はじめに
強烈なパワーを持ったデッキたちがしのぎを削るアドバンス環境。
上位デッキの隙のない布陣を突破するのは並大抵のことではなく、GP2023-1st後からのここ数ヶ月ほどは環境構造がある程度固定化してきています。
そんなアドバンスに吹く一陣の風……いや、ハイク。「忍邪乱武」のもたらした1枚のカードは環境の形を変えてくれるのでしょうか。
久しぶりに変化の兆しを見せるアドバンス環境の「今」について、今月も解説していきたいと思います!
2023年5月の環境はこちら!
目次
「最強」の定義
本記事では最強デッキを「デュエル・マスターズ競技環境での相対的な強さ」と定義します。
Tier1とは「環境内に不利なデッキが少ない、あるいは相性差を覆しやすいデッキであり、大会で持ち込みが一番多いと予想される対策必須のデッキ」です。
Tier2とは「Tier1やTier2のデッキにある程度勝てる見込みがあり、大会でも毎回一定数いると予想されるデッキ」です。
Tier3とは「弱点が多い、デッキパワーが低いなどの理由で使用者は少ないものの、特定のメタゲームでは活躍することができるデッキ」です。
先月からのカードプールの変化
「忍邪乱武」
アビス・レボリューション第2弾・「忍邪乱武」のリリースにより、多数の基盤カードが追加されたデュエル・マスターズ。
まだまだアドバンスフォーマットの大会開催数が不十分なため大きな変化は見られませんでしたが、それでも《♪なぜ離れ どこへ行くのか 君は今》の存在は無視できません。
2ドローしながら墓地リセットするカードとして、オリジナル・アドバンス問わず最上位に位置する【サガループ】に対して明確なキラーカードとなるこの1枚。
後ろにリソースを抱えながら墓地リセットするため「対策カードを使って減ったハンドリソースを攻めて消耗戦で勝つ」ことをメタ突破の軸のひとつとして活用してきた【サガループ】に対してはひとつの回答として機能します。
ただし、オリジナルよりもアドバンスの方が圧倒的にゲームレンジが短いため、【サガループ】以外のデッキに対しては3ターン目に2ドローしかできない《♪なぜ離れ どこへ行くのか 君は今》が手放しで強いカードと言えるかは微妙なところ。
2ターン目にメタクリーチャーを置いてビートダウンを遅延したり、増えた手札を元手にシールドからカウンターを仕掛けたりできるデッキであることは最低限の条件になりそうです。
Tier0
サガループ【Tier0】
アドバンス環境においても明確な「環境のスタート地点」となる【サガループ】。
オリジナル環境との違いとしては、ダンタル型のフィニッシュに《ツタンメカーネン》ループが取り入れられる場合が多いことと、ほとんどダンタル型1色に塗り変わったあちらとは対照的にダンタル型とDOOM型の双方が一定数活躍していることの2点でしょうか。
まずは《ツタンメカーネン》ループについて。
コスト4以下の呪文を好きなだけ唱えられるようになれば超GRをループさせられるのは想像に難くありませんが、発射台として使われるのはもっぱら《音奏 トラークル》と《龍・獄・殺》の2枚です。
《音奏 トラークル/音奏曲第5番 「音竜巻」》は上面がコスト3でGR召喚するブロッカーで、下面にはわずか1マナのバウンス除去がついたツインパクトカード。
除去範囲はパワー5000以下に限られるものの、メタクリーチャー除去としては十分以上。
ツインパクトということで3ターン目までにツインパクト呪文を唱えて1枚でも墓地にクリーチャーが用意できれば、4ターン目に《音奏曲第5番 「音竜巻」》を唱えてメタクリーチャーを除去してから残り3マナでループに入る不意打ちも期待できます。
《龍・獄・殺》は手札こそ減ってしまうものの、自分自身がクリーチャーを2枚墓地に置ける2マナルーターとして機能するのが何よりの強み。
早期に能動的にGR召喚を仕掛けられるのも面白く、ビートダウン相手の《全能ゼンノー》、ミラーマッチでの墓地リセットGRなど、メインデッキを圧迫せずに様々な恩恵を期待できます。
