もっと多くの人に、デュエマで遊んでほしい!
本記事では、筆者のティーチング経験に基づいて、未経験者にデュエマを教える際のノウハウをご紹介します。
前編となる本記事では、入門デッキを準備する際の注意点を掲載。
記事後半は実践編として、小学校1年生がデュエマを始めて遊んだ時の模様をお届けいたします。
いささか変わった記事ではありますが、どうぞお付き合いください。
目次
はじめに
家族や友人にデュエマを教えるとき・あるいはデュエマを始めたいと相談されたとき、みなさんならどうしますか?
低価格かつ強力な『いきなりつよいデッキ』シリーズを勧めることは一つの道でしょう。


しかし、『いきなりつよいデッキ』は強いからこそ、未経験者にはやや難しいカードが収録されているのも事実。
さらに今年は、コロコロ付録デッキや食玩デッキのような「ごくシンプルなカードのみでできた入門デッキ」もリリースされていません。
そこで今回は、未経験者に分かりやすい入門デッキの作り方をご紹介。
作ったデッキで、実際にティーチングも実施してみます。
そんなわけでさ、甥くん(新小1)カタカナ読めるよね?ちょっと協力してもらえない?
おう、明日なら空いてるよ
明日!!!!!!!?????
なんということでしょう。シングルカードを注文する時間がないため、手元のカードのみで入門デッキを構築することになりました……
入門向け構築のコツ
それでは、さっそく入門デッキを組んでいきましょう!
今回はデュエマ未経験・かつ小学校に上がったばかりの子が相手ということで、次の3点に注意して構築しました。
- 与える情報の量をコントロールする
- 見た目の印象を重視
- 相手(小1の甥)の感覚を想像する
未経験者の小1向けということで、かなり気を配ってカードを選定しています。
こう、焼き魚を食べてもらうに際して小骨の一つ一つまで取り除いているような感覚ですね
以下で具体的に解説していきますので、みなさんがデュエマを教える際のヒントとしていただければ幸いです!
与える情報の量をコントロール
まずは何よりこれ。
そもそもデュエマは「マナゾーン」「タップ」といった、独自の用語が多く登場するゲーム。
多彩な戦略やテキストを紹介したい気持ちをグッとこらえ、まずはターンの進行や召喚・攻撃のやりかたといった基本ルールを覚えてもらいましょう。
デュエマの奥深さは、自力でゲームを進められるようになってから、のちのち伝えればいいのです。
初回はゲームのやり方を覚えてもらう。そのために、個別のカードが持つ情報は減らす。本記事でお伝えしたいことの8割くらいはこれです。
以降で詳細を見ていきましょう。割と長いです。
初回だけは単色で
一番最初に使ってもらうデッキは、単色のものが望ましいでしょう。多色を避けるのは、ざっくり以下のような理由です。
- 色事故に陥った場合、以降のルール説明が困難/そもそも体験として楽しくない
- マナチャージの判断が単色に比べてシビアになる
- 「多色マナはタップイン」のルールが混乱の元
デュエマ慣れしているプレイヤーのみなさんでも、マナチャージの判断に迷う場面はしばしばあるでしょう。初めてのプレイヤーが悩んでしまうことは、想像に難くありません。

