はじめに
【サガループ】はデュエマの殿堂に名を連ね、舞台は新天地へ。
約半年の間競技デュエル・マスターズの在り方を定義してきた【サガループ】が環境を去り、大多数のデッキが様々な制約から解き放たれました。
現在のメタゲームは誰もが手探りで次なる王者を求める、まさに大開拓時代。
未だ前後の定かならぬオリジナル環境の「今」について、今月も徹底的に解説していきたいと思います!
2023年7月の環境はこちら!
目次
「最強」の定義
本記事では最強デッキを「デュエル・マスターズ競技環境での相対的な強さ」と定義します。
Tier1とは「環境内に不利なデッキが少ない、あるいは相性差を覆しやすいデッキであり、大会で持ち込みが一番多いと予想される対策必須のデッキ」です。
Tier2とは「Tier1やTier2のデッキにある程度勝てる見込みがあり、大会でも毎回一定数いると予想されるデッキ」です。
Tier3とは「弱点が多い、デッキパワーが低いなどの理由で使用者は少ないものの、特定のメタゲームでは活躍することができるデッキ」です。
先月からのカードプールの変化
「ビクトリーBEST」
とんでもない強力カード盛りだくさんで、環境に与えた影響も甚大な「ビクトリーBEST」。
全てを紹介しているとキリがないため、特に環境への影響が大きかった2つのポイントに絞って紹介します。
・サムライ
ビクトリーBESTの新規カード・再録だけでひとつのデッキタイプとして環境に定着するほどの躍進を果たした【サムライ】。
《ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」》と《ヴァルキリアス・武者・ムサシ「弐天」》の二枚看板は、それぞれ違った形で除去・リソース・展開を1枚でこなします。
それらを支えつつ、デッキ全体の出力向上に大きく貢献しているのが《竜牙 リュウジン・ドスファング》のサムライ・メクレイド5です。
最速でブン回った時の破壊力は凄まじく、4〜5ターンでロック持ち革命チェンジクリーチャーを絡めながら相手のシールドを叩き割っていく様は圧巻。
メタクリーチャーや小型でちまちまゲームを作るデッキはこのデッキの除去性能を前に為すすべもなく、環境の形に大きな影響を与えています。
・《飛翔龍 5000VT》
パワー5000以下の相手クリーチャーを押し返し、次のターンの登場をロックする《暴走龍 5000GT》の新たな姿。
墓地のクリーチャーの代わりに「お互いの」バトルゾーンのクリーチャー数を参照してコストが軽減されます。一度触ってみればわかりますが、4〜5マナでの登場は当たり前ですし、専用に組んだデッキでは驚くほど簡単に1〜2マナまで軽減できます。
本体スペックもジャストダイバー持ちのT・ブレイカーと非常に優秀で、適当に水文明の入ったデッキに差すだけで《飛翔龍 5000VT》によるビートプランが増えます。
どちらかといえば多くのデッキがメタクリーチャーの採用を余儀なくされた【サガループ】環境の方がインパクトの大きなカードでしたが、存在するだけで環境を定義するカードであることは間違いないでしょう。
そのほかにも、《邪幽 ジャガイスト》はアビスデッキのバリエーションを広げ、《灼熱の演奏 テスタ・ロッサ》の登場で【テスタ・ロッサ】デッキが強化。バリエーションのひとつである【テスタDOOM】は環境の一角に名を連ねるほどに洗練されました。
殿堂施行
《絶望神サガ》、《蝕王の晩餐》、《神の試練》殿堂。
《勝利宣言 鬼丸「覇」》殿堂解除。
新規殿堂入りの方はデッキとしての存続に影響を受けたのはほとんど【サガループ】のみ。
《神の試練》は【青魔導具】の構築バリエーションや《神の試練》2枚と《お清めシャラップ》で無限EXターンを取るコントロールデッキが制限されたものの、デッキがなくなるほどの影響はありませんでした。
《勝利宣言 鬼丸「覇」》の解禁はそのネームバリューも相まってかなりのインパクトでした。
「ビクトリーBEST」で強化された【刃鬼】での活躍はもちろん、オリジナルの【赤緑NEXT.Star】やアドバンスの【モルトNEXT】などの連ドラ系デッキを中心に、主に踏み倒しデッキのフィニッシャーとして環境に彩を添えています。
