あの人は今〜黒歴史と呼ばれた時代を生き抜いた英雄たち〜

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あの人は今〜黒歴史と呼ばれた時代を生き抜いた英雄たち〜

 DMというゲームが生まれてから17年。

 17年という年月は、このゲームを大きく変容させ、多くの英雄たちを生み出してきた。

 これは、そんな英雄たちの歴史といまに迫るドキュメンタリーである。

 

目次

 

1 黒歴史と呼ばれた時代の主人公

 

 -DM界、とある惑星

 取材の連絡をした私がやってきたのは、どんぶりの形をした奇妙な惑星。

 慣れない土地に悪戦苦闘しつつも、なんとか待ち合わせ場所にたどり着くと、小さな体で懸命に手を振り、大きな声でこちらに呼び掛ける者がいた。

 「おーい。こっちや、こっち。待ちくたびれたで。」

 かわいらしい外見に似合わぬ、ワイルドな関西弁。

 カッコよさを追求してきたこれまでの主人公の相棒たちとはどこか異なる、まさに無法者を代表するにふさわしい奇天烈な存在。

 そんな彼が、今回取材を行う英雄、カツドン氏である。

切札というよりも、マスコットのような存在としての印象が強い、勝太氏の大親友カツドン氏

出典:デュエル・マスターズ

 カツドン氏は、切札勝太氏の小学生時代最後の相棒としてオラクルとの死闘を戦い抜き、革命ファイナル編でもハムカツ団を組織するなど、影から勝太氏を支え続けてきた勝太氏の大親友である。

 月刊コロコロコミック2013年5月号の付録カードに《頼むぜ!カツドン》として登場した彼は、後に「ドロン・ゴー」の力に目覚め《武闘龍カツドン》と名乗り、自由を手にするため、支配による平和をもくろむオラクル教団との戦いに身を投じていくこととなる。

 そんな神々による支配に抗う無法者たちの戦いを描いたのが、彼の活躍したエピソード3である。

 しかしながら、神々と無法者たちの熱い戦いは、残念ながら環境という表舞台において実現することはかなわなかった。それどころか、今回取材をするカツドン氏でさえ、環境に立つまでに非常に長い時間を要している。

 「まぁ、それでいうたら、《暴走龍5000GT》とか、《終末の時計ザ・クロック》なんかは、ワイらの代表として、よぉ頑張ってくれとるで。」

エピソード3を代表するカードとして「ゴールデン・ベスト」に再録されたアウトレイジのエース《暴走龍5000GT》氏。

出典:デュエル・マスターズ

 エピソード3の本格始動に先立ち発売された「最強戦略パーフェクト12」。その目玉カードとして収録された《暴走龍5000GT》氏は、《百万超邪クロスファイア》氏とともに、これまでの墓地肥やし戦術とは全く異なる新たなデッキタイプ「墓地ソース」を生み出し、登場以来、常に環境で意識されつづけている存在である。

 また、《武闘龍カツドン》氏とともに、エピソード3第1弾「レイジVSゴッド」で登場した《終末の時計ザ・クロック》氏は、登場時ターンの残りを飛ばすという見たこともない能力を引っ提げ登場し、これまで水文明最強ST獣として君臨し続けてきた《アクア・サーファー》氏をその座から引きずり下ろした。

 このように、無法者を名乗るアウトレイジたちは、その名の通り従来のカード効果にとらわれない自由で斬新な効果を持っており、環境に大きな影響を及ぼしたのである。

《鎧亜の咆哮キリュー・ジルヴェス》氏をはじめとして、多くのクリーチャーを自在に操ったオラクリオンを象徴する一枚。

出典:デュエル・マスターズ

 また、彼らと戦うオラクル教団においても《神聖麒シューゲイザー》という、破格の踏み倒し性能を持ったオラクリオンが登場し、ビートダウンやコントロールなど彼を中心とする多彩なデッキが組まれ、そのノウハウは《龍覇イメン=ブーゴ》氏を中心とするデッキに受け継がれた。

