長年をかけてデュエルマスターズが積み上げてきた『デッキ構築』の歴史は、17年目にしてその転機を迎えようとしている。
【ジョバンニスコール】【天門ループ】【ヒラメキスネーク】【紅蓮ゾルゲ】【不滅オロチ】etc…。
様々なデッキが様々なデッキビルダーの手によって生まれ、そして消えていった。
そうだ。環境を動かすのはいつもプレイヤーだった。
しかし、近年のデュエルマスターズでは強力なデザイナーズデッキ(開発側が意図して組ませるようにデザインしたデッキ)が数多く登場し、環境で活躍している。
(※デザイナーズデッキの例:ジョーカーズ、黒単デスザーク、バラギアラループなど。)
環境に存在するデッキの多くがプレイヤーズデッキ(プレイヤーが考え出したデッキ)だった昔のデュエルマスターズからすると考えにくい状況だ。
(※プレイヤーズデッキの例:チェンジザドンジャングル、黒緑ドルマゲドン、5c蒼龍など。)
また、開発がデザイナーズデッキを推し進めていく一方で、プレイヤーズデッキのカード群はどんどん規制に追いやられていった。
そんなこの時代にデッキビルダー達は何を考え、そして何を作ったのか。
これは近年デザイナーズデッキを推し進めるデュエルマスターズの開発と、それにプレイヤーズデッキで対抗したデッキビルダー達による2年間に渡る戦いの歴史。
目次
ジョーカーズ参上!
全ての始まりは2017年、春。
環境はプレイヤーズデッキ代表とも言える【緑単ループ】、そしてデザイナーズとプレイヤーズのハイブリッドである【モルネクバスター】が二大巨塔となっている正にプレイヤーズデッキ戦国時代であった。
その火中、産声を上げたのが【ジョーカーズ】である。
◉ジョーカーズ[デザイナーズ]
前年度の汎用的なカードデザインとは打って変わり、《ジョリー・ザ・ジョニー》《燃えるデット・ソード》《バイナラドア》など、デッキにジョーカーズを沢山入れていないと機能しないカード群が数多く登場。
以前のデュエルマスターズにも【ワイルドベジーズ】や【レッドゾーン】といった種族単位で強力なデッキは存在したが、ここまで強い制約を持つコンセプトデッキは環境に存在しなかった。
しかし、この強い制約を糧に彼らは非常に高いカードパワーを手に入れたのだ。
このジョーカーズこそ、近年のデュエルマスターズが描くデザイナーズ色の強いカードデザインの先駆けであった。
強力な踏み倒しメタたち
しかしこの春、ジョーカーズが環境で猛威を振るうことは無かった。
この時期のジョーカーズはまだカードプールが狭く、そのデッキパワーは大したことはない。
そうはいっても《洗脳センノー》により『革命チェンジ』や『侵略』を阻害しつつ、一方自分たちは《洗脳センノー》や《異端流し オニカマス》に阻害されずに強力なビートダウンができるという強みは大きいものだった。
そう。この時から開発の描くカードデザインは
『強力な踏み倒しメタで前年度の強いカードを抑える』
そして
『この時期から発売するデザイナーズデッキはこれらの踏み倒しメタに引っかからないように作る』
といった方針を見せるようになる。
これにより踏み倒しメタに引っかからないデザイナーズデッキに対して、プレイヤーズデッキは度々踏み倒しメタに阻害されてしまうといったハンディキャップを背負うようになった。
デッキビルダー達はこの大きなハンディキャップに対し、どのように抗ったのか。
◉緑単ステージュラ[プレイヤーズ]
【緑単ステージュラ】はそのハンディキャップを軽々と乗り越えた。
間違いなくこの春のプレイヤーズデッキを代表するビートダウンである。
召喚である『G・ゼロ』により踏み倒しメタをすり抜けた《武家類武士目 ステージュラ》は、《桜風妖精ステップル》の登場で強化されたスノーフェアリー群と共に環境図を侵攻した。
またこれを機に《百万超邪 クロスファイア》や《無重力 ナイン》といった、ビートダウン向きのG・ゼロクリーチャー達に度々スポットライトが当たっていくこととなる。
◉バッシュギヌス[プレイヤーズ]
いや、何もビートダウンだけではない。
むしろ『踏み倒しメタ』&【緑単ループ】&【モルネク】環境という過酷な環境下を生き抜く中で、多くのビルダーが選択したのはコンボデッキの追求だった。
【ジャスティスループ】【ジャックライヤ】【オプティマスリペア】など、『モルネクバスターの攻撃を流せるコンボデッキ』という立ち位置を持つことで、緑単ループとその有り様に差別化を図ったのだ。
勿論、それは【バッシュギヌス】も例外ではなかった。
《暗黒鎧ダースシスK》の採用により課題であった自壊速度を解決した《凶鬼34号 バッシュ》。残る課題はやはり防御力か。
しかし、手札交換&墓地肥やしを行う《エマージェンシー・タイフーン》《サイバー・チューン》は、《斬隠蒼頭龍バイケン》と組み合わさることで防御札へと昇華。
【モルネクバスター】の攻撃を紙一重で受け流すと次のターンには華麗な即死コンボを披露し、環境への参入を果たした。
〜2017年度・春〜
デザイナーズ:
- 【ダンガンオージョーカーズ】
- 【ジョリージョーカーズ】
ハイブリッド:
- 【モルネクバスター】
- 【赤青レッドゾーン】
- 【赤黒ドルマゲドン】
- 【青白サザンルネッサンス】
プレイヤーズ:
- 【緑単ループ】
- 【緑単ステージュラ】
- 【バッシュギヌス】
- 【ジャスティスループ】
- 【ジャックライヤ】
- 【赤青黒ドギラゴン剣】