メタカードのインフレーションなどもあって環境トップクラス!とはやはりいかないものの、競技シーンでの活躍も見られるカードだと言って良いでしょう。
Tier1
【5cザーディクリカ】Tier1
【サガループ】去りし新環境で真っ先に頭角を表した【5cザーディクリカ】。
そもそも前環境から一定の母数が存在したデッキですが、これまで【サガループ】対策として《とこしえの超人》を強引に採用していた枠が開放され、様々なカードが追加採用できるようになりました。
その最たるものが、直近ではほぼ採用する余裕のなかった《フェアリー・ミラクル》の復帰です。
単純にブースト量が多いためより素早く7〜8マナ域に到達して強力な動きに繋げられるほか、3→5のマナカーブで動く際に3ターン目に2ブーストできれば単色を要求されなくなります。
総じてデッキパワーの高さを存分に活用できる選択肢です。
メタゲーム次第では《フェアリー・ミラクル》を減量し、早期に墓地へクリーチャーを落とせる《配球の超人/記録的剛球》や《黒豆だんしゃく/白米男しゃく》、《音素記号Bm エネルジコ/♪水面から 天掴まんと するチャージャー》といったツインパクトを優先的に採用し、ビートダウン相手に蘇生トリガーを有効化させる構築もアリ。
また、これまでは厳選せざるをえなかった1枚積みの強力なカードの種類を増やしたり、それぞれのカードの2枚目を採用したりといったアプローチもデッキスロットが空いたことで取りやすくなりました。
大まかには、
・《飛翔龍 5000VT》や《CRYMAX ジャオウガ》、《超球の超人/父なるタッチダウン》などのコスト8蘇生の出力先となるクリーチャー
・《魔天降臨》や《機術士ディール/「本日のラッキーナンバー!」》などのフィニッシュ補助呪文
・《大地門 ライフ・ゲート》や《ドラゴンズ・サイン》、《灰燼と天門の儀式》などの踏み倒しトリガー呪文
あたりが追加枠として優先的に採用されるカードになります。
一定以上の受け性能と高いカードパワーの押し付け、最速4ターン目の《ロスト・Re:ソウル》という「必殺技」も持ち合わせつつも、細部を調整することでメタゲームに合わせて意識するゲームレンジを自在に変更できるのが【5cザーディクリカ】の強み。
殿堂直後の雑多な環境は、まさにこのデッキの望むところでしょう。
この手のコントロールチックなデッキの常として「これを決めれば即ゲームエンド!」となるような強烈な勝ち筋には乏しくアンフェアデッキには弱いものの、逆に特殊なコンボギミック以外では「これをされれば負ける」ような目立った弱点がなく、真っ当にゲームを進めてくれる相手には非常に強力。
今後も当面の間は環境で活躍するデッキとなるでしょう。
【アポロヌス】Tier1
圧倒的速度と高い再現性で【サガループ】環境を駆け抜けた【アポロヌス】。
殿堂入りによる弱体化もほぼ確実と目されていたデッキでしたが今回はノーダメージでくぐり抜け、引き続き環境の有力候補として活躍中です。
そもそも固定スロットが多いデッキということもあり、殿堂前後の変化に伴う構築の変化も非常に軽微。墓地リセットが主な仕事だった《パーリ騎士の心絵》が《ジャスミンの地版》に入れ替わったぐらいです。
単体で強いカードに何気なく付与されがちなG・ストライクや汎用性の高い小型除去トリガーがますます増えていく中で、単なる単体ストップでは止まらない【アポロヌス】の独自性は大きな武器。
ビートダウンデッキとして同じく強力な【赤単我我我ブランド】がカードプールの変化をダイレクトに受ける一方で、【アポロヌス】を止められるカードは増加しているといえどやはり限られます。
また、《カチコミ入道 <バトライ.鬼>》のバトル除去や《轟く侵略 レッドゾーン》の登場時火力除去をうまく駆使することで多くのメタクリーチャーを乗り越えられるのもこの手のコンボデッキとしては破格でしょう。
先置きで安定するメタ手段はほぼ存在しないため、一部の手札誘発式の受け札が使えないデッキは、シールド・トリガーに天運を任せざるをえません。
とはいえ【サガループ】の存在が防御的なカード採択の幅を狭めていた前環境と違い、今環境は【アポロヌス】対策にも手を回す余裕が出てきました。