 また、そのほかにも恐怖の運ゲー・資産ゲーカード《ホーガン・ブラスター》の調整版として生み出された《ミステリー・キューブ》、「カイザー刃鬼デッキ」やバトライ閣ループのフィニッシャーとして活躍した《不敗のダイハード・リュウセイ》氏、マナを伸ばすデッキの中盤を支えるシールドトリガーとして長らく活躍している《フェアリー・シャワー》など、環境に大きな影響を与えたエピソード3出身のカードは多い。

 しかし、にもかかわらず、プレイヤーのエピソード3に対する評価はそこまで高くない。

 インフレを宿命とするカードゲームにおいては、極めてまれなデフレを起こしたシリーズであり、「黒歴史」と評価する輩すらいるのである。

 数々の名カードを生み出してきたにもかかわらず、エピソード3がデフレと評される理由。それには、「ドロン・ゴー」と「ゴッド・ノヴァ」というこのシリーズの主役を飾る能力が、環境という表舞台で活躍できなかったことにも原因があるのかもしれない。

 

2 ドロン・ゴーとエグザイル

 

―「ドロン・ゴー」能力について教えてください。

 「ワイら「エグザイル」は、体の一部を武器にして戦うアウトレイジの中でも、特にスゴい才能があって、体全体を変形させることができるんや。これが、あんたのいうところのいわゆる「ドロン・ゴー」ちゅうわけやな。まぁ、口で説明するよりも実際に見てもらった方がはやいやろ。」

 そういって、カツドン氏はおもむろに立ち上がると「ドドンガドンドンドロンゴー!!!」と天に向かってさけんだ。

 その言葉に反応するかのように、カツドン氏の身体は光に包まれ、彼の姿形はどんどんと大きく力強いものへと変わっていく。

「ドロン・ゴー」により変形したカツキング氏。カツドン氏のかわいらしい面影は見当たらない。

出典:デュエル・マスターズ

 気が付けば、目の前に体全体を武装で覆った巨大なクリーチャーが立っていた。

 小さくかわいらしかった姿は、見上げても顔がはっきりと見えないほど巨大になり、丸く愛らしかったボディは、硬くごつごつとした鱗で覆われ、筋骨隆々の戦闘へ特化した身体へと形を変えていた。

―・・・本当に、カツドンさんですか?

 「あぁ?そうだ、これがオレの「ドロン・ゴー」した姿「カツキング」だ。」

 カツドン氏のトレードマークであった関西弁すら鳴りを潜め、見た目の印象通りのワイルドな口調になっている。

 見た目はおろか、口調すらも大きく変化した目の前の彼が、カツドン氏と同一人物であるとは信じがたいが、目の前で「ドロン・ゴー」の一部始終を見せられては、そう信じるほかないだろう。

 「エグザイル」の持つ変形能力「ドロン・ゴー」。

 変形の前後で姿形や口調にいたるまで別人レベルで変化するものの、あくまで変形しているにすぎないため、同一人物でありつづける。これが、「ドロン・ゴー」能力の面白さであり、彼らの環境進出を大きく阻んだ要因でもある。

 「変形しただけで、オレ自身はカツキングであり、カツドンだ。バトルゾーンに同じやつがいたら訳が分かんねぇだろ。」

 「エグザイル・クリーチャー」には、共通効果としてバトルゾーンにいる限り、他の「特定の文字が名前に含まれる」エグザイル・クリーチャー(基本的にはバトルゾーンにいる「エグザイル」からドロン・ゴーできるクリーチャー)をバトルゾーンに出すことはできないという強烈なデメリット効果が付与されている。

 これは、カツキング氏の言う通り、「ドロン・ゴー」の変身という要素をカードの効果として反映しようとした結果なのだろう

 しかし、「ドロン・ゴー」をテーマとしたデッキを作成しようとすれば、その性質上、手札に「ドロン・ゴー」先を持っていなければならず、そのためにはデッキに複数枚同じ「エグザイル」を採用せざるを得ない。その結果、一度バトルゾーンに「エグザイル」が出てしまうと、残りのカードはその「エグザイル」が破壊されない限り出すことのできない死に札になってしまう。

