【デュエマで学ぼう】音韻から考える!カード名の秘密

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【デュエマで学ぼう】音韻から考える!カード名の秘密

お久しぶりです!あるいは初めまして!モカと申します。


突然ですが、皆さん好きなカード名ってありますか?

「声に出してみるとリズムが気持ちいい」「性能はイマイチなのに、なぜか印象に残る」などなど、なんとなく好きな名前ってありますよね。

マジック:ザ・ギャザリングの話になってしまいますが、私は《アジャニ》の語感(もちろんキャラとしても!)が好きです。雄々しいライオンのような強い印象と、ちょっぴり可愛らしい猫っぽい印象が共存していて、彼のキャラクターと魅力が後押しされている感じがしませんか?

こうした感覚は気のせいではなく、実は名前の語感って、ものすごく重要な役割を果たしているんです!

今回はそんな、音自体がもつパワーについて、日本語学を専門的に学んだ経験から紹介していきます!

目次

音象徴って?

音にはそれぞれ、音それ自体が表すイメージがあるという説があります。
たとえば、「おおきい」という単語は音からして大きそうな印象、「せまい」は窮屈そうな印象など……。

特に顕著なのがオノマトペ、擬音語や擬態語です。たとえば「ワンワン」といったら犬の鳴き声、「すべすべ」といったら物体の表面がなめらかな様子が想像できますよね。「ワンワン」という表現を知らなかったとしても、これを馬の鳴き声だと捉える人はほとんどいないのではないでしょうか。

このような、音それ自体が表す意味やイメージのことを「音象徴(おんしょうちょう)」と言います。

キャラクターの名前には造語が多く、必然的にオノマトペと同じような性質が含まれる場合も多くなります。ということは、音象徴は名前の印象の分析にも使えると考えられます。

分かりやすい例としては、濁音がない音(ア行、ナ行、マ行、ヤ行、ラ行、ワ行)のグループで構成された名前はより女性的に聞こえるという論があります。慶應義塾大学の川原繁人先生がメイド喫茶のメイドさんたちの名前を分析したところ、これらの音で構成された名前は、ふんわりした萌え系メイドである傾向が出ました。

ふんわり…?

この音象徴の考え方に基づいて、音の持つ力と名付けの秘密を詳しく見てみましょう!

音の印象

まずは具体的なカード名の話に入る前に、音の印象の基本性質を紹介していきますね。

分析の際は、参考に『オノマトペ研究の射程――近づく音と意味』という本をメインに、一部『日本語のオノマトペ-音象徴と構造-』も使用しています。

母音の印象

母音の中でも、「あ」「お」は大きく、「い」「う」は小さいというイメージがあります。「え」はちょうどその真ん中ですね。

「いやいや、そんなことなくない?」と思ったそこのあなた!

では、たとえば「ミル」という名称の物体と、「マル」という名称の物体があるとして、どちらが大きいと思いますか?

一度スクロールする手を止めて、想像してみてください。

どうでしょうか?「マル」の方が大きいと思ったのではないでしょうか?

研究でも、多くの人は「マル」の方が大きいと感じるという結果が出ています。(mil・mal実験

このような印象の違いは、発音の仕組みの違いから生まれるんじゃないかと言われています。実際に発音してみると、「あ」や「お」は口を開きますが、「い」や「う」は口を狭めますよね。

子音の印象

子音それぞれにも、母音と同様に音ごとのイメージがあります。

特に、「手触り」「動き」が示される傾向があります。たとえば、パ行やバ行は爆発や破壊、カ行は硬い、ハ行は弱い、柔らかい……などなど。

濁音の印象

その中でも濁音は、清音に比べて「大きい」「重い」「粗い」「強そう」といった印象があります。

「コロコロ」と転がるボールは片手で持てそうだけど、「ゴロゴロ」と転がるボールはなんだか持ち上げるのが大変そうですよね。

こういった特徴を持つ個々の子音と母音の組み合わせで、それぞれの単語はできているのです。

デュエマのお兄さんにあたるマジック:ザ・ギャザリングでも、こうした音の持つ印象をカードの名付けに活用しているんだとか。(一例)

それなら、デュエマのカードにも音象徴の考えが活かされているのかも?