ただし、《龍・獄・殺》はルーティング能力が強制なので単に《龍素記号 wD サイクルペディア》のストックで無限回唱えただけでは先に自分の山札が切れて負けてしまいます。山札を作り直す工程を間に挟むことを意識しておきましょう。
これらのGR召喚を駆使した《ツタンメカーネン》ループをメインに据えつつ、除去としても優秀な《勝熱と弾丸と自由の決断》の召喚酔い解除を絡めてのビートダウンをサブのフィニッシュ手段として用意するのが一般的な構成。
とはいえ、「《勝熱と弾丸と自由の決断》が必須ではない」という点は特筆すべきアドバンスとオリジナルの差異でしょう。フィールド除去としては不器用な《勝熱と弾丸と自由の決断》を抜いて《蒼狼の大王 イザナギテラス》から唱えられる《邪招待》に差し替えた構築も少数ですが見られました。
続いて、ダンタル型とDOOM型について。
DOOM型の大きな利点としてはチャージャーによるマナ加速と《蒼神龍ヴェール・バビロニア》によってメタをある程度無視できる点が挙げられるでしょう。
ダンタル型も構築の洗練や追加パーツの獲得などで大幅に戦いやすくはなったものの、結局のところどこかでメタカードを除去しなければ勝ち筋を通せません。
特にアドバンスではフィニッシュ手段が他にある都合上《勝熱と弾丸と自由の決断》を減らせるなら減らしたいこともあり、置物系のメタカード対策は《ウォズレックの審問》でのハンデスにほとんど依存します。
その点、《蒼神龍ヴェール・バビロニア》を着地させて爆発的な墓地肥やしから《超神星DOOM・ドラゲリオン》を手札から召喚できるDOOM型は、そもそも《絶望神サガ》ループを決めずとも勝利を狙えるため、まともに除去に取り合わなくても良い強みがあります。
また、墓地リセットに対するリカバリーとしても《蒼神龍ヴェール・バビロニア》は一級品であることは言うまでもありません。
総じてメタカード全般に対して強く出やすく、【サガループ】へのガードが高まった環境で戦いやすいのはこちらだと言えそうです。
Tier1
モルトNEXT【Tier1】
アドバンス特有のゲーム性を象徴する三大要素の一角、ドラグハートを強くフィーチャーした、「アドバンスといえば【モルトNEXT】」と言えるほどの存在感を放つ、異色のランプ・ビートダウンデッキです。
ドラゴン基盤のマナ加速力が他のランプデッキを置き去りにするほどの速度と動きの強固さを実現。
加速した先の5マナ域には《「助けて! モルト!!」》によるドラグナーの早出しと《インフェル星樹》の2ブースト2ドローが控えており、《メンデルスゾーン》が絡めば3ターン目にこれらのカードを押し付けたのちに暴力的なまでのドラグナーのカードパワーで相手を圧倒できます。
直近のトレンドとしては、受け札として3枚前後が投入されていた《革命の絆》が0〜1枚まで減らされ、ゲームエンド級の重量級ドラゴンの採用率がやや上がっていることが挙げられるでしょうか。
《禁断竜王 Vol-Val-8》が3枚から4枚に増量されるのがデフォルトに近くなっているほか、《地封龍 ギャイア》や《メガ・マナロック・ドラゴン》といったロック性能に優れたドラゴンについても採用率が向上しています。
仮想敵として最大の勢力である【サガループ】は基本的にやや苦手な相手ですが、仮に機先を制した際には確実に勝利できるよう意識した構成の変化だと考えられるでしょう。
黒赤バイク【Tier1】
一時期は下火となっていたものの、徐々に立ち位置を取り戻しつつある【黒赤バイク】。
最速パターンは3ターンキルですが、どちらかといえばメタカードでの遅延や《絶速 ザ・ヒート》のリソース力を活かしたタメるプランとの噛み合わせがこのデッキの持ち味。
《DG-パルテノン 〜龍の創り出される地〜》や《U・S・A・BRELLA》を添えての高速ビートダウンは対【サガループ】においてやはり強力です!