- 【青白黒ハンデス】
最速の男
夏。
「新2弾・マジでB・A・Dなラビリンス!!」が発売されると、すぐさま大幅規制がひかれた。
【緑単ループ】という環境最大のプレイヤーズデッキが消えると、軽傷で済んだ【モルネクバスター】が環境を支配するかのように思われたが、《スクランブル・チェンジ》を失った彼らにスピードバトルを仕掛けて来たのは【赤青レッドゾーン】だけではなかった。
◉赤単ビートジョッキー[デザイナーズ]
この年の最速は暑い夏と共に訪れた。
率いるは勿論あの男、
《“罰怒”ブランド》だ。
《異端流し オニカマス》や《洗脳センノー》をかわしながら行う多面展開と即時打点は、防御札に甘えた相手をことごとくなぎ倒した。
デザイナーズデッキに恥じないその圧倒的な速度は、【モルネクバスター】をも乗り越え環境に居座ることとなる。
◉チェイングラスパー[プレイヤーズ]
『ビートダウンvsこれを受けるデッキ』という環境図になりつつあったこの時期に、そのどちらをも喰らおうとする強欲なヤツがいた。
《グレート・グラスパー》。
緑単ループ規制時にクリエイターズレターで公開された『ループはさせたくない』といった声明直後のことだった。
その想いを裏切るかのように、自然陣営が持つデザイナーズの爆発力を利用したプレイヤーズループデッキが環境に躍り出たのだ。
《獅子王の紋章》による再現性の高いカウンター力と《革命目 ギョギョウ》によるロック力を持ったループデッキ。それはもうデッキビルダー側の勝利を感じずにはいられないものだった。
◉赤青ブランド[プレイヤーズ]
赤単ビートジョッキーの台頭により名実共に最速となった《“罰怒”ブランド》は、最速の名だけには飽き足らず最凶の称号までも掴みに行く。
彼がその冠を求めて手を組んだのは『単騎ラフルル』、そして《無重力 ナイン》だった。
《プラチナ・ワルスラS》と《月光電人 オボロカゲロウ》による連続的な手札調整と、そこから一気に射出される《無重力 ナイン》×《“罰怒”ブランド》は、正に凶悪と言う他無い。
《単騎連射 マグナム》と《音精 ラフルル》によって防御札全てを無力化するその高い殺傷力から『ビートダウンを受けるデッキに対して強いビートダウン』という正に最凶の立ち位置を獲得し、この夏の熱い戦いを勝ち抜いていく。
〜2017年度・夏〜
デザイナーズ:
- 【赤単ビートジョッキー】
- 【ダンガンオージョーカーズ】
ハイブリッド:
- 【モルネクバスター】
- 【赤青レッドゾーン】
- 【赤黒ドルマゲドン】
- 【青白サザンルネッサンス】
- 【シノビドルゲ】
プレイヤーズ:
- 【チェイングラスパー】
- 【赤青ブランド】
- 【赤青黒ドギラゴン剣】
- 【青白(青白黒)ミラダンテⅫ】
- 【青黒ハンデス】
---------------------
この夏プレイヤーズ側は【緑単ループ】を失い、更には【ダンガンオージョーカーズ】や【赤単ビートジョッキー】といった強力なデザイナーズデッキに脅かされる事態となる。
しかし優秀なデッキビルダー達の活躍により、プレイヤーズデッキ勢力の優位が揺らぐことはなかった。
そんなビルダー達の探究心は、秋になっても止まることを知らない。
赤ちゃん大暴走
秋。
今まで『モルネクバスターの攻撃を流せるコンボデッキ』こそ主流であったが、『猿飛バイケン』といった高い防御力を持つパッケージの登場により、『モルネクバスターの攻撃を真正面から受け切るコンボデッキ』すら登場し始める。
【青緑デュエランド】や【悠久チェンジ】は、環境最堅であろうその堅牢な防御力でビートダウンの全てを受け切ってみせたのだ。
未だ最多最強の座に腰掛けていた【モルネクバスター】も、度重なるスピードバトルや高い防御力を持つ相手とのマッチアップに疲弊したのか、最多の座を明け渡す日も見られるようになった。
そんな中だ。忘れた頃に奴らがやってきたのは…。
◉コントロールジョーカーズ[ハイブリッド]
《Dの博才 サイバーダイス・ベガス》と《Dの牢閣 メメント守神宮》の両D2フィールドが受けの主流として活躍するこの環境において、生半可なビートダウンは通用しなかった。
「速度」の【赤単ビートジョッキー】と「力」の【モルネクバスター】ですら、苦戦を強いられたこの時期。
ジョーカーズが「技」ですり抜けてくるとは誰が予想したか。
しかし、《アリゾナ・ヘッドショット》でD2フィールドを剥がし、『猿飛バイケン』を《消王ケシカス》で無効化するその様は正に「技」という他無かった。
春に【ダンガンオージョーカーズ】が見せた力強いビートダウンではない。いやそれどころか、もはや彼らは私たちの知るジョーカーズではなかった。
デザイナーズデッキの誇るカードパワーと、プレイヤー側のビルディング力がカッチリハマった瞬間である。
例え対戦相手が初対面でも「ノーン‼︎」と叫ばなければいけないこと以外弱点らしい弱点のないこのデッキは、その後《Dの牢閣 メメント守神宮》や《ファイナル・ストップ》を採用したりしながら、ハイブリッドデッキの代表格としてこの秋を戦い抜いた。
◉白緑メタリカ[プレイヤーズ]
常々プレイヤーズデッキと言うものは
『勝てる環境だから生まれたタイプ』
『バグカードが軸になるタイプ』
の二つに大別される。
例えば前者が【緑単ステージュラ】や【青緑デュエランド】だとすると、後者は【ドギラゴン剣】などが当たる。
じゃあ【白緑メタリカ】は?