 このような「エグザイル」の持つ強烈なデメリット効果、破壊されなければトリガーせず、「ドロン・ゴー」先を手札に持っておく必要のある能力の使い勝手の悪さから、「ドロン・ゴー」を主軸としたデッキは構築難易度、プレイング難易度ともに高かった。

 それに加えて、いくつもの準備の末登場する「ドロン・ゴー」先のクリーチャーの能力は、ただ《ミステリー・キューブ》を唱えるだけで登場する、エピソード2の《勝利宣言鬼丸「覇」》や《偽りの王ヴィルヘルム》といった超強力クリーチャーによって感覚を狂わされたプレイヤーの目には、弱く映ってしまった。

 こうしてデッキ構築・プレイング難易度に見合ったリターンを得られないと判断された「ドロン・ゴー」は、環境でほとんど使われることはなく、カツキング氏自身も長らく環境という表舞台に立つことのできない日々が続いたのである。

 

3 神々と、環境と

 

 背景ストーリーとは裏腹に、環境で思うように活躍できなかったエグザイルたち。敵として彼らを間近で見てきた神々は、そんな彼らをどう思っていたのか。その神意を伺うため、私は彼らの拠点であるオラクル城へと向かった。

取材に応じてくださったイズモ様。ヨミ様との共闘という悲願を達成しご満悦の表情。かわいい。

出典:デュエル・マスターズ

 「うーん。まぁ、それで言ったら僕たちも環境にいたわけじゃないからなぁ。」

 「環境について聞きたいのであれば、我々よりもジャスティス(《聖霊左神ジャスティス》)に聞いた方がよかろう。」

 オラクル城で私を迎えてくださった、イズモ様とヨミ様は、私の質問に対してやや申し訳なさそうにこう答える。そんな二柱からの突然のご指名に、当の本人であるジャスティス様は大きくうろたえた。

 「えっ、私ですか!?私がお二人に代わって取材を受けるんですか。そんな恐れ多いことできませんよ!」

謙遜してはいるものの、エピソード3でも指折りの実力者であるジャスティス様。

出典:デュエル・マスターズ

 《聖霊左神ジャスティス》

 漫画やアニメでは《神人類ヨミ》様の左腕として活躍し、ゴッド・ノヴァの恐るべきパワーを知らしめた存在であるが、コストを支払わず呪文を唱えることのできる強力な能力は環境でも猛威を振るい、「黒緑アシッド」のフィニッシャーや《ウェディング・ゲート》から登場し呪文をループする「ジャスティスループ」の核として、多くの環境を戦ってきた猛者である。

 忠誠を誓う二柱を前に謙遜しているが、彼もまた歴史に名を刻む一柱、英雄と呼ばれるに値する実力者である。

 

―では、ジャスティス様。まず初めに、「ゴッド・ノヴァ」について詳しく教えていただきたいのですが。

 「えっ、ゴッド・ノヴァについてですか?えっと、ゴッド・ノヴァというのは、オラクル教団が、ゴッドたちの力に・・・、あれ?なんでしたっけ?」

 突然の指名にまだ心の整理が追いついていないのか、私の質問にしどろもどろになりながら答えるジャスティス様。そんな彼の姿を見かねてか、後ろに控えていたヨミ様が口を開いた。

 「まったく、そのようなことは基本中の基本であろう。「ゴッド・ノヴァ」とは、オラクル教団を束ねる余が、古のゴッドにゼロの魂を吹き込み、真の神としてよみがえらせた存在。古の神々と異なり、「ゴッド・ノヴァ」は特定のリンク相手を必要とせず、戦況に応じて臨機応変にリンクを組み替えて戦うことができる、完全な存在なのだ。」

 「そして、その「ゴッド・ノヴァ」に聖邪の感情を込め、オラクルジュエルに封じられた真のゴッド・ノヴァ、「ゴッド・ノヴァOMG」を復活させたのが、この僕です!」

 「ゴッド・ノヴァ」について語ったヨミ様の言葉を継ぎ、イズモ様が「