《U・S・A・BRELLA》は《ドアノッカ=ノアドッカ》の機嫌に左右される部分はあるものの、相手の動きを抑えつつ展開できるトリガーケア手段としては十分以上のスペックです。
【サガループ】の項目でも触れた通り、現アドバンス環境のダンタル型【サガループ】はフィールド式のメタカードを突破しづらいため、2ターン目に展開できて手札リソースも損なわないフィールドである《DG-パルテノン 〜龍の創り出される地〜》は特に有効性が高いと言えるでしょう。
Tier2
5cコントロール【Tier2】
基本的な構成はオリジナルの【5cザーディクリカ】とほとんど同じですが。最大の違いは《最終龍覇 グレンモルト》の有無。
登場時と毎ターン開始時にドラグハートを装着する能力を持ち、登場時能力でアドバンテージを取れるドラグハートを使うことで置きドローソースのように機能したり、《銀河大剣ガイハート》+《銀河剣プロトハート》で一気にリーサルを形成したりと幅広い仕事をこなしてくれます。
アドバンスではこのカードをフィニッシャーに据えるために《ナウ・オア・ネバー》ではなく《ドラゴンズ・サイン》が採択されており、ブロッカー付与があったり《龍風混成 ザーディクリカ》のEXライフシールドが墓地に置かれなかったりといった差異が、プレイ感を変える要因になっています。
もちろん4ターン目の《ドラゴンズ・サイン》+《龍風混成 ザーディクリカ》+《ロスト・Re :ソウル》の大型ハンデスはアドバンスでも健在。
押し付けとカウンター性能を高い水準で両立した強力なデッキですが、悪く言えば突き抜けたものがなく半端な部分が目立つデッキでもあります。
メタカードによる対抗こそできるもののリソース力には乏しいため、早期の《ウォズレックの審問》でバタついたりと【サガループ】環境はやや向かい風。
ビートダウンデッキを中心とした環境で真価を発揮するデッキタイプと言えるでしょう。
4c万軍投【Tier2】
アドバンス特有のゲーム性を象徴する三大要素の一角、GR召喚を強くフィーチャーしたコントロールデッキです。
序盤はマナドライブGR獣がフルスペックを発揮できるようテンポ良くマナランプし、5〜6マナ貯まったら《“魔神轟怒”万軍投》を投下してGRラッシュスタート。
《天啓 CX-20》や《サザン・エー》でハンドの枚数を大きく確保しつつ、《クリスマ Ⅲ》や《回収 TE-10》で次なる動き、特に2枚目の《“魔神轟怒”万軍投》を優先的に確保。
次々とGR召喚を連打してリソースを確保しながら《カット 丙-二式》で相手の手札を刈り取り、《とこしえの超人》で外部リソースにもフタをして完全制圧を目指します。
最終的には《♪必殺で つわものどもが 夢の跡》や《神の試練》、《流星のガイアッシュ・カイザー》とセット採用される《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》でEXターンを取るか、《BAKUOOON・ミッツァイル》のパワーで大量のGRクリーチャーをスピードアタッカーにして物量で押し込みフィニッシュです。
ことアドバンテージを取る力についてはアドバンス環境でも頭ひとつ抜けており、ひとたびマウント体勢に入れば圧倒的物量と手数で抜け出すのは困難。
【サガループ】に対してもメタカード+《お清めシャラップ》+《龍素記号 wD サイクルペディア》の布陣が用意されているためある程度以上に戦える部類です。
シンプルにカードのやり取りをするデッキに対しては無類の強さを持っている反面、カードパワーの暴力でゴリ押してくる相手や速度の速いデッキはやや苦手としています。
オービーメイカー【Tier2】
最速はなんと驚異の2ターン目、高い再現性で3ターン目に《十番龍 オービーメイカー Par100》を着地させクリーチャー主体のデッキを封殺する、プリズン要素の強いビートダウンデッキです。
アドバンスのキーとなるのはGR召喚、すなわち《ソイソイミー》と《零龍》の《手札の儀》。
これによって手札枚数の都合上オリジナルでは実現できない展開が可能となり、《十番龍 オービーメイカー Par100》のシビルカウントを強く手助けしてくれます。
【サガループ】対策として有力で直近ではテンプレートの仲間入りを果たしていた《かぼちゃうちゃうちゃう》ですが、【サガループ】側のメタクリーチャー除去が《「敬虔なる警官」》から《「…開けるか?」》に変わってやや苦戦気味。
《「敬虔なる警官」》を避けられる点やウィニーを並べてくるデッキに対してマッハファイター+S級侵略でボードを制圧できる点は依然として有効ではあるものの、【オービーメイカー】にとってコストの軽さは正義です。
今後は《若き大長老 アプル》や《リツイーギョ #桜 #満開》、《キャディ・ビートル》といった2コスト帯のメタクリーチャーに主軸を移しつつ、環境に合わせて採用していくカードになるでしょう。
Tier3
アナカラージャオウガ【Tier3】
メタクリーチャーで相手の動きを遅延しつつ《キユリのASMラジオ》からアドバンテージを確保し、最終的に《CRYMAX ジャオウガ》1体から5点分作って過剰打点で勝負を決するメタビート気味のミッドレンジ。