もう聞くのも野暮だろう。
メタリカという新たな依り代を得た《ベイ Bジャック》は、己の力を存分に発揮できるデッキ基盤に狂喜乱舞したのだ。
《龍装者 バーナイン》《ジャスト・ラビリンス》と2スロットの大型ドローソースが存在する点は、大量の手札を即座にバトルゾーンへ変換できる《ベイB ジャック》と強く噛み合った。
バトルゾーンへ変換できるということは、彼にとってはマナゾーンにも変換できたということだ。《攻守の天秤》が過去最悪の《ボルバルザーク・エクス》として我々の脳裏に刻まれるのにそんな時間はかからなかった。
瞬く間に圧倒的な母数と入賞数を確立し、環境を支配。
冬の大型規制までデュエルマスターズは時折『ジャックマスターズ』と称されるような事態となる。
〜2017年度・秋〜
デザイナーズ:
- 【赤単ビートジョッキー】
- 【ダンガンオージョーカーズ】
ハイブリッド:
- 【コントロールジョーカーズ】
- 【モルネクバスター】
- 【赤青レッドゾーン】
- 【青白サザンルネッサンス】
プレイヤーズ:
- 【白緑メタリカ】
- 【赤青ブランド】
- 【チェイングラスパー】
- 【赤青黒ドギラゴン剣】
- 【5cドギラゴン剣】
- 【青白(青白黒)ミラダンテⅫ】
赤きネズミ
この年のデュエルマスターズは5弾構成。年を跨いで
『誕ジョー!マスタードラゴン!!〜正義の裁キ〜』
『誕ジョー!マスタードルスザク!!〜無月の魔凰〜』
と2つのエキスパンションが発売された。
ここでは多くのデザイナーズコンセプトが姿を現し、その都度話題を呼んだが、何よりも話題を呼んだのはプレイヤーズ側の劇的なカードの存在。
そう。蒼き団長を語る上では欠かせない赤きネズミの登場であった。
◉赤青ドギラゴン剣[プレイヤーズ]
革命チェンジはチェンジ元によってその出力を左右される。
例えば『5コスト以上の火か自然のドラゴン』をチェンジ元に要求した《蒼き団長 ドギラゴン剣》は、実質的に5コストのクリーチャーでもあるに等しい。
よってこの冬を機に、《蒼き団長 ドギラゴン剣》は3コストになったのだ。
《“龍装”チュリス》は《蒼き団長 ドギラゴン剣》というカードの性質を捻じ曲げるには十分すぎるカードであった。
5マナ域までのジャンプアップを必要としなくなった《蒼き団長 ドギラゴン剣》は、序盤マナブーストしていた時間帯を全て手札交換の機会に当てるようになる。
【赤青ブランド】でその強さが証明されている《月光電人 オボロカゲロウ》×《プラチナ・ワルスラS》の強力な手札交換パッケージは、『チュリスバスターウララー』すらも難なく揃えてみせた。
《プラチナ・ワルスラS》による安定したビートダウンと『3tチュリスバスター』という上ブレパターンの両立は、【赤青ドギラゴン剣】にトーナメントデッキとしての圧倒的な資質をもたらす。
新規参入した《“乱振”舞神 G・W・D》の活躍もあり、【白緑メタリカ】が支配する環境図を一気に塗り替えていった。
◉ゲイルヴェスパー[デザイナーズ]
雪解けの頃になると、遂に【白緑メタリカ】と【モルネクバスター】の活躍に終止符が打たれる。
《ベイB ジャック》の禁止と《超戦龍覇 モルトNEXT》&《爆熱天守 バトライ閣》のコンビ殿堂は、その環境終わりと同時に新時代の幕開けを告げたのだ。
この頃、【白緑メタリカ】という環境最強のエクストラウィンデッキが消えたことで、それ以外のエクストラウィンデッキにスポットが当たっていく。
《天風のゲイル・ヴェスパー》と《ジーク・ナハトファルター》の超獣コンビはその中でも特に環境に適した位置におり、【赤青ドギラゴン剣】が蔓延した環境において《デスマッチ・ビートル》を自然に採用できる強みは大変に輝いた。
幸い天敵である《制御の翼 オリオティス》や《絶対の畏れ 防鎧》との遭遇率が低い環境であり、《殴れて呪文にもなるオリオティス》みたいな破茶滅茶に強いカードが出てこない限りは中々環境から落ちることもないだろうと思われるほどには安定して強いアーキタイプだったのだ。
◉ジャバランガ[デザイナーズ]
時折それが本当にデザイナーズデッキなのか、判断が難しいデッキが姿を現わす事もある。
開発がループデッキに否定的な意を表明した後の【ジャバランガ】こそ正にそれだ。
しかし《凶鬼07号 ジャバランガ》×《阿修羅サソリムカデ》×《堕魔 ドゥポイズ》が匂わせるそれは、あからさまにループデッキへとプレイヤーの意識を誘導していた。
中でも特筆すべきは《戒王の封》の存在である。『8コスト以下の闇のクリーチャーをリアニメイト』といった【ジャバランガ】にとって意味のありすぎるテキストは、コンボ始動ターンを大きく早めながら更には相手ターン中での即死ループさえ可能にすると、これを環境デッキにまで押し上げたのだ。
〜2017年度・冬〜
デザイナーズデッキ:
- 【ダンガンオージョーカーズ】
- 【ゲイルヴェスパー】
- 【ジャバランガ】
ハイブリッド:
- 【赤青レッドゾーン】
- 【青白サザンルネッサンス】
プレイヤーズデッキ:
- 【赤青ドギラゴン剣】
- 【青白黒ミラダンテⅫ】
- 【青黒ハンデス】
ツインパクト爆誕!
