは幸せだなぁ」
3.回し方
《おもちゃ箱》破壊カードである《妨げられた壊獣の眠り》には、実はサーチ効果がある。というかこっちがメインである。
【 通常魔法 】
「妨げられた壊獣の眠り」は1ターンに1枚しか発動できない。
①:フィールドのモンスターを全て破壊する。その後、デッキからカード名が異なる「壊獣」モンスターを自分・相手のフィールドに1体ずつ攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターは表示形式を変更できず、攻撃可能な場合は攻撃しなければならない。
②:墓地のこのカードを除外して発動できる。デッキから「壊獣」モンスター1体を手札に加える。この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できない
サーチだけでなく、リクルートもできる優れモノだが、このリクルートがちょっとクセがある。
相手のフィールドにも、特殊召喚してしまうのだ。
だがこのデッキにとって、相手モンスターがいるのはむしろ都合がいい。
《No.39 希望皇ホープ》が、相手モンスターに攻撃するとき攻撃力2倍だからだ。
理想的な回し方は、以下のようになる。
- 《おもちゃ箱》セットもしくは《ワン・フォー・ワン》で特殊召喚。
- 《妨げられた壊獣の眠り》を発動し、フィールドのモンスター全て破壊。そして自分と相手の場に「壊獣」モンスター特殊召喚。
- 《おもちゃ箱》は、破壊され墓地へ送られた場合、デッキから攻守いずれかが0の通常モンスターを2体、特殊召喚できる。
- 《No.39 希望皇ホープ・ダブル》エクシーズ召喚。《ダブル・アップ・チャンス》をサーチしつつ、《No.39 希望皇ホープ》を特殊召喚
- 攻撃力10000と化した《No.39 希望皇ホープ》先輩で壊獣を攻撃。続いて、自分の壊獣でダイレクトアタック。相手は死ぬ。
ホープ先輩の餌食にするのは基本的に《海亀壊獣ガメシエル》だけど、実はこのデッキ、《海亀壊獣ガメシエル》を自分の場に出すことも考えられる。
【 通常魔法 】
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:デッキから「激流葬」1枚を手札に加える。
②:自分フィールドの水属性モンスターが効果で破壊される場合、代わりに墓地のこのカードを除外できる。
この《激流葬》をサーチするカードが、水属性モンスターにも効果破壊耐性を与えるからだ。これで《ブラック・ホール》だろうとなんでもござれ、だ。
あ、バウンスはカンベンしてください。
《深淵に潜む者》と組み合わせれば、打点2700とそれなりになるし、こりゃ【ガメシエルビート】と名を変えてもいけるかもな。
4.このデッキの弱点
手札に通常モンスターばかりが来ると、なにもできない・・・
5.このデッキで勝てない場合は
不幸にしてバニラに愛され、手札が遊戯王第一期ばりのクリーム色に染まったとしても、ちゃんと「サイドデッキ」という救済策を用意している。
抜くカードは、以下の6点。
《レスキューラビット》×3、《おもちゃ箱》×3、《メガロスマッシャーX》 ×3 、《魂喰らい》 ×3 、《ワン・フォー・ワン》 ×2、エクストラの《プリンセス・コロン》 ×1
の15枚を、サイドデッキのカードとチェンジしてみましょう。
すると、こうなります。
▲《ダブル・アップ・チャンス》が微妙に邪魔。
これで、普通の壊獣デッキとして戦えるよ!
やったね、たえちゃん。これぞまさに【(相手を)リリースドラグーン】デッキだよ!