以下で実際に見ていきましょう!

ではでは、いきますよ~!

例1《ボルシャック・ドラゴン》

まずはデュエマの元祖・主人公ドラゴンである《ボルシャック・ドラゴン》を分析してみましょう。

こちらの名前、ボ・ル・シャ・ッ・ク・ド・ラ・ゴ・ンの9拍のうち、3拍が濁音になっています。濁音は全体として「大きい」「重い」「粗い」「強そう」といった印象があるんでした。

ここで、母音と子音を見やすくするためにローマ字表記してみます。

borusyakku doragon

明確に英単語である「ドラゴン」をローマ字表記すると、ちょっと違和感がありますね……というのはさておき、各音について一つずつ見てみましょう。

『オノマトペ研究の射程』によれば、bは手触りとしては「重く・大きく・粗い、緊張した表面」、動きとしては「爆発・破壊・決定性」があるとされています。
ここに大きい意味を表す母音oが結合することで、巨大で重々しく、緊張感があり、ともすれば爆発しそうな雰囲気になるわけです。

一音目がこうした性質を持つことが、名前全体の印象にも大きく影響していると考えられます。

続くrは動きとして「回転・流動」が挙げられ、「小さい」uと結合しています。爆発後の「溜め」でありつつ、「回転・流動」の性質で前後を滑らかに繋げている――と捉えられるかもしれません。

回転?

その次のs音の性質は「粘着性の欠如・俊敏性」「軽い接触・摩擦」が挙げられています。このsが口蓋化……今回で言えば、小さいヤ行がつく発音「sya」になると「子供っぽさ、雑多なもの、制御の不十分さ」という印象が加わるようです。(『日本語のオノマトペ』)

総合すると、ここでの「シャ」音は「ル」の溜めを一気に解放し、制御不可能なほどの加速をする……といった感じでしょうか。

k音が示すのは「硬い表面」「解放・粉砕・膨張・噴出・放出・表面化・内外移動」です。小さい母音uと繋がることで、「硬くて小さい」と言えそうです。
「ボルシャッ」までの爆発や加速のイメージを一点に収束させ、引き締めたような印象がありますね。

まとめると、「ボルシャック」という音は「爆発→溜め→解放→収束」という、緩急の激しい構成になっていると言えます。

実は「ドラゴン」についても似た分析ができます。

「濁音+o」を子音rの「回転・流動」で受け、そこから再び「濁音+o」、すなわち巨大・爆発を示す音が続いていますよね。

つまり、《 ボルシャック・ドラゴン 》の名前は「爆発→溜め→爆発→収束」を2セット繰り返すリズミカルかつ激しい音の構成になっているんです。

また、途中に促音(「ッ」)が挟まることで、さらにリズム感と力強さが加わっています
《 ボルシャック・ドラゴン 》を声に出そうとした場合、「シャッ」の部分がアクセントになりますよね。これも語感を整える助けとなっています。

こうして調べてみると、やはりパワフルで語感の良い名前だと分かりました。

今なお名前を冠するカードが登場し続けているのも納得ですね。

例2《聖霊王アルカディアス》

では次に、爆発や荒々しさとはイメージを変えて《アルカディアス》はどうでしょうか。めちゃくちゃ長くなってきたので、ちょっとコンパクトに見ていきましょう。

パッと見で分かりやすい点としては、《ボルシャック・ドラゴン》と対照的に濁音が少ないことが挙げられますね。

こちらもローマ字表記してみると、arukadiasuとなりますね。(※「ディ」の音にはローマ字が規定されていませんが、表記するならということでこのように書いています)

唯一の濁音である「ディ」は、本来の日本語に存在しない音です。また、「聖霊王」部分も含めると子音rが2回登場していますね。r音もまた和語の名詞では用例が極端に少なく、特に語頭にはほぼ出現しません。