遂に新DM期が始まって1年が経った。
各陣営のカードプールも広がり、デザイナーズデッキを構成する基盤も整う。
この1年は強力な踏み倒しメタ群が登場したものの
- 【緑単ステージュラ】
- 【赤青ブランド】
など、これを上手く回避するデッキの確立。
また、
- 【バッシュギヌス】
- 【チェイングラスパー】
- 【白緑メタリカ】
など、踏み倒しメタの影響を受けないコンボデッキの登場によりプレイヤーズデッキの活躍が著しかった。
ひとまずプレイヤーズ側の勝利と言っても良い年になっただろう。
しかしデザイナーズデッキ側のカードプールが整い始めた年度の後半には
- 【ゲイルヴェスパー】
- 【ジャバランガ】
が大きく伸びてきており、プレイヤーズ側も気を抜けばすぐに逆転しかねない。
そんな中、『ツインパクト』という新たなカードタイプに期待が寄せられる新年度に入ると、この年のデュエルマスターズもやっぱり奴らから始まったのだ。
◉ガンバトラージョーカーズ[デザイナーズ]
前年度・秋の環境を生き抜くために《ファイナル・ストップ》さえ採用していたジョーカーズは冬に《ジョジョジョ・マキシマム》を。そしてD2フィールドを剥がすために採用した《アリゾナ・ヘッドショット》は《ジョット・ガン・ジョラゴンJoe》へ。
着実にデッキパワーを高めるジョーカーズがこの春に得たのは《ガンバトラーG7》。ジョーカーズのスピードはこの1枚で劇的な変化を遂げた。
【赤青ドギラゴン剣】がミラーマッチにおいて《異端流し オニカマス》を睨み合わせる中、『デザイナーズデッキならではの高いデッキパワー&踏み倒しメタへの耐性』を用いて念願の環境母数No.1に躍り出た。
この1年。短かったようで長かった。
しかし、ジョーカーズはこの長い時間を賭して、遂に十二分なカードプールとデッキパワーを手に入れたのだ。
《ガンバトラーG7》の圧倒的な速度で【ゲイルヴェスパー】を圧倒し、《ジョジョジョ・マキシマム》で【ジャバランガ】を屠ると、新戦力《シャダンQ》で【赤青ドギラゴン剣】の猛攻すらも受け流してみせた。
信じられない。1年前は相手の盾にただ突っ込むことしか出来なかった、あのジョーカーズだぞ。
今では環境最高峰のアドバンテージ量を誇り、相手の呪文を封じ込め、D2フィールドには耐性があり、「ノーン!」と叫ぶだけで相手のクリーチャーを封殺することができる。
この1年を経て、ジョーカーズこそ他の誰よりも全てが出来るデッキになっていた。正にオールラウンダー。それは彼らが環境トップたる所以であったのだ。
◉青緑黒シャコガイル[プレイヤーズ]
『常々プレイヤーズデッキと言うものは「勝てる環境だから生まれたタイプ」「バグカードが軸になるタイプ」の二つに大別される。』
と上で言ったのを覚えておられるだろうか。
あれは嘘である。
時折、環境に登るプレイヤーズデッキの中には『ビルダーのクレイジーな発想が具現化したもの』が出現することがある。忘れていた。
新生ジョーカーズの《消王ケシカス》《あたりポンの助》《ジョジョジョ・マキシマム》《ジョット・ガン・ジョラゴンJoe》は、環境に存在する防御系のデッキ全てを否定した。
『シノビ』『D2フィールド』『S・トリガー』など、どんなタイプの防御札すらも貫通してみせた。
このデザイナーズデッキならでは馬鹿げた殺傷力を見れば、防御を諦め自身も攻撃に徹するのが普通だ。それが勝利への近道であることは想像に難くない。
世界広しと言えど、この殺傷力を見せられて「相手が全ての防御札を貫通してくるというなら、こちらも全ての防御札を同時に使って相手が対応出来ないほどの絶対防御をしよう」なんて発想をするビルダーが現れるだろうか。
現れた。
【青緑黒シャコガイル】は古今東西ありとあらゆる防御札を使い、防御に次ぐ防御に徹すると、あろうことか【ガンバトラージョーカーズ】のそれを受け切ってみせたのだ。
いやいや、おかしいだろ流石に。これは予想できないよ…。
プレイヤーズデッキの勝利に感激すると同時に、ちょっと開発を不憫に思った春だった。
〜2018年度・春〜
デザイナーズデッキ:
- 【ガンバトラージョーカーズ】
- 【ゲイルヴェスパー】
- 【ジャバランガ】
ハイブリッド:
- 【白単メタリカサザン】
- 【成長ダンテ】
プレイヤーズデッキ:
- 【赤青ドギラゴン剣】
- 【青緑黒シャコガイル】
- 【青白黒ミラダンテⅫ】
卍・獄・殺!