踏み倒しトリガーや手札誘発式の《百鬼の邪王門》や《一王二命三眼槍》は鉄板として、汎用性の高いところでは《流星のガイアッシュ・カイザー》+単体除去トリガーパッケージや《B.F.F. モーメント》。
ややピンポイントなメタとしては《魔王の傲慢》や《暴命天 バラギアラ/ガイアの目覚め》、《マーチングバトン ダイダイ》などが現環境における代表的な【アポロヌス】対策カード。
強力なデッキであることは間違いありませんが、ガードが上がって攻め手が通りづらくなると厳しい戦いを強いられがちなのは認識しておくべきでしょう。
【青魔導具】Tier1
【サガループ】なき時代のコンボデッキ筆頭候補。
このデッキも【サガループ】への対抗手段として採用されていた《DG-パルテノン 〜龍の創り出される地〜》が不要になったことでフリースロットが拡張。
《堕∞魔 ヴォゲンム》を入れて《卍 新世壊 卍》に依存しない動きを作ったり、《堕呪 カージグリ》と《堕呪 ボックドゥ》を両立させて弱点とされるビート耐性を高めたりと、構築に自由度が生まれています。
とはいえ環境的に向かい風となっている点もないわけではなく、最も影響が大きい点として「エレメント除去」の増加が挙げられます。
カード除去が本格的に活躍しはじめた際にも苦しめられた【青魔導具】ですが、エレメント除去は下に埋まった魔導具呪文ごと《卍 新世壊 卍》を除去してしまうためカード除去以上に厄介。
特に《邪招待》は山札下という何のリソースにもならない場所に魔導具呪文と《卍 新世壊 卍》が幽閉されてしまうため、従来の【青魔導具】にとっては天敵ともいえる存在です。
《堕∞魔 ヴォゲンム》はそんなエレメント除去に対するカウンターパートとして非常に有力。純粋に墓地の物量で「無月の門」を達成していけるため、先述したとおり《卍 新世壊 卍》に依存しないゲームメイクが可能になります。
その極致としてサブプランだった《堕∞魔 ヴォゲンム》をメインに据え、《卍 新世壊 卍》+《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》を採用しない【青黒魔導具】も登場しています。
こちらは《卍 新世壊 卍》のドローエンジンと呪文ロック無視や《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》の複数追加ターンを活かした詰め筋がないためアンフェアさはやや薄れるものの、デッキ内の魔導具純度が高いために《「無月」の頂 $ スザーク $》の複数体早期着地を狙いやすくなりコントロールデッキとしての強さが増した構築です。
今なお新特殊パックがリリースされるたびに毎回1つずつ強化パーツが追加されている【魔導具】系デッキ。構築の幅も広がり、いよいよもって不動の地位を築かんとしています。
Tier2
【アビス】Tier2
ここ1週間ほどで急激にポジションを向上させてきている【アビス】。
【サガループ】環境以前に活躍していた《ウォズレックの審問》型の構築が現在の主流で、サンプル構築最下段の8枚を除いた32枚ほどはほぼテンプレート化されています。
いくつか強力な点はありますが、何よりも《ウォズレックの審問》が初動として強力であることはこのデッキの特筆すべき点でしょう。
ダンタル型の【サガループ】での活躍によって、先手番では自分の動きを通すための前方確認として、後手番では相手の初動を挫きつつリソースを先細りさせる妨害札としての強さが再確認された《ウォズレックの審問》。
【サガループ】という形こそ失われたもののこのカード自体は依然として強力。【アビス】というメタがある程度有効なデッキだからこそ先んじて手札を確認できる能力は有効です。
また、トリガーに依存せずビートダウン対策を講じられる点も、受けに特化した構成を取りづらいアビスにとっては非常に強力です。
そのほかの環境要因としては、単純に【サガループ】の退場で厄介なメタとして活躍を見せていた《とこしえの超人》や《若き大長老 アプル》、《U・S・A・BRELLA》といったメタクリーチャーが軒並み大幅減。
この手のカードを駆使する筆頭候補だった【アナカラージャオウガ】系のデッキがポジションを落としたこともあり、非常にガードが手薄になっているタイミングです。