こうした日本語に存在しない音を用いることは、西洋風の印象・外来語っぽいイメージを持たせることに繋がります。

オノマトペに限った話ではなく、外来語はスタイリッシュな印象を与えます。「議題」でいいのに「アジェンダ」って言う・みたいな例、よくありますよね。

また、《 聖霊王アルカディアス 》の「ディ」は子音がi、つまり小さい子音です。
これによって、濁音の持つ「重い」「粗い」イメージも小さくなり、名前全体が「粗さ/荒さ」の印象を持たない構成となっていると考えられます。

他の構成音についても分析してみましょう。

「アルカ」部分は《 ボルシャック・ドラゴン 》の「ボルシャ」部分と同じく、「大きい母音→ルで溜めつつ流動・回転→再び大きい母音」の構成になっています。この構成が非常に良い語感を生み出すことが分かりますね。(この構成、他のカードでも見られるはずです!)

《ボルシャック・ドラゴン》と大きく異なるのは、頭文字が「ア」であること。荒々しさを持たせず、その上で大きくて強い印象を持たせています。

そこから「ル」を経て続く「カ」音が、子音kの持つ「硬い」印象+母音aの「大きい」を組み合わせることで、《アルカディアス》のもたらす秩序や統制のイメージを強めていると考えられます。

《 聖霊王アルカディアス 》とフルネームで見た場合には、語頭と語尾がどちらもs音になりますね。

s音の持つ「粘着性の欠如」を少し広く解釈すると、清潔感とも繋がってきます。光の天使が持つ神聖さ(そもそも「神聖さ」という語がs音の塊ですね)・高潔さを、語頭と語尾でさらに強めていると解釈することができます。

名前全体に、スタイリッシュなかっこよさと高貴な印象を持たせているとまとめられそうですね。

例3《熱血星龍 ガイギンガ》

それではもう一例、同じ火のドラゴンでありつつ《ボルシャック・ドラゴン》とは異なる語で構成された《ガイギンガ》についても調べてみましょう。

ローマ字表記でgaiginga。すべての子音がg音であり、かつ最初と最後が同じ「ガ」で終わる音の並びが美しさすら感じさせます。

構成の美しさだけではありません。g音の性質は「硬い表面」「外への運動」「重い・大きい・粗い」

これ、封印から解き放たれた強大なドラゴンのイメージとして、あまりに完璧だと思いませんか?

特徴的な「ガ」音は、前述の子音gの性質に母音a、つまり大きさや広がりを示す音を繋げた構成です。

また、「イ」「ギ」と繰り返し使われている母音iは、直線性・緊張性を示す働きがあると言われています。これもまた、大剣の力強く鋭いイメージが表れているのではないでしょうか。

もちろん「銀河」という既存の語のイメージも大きいでしょう。語感の持つイメージに加え、宇宙を駆けるような壮大さを上乗せしていると言えそうです。

というか「銀河」という語が、ガ行音で挟まれていて「強そう」「かっこいい」という印象に満ちていますよね。ちょっと調べてみたら、仮面ライダーとウルトラマンとスーパー戦隊すべてに「ギンガ」がつくヒーローがいるんだとか。パワーワードすぎる。

そう考えると、《ガイギンガ》という名前がとにかく強大なイメージを持っているのも納得です。

おわりに

というわけで、今回はデュエマのカードを日本語学という観点から眺めてみました。

いつもとは毛色の異なる記事だったかと思いますが、皆さんがキャラクターたちの新たな魅力や、日本語の面白さに気づくきっかけとなれば幸いです。

それでは、またどこかで!

参考文献

本記事では、特に川原繁人先生の論に大きく依拠しています。より詳しく知りたいという方は、以下の参考文献もぜひご覧ください。

川原 繁人(2024).『「あ」は「い」より大きい!?』.だいわ文庫

川原繁人 (2013)「メイド文化と音声学」.『メイドカフェ批評』.たかとら(編): pp.112-121.

熊谷 学而, 川原 繁人(2019).「ポケモンの名付けにおける母音と有声阻害音の効果―実験と理論からのアプローチ―」『言語研究』155 巻 pp. 65-99.

篠原和子,宇野良子(2013).『オノマトペ研究の射程―近づく音と意味』.ひつじ書房

浜野祥子(2014).『日本語のオノマトペ―音象徴と構造―』.くろしお出版


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