【赤青ドギラゴン剣】は《龍装者 バルチュリス》が登場したことで《“乱振”舞神 G・W・D》と共にジョーカーズの盤面をなぎ払いながら《蒼き団長 ドギラゴン剣》を着地させられるようになる。
一時は【ガンバトラージョーカーズ】に環境トップの座を奪われた【赤青ドギラゴン剣】だったが、これを機に再び環境トップへと返り咲いた。
再度プレイヤーの意識が【赤青ドギラゴン剣】に向けられる中、この夏は多くのデザイナーズデッキがメタゲームへの参入を果たしていく。
◉黒単デスザーク[デザイナーズ]
《卍デ・スザーク卍》には登場当初、【赤青ドギラゴン剣】を咎められることでそのロック性能に注目が集まっていた。
しかし登場当初の【ジョーカーズ】が相手の盾にただ突っ込むことしか出来なかったように、登場当初の【黒単デスザーク】もロックすることしか出来ない決して器用とは言い難いデッキだった。
《爆霊魔 タイガニトロ》の存在はあれど、コンボやコントロールへの勝率は振るわず、苦汁を舐める日々を過ごしていた。
しかし、逆襲のギャラクシー 卍・獄・殺!!の発売は彼の全てを変える。
《卍月 ガ・リュザーク 卍》の登場である。
ロックしか出来なかった【黒単デスザーク】がそうでなくなった瞬間だった。
《追憶人形ラビリピト》を使いこなせるようになったデスザークは《卍月 ガ・リュザーク 卍》と併せて、コントロールキラーとしても名を馳せることとなる。
◉チェンジザダンテ[プレイヤーズ]
プレイヤーズデッキの核となるカードは強いだけでなく、同時に高い汎用性を持っている事が多い。
周りのパーツやデッキコンセプトが変化しても、自身だけは変わらずポテンシャルを発揮できる汎用性の高さは、環境によって姿形を変えていくプレイヤーズデッキにおいて重宝されるからだ。
《龍装艦 チェンジザ》は正にそのプレイヤーズデッキの核となるに充分な素養を持ち合わせていた。
ツインパクトである事による汎用性もさることながら、その上下どちらもが非常に高いカードパワーを発揮。
極め付けには現役でプレイヤーズデッキの核を任されている《時の法皇 ミラダンテⅫ》の存在だ。『青の6コストのドラゴン』といった《龍装艦 チェンジザ》のそれが、この二人を結びつけるのにそう時間はかからなかった。
《黒豆だんしゃく》《奇石 ミクセル》といった各種ツインパクトを使いこなせる【チェンジザダンテ】は、新規カード達の持つ新時代のカードパワーを駆使し、環境デッキへと成り上がったのだ。
まさかその後【赤青ドギラゴン剣】【ジョーカーズ】に並んでこの年の顔となるデッキタイプにまで成長するとは、まだ誰も想像だにしていない頃の話である。
◉ジョラゴンジョーカーズ[デザイナーズ]
《ジョット・ガン・ジョラゴン》は登場当初、我々に大きな印象を植え付けるには至らなかった。
弱くはない。
いや、しっかりと長所も持ち合わせていたのだが、それでも【ガンバトラージョーカーズ】の持つインパクトを超えることはなかった。
そんなことを思う我々の手のひらは《ポクチンちん》の登場後、ねじ切れるかというほど回転することになるのだが…。
そう。ビートダウン力で【ガンバトラージョーカーズ】に劣る【ジョラゴンジョーカーズ】は、《ポクチンちん》導入後に突如ループデッキへと変貌し、ジョーカーズとして新たな道を切り開いてみせた。
相手の盾にただ突っ込むことしか出来なかったあのジョーカーズが、春にはなんでも出来るオールラウンダーに生まれ変わり、そして夏にはループデッキとして環境に君臨したのだ。もはや自分でも何を言っているのかわからなくなる。
【ジョラゴンジョーカーズ】はこの後現在に至るまで「バトルゾーンのクリーチャーをマナコストにできて、いざとなれば6点も作れるループデッキ」なんていう過去に例のない暴力的なアーキタイプとして環境に…
あれ、なんか聞いたことがある気がする。い、いや、気のせいだろう。
◉ブライゼシュート[プレイヤーズ]
前年度登場したスーパー・S・トリガーという新たな防御テキストは、《黒神龍ブライゼナーガ》の手によってそのどれもが攻撃的なテキストへと塗り替えられた。
堅牢な防御力と劇的な爆発力を同時に有していた【ブライゼシュート】は前年度の年の瀬から頭角を現していたが、クロニクルレガシーデッキ2018で収録された《トライガード・チャージャー》によってこの夏その真価を発揮する。
それは『5ターン目前後にゲームエンド級のビッグアクションを放てるビッグマナ』の発現。
過去に消えたビッグマナ達がその死に際に見る幸せな走馬灯で描いたような、そんな夢のようなアーキタイプがそこに誕生したのだ。
◉赤単轟轟轟[デザイナーズ]
《“轟轟轟”ブランド》は従来のゲーム感から逸脱したそのブッ飛んだテキストで、世のプレイヤー達の心を鷲掴みにした。
手札を消費するデッキであればどのようなデッキタイプであっても組み込めるその汎用性は、後に様々なアーキタイプを環境へ導く。
しかしプレイヤーがそこに辿り着くのはもう少しだけ先の話。
まずは私を使ってくださいと言わんばかりのテキストをした《ニクジール・ブッシャー》を使わずして何としよう。
1ターン目からダブルブレイクを仕掛ける《“轟轟轟”ブランド》の姿は、結構色んな破茶滅茶が可能なこのゲームにおいても突出して異様な光景であった。
これこそ現代デュエルマスターズが持つ最高到達点の一つ。
トーナメントレベルの再現性を持った『2ターンキル』の誕生。それはデュエルマスターズが始まってから16年が経ったある夏の出来事だった。
〜2018年度・夏〜
デザイナーズデッキ:
- 【ジョラゴンジョーカーズ】
- 【ガンバトラージョーカーズ】
- 【黒単デスザーク】
- 【赤単轟轟轟】
- 【ゲイルヴェスパー】