《アビスベル=ジャシン帝》×《邪龍 ジャブラッド》のフィニッシュ力によるビートプラン、《ウォズレックの審問》と《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》によるハンデスコントロールプランの切り替えで幅広いゲームレンジへの対応力を武器とする【アビス】。
今、最も注目すべきデッキのひとつです。
【サムライ】Tier2
「ビクトリーBEST」リリースの1週後に鮮烈なデビューを果たし、環境の一角としての地位を築き上げた【サムライ】。
《ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」》の侍流ジェネレートを起点に《竜牙 リュウジン・ドスファング》のサムライ・メクレイドで山札を掘り進めながら展開を継続。
2枚目以降の《竜牙 リュウジン・ドスファング》やスピードアタッカー付与手段なども活用しながらメクレイドで《ヴァルキリアス・武者・ムサシ「弐天」》へとアクセスし、除去とドローで一気にリソースを抱え込んで《音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ》や《時の法皇 ミラダンテⅫ》などのロック手段も絡めつつフィニッシュを狙うのがもっとも基本的なパターンです。
《ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」》の火力と《ヴァルキリアス・武者・ムサシ「弐天」》のコスト依存エレメント除去で盤面を荒らす性能が非常に高く、特定のエンジンやキーカードを盤面に維持しなければならない相手にめっぽう強いのが最大の特徴。
メクレイドを起点とする展開はそもそもメタカードの阻害を受けづらいですが、ごく限られたメタに関しても豊富な除去で叩き割ってしまえばほとんど問題なし。
最速3ターン、基本的には4ターンで動き出せるデッキでありながらロックを絡めて受けを無視したフィニッシュギミックを用意できるのもなかなかにレアケースで、独自の強みを多数持ったミッドレンジデッキです。
一方で、弱点は大きく2つ。
ひとつは速度を軽減カードに依存していること。
《チャラ・ルピア》や《竜装 ゴウソク・タキオンアーマー》といった軽減カードから3〜4ターン目に主力カードへとアクセスすることが大前提にあるため、2ターン目の返しにこれらのカードを除去されると一気に動きがガタつきます。
もうひとつは、出力の大部分を《竜牙 リュウジン・ドスファング》のメクレイドに強く依存していること。
そもそも《竜牙 リュウジン・ドスファング》にアクセスできていないゲームはそれだけで厳しいほどに展開力をこのカードのサムライ・メクレイドに頼り切っています。
ではここさえ引けていればいいのかというと、例えばこのカードと《チャラ・ルピア》だけ引いていても展開に移れるのは5ターン目。
組み合わせ次第にはなるものの、侍流ジェネレートを持つ《ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」》も合わせて引いておかなければ万全とは言えません。
序盤の安定性にやや難があり、デッキとしての出力にムラが否めないものの、高速の攻めからじっくり貯めてロックを絡めたワンショットまでこなせるため、総合的なデッキとしての強さは高水準なデッキタイプです。
オーソドックスなサムライ単型、受けのバリエーションと同時に《ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」》の自己ブレイクすらも有効活用せんとする《ドラゴンズ・サイン》採用型などもありますが、今回のサンプル構築では最近多く見られるアーマード型をピックアップ。
《アシスター・コッピ》と《チャラ・ルピア》からの展開バリエーションに《「暴竜爵は不滅なり!」》と《ボルシャック・アークゼオス》のアーマード・メクレイド5を加え、序盤展開の再現性向上を図った構築です。
これらのカードがあれば3〜4ターン目にメクレイドを使って《ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」》や《竜牙 リュウジン・ドスファング》へとアクセスしやすくなるため、動き出しの安定感がUP。