元々は【ガイアッシュ覇道】や【モルトNEXT】、【5cコントロール】といったデッキのマナランプに対して強力な《星空に浮かぶニンギョ》をフル採用していましたが、【サガループ】の台頭以降はほとんどオリジナルの構築と変わりなく、《とこしえの超人》と《若き大長老 アプル》を最序盤のメタに組み込んだリストが一般的です。
《ボン・キゴマイム》はアドバンスにおいても【黒赤バイク】や【モルトNEXT】といったビートダウンに対して有力なメタカード。ビートダウンのデッキパワーの高さ、勢力の大きさを見ればオリジナル以上の活躍すら期待できます。
ドロー能力はサイキック・クリーチャーの登場などにももちろん反応しますが、GR召喚は「コストを支払ったものとして」召喚しているため反応しません。要注意です。
星龍マーシャル【Tier3】
アドバンス環境に定着しつつある破壊的なワンショットコンボデッキ。
最速3ターン目に《マーシャル・クイーン》から《星龍の暴発》を踏み倒し、シールドに仕込んだフィニッシュ級スペルでゲームエンドまで持ち込める上ブレの強さと、コンボの性質上デッキに多数のS・トリガーを組み込めることからビートダウンともそれなりに戦える防御力を有しているのがこのデッキのウリだと言えるでしょう。
構手札にカードさえ揃えられれば5マナから即座に射出でき、特にループするわけでもないので《DG-パルテノン 〜龍の創り出される地〜》も《オールデリート》プランには無関係。
踏み倒しギミックもS・トリガーが主体となっているため主流なメタに止められづらいのも魅力の1つ。呪文のキャストそのものが止まると流石に動けなくなってしまうものの、そうでもない限りメインの動きを遂行できるのはコンボデッキとしての強度が高いポイントです。
S・トリガーであれば《マーシャル・クイーン》経由でなんでも踏み倒せるため、デッキに組み込めるパーツも意外と多め。
今回のサンプルリストに採用していないカードでは《テック団の波壊Go!》はかなりの有力候補でしょう。
《爆炎龍覇 モルトSAGA》が装備した複数のドラグハートや【オービーメイカー】に対して有効なトリガーであり、《オールデリート》プランが通用しない《禁断 〜封印されしX〜》を採用したデッキ相手に勝ち筋となります。
「忍邪乱武」リリース以降はこれまで《サイバー・ブレイン》が採用されていた枠を《♪なぜ離れ どこへ行くのか 君は今》に差し替えた構築が増加中。
トリガーが付いていなくて《マーシャル・クイーン》をリソース札として運用しづらい、シンプルにドロー枚数が少ないなどデメリットは小さくありませんが、それを押してでも自分より速いコンボデッキである【サガループ】相手にチャンスを作れる方が優先された結果だと言えるでしょう。
環境のまとめと今後の展望
今まで
【サガループ】を圧倒的な頂点としつつも、他の上位デッキも負けず劣らずのパワーと独自性を持っているため、「傾向」をつかむのが非常に難しいアドバンスのメタゲーム。
安定して活躍を見せるデッキは【サガループ】と【モルトSAGA】ぐらいという混沌とした環境ながら、そもそもの大会開催数も相まって上位層の顔ぶれはかなり固定化されてきています。
【サガループ】対策に注力したデッキは【モルトSAGA】や【黒赤バイク】に足切りを食らってしまう構図は従来通り。
この上位3デッキと安定して戦うには「【モルトSAGA】や【黒赤バイク】の高速ビートダウンに対抗できる強力なメタorカウンター性能があり」「その他のデッキに対してもパワー負けしない必殺ムーブを持ち」「その上で【サガループ】メタをデッキに組み込める」デッキでなければなりません。
今回Tier3までに紹介したデッキは、得意不得意はあるもののそれぞれにこれら3つの要素を最低限満たしており、「たまに見るけれども安定しては勝っていない」デッキはおおむねこれら3つの要求のうちのどれかが少し不足しています。
現在のアドバンス環境は、これまでの歴史の中でも「環境デッキ」に求められる水準が一際高い環境だと言えそうです。
これから
環境の大枠自体はあまり変わらなさそうですが、《♪なぜ離れ どこへ行くのか 君は今》のリリースはやはり注目のトピックです。
このカードによって【サガループ】メタ事情は大幅に変貌……はしたのですが、やはり【モルトNEXT】や【黒赤バイク】、【オービーメイカー】が3〜4ターンで爆発的な打点を形成してくるアドバンスでは、単なる3マナ2ドローは悠長さが否めません。
《♪なぜ離れ どこへ行くのか 君は今》を使うならば、【青白ギャラクシールド】や【青白ライオネル.Star】のようなしっかりとした防御力がウリのデッキか、【ラッカ「正義星帝」】や【ネバーループ】のようなどれだけ盤面で劣勢に立たされようがトリガー1発踏ませれば勝利に直結するデッキでの採用がベターでしょう。
すでに活躍が見られる【星龍マーシャル】も分類としては後者ですね。
ここまで挙げたデッキを見れば分かるとおり、特に水/光のカラーリングのデッキへの適性が高いカードです。
対【サガループ】に関してはこれまでのメタカードの中と比べても最高峰のカードなので、これらの青白デッキの活躍には注目したいところです。
おわりに
というわけで、6月のアドバンス環境について解説いたしました。
使ってみたいデッキは見つかりましたでしょうか?
この記事が皆さんのアドバンス環境に対する理解への一助となれば幸いです。
それでは次回、7月のオリジナル環境解説記事でまたお会いしましょう!