- 【ジャバランガ】
ハイブリッド:
- 【白単メタリカサザン】
- 【赤黒ドルマゲドン】
プレイヤーズデッキ:
- 【チェンジザダンテ】
- 【ブライゼシュート】
- 【赤青ドギラゴン剣】
- 【青白黒ミラダンテⅫ】
次元の嵐
2018年度のデュエルマスターズも遂に折り返し地点に差し掛かる。
環境は
- 【赤青ドギラゴン剣】
- 【チェンジザダンテ】
- 【ジョラゴンジョーカーズ】
の三すくみを
- 【黒単デスザーク】
- 【轟轟轟ブランド】
が追う図だ。
そしてこの夏を経て、環境におけるデザイナーズデッキの数が遂にプレイヤーズデッキの数を上回り始める。
春に【ガンバトラージョーカーズ】が頂点を取ったことも考えると、この年はプレイヤーズデッキ側が非常に追い込まれていた。
この秋も同様にデザイナーズ側のデッキパワーが高く、またそのどれもが中々に隙のない構成であるために、世のビルダー達は四苦八苦していた。
しかしそんな中、デッキパワーを無視して戦う本年度初のアンフェアデッキが名乗りをあげる。
◉ゴクガサイクル[プレイヤーズ]
《次元の嵐 スコーラー》の条件は決して軽くはない。トーナメントレベルのデッキが簡単には生まれなかったことがそれを証明している。
それを《龍装艦 ゴクガ・ロイザー》はいともあっさりと満たしてみせた。
立役者は《桜風妖精ステップル》とそこから繋がる《妖精の裏技ラララ・ライフ》。《龍装艦 ゴクガ・ロイザー》と異様なまでの相性の良さを誇るこのパッケージは、本来であれば不可能な状況からのスペルチェインさえも可能にした。
しかし、エクストラターンを得たとて、極端に手札の枚数が伸びる訳ではなく、またバトルゾーンにクリーチャーを並べられる訳でもない【ゴクガサイクル】が、《偽りの名 iFormulaX》や《無限銀河ジ・エンド・オブ・ユニバース》に見初められることはなかった。
本来エクストラウィンにありつけるはずのなかった彼らを勝利に導いたのは他の誰でもない、《水上第九院 シャコガイル》その人である。
前年度の《水上第九院 シャコガイル》と今年度の《次元の嵐 スコーラー》。2人の大型ムートピアに支えられながら【ゴクガサイクル】はこの閉塞化した環境をブチ壊しにトーナメントシーンへと赴いた。
◉赤白轟轟轟[ハイブリッド]
【赤単轟轟轟】から始まった轟轟轟速攻は、純粋な速度だけではトーナメントを勝ち抜くことが出来ないと悟ったデッキビルダー達の手により、光文明のメタカードを搭載した【赤白轟轟轟】へとその姿を変える。
《奇石 ミクセル》と《制御の翼 オリオティス》は【赤青ドギラゴン剣】を抑制。《瞬封の使徒サグラダファミリア》はこれらメタクリを除去から守った。
搦め手を覚えた《“轟轟轟”ブランド》はこの秋更なる強化を得る。
《ナゾの光・リリアング》。
はずれパックと名高いミステリーパック最大のレアカードは、その除去耐性で【赤白轟轟轟】に粘り強さをもたらし、その展開力で更なる速さをもたらした。
【赤青ドギラゴン剣】【チェンジザダンテ】【ジョラゴンジョーカーズ】
の3すくみが、【赤白轟轟轟】を加えた4すくみになったのはもう冬も近い頃のことである。
〜2018年度・秋〜
デザイナーズデッキ:
- 【ジョラゴンジョーカーズ】
- 【黒単デスザーク】
- 【赤単轟轟轟】
- 【ゲイルヴェスパー】
ハイブリッド:
- 【赤白轟轟轟】
- 【赤黒ドルマゲドン】
プレイヤーズデッキ:
- 【ゴクガサイクル】
- 【赤青ドギラゴン剣】
- 【チェンジザダンテ】
- 【ブライゼシュート】
魚影
閉塞化したかのように思えた環境でも、プレイヤーズデッキ達は少しずつその姿を変えていった。
《王立アカデミー・ホウエイル》等でロングゲームに備えたり、《キノコ将軍》でメタクリを除去したりする、様々な【ドギラゴン剣】の出現。
また他方では《“乱振”舞神 G・W・D》や《ダッシュ・リピート》等を採用し、前のめりになる【チェンジザダンテ】なども結果を残し始めた。
閉塞化した環境だからこそ、デッキ内のカードを自由に動かせるプレイヤーズデッキの強みが水面下の戦いにおいて確実に響いていたのだ。
そんな年の瀬も迫る頃、その水面下に魚の群れが押し寄せた。
◉青単ムートピア[デザイナーズ]
最後に青単色デッキが環境に登ったのはいつだろう。
私が記憶している内では進化編期の【青単サイバー】が最後である。
10年近い時を経て遂に環境に戻ってきた青単は、またも総出で盾を殴っていた。なんだ。あの頃から何も変わっちゃいないじゃないか。
…ただ一つ、一度殴り始めたら相手を確殺するほど殺傷性があることだけを除いては。
ムートピア陣営はツインヒーローデッキで《卍 ギ・ルーギリン 卍/卍獄ブレイン》を手に入れると、《ガード・グリップ》《セイレーン・コンチェルト》を合わせた計12枚で《次元の嵐 スコーラー》のスペルカウントを満たしにいった。
彼らの思惑通り、4t目前後にエクストラターンを貰うと《超宮兵 マノミ》《超宮城 コーラリアン》らと共に総攻撃を仕掛ける。
ただでさえ致死量の打点だ。《「本日のラッキーナンバー!」》や《音奏 ラフルル》が絡んだ日には、相手も白旗を揚げる理由には困らなかった。
その後も【青単ムートピア】はアンフェアデッキの中のアンフェアデッキとして環境に残っていく。
勝利に対戦相手は必要無いと言わんばかりに。
◉バラギアラループ[デザイナーズ]
2ブロック環境で活躍していた《天地命動 バラギアラ》主軸のツインパクトコントロールは、通常環境でもそのデッキパワーに目をつけられる。
通常構築においては《Dの牢閣 メメント守神宮》を携えたことでビートダウンへの耐性を得ると、《天地命動 バラギアラ》の高い継戦能力を駆使して環境に存在する数々のコントロールを上からねじ伏せた。
