目次
あらすじ
どうも、私はキンプウエン。
名前は最悪おぼえなくていい。
前回に引き続き、遊戯王の昔話をしたい。
前回のあらすじをざっくり説明すると、
自分の知らない2ヵ月のうちに地元で何かが起きた。
これに尽きる。
ということで今回はその”何か”を話そうと思う。
キャラ紹介
前回のコラムを覗いてくれた人なら「また?」と思うかもしれないが、今回から読み始めた人のために再度、登場人物を紹介したく思う。
それに今回は新キャラが出てくる。
カズ
元、「蟲惑魔」使い。最初に「ドラゴンメイド」に魅入られた人物。かわいいカードが好き。最近、海外先行販売の蟲惑魔モンスターを落札した。
テツ
元、「サイバー」使い。いまだに「ノヴァインフィニティ」の強さは健在。最近、ポケ〇ンGOのフレンド獲得のためSNSで招待をばら撒いた。が、効果はイマイチのようだ。
レイ
元、「バーン」使い。今回の新キャラ。遊戯王に関しては研究気質で、正面からぶつかり合うデッキではなくメタビート系のデッキを好んで使っていた。なんだかんだ強かった。
この3人を主軸に話を進めていく。
え? 私? 私はいないよ。だって遊戯王やってないもん。
上記の3人は、地元に帰るたびに会う連中だ。もうかれこれ中学時代からの付き合いなもんで、腐れ縁という表現が正しいだろう。
キャラ紹介も終えたところで本題に入ろうと思う。
私の地元でデュエリストたちはどう変化したのか。
たった2ヵ月でどのような出来事があったのか。
そして、私は何を思ったのか。
事の発端
一番最初に動き出したのはカズだった。
カズ自身、私を含めても古い仲といえる知り合いがいなく、とりあえずいつも集まるメンバーとしてテツ・レイの二人を勧誘した。
どうやら、遊戯王をふたたび始めるにあたって、いろいろ調べてくれたようで、それが勧誘の決定打となった。
背景としてはマスタールールの変更が一番大きかった。
これによって今まで使えていたカードが使えなくなってしまった。これを補うために、リンクモンスターと呼ばれる新しいカードが登場したことも調べていた。
結果として、従来のテーマが逆に強化されていたという事実を知ることとなったのだ。
これなら、昔のデッキを崩さずに強くできる!
ありがとうKONAMIさん。これでまだ僕たちは戦えるよ!
さて、さっそくカードを手に入れよう。
3人はウキウキで昔、通っていたカードショップに出向く。
「何かデッキ作るんかい?」
と、執拗に聞いてくる小太りの店員に「こっちはゆっくり、カードを見たいんだよ!」とイライラした記憶しかないが、大人になった自分たちはそんな程度のことで癇癪を起こさない。
よし、到着!
・・・・・・・・・
そう、ここは田舎。
うん、田舎なんだよ。
店がなくなっていた。
えーーー・・・・・・
そうかぁ・・・・やはりこの業界は不景気と言わざるを得ないのか。思い入れはなくとも思い出の場所ではあったからなぁ・・・・
やはり昨今はデジタルでもカードゲームができたりする時代。こうなる運命は避けられなかったのかもな。
いろいろ調べていくと、どうやら近所にあったカードゲームショップ5店舗のうち、今は2店舗しか残っていなかった。うち1店舗は遊戯王を扱っていない。悲しいね。
ということで、消去法で最後のカードゲームショップにお世話になることに。
よく残ってくれた!
ここもなくなっていたら、頓挫していたよ!
本当は店名を叫んで感謝を述べたいが、住んでいるところの関係で言えないのがムカムカする!
そして何より痛感したのは、自分たちが一番遊戯王を遊んでいた時期が、カードゲームの絶頂期であったこと。その流行に乗っかってカードショップもどんどん開店していたこと。
そしてそれらはもう過去の話だということ。
この事実だった。
ひとまず、カードの供給ができる場所はあった。カードもある。金もある。おこづかいでやりくりするなんてみみっちいことは言わない。
大の大人が楽しむだけ楽しむ、ただそれだけだ。
こうして、昔のデッキを強化することに成功した一同。
一人、レイを除いて。昔のカードがない。
あるいはもうやらないと思って、譲ったか売り払ったかなのだが、詳しくは知らない。そのため一人、イチから作ることになった。
そんな研究気質な彼はこのカードと出会うこととなる。
そう「叢雲ダ・イーザ」である。これなら昔好きだったのメタビートと掛け合わせやすい。それにリンクどころかエクストラデッキのカードはすべて《強欲で金満な壺》の糧なわけで、汎用カード以外はお安く作れる。
ということで、汎用カードたちと除外によって真価を発揮するカードを詰め込んだデッキが完成した。
カズの「蟲惑魔」「ドラゴンメイド」
テツの「サイバー」
レイの「叢雲ダ・イーザ」
これが地元復帰組の最初のデッキとなる。
ちなみにその頃の私は、まさか遊戯王が仲間内で流行ってるなどと思ってすらなかった。
ここでちょっとした小話をしようと思う。
カズとレイがカードショップに行ったときの話だ。
このカードを見たときに脳の思考回路が止まった。
「モンスターなのに魔法?」
よくわからない。
これは普通に召喚してもいいのか、あるいは発動するものなのか。
何より効果が2個あるのはなぜ?
これは聞くしかあるまい。
カズ「すいませーん」
店員「はい」
カズ「この"らすたーぴー"って何ですか?」
店員「ラスターピー? あ、ペンデュラムか」
カズ「ぺんでゅらむ!?