特に《「暴竜爵は不滅なり!」》は単独で4ターン目にプレイできるため、2ターン目のコスト軽減札を除去されると5ターン目まで動けないこともザラにある【サムライ】の事故率軽減に大いに役立ちます。
【赤単我我我ブランド】Tier2
今なお速攻デッキのNo.2として人気の高い【赤単我我我ブランド】ですが、周囲を取り巻く環境には引き続き恵まれない印象。
汎用性の高いG・ストライクや強力なS・トリガー・プラスの追加は【赤単我我我ブランド】にとってはダイレクトな向かい風。
もちろん【アポロヌス】が活躍すればするだけ環境の受け志向は高まり、【赤単我我我ブランド】も大きくとばっちりを受けざるをえません。
出力自体は十分に高く、デッキとしての強さが衰えたわけではないものの、カードプールの追加による強化点もまた特になし。
新たな武器を手に入れられていないことも含め、やはり現時点では【赤単我我我ブランド】ならではの大量打点による波状攻撃よりも、【アポロヌス】の一点突破力の方が環境柄強力なのは間違いないでしょう。
Tier3
【アナカラージャオウガ】Tier3
メタクリデッキの宿命か、1トップ不在の環境で以前ほどの活躍が見られなくなった【アナカラージャオウガ】。
メタクリーチャーによる妨害と小型クリーチャーを活用したマナ加速の2本を戦術の柱としつつ、小型展開に非常に長けた《キユリのASMラジオ》で同時にバックアップ。
小粒なクリーチャーが2〜3体並んだら《母なる星域》なども駆使して《CRYMAX ジャオウガ》を着地させ、一気に過剰打点を形成してフィニッシュを目指すメタビートです。
超CS大阪以降は《天体妖精エスメル/「お茶はいかがですか?」》を採用し、マナゾーンのカード枚数を増やして《幻緑の双月/母なる星域》プランを厚く見た構成も《極楽鳥》と同じくらい人気に。
除去されてもマナを残せるため小型除去に強いこと、シールド追加が可能なS・トリガーということで【アポロヌス】のワンショットに約43%でワンチャンスを作れることは《極楽鳥》にない明確なメリットでしょう。
2マナ域のメタクリーチャーの採択は選択肢が豊富で一概に言えない部分がありますが、【サガループ】以前と比べれば《とこしえの超人》の採用は必須級ではなくなっています。
もちろん「コスト1ゆえのくっつきの良さ」「対策しづらい山札からの踏み倒しに対する明確なメタ」という独自の強みはあるためこれまで通りに採用してもよいですが、相手に逆利用されづらく、墓地からの呪文キャストを封殺できる《若き大長老 アプル》の方が強い場面も少なからずあるでしょう。
パワーラインも昨今の4000をボーダーとした小型除去事情の前ではさほど大きな差になりません。
《キャディ・ビートル》は必須とまでは言わないものの、最大の友にして最大の天敵である《飛翔龍 5000VT》や見る機会の増えた【赤単我我我ブランド】のフィニッシャーに対して有効で、汎用性も申し分ないため採用優先度は高めに見積もっています。
【サムライ】を筆頭に小型除去の多い環境でコンセプトが遂行しづらかった【アナカラージャオウガ】ですが、【アビス】や【5cコントロール】の台頭で早期の小型除去を採用するようなデッキの立ち位置が相対的にやや低くなっているのは朗報と言えるでしょう。
【キリコグラスパー】Tier3
コンボデッキとしては【青魔導具】に次いで二番手、コンボ突入即勝利のパターンを持つデッキとしては新殿堂後環境でももっとも人気の【キリコグラスパー】。
マナを7枚揃えてから《蒼狼の王妃 イザナミテラス》を着地させ、《グレート・グラスパー》や《エンペラー・キリコ》からコンボ始動。
最終的に《蒼狼の王妃 イザナミテラス》を任意回出し入れして登場時能力で山札を全てマナか手札に変換してから、《水上第九院 シャコガイル》を着地させて特殊勝利を目指すループコンボデッキです。
様々な構築が模索されていますが、現状では闇文明のスロットをガッツリ防御トリガーに寄せて「受けられるコンボデッキ」としての立ち位置を主張した構築が多く見られます。