今後更にカードプールを広げていくであろうツインパクト主軸の【バラギアラループ】。その動向にはこれからも注目が集まる。
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年が明けて少し経った頃。デュエルマスターズの歴史に、大きな1ページが刻まれた。
《蒼き団長 ドギラゴン剣》と《時の法皇 ミラダンテⅫ》の殿堂入りだ。
長らくの間、プレイヤーズデッキの核として最前線を走り続けてきた2匹の龍が遂にその役目を終える。
それはデザイナーズデッキが栄えるようになったデュエルマスターズにおいて、プレイヤーズデッキの時代の終わりを示していた。
…と私は勝手に思い込んでいた。
デュエルマスターズが誇る全国のデッキビルダー達は、私が考えるよりもずっとずっと脆弱ではなく、凡才ではなく、甘くはなく、そして何より諦めが悪かった。
この冬、そんな敬意すら覚える素晴らしいビルダー達の反撃の狼煙が、けたたましく空へとあがった。
◉オボロティガウォック[プレイヤーズ]
デュエルマスターズが持つ5cコントロールの歴史は長い。
度々環境にその姿を現わすと、その独特とも言えるデッキパフォーマンスで環境デッキたちを翻弄してきた。
しかし、どの歴史を振り返っても速いデッキに弱いことが致命的であり、トーナメントシーンでの定着を果たしたのは【5cドギラゴン剣】くらいである。
だが、【オボロティガウォック】は何もかもが違った。
5cコントロールが持つ概念を覆すほどの速いデッキへの耐性、フットワークの軽さ、ゲームプランニングの複雑さ。
それらを許容したのは《月光電人 オボロカゲロウ》×《絶海の虎将 ティガウォック》が再現する異様なまでの手札回転力。
これにより数えられないほどのゲームプランを40枚の山札に内包することが出来たのだ。
またこれに加え、副産物として得た圧倒的な初見殺し性能は、このデッキをトーナメントシーンに押し上げるには十分すぎた。
全国大会2019では、なんと全体の使用母数第4位につけるという快挙。
プレイヤーズデッキの快進撃は、まだまだ止まらない。
◉黒緑ドルマゲドン[プレイヤーズ]
【ドルマゲドン】は登場当初から赤黒色の基盤を離れることがなかった。
《爆霊魔 タイガニトロ》《禁断 V キザム》《終断δ ドルハカバ》が持つカードパワーが目に見えて高いものであったからだ。
しかしここに来てビルダー達はこれを切り離す。何故か。
これは「デッキパワーを注視するだけでは【ドルマゲドン】は勝てない環境に差し掛かった」というカードパワーのインフレの裏返しでもあった。
既に登場から2年以上が経過しているのだ。当たり前と言えば当たり前である。
だから姿形を変えるのだ。多くのプレイヤーズデッキたちが過去に何度も行ってきたそれを、《終焉の禁断 ドルマゲドンX》も行うだけだ。
勝つために。生きるために。
自然文明を取り入れた【黒緑ドルマゲドン】は、そのマナの伸び方に合わせて高コストのカード群を採用した。
中でも中心人物になったのが《悪魔龍 ダークマスターズ》。
《爆霊魔 タイガニトロ》や《追憶人形ラビリピト》といった軽量大型ハンデスが闊歩する環境では役者不足かと思われたが、任意ハンデスである点が《龍装艦 チェンジザ》や《ジョット・ガン・ジョラゴン》に強く、その価値が見直されることとなった。
また《獣軍隊 ヤドック》が強い環境になったこともあり、デッキパワーを捨てた【黒緑ドルマゲドン】はメタ要素を上手く活かし、この環境を戦い抜くことに成功したのだ。
◉チェンジザドンジャングル[プレイヤーズ]
プレイヤーズデッキの代表格として【赤青ドギラゴン剣】と双璧を成してきた【チェンジザダンテ】は《時の法皇 ミラダンテⅫ》の殿堂により崩壊したかのように思われた。
しかし、優秀なデッキビルダー達はとあるカードに目を付け、すぐさまこのアーキタイプをリペアすると環境へ送り出した。
…いや、不適切か。
このデッキが【チェンジザダンテ“リペア”】などと呼ばれていたのはほんの一瞬だけだ。世のプレイヤー達はすぐにそれが“リペア”などといった甘い代物で済んでいないことに気付く。
This is【チェンジザドンジャングル】。《ドンジャングルS7》は決して《時の法皇 ミラダンテⅫ》の代わりなどではなかった。
その強さは、
「(もはやこのアーキタイプ、《時の法皇ミラダンテⅫ》規制前より強くなってないか…?いや、流石にそれはないか…。)」
なんて疑念さえ抱くほど。
その後どっかりと環境上位に居座り、全国大会2019でも大きな活躍を魅せた頃に私たちはやっと気付いた。
あ、これ強くなってるわ。
〜2018年度・冬〜
デザイナーズデッキ:
- 【ジョラゴンジョーカーズ】
- 【青単ムートピア】
- 【バラギアラループ】
ハイブリッド:
- 【赤白轟轟轟】
- 【赤青覇道】
- 【赤黒墓地ソース】
プレイヤーズデッキ:
- 【オボロティガウォック】
- 【黒緑ドルマゲドン】
- 【チェンジザドンジャングル】
- 【ゴクガサイクル】
新時代の幕開け
そして時は巡り、現在に至る。
超ガチャレンジゾーンの登場後、【ジョラゴンジョーカーズ】と【赤白GR轟轟轟】の二大デザイナーズデッキが環境を席巻。
今から丁度2年前に繰り広げられていた【緑単ループ】と【モルネクバスター】が織りなすプレイヤーズデッキ環境とは対照的である。
そして迎えたDMGP8th。
現代デュエルマスターズの全てが詰まった素晴らしい大会だった。
いや、もう長たらしい前置きなんて要らないだろう。書いている私も早く振り返りたくてしょうがないのだ。この最高の春を。
さぁ、いくぞ!デュエマ、スタート!