そのため、少しでもスムーズにプレイできるよう、初回だけは単色デッキでのティーチングがオススメです。
単色デッキを複数用意しておき、数回遊んで慣れたら多色デッキに組み替えるのも楽しいですよ。
シンプルな効果の多色カードを用意しておき、組み換えの際に提供しつつ多色のルールを解説しても良いでしょう。
選択肢を削ろう
マナチャージに限らず、デュエマというゲームは判断の連続です。
同コストのカード、どちらを使うべきか?攻撃すべきか?攻撃するならどのクリーチャーからか?……と、基本ルールの範囲内でも考えることは大量。
ここでさらに選択肢を与えることは望ましくありません。モードを持つカードやサーチ・濾過など、選択型の効果の採用は控えめにするのが望ましいでしょう。
経験上、ツインパクトも悩ませる原因となっていました。採用は慎重にしたいところです。
読まなくていいテキスト?
見落としがちなのが、初めてのプレイだと「今は読まなくて良いテキスト」がノイズになってしまう点。慣れていると取捨選択できるテキストも、不慣れなプレイヤーはすべて読もうとしてしまいます。
手札に来たG・ストライクなどは好例です。別に読まなくて構わないテキストを読むことで、「なんか難しい効果が付いてる……?」と混乱させてしまうことがあるんですね。
G・ストライクやアビスラッシュといった、S・トリガー以外の「手札にある時は機能しないテキスト」は、初回のデッキからは削っておくのが良いでしょう。
また、タマシードを参照するなど、「初回時点では覚えなくてよい用語」が登場するテキストも避けたいところです。
……前にも書いたんですが、シビルカウント持ちなんかはこれが理由でちょーっと採用をためらっちゃうんですよね……
入れるべきテキスト
「避けた方が良いカード」ばかり紹介してきましたが、かといって40枚すべてバニラクリーチャーというわけにもいきません。
(いや、厳密にはルール解説だけならそれでも良いんですが「効果を使ってみよう」という部分も学んでもらいたいですし、何よりバニラ単のカードを揃えるのが地味に難しいですからね……)
というわけで、「じゃあ何を入れるのがいいの?」というお話。個人的には、以下の4キーワードは優先的に採用したいと考えています。
- W・ブレイカー・・・ヒロイックな切り札として。
- スピードアタッカー・・・出たターン以外は気にする必要がなく、挙動もシンプル。
- ブロッカー・・・ごく基本の能力かつ、貴重な守りの要素。
- S・トリガー・・・デュエマの象徴でありスリルを生む要因。
スピードアタッカーは火文明にしか存在せず、火文明はブロッカーを持たないため、同じデッキに入るキーワードは原則3つとなります。
(スピードアタッカーもブロッカーも持たない自然については、マッハファイターを紹介するかどうか?といったところ)
これらのキーワードに加え、「出た時」「離れた/破壊された時」効果を組み込むくらいがちょうど良い複雑さかな・と考えています。
特に登場時の効果は、盤面では実質バニラとして運用される=状況をややこしくしないため、初めての対戦でも扱いやすいはずです。
見た目の印象を重視
……とまぁ、ここまでテキストをシンプルに!という話を重ねてきたのですが、ぶっちゃけゲームに不慣れだと、テキストをちゃんと読まない人も多いです。
あとまぁ、読んでも挙動や強さを正しく掴めるかは分かりませんしね。マナ加速が強力だ・と理解するためには、デュエマの基本ルールを飲み込んでいる必要があるので。
というわけで、テキストよりも真っ先に目に入る情報――カードの見た目はめちゃくちゃ重要です。
特殊フレームの採用は慎重に
このあたりも前に書いたのですが、旧枠や特殊フレームなど、「なんか違うカードなの?」と思わせてしまうのは混乱の元。
マナコスト表記が違う旧枠はもちろんのこと、フレーム色が異なるジョーカーズ、特殊フレームを持つトレジャー、そして全面イラストのカード……
デッキ内に、これらを無闇に混在させることは避けておきたいところです。
例外的に、「これは特別なカードだ!」と強調する意味で、あえて特殊フレームを使ってみるのはアリでしょう。
使ってみたい!と思えるか?
今度はフレームではなく、カードイラストの話。
カッコ良い系も可愛い系もオモシロ系も、時にちょっとキモい系も取り揃えているのはデュエマの魅力――ではあるんですが、初めてのプレイヤー(まして小1男児)に触れてもらうとなるとやっぱりこう、カッコ良いカードでハートを掴みたいところです。
そうなってくると、意外とカードの選定が難しく……
具体例を挙げると《忍式の聖沌 y4kk0》は扱いに困ったカードでした。
1コストで出せて殴れるバニラ。ゲーム序盤の教材として、こんな良いカードはありません。
ただ、コイツを見た低学年男児の反応を想像してみてください。
なにこいつ~、きもーい!
……って感じではないでしょうか。たぶん教える相手が「息子と遊ぶために覚えたいパパさんママさん」だったとしても、心の声は概ね同じだと思います。
いやもちろん、そういう外見の種族なのは一プレイヤーとしては分かるんです。
ただ、小1の男子がコレを見て「使いたい!」ってなるか?と考えると、《y4kk0》は不採用→《 予言者クルト 》入れるか……ってなってしまうんですよね。
いや、この十王篇再録版《予言者クルト》もちょっとネタ寄り感はあるんですが……プロモ版を買うのが間に合わなくて……
極端な例として《y4kk0》の話を出しましたが、他のカードも似たような意識で選定していくのが良いでしょう。
あと名前ね
見た目の話ではないのだけれど、効果テキストの話でもないのでここで。
基本的にフリガナがあるとはいえ、できれば読みやすい・分かりやすい名前のカードを優先して採用したいところです。
読みづらい名前や覚えづらい名前のカードがダメなわけではないんですが、そうした名前のカードって「コイツを召喚」「コイツで攻撃」って言われる羽目になって、名前を覚えてもらえない=親しみを持ってもらいづらいんですよね。
というわけで《忍式の聖沌 y4kk0》が採用からまた一歩遠のきました。
古参種族は良い塩梅のカードが多くて助かったりしますね。
相手の感覚を想像する
複雑さの話・見た目の話と並べてきましたが、結局はこれ。誰に教えるか?その相手がどう思うか?を考えることが重要です。
難しくても飲み込んでくれそうな相手なら、単純さを突き詰めなくても良いでしょう。見た目がヘンテコでも、それを楽しんでくれそうな相手なら全然OKです。
もちろん教える相手のことをよく知らないなら、ノイズになりそうな要素は取り除いておくのが安全でしょうけれどね。
パロディや美少女がウケるかどうか
カードを選定していて悩むのがココ。
特に今回は小1男児が相手ということもあって、パロディやミームに基づくカードの扱いは本当に困りました。そもそも元ネタを知りませんからね。
知らなければ知らないで違和感のないカードなら構わないのですが……
何なら俳句の概念も知らないので、マジック・ソングもなんか変な名前&イラストに字が書かれた妙なカードに見えちゃうでしょうしね。
あとは美少女キャラクターも、低学年男児(だったりそのママさんだったり)だと忌避感も多いかな~という印象はあります。昔に比べるとだいぶ身近になったとはいえ、相手の好みが分からない以上は慎重な採用をしたいところ。
「考える遊び」に慣れているか
複雑さに関しては、結局これですね。
ボードゲームなどのアナログゲームで「ルールに従って自分でゲームを進める」ことに慣れているかによって、ルールの飲み込みには差が出るはずです。
ルールを早く飲み込めば飲み込むほど、複雑なカードテキストも解禁しやすくなるでしょう。
このあたり、事前にヒアリングしておけると良いですね。
構築例
さて、長々と御託を述べましたが、ここからようやく入門デッキのご紹介です。
実のところ、チュートリアル前日に急いで作ったら思いがけずうまくハマった部分・そしてもちろん反省点もあったため、ちょっとお恥ずかしいのですが有り合わせ状態のものをそのまま公開していきます。
構築例 光文明編