アイドルプロデューサー的な意味ではない!!?」
店員「最初そう思うよね」
店員さんには理解があった。
変化は突然に
さて、昔のカードを使って遊ぶのにも限界が来たころ、新しいデッキを作ろうという動きがあった。
立役者は、またしてもこの人物、カズだった。
理由は至極当然、かつ真っ当。
こんなにかわいいカードがあるなら作るしかないじゃないか!!
そういうヤツだ。
こうしてカズのデッキが増えていった。
それでも3人のデッキの実力は拮抗していた。勝ったり負けたりを繰り返して、試行錯誤を繰り返してまた勝って負けて。こんな感じでいい意味で対等な戦いを繰り広げていた。
カズが、とあるデッキに手を出すまでは。
「マドルチェ」である。
カズ自身もただかわいいから作っただけなのだが、このデッキが物議をかもすこととなる。
この「マドルチェ」デッキ。かわいい見た目に対し特徴は、
ワンターンキル。
つまり何もなければ、後攻に問答無用で一撃で倒せる。
何かあっても先攻で《神の宣告》を伏せておけばよい。
この「マドルチェ」デッキが猛威を振るった。今まで楽しく勝ち負けを分かち合っていた「サイバー」も「叢雲ダ・イーザ」も、それぞれのデッキコンセプトを活かす前に倒されることとなった。
こうして地元では「マドルチェ」一強状態が続いたのだった。
「サイバー」では無効にすべき札が多すぎて対策が取りにくい。
「叢雲ダ・イーザ」は除外ができるまでに試合が終わる。
テツ・レイ「ならば勝つにはどうすればよい」
・・・・
・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・・・これに対抗する手段は皆知っていた。
これが強いことは分かっている。そしてゲーム性を大きく変えてしまうことも分かっている。
それでも勝つために手を出した。
そして彼らの遊戯王は突然に変化したのだった。
貪欲に
手札誘発。
近年の遊戯王は先攻で圧倒的な差をつけて勝つ戦法、いわゆる先攻制圧を止めるために、罠カードとは別に「手札から相手ターンでも使えるカード」が現れた。それを総称して「手札誘発」と呼ぶ。この「手札誘発」は汎用性が高く、さまざまなデッキに採用され、重要な相手の行動を阻害する強力な手段として確立した。同時に、これによって一切のプレイができないなどの弊害が生まれることを嫌うプレイヤーも少なくとも存在している。大たる例が動画クリエイターである。動画の見栄えを考慮して、あえて採用せずに戦うなどの配慮がされることもある。
友人戦では特に禁忌の手である。
最初に手札誘発を使いだしたのはレイだった。
テーマとしての関連性がない「叢雲ダ・イーザ」は、ほかのテーマデッキよりも戦況が苦しくなるシーンが多かったため、入れざるを得なかったのだろう。
それに、主軸となる《紅蓮魔獣 ダ・イーザ》《機巧蛇-叢雲遠呂智》の2種類のカード以外はだいたいは自由枠として採用できるため難なく組み込むことができた。
「マドルチェ」の対策のために「手札誘発」を採用したレイの「叢雲ダ・イーザ」が次第に強くなった。
次に、それを見てテツが「手札誘発」を使いだした。
そして、それに対抗するためカズも「手札誘発」を使いだした。
チキンレースの始まりである。
"友人同士の遊び"のラインを飛び越えれば、当然こうなる。
『競技シーンでも使われている強いカードが友人戦でも使われるとなれば、競技シーンを想定したデッキを使っても問題はなかろう』
こうして、
テツが競技シーン環境トップのデッキ「転生炎獣」を完成させた。
カズがファンデッキ寄りだった「閃刀姫」を競技シーンに近い「閃刀姫」にまで昇華させた。
レイが競技シーンで活躍する「手札誘発」などをもとに、環境メタ型の「叢雲ダ・イーザ」を完成させた。
そして彼らはデュエリストとなった。
紙切れ
で、2ヵ月が経過し、そんなことを全く知らない私に電話がかかってくるわけだ。
なるほど
なるほど
なるほど
なるほどねぇ
そんなにガッチガチにやってると思ってないよこっちは・・・・・・
怖いよ。怖くてジャッジなんてしてられないよ。
この話を聞いて一番に感じたのは勝ちに貪欲になった大人たちの「怖さ」である。が、それ以上に強く感じたことが、
たった2ヵ月で、
現代遊戯王を知らなかったヤツらが、
競技シーンに至るまでに、
3人だけの小さなコミュニティで、
発展させた。
ことへの、
「遊戯王への賞賛」だった。
デジタルカードゲームばかりをやっていた自分は、遊戯王というコンテンツを少なくとも軽んじて見ていたことを認めざるを得ない。
彼らを"子供どうしのチャンバラ"から、"大人の殺陣"にまで成長させたのは、まぎれもなく遊戯王が持つゲーム性の高さだったと、この2ヵ月間の短い歴史を聞いて感じることができた。
ただ情報を集めるだけでは感じることができなかった、カードゲームの力がまだここには残っている。そう感じるには十分な話だった。
紙切れだと思うにはまだ早いかもしれない。
カズ「いやー、こんなにハマるとは」
テツ「そうそう」
カズ「まぁ、キンプウエンが教えてくれなきゃこうならなかったよな」
テツ「ほんとだわ」
キン「・・・・うん、そうね」
カズ「地元に帰ってきたら遊戯王やろうぜ」
テツ「最近、新しいストラクチャーデッキ買ったからたくさん戦えるぞ」
カズ「帰ってくるとき教えてね。レイも呼んどくから」
キン「・・・・わ、わかった」
・・・・
そう、
私は、まだ遊戯王を始めていないのだ。