目次
はじめに
こんにちは、北白河と申します。二回目となる今回は、全てのプレイヤー……特に、デッキビルダーとガチプレイヤーにとっては避けては通れない要素である調整・一人回しのやり方について、目的ごとにいくつか紹介していこうと思います。
「一人回し?実戦で練習したほうがいいんじゃない?」と思われる方もいるかもしれません。確かに、実戦の中でしかわからないこともあります。相手との相互作用は、一人回しとは比べ物にならない情報量と経験値をもたらしてくれます。しかし、デッキそのものの出力を高精度で確認し、正しい動きを見つけるためには対戦相手の存在はむしろノイズになります。
また、一人回しのメリットとしてとにかく手軽で回数が積めるという点があります。納得がいくまで一人回しと調整を続けた後に全てを知り尽くしたデッキで実戦に挑んだ方が、やみくもに対戦するより遥かにたくさんの経験値を得られるのです。あと田舎住みの社会人プレイヤーにとってはまず対戦相手を見つけるのが一番難しいんだよ!こちとら友達も近所のカードショップもねえんだよ!
出典:デュエルマスターズ
その1:初手100本ノック
どんなデッキでも、どんな相手の対戦でも、必ず初手は存在します。そして初手は事故ります。起きてしまった事故はしょうがないとして、「このデッキはどのくらいの確率で初手で事故るのか」「逆にこのデッキはどれくらいの確率でブン回り初手が来るのか」を知っておくことは非常に有益です。事故りやすいと分かっていればデッキ構築を見直すこともできますしね。
というわけで、「このデッキにはどんな初手が来るのか」ということを確認する、最もシンプルでミニマルな一人回しのやり方です。
①:デッキをよくシャッフルし、5枚ずつ8つの束に分けます。
②:5枚の束を確認して、「この5枚が初手だったらどう思うか」を考えます。
③:許容できるハンドなら○、不本意なハンドなら×など、その結果を紙やExcelに記録します。(ブン回りハンドを◎とするなど、デッキの方向性によって記録のパターンを変えても可)
④:あと7つの束にも②と③を行います。
⑤:8つの束の記録を付け終わったら、①に戻ります。
⑥:既定の回数の記録がつくまで、①~⑤を繰り返します。
⑦:記録を見返し、結果をカウントして確率を出します。
※《禁断 〜封印されしX〜》が入っている場合は、ひとつだけ4枚の束ができます。この束は確認せず、5枚の7束の記録だけ付け終わったら①に戻ってください。
以上です。体感ではだいたい100回(①~⑤を12~13周)くらいやると、そこそこの精度の結果が得られますね。結果の回数がそのままパーセンテージになりますし。慣れれば一周二分足らずくらいでできるようになります。うち半分くらいがシャッフルですね。
どこまで事故を許容するかは個人差がありますが、不本意な初手が来るパターンが2割を超えるとそのデッキは体感としてかなりヤバいです。この場合、「なぜその初手なら許容できるのか」「なぜその初手なら不本意なのか」を考えることでデッキの初動を邪魔しているカードを見抜くことができます。これとは逆に逆にブン回りハンドに含まれる要因を考えていけば、入れるべきカードもわかるかもしれません。
多くのプレイヤーが使用することですでに洗練された既存アーキタイプのリストならば、この作業はおおむね不要です。ただ、大幅な調整を行った直後や完全な新デッキを作った時にはこの作業で試運転を行っておくと以降の調整の指針が見えやすいです。
また、この作業の際に最も重要なのは「基準をぶれさせないこと」です。可能な限り客観的なデータを出そうとするこの作業においてプレイヤーの主観が混ざると正確なデータが出なくなります。「2ターン目に動けなさそうなら事故」「特定の文明が引けなければ事故」など、わかりやすい自己基準を決めておくといいでしょう。
応用として、同じ方法で「シールドカードのシミュレーション」ができます。単純なトリガー枚数とその確率についてはちょっと計算すれば出てきますが、実際に回すことで採用しているトリガーの効果にばらつきがある場合のシミュレーションが行えます。
出典:デュエルマスターズ
その2:3ターンシャトルラン
その1では初手をひたすら回して事故率を確かめていましたが、今度は初動を確かめます。ここでは概ね3ターン目までの動きをひたすら繰り返すことで、本番での思考をスムーズにします。
①:デッキをよくシャッフルし、8枚ずつ5つの束に分けます。
②:一つの山の上からカードを5枚引き、それを手札にします。
③:残った3枚を山札として、3~4ターン目までプレイします。ライブラリアウトはないものとします。
④:思った動きができれば○、できなければ×など、 その結果を紙やExcelに記録します。
⑤:残った四つの束でも②~④を行います。
⑥:5つの束の記録を付け終わったら、①に戻ります。
⑦:既定の回数の記録が①~⑥を繰り返します。
⑧:記録を見返し、結果をカウントして確率を出します。
※《禁断 〜封印されしX〜》が入っている場合は、ひとつだけ7枚の束ができます。この束は確認せず、8枚の4束の記録だけ付け終わったら①に戻ってください。