特に採用率が高い《魔王の傲慢》は対【アポロヌス】最終兵器。コストの軽さから手撃ちこそできるものの、単体ではやや扱いづらいこのカードですが、コンボの固定枠がさほど多くない【キリコグラスパー】では採用しやすい1枚です。
マナさえ整えれば《蒼狼の王妃 イザナミテラス》1枚からコンボに突入できること、アナカラーの優秀な基盤カードをふんだんに使えること、サブプランとして《CRYMAX ジャオウガ》や《飛翔龍 5000VT》によるビートプランを取り入れやすいことなど様々な強みを持つ【キリコグラスパー】ですが、唯一速度だけは抗いがたい弱点として挙げられます。
2ターン目2マナブースト→3ターン目4マナからデドダム+2マナブーストor2マナブースト×2と動けば4ターン目に仕掛けられなくもないですが、要求値を考えれば基本的には5ターン目以降のコンボ突入が大前提。
防御手段自体は手厚いもののマナの要求枚数は変わらないため高速ビートダウン相手に「受けて返しに勝つ」のは難しく、せっかくトリガーで相手の突撃を止められたのに結局押し切られてしまう、といった展開も珍しくはありません。
【テスタDOOM】Tier3
殿堂後環境に突如として名乗りを挙げた超新星。
軽量《テスタ・ロッサ》を自壊させて《灼熱連鎖 テスタ・ロッサ》の灼熱ドロン・ゴーで大量墓地肥やし。
生まれた大量の墓地から大幅にコスト軽減された《超神星DOOM・ドラゲリオン》を召喚し、《禁断竜王 Vol-Val-8》や《邪帝縫合王 ザ=キラー・キーナリー》を踏み倒して相手を詰ませる、コンボ要素を含んだ墓地ソース系ビートダウンデッキです。
このデッキの強みは《灼熱連鎖 テスタ・ロッサ》の灼熱ドロン・ゴーをほぼ完全に墓地肥やしの手段としてみなし、出てくる《テスタ・ロッサ》たちについては「手札を整えられればラッキー」と割り切っている点。
打点形成をこのカードに依存しないためめくり運に左右されず、メタカードで踏み倒しが制限されていても関係なく自分の動きを仕掛けられます。
小型除去の強い現環境において、雑に置いたルーター=《テスタ・ロッサ》を破壊することに心理的圧力を掛けられるのも、灼熱ドロン・ゴーの持つ独自の強みと言えるでしょう。
一方で、大量のカードを動かせる要素が《灼熱連鎖 テスタ・ロッサ》1枚に集約されているため、このカードが引けていないゲームは非常にシビアになるのが明確な弱点です。
デッキの動き自体には確かな強さがあり、特に《灼熱連鎖 テスタ・ロッサ》が複数枚絡んだ際の破壊力は抜群。
ネタが割れて以降も生き残れるかが新興デッキのひとつのボーダーラインです。果たしていかに。
【黒赤アビス邪王門】Tier3
【黒赤テレスコ】は【テレスコジャガイスト】になり、今や完全なアビスデッキへと進化。
メタクリ環境が終焉を迎えデッキ自体の太さが重視されるようになってきた結果、火文明を最小限の14〜15枚前後まで絞り込んで残りの大部分をアビスで埋めた構築が一般化してきています。
最優先で採用されるのがビートフィニッシュの補助とシステム維持に貢献する《邪龍 ジャブラッド》。受ける際にも味方ブロッカーを破壊から守ることでカウンター性能の向上に繋がります。
サンプル構築ではさらに《アビスベル=ジャシン帝》まで採用し、よりアビスデッキとして戦うことを意識しています。
黒単のアビスは安定性の高さと豊富な除去による盤面処理性能、ピーピングハンデスの豊富さに基づいたゲームプランの構築精度がウリですが、こちらは《百鬼の邪王門》+《一王二命三眼槍》による安定したビート受けと《鬼寄せの術》やメクレイドを活用した早期の強力なマウント、《謀遠 テレスコ=テレス》のリソースゲーム力の高さがセールスポイント。
メタクリーチャーに引っかかりやすかったり、色事故が発生したりと通常のアビスに比べてやや苦しい要素は少なくありませんが、こちらにしかない強みがあるのもまた事実です。
環境のまとめと今後の展望
今まで
【サガループ】去りし後の環境も徐々に落ち着き、ある程度新環境のデッキ評価も固まってきています。
飛び抜けて強い「1」がいなくなったことで群雄割拠の環境へと回帰。現在のところは特定デッキとの相性差が明白に付くようなデッキよりも、多くのデッキと戦える対応力と地力に優れたデッキが活躍しやすい環境にあると言えるでしょう。