《予言者クルト》《希望の親衛隊ラプソディ》と、1コスト域が手厚いのが特徴。
デュエマのティーチングってどうしても、「1ターン目はやることがないからターンエンドだね」になりがちなんですよね。
でもやっぱり、ゲームを体験するからには1ターン目からアクションしてほしい。というわけで、オススメしやすいデッキになったかと思っています。
一方で、「ブロッカーが固すぎた」「分かりやすいフィニッシャーの不在」は課題ですね。後者はカードプールの問題なのでどうにもならないのですが、ブロッカーはもう少し減らしても良かったかもしれません。
注目カード 《ガガ・ピカリャン》

【 クリーチャー 】
種族 サイバーロード / エイリアン / 文明 光 / パワー2000 / コスト3
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、カードを1枚引いてもよい。
1コストカードが多いからこそ、手札の減りも早いこのデッキ。
リソースが減ってきたころにコイツが登場して、ドローの心強さを学んでもらえたら、と考えています。
ドローエンジンとしては《雷鳴の守護者ミスト・リエス》も採用。
常在効果は少し難しいかな?とも思ったのですが、マナカーブのてっぺん=最初の数ターンで慣れた後に登場するならセーフと考えて投入しました。
高打点アタッカー不在のこのデッキだからこそ、《ミスト・リエス》下で「《 予言者クルト 》召喚、ドロー!《 予言者クルト 》召喚、ドロー!……」と物量を展開する楽しさを体験してほしいですね。
構築例 水文明編


《パーロック》関連カードのおかげで他よりもバニラクリーチャーがちょっぴり多く、組みやすかったのが水文明。
ドローやアンブロッカブルなど、効果持ちもシンプルな性能のものが用意できたため、総じて取り回しの良いデッキとなりました。
《ガード・グリップ》入れても良かったかなという気持ちはありますね。
注目カード 《封魔ダンタリオ》

【 クリーチャー 】
種族 グランド・デビル / 文明 水 / パワー1000 / コスト1
■S・トリガー(このクリーチャーをシールドゾーンから手札に加える時、コストを支払わずにすぐ召喚してもよい)
■ブロッカー(このクリーチャーをタップして、相手クリーチャーの攻撃先をこのクリーチャーに変更してもよい)
■このクリーチャーは攻撃できない。
S・トリガーとブロッカーと1ターン目のアクションをまとめて解説できる良カード。
「S・トリガーが出れば凌げるぞ!」「ブロッカーで守ろう!」という防御側の基本を学びつつ、フタをできるほどの固さはないのが絶妙なバランスです。
《生意気な衛兵 メダカ》と比べて、ワルモノ感が強い見た目も良いかな……?
構築例 闇文明編