以上です。基本的にはほとんどその1と同じですね。体感では20回(①~⑥を4周)くらいやるとそこそこの結果が出てくると同時に動きが最適化されてきます。この方法は初動の事故率を考える手助けになりますが、どちらかというと動きの最適化の恩恵のほうが大きいです。デッキの速度によって初動の重要度は異なってきますが、動きを体に叩き込むことで思考のリソースを浪費せずに済むようになります。
デッキにもよりますが、慣れると一回30秒足らずでできるようになります。
4ターン目にキームーブを行うデッキや、軽量ドロー・マナブースト・墓地肥やし等の要素があるデッキの場合、この方法はやや不便です。10枚の束を四つ作るなどしてデッキ枚数・ターン数を調節するか、次の一人回しをしましょう。また、サーチを行う場合はは空のスリーブなどのカードと同じ大きさの代用品を用意しておき、サーチを行ったらそれを手元に加えてサーチ先とするとよいでしょう。
出典:デュエルマスターズ
その3:自分との戦い
多くの人が「一人回し」と聞いて想像するであろうものです。あえて説明する必要もないかもしれませんが、まあ一応。とはいえ、練習・調整になるようにするには少し条件を足してやる必要があります。
① :「ダイレクトアタック」「エキストラウィン」「チェンジザとドンジャングルを並べる」 「何らかのコンボの完走」「起源神を六体神にする」など、勝利条件と目標ターンを決定します。
②:デッキをよくシャッフルし、実戦と同じようにシールドと手札を用意してプレイします。相手のデッキは必要ありませんが、空のスリーブなどを使ってシールド5枚のみ並べます。
③:勝利条件を達成したら、目標ターンまでに達成できていれば○、できなければ×など、 その結果を紙やExcelに記録します。
④:気が済むまで②と③を繰り返します。
⑤:簡単すぎる、あるいは難しすぎる場合は勝利条件と目標ターンを修整します。
以上です。目標なく漫然と一人回しをしていると一瞬でただただ無為に時間が消えてしまうため、勝利条件と目標ターンを用意してきびきび回していきます。勝利条件は「これができたら実戦でもだいたい勝てる」というあたりを、最初の目標ターンは「妨害がなければ最速これくらいで決まるターン+1~2ターン」程度にしておきます。何度も繰り返すことで、最大限の強いムーブを目指すためにはこうするという感覚を掴むことができます。
調整が最終段階に近付いてきてもっと実戦に近づけたいなら、仮想敵を考えて相手が妨害してくる行動ルーチンを作ったり、相手にだけトリガーをあらかじめ仕込んでおくなどして難易度の調整が可能です。 具体的には、「相手は5ターン目に《卍デ・スザーク卍》を出してきて、最もコストの高いクリーチャーを除去してくる」「こちらにクリーチャーが5体以上並んでいれば相手は《メガ・マグマ・ドラゴン》を出してくる」「相手のシールドの最後の一枚は《終末の時計 ザ・クロック》が確定」「相手は2ターン目に《奇石 ミクセル》を出してくる」「相手は最初から《Dの牢閣 メメント守神宮》を出しており、こちらの打点が4以上あればDスイッチを使い、5ターン目以降はダイレクトアタック時に2回まで《怒流牙 サイゾウミスト》をニンジャ・ストライクで召喚してくる」みたいな感じですね。 このときに重要なのは、可能な限り現実にありそうな困難な状況にしておくことです。こちらがされて嫌なことを相手は100%やってくると考え、それを超えて勝つにはどうすればいいかを覚えておけば、実戦でもプランが立てやすくなるでしょう。最後のやつめっちゃ硬くて泣きそうになったりもしますが、実際にやってきますし。これに加えてバイケンまで出てくるし。 勝つたびに相手をちょっとずつ強くしていくと、だいぶムキになれること請け合いです。やりすぎて相手があり得ないデッキを使うことにならないようにだけ注意してください。実戦を想定している、というのが何よりも重要です。
あまりやらないほうがいいこととして、一人で二つのデッキを使って対戦させる作業があります。ターンごとにプレイするデッキを入れ替えているとどうしても一つのデッキに対する集中力が落ちますし、無意識のうちに相手の手札を想定した動きが可能になってしまいます。「このデッキとこのデッキがかち合ったらこういう展開になる」ということを知るための参考として一回か二回行うのは有益ですが、これを練習として行うのは完全な悪手です。素直に友達に対戦相手になってもらいましょう。だからいねえって言ってるだろ!
出典:デュエルマスターズ
おわりに
一人回しは、自分のデッキを客観的に見る手段であると同時に、自分のデッキに込められた「こうやって勝つ!」という意志を確認する手段でもあります。実戦でベストを尽くすために、訓練はいくら積んでも積みすぎるということはありません。
デッキビルダーにとっての一人回しは少し話が違いまして、「自分のデッキ構築理論が正しいかを自分で証明する作業」そのものです。テストの自己採点や論文の発表とかそういったものに近いかもしれません。思い出しただけで頭痛くなってきた。決して楽しいだけの作業ではありません。しかし、これを潜り抜けなければ「自分の作ったデッキは机上の空論の紙束である」という仮定を否定することは永遠にできません。一人回しは、よりよいクソデッキオリジナルデッキを作るためには、絶対に乗り越えなければならない通過儀礼なのです。
というわけで、一人回しのやり方でした。次回はまた何かしらのデッキを作っていこうと思っています。それでは、次の記事でお会いしましょう。