その最たる例が【5cザーディクリカ】。飛び抜けて強い要素を持っているわけではないものの、カードパワーの高さと幅広い相手に刺さる《ロスト・Re:ソウル》や《聖魔連結王 ドルファディロム》のフィニッシュ力で高いアベレージを叩き出しています。
また、豊富なピーピングハンデスで対戦相手のゲームレンジに合わせてプランを組み立てられる【アビス】も必然的に評価が高め。
かつての環境では墓地メタに苦しめられていたデッキでしたが、そもそもメタカードが減少傾向にあるのはもちろん、「メタで薄くなった手札を《ウォズレックの審問》で叩いてリソースを細らせ、相手が鈍っている隙に自分の動きを通す」メソッドが【サガループ】期を通して完全に確立されました。
《ウォズレックの審問》型アビス自体は以前からあったものの、さらに広く強さが認識されるようになった印象です。
今後メタカードが流行ったとしても、《ドアノッカ=ノアドッカ/「…開けるか?」》や《邪招待》を追加採用すればさほど苦もなく対処できるのも期待が持てる点でしょう。
反面苦しい立ち位置に立たされているのが、メタクリーチャーを活用するアナカラー基盤のデッキ群や【ラッカ鬼羅.Star】系のデッキ。
メタを絞り込めない環境ではどうしてもカードパワーに乏しいメタカード主体のデッキは立ち位置が悪くなりがちです。
また、メタが薄くなったということはコンボデッキの通りが比較的良くなったことへの裏返しでもあります。
【青魔導具】、【アナカラーグラスパー】、【テスタDOOM】あたりが現環境におけるコンボデッキの代表例。
【青魔導具】はこれまで環境上必須だった《DG-パルテノン 〜龍の創り出される地〜》から解放され、コンボに寄せたり受けに寄せたりとメタゲームへの対応に自由枠を使えるようになっています。
軽量エレメント除去の台頭が懸念されていましたが、環境からメタカードが減ったことでかえって《邪招待》などの軽量除去は減少傾向にあり、結果としてまだまだ《卍 新世壊 卍》は現役で活躍しています。
立ち位置が難しいのがビートダウン。
【サガループ】が消えたことで多くのデッキに余裕ができたため、意識的に防御札を搭載することはそれほど難しくなくなっています。
殿堂直後の初週はかなりの活躍を見せたためか、翌週には全体的にビートダウンを意識したデッキが増加し立ち位置を下げました。
有無を言わさぬ一撃がない分、どうしても対策しやすさが目立つビートダウン。今後もしばらくは浮き沈みの激しい立ち位置に甘んじそうです。
これから
環境傾向の変化からやや扱いづらかったメタカード主体のデッキですが、今後環境が固まるにつれて徐々に立ち位置はよくなっていくと考えられます。
特に【アビス】の台頭は、下がった墓地へのガードを引き戻す大きな要因となるでしょう。【サガループ】がいなくなったとはいえ、《若き大長老 アプル》や《お清めシャラップ》の重要性は依然として無視できるものではありません。
環境勢力の大枠としては、
・メタカードによる妨害が主体のメタビート(=【アナカラージャオウガ】等)
・最速で勝利を目指すオールインビートダウン(=【アポロヌス】・【赤単我我我ブランド】等)
・受けをある程度無視して勝利できるコンボ(=【青魔導具】・【アナカラーグラスパー】・【テスタDOOM】等)
・一定以上の受け性能と除去やハンデスによる干渉要素を取り込んだ、対応力重視のミッドレンジ(=【5cザーディクリカ】・【アビス】等)
の4者に大きく分かれると考えられます。
もちろん【サムライ】などのように大雑把な括りには分類しづらいデッキも多数存在しますし、それぞれにデッキの個性が違うため単純にアーキタイプでの有利不利は計れませんが、基本的にはこれら4つのアーキタイプの間で勢力争いが見られることになりそうです。
とはいえ、新環境はまだまだ始まったばかり。これからもまだ見ぬデッキが登場して勢力図を塗り替えてくれることに期待したいですね。
おわりに
というわけで、8月のオリジナル環境について解説いたしました。
使ってみたいデッキは見つかりましたでしょうか?
この記事が皆さんのオリジナル環境に対する理解への一助となれば幸いです。
それでは次回、8月のアドバンス環境解説記事でまたお会いしましょう!