◉絶十サッヴァーク[デザイナーズ]
実に長かった。
環境デッキと称するには今一歩及ばなかった彼らが、やっとの思いでその一歩を踏み出す。
開花まで1年を要した【ジョーカーズ】の比ではない。【白零】の冬は1年と半年もの間続いたのだ。
その身にまとった硬い氷も、この春でやっと溶けることを許された。
積み上げてきたのは何もカードプールだけではない。
勝利、敗北、時間、体力、金銭、経験、蓄積、感動、後悔、想い。
白零こと【絶十サッヴァーク】はその全身全霊を持ってDMGP8thの環境を襲った。
最初にその牙の餌食となったのは環境トップを走る《ジョット・ガン・ジョラゴン》と《“轟轟轟”ブランド》。
そう。【ジョラゴンジョーカーズ】への高い勝率と【赤白GR轟轟轟】に対する耐性は、この春の環境において絶十サッヴァークに大きな優位性をもたらしていたのだ。
また新たに搭載された《音奏 ハイオリーダ》は【絶十サッヴァーク】に簡易的かつ強力な横展開を手渡すと、更にはゲームプランニングの拡張性に衝撃を与える。
『ドラゴン・T・ブレイカー』×《マシンガン・トーク》のアンタップコンボ、マスター・ドラゴン持ちGRクリーチャーによる《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》。
《音奏 ハイオリーダ》はその全てを可能にしたのだ。
DMGP8thにて遂に決勝までコマを進めた【絶十サッヴァーク】が相対するはこの春最高のプレイヤーズデッキ。
図らずともDMGP8thは最高のデザイナーズデッキと最高プレイヤーズデッキが火花を散らす展開となったのである。
◉赤白メタリカミッツァイル[プレイヤーズ]
DMGP8thの決勝戦を見て、文字通り開いた口が塞がらなかったのは私だけではないだろう。
凄すぎる。
デュエルマスターズのデッキビルダー達はこんなにも凄いのか。それはもう思わず笑ってしまいそうになるほどだった。
《蒼き団長 ドギラゴン剣》や《時の法皇 ミラダンテⅫ》が殿堂したくらいでプレイヤーズデッキの時代が止まると一瞬でも思った自分が心の底から恥ずかしい。
【赤白メタリカミッツァイル】のそれは、正にプレイヤーズの知の結晶。
《音奏 プーンギ》や《奇石 ミクセル》などのメタクリが時間を稼ぐ。稼いだ時間で《龍装者 バーナイン》が手札を増やす。そして増やした手札を《BAKUOOON・ミッツァイル》が即座に打点へと変換した。
その美しい流れは、正にカードとカードが手を取り合っているようであった。
また、このコンボを目指さずとも前衛にクリーチャーが並びやすいために、メタクリと《“轟轟轟”ブランド》で押し切ってしまうプランが存在するのも大きな強みとなっている。
更に特筆すべきは《時の法皇 ミラダンテⅫ》の存在。
《龍装者 バーナイン》の過剰なまでのドロー力は、殿堂後の《時の法皇 ミラダンテⅫ》を引き込むことすら可能にした。
そして《BAKUOOON・ミッツァイル》の効果でスピードアタッカーが付与された《煌銀河 サヴァクティス》がそのまま《時の法皇 ミラダンテⅫ》へと革命チェンジするのだ。しかも《ジャミング・チャフ》のオマケ付きである。
ビートダウンが苦手とする強力な防御札の数々を、無理のないスロット数で解決してみせた。
この《BAKUOOON・ミッツァイル》×《時の法皇 ミラダンテⅫ》はDMGP8th決勝でも同様にその牙を剥くと【絶十サッヴァーク】を無力化し、その喉元を見事突き刺したのだった。
〜2019年度・春〜
デザイナーズデッキ:
- 【絶十サッヴァーク】
- 【ジョラゴンジョーカーズ】
- 【赤白GR轟轟轟】
- 【青単ムートピア】
- 【バラギアラループ】
- 【ガンバトラージョーカーズ】
- 【黒単デスザーク】
ハイブリッド:
- 【赤青覇道】
- 【赤黒墓地ソース】
プレイヤーズデッキ:
- 【赤白メタリカミッツァイル】
- 【オボロティガウォック】
- 【黒緑ドルマゲドン】
- 【チェンジザドンジャングル】
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正直なところ、【赤白GR轟轟轟】の強さはプレイヤーとしての私の心を折るには十分だった。
いくら《蒼き団長 ドギラゴン剣》と《時の法皇 ミラダンテⅫ》の殿堂すら乗り越えたデッキビルダー達でも、【赤白GR轟轟轟】のデッキパワーと【ジョラゴンジョーカーズ】の隙の無さを越えていくのは今度こそ無理なのではないかと。
この春のデザイナーズ側の圧倒的な勝利は確定的だと思っていた。
しかし【赤白メタリカミッツァイル】はこれを越えてみせたのだ。
DMGP8thが終わった今も【黒白緑ドルマゲドン】や【赤白ミッツァイル】といったプレイヤーズデッキやハイブリッドデッキが、デザイナーズデッキに染まった環境を押し返していっている。
この2年間、デュエルマスターズが誇るデッキビルダー達は常に私の想像の先を行った。
彼らを圧倒するには《煌メク聖戦 絶十》でも足りない。《ガヨウ神》でも足りない。これほどのデザイナーズのカードパワーをもってしても、未だプレイヤーズデッキは強く生き続けている。
もう彼らを疑うのはやめよう。
おそらくこの先デュエルマスターズがどんな展開になっても、彼らはそれと戦っていけるのだから。
終わりに
デュエルマスターズには様々な対戦相手が存在する。
自分の対面に座る対戦相手。DMPランキングのポイントを競う対戦相手。時には自分自身がある種の対戦相手となることもあるだろう。
そしてそれはデッキビルダーも同様。同じデッキビルダーだけが対戦相手ではない。
開発が強すぎるカードを作れば、何が一番強い形になるか模索する。
開発がデザイナーズデッキを作れば、どこかに抜け道が無いかを探る。
このようにデッキビルダーと開発側は常に熱い激闘を繰り広げているのだ。
そしてデザイナーズデッキを推し進める今のデュエルマスターズ開発との戦いは、これから更に過熱を極めることだろう。
しかし勘違いはしないで欲しい。
これら全ては良き対戦相手であって、決して「敵」ではない。
トーナメントプレイヤー同士が互いに切磋琢磨するように、デッキビルダー同士が互いに高め合うように。
デッキビルダーと開発も互いに刺激し合って、より魅力的なコンセプトを見つけ出すことができるはずだ。
私はこの2年間の戦いを見て、そう思うようになった。
こんなにも美しいデザイナーズデッキを考えられる開発なら。
こんなにも素晴らしいデッキを作り出すデッキビルダー達なら。
もっともっと凄いデュエルマスターズが作れる。もっともっと感動できるトーナメントシーンを作れる。
私はそう確信している。