つっっっよ・・・!!
そもそもハンデスや除去といった、相手のリソースを潰すのが得意な色だけあって小型クリーチャー群が優秀。
《麗迭人形ジェニー》《ブラジェスコ-W1》あたりはデュエマに慣れてからも長くお世話になるでしょうし、初めてのデッキとしてはかなり良い仕上がりだと自負しています。
あと《邪撃剣バラガマゴ》。なんとなく強そうな見た目と名前の中堅アタッカーとして、このデッキだと妙な存在感を放ってくれています。
そうそう、闇文明については墓地肥やしカードを入れないのも入門デッキのコツだと思っています。
最初のうちは「使いたいカードが墓地に行ってしまった」というガッカリ感の方が勝ってしまいますからね。
注目カード 《スライサー・グライサー》

【 クリーチャー 】
種族 アビスロイヤル / 文明 闇 / パワー5000 / コスト5
■このクリーチャーが出た時、相手のクリーチャーを1体選び、破壊する。
このデッキ唯一のアビスにして、最重量カードです。
アビスの独自フレームをコイツのみ採用することによって、「このデッキで一番強いカードだぞ」と際立たせてみました。
ホントは2打点持ちを入れたいところではあったのですが……ちょっと周りのテキストが複雑すぎて断念。
構築例 火文明編


「甥の好きなポケモンはリザードン」と聞いていたので、「どれか選んでいいよ」と伝えたらコレ選ぶんだろうな~と思いつつ構築しました。
《 ホップ・チュリス 》《 ステップ・チュリス 》の2種は難しいかな……と懸念はあったものの、「シナジーに気付いた時の気持ち良さ」を優先して採用。
その代わり、他のカードをできるだけシンプルに寄せました。
序盤は可愛げのあるビートジョッキーとファイアー・バード、最後はカッコ良いドラゴンというゲーム展開も分かりやすくて良いかな、と考えています。
ちなみに《 凶戦士ブレイズ・クロー 》が不採用なのは、すぐに用意できたのが旧枠版とにじさんじ版だけだったからです。
結果として「序盤はビートジョッキー」感が強まったから怪我の功名かも?
ただ実は、S・トリガーを入れるスロットを作れなかったという致命的な欠陥があります……
注目カード 《ボルザード・バーンエッジ》

【 クリーチャー 】
種族 アーマード・ドラゴン / 文明 火 / パワー6000 / コスト5
■スピードアタッカー(このクリーチャーは召喚酔いしない)
■W・ブレイカー(このクリーチャーはシールドを2つブレイクする)
というわけで、「序盤はネズミと鳥・トドメはドラゴン」のトドメ担当です。
低コスト連中が楯の3~4枚を割っているはずなので、最後のシールドを叩き割りに行ってもらいましょう。
今回のカードプールだと、あらゆるブロッカーを踏み潰せるサイズなのもポイントです。
……なお、スペックでも「切り札として目立たせる」という面でも《英雄龍 モモキング》があるならそちらのほうが優秀だったりはするんですが……
構築例 自然文明編


おそらく本人は選ばず、対戦相手として使うだろうな読みで構築。
マッハファイターがちょっと難しいかな?と気にはなったのだけれど、本人が使わないなら「コイツは出た時だけ相手に強制バトルを仕掛けるぜ!」的に端折って説明しよう、と考えて採用しました。
なおこのデッキ、思いがけずやられ役として非常に優秀でした。そのあたりは後編記事にて!
注目カード 《ちんぱんじー》

【 クリーチャー 】
種族 グランセクト / 文明 自然 / パワー4000 / コスト2
パンジーのチンパンジーだから《ちんぱんじー》。グランセクトの動物兵器の中でも、ひときわシンプルな名前とキャッチーな外見がイカしたクリーチャーです。
名前とイラストがここまで分かりやすいと、小1的にはウケるだろうな~と考えて採用。序盤に出てきて高パワーなことから、
《ちんぱんじー》つええ~!!
……みたいな盛り上がり方をする読みでフル投入しました。ネタバレすると大成功でした。
そして後編へ……
無事に5つのデッキが用意できました。
果たして小1はデュエマを楽しんでくれるのか?
そんなのいいからポケカやろうよ
とか言い出さないか!?
いざ、ティーチング!!
→実践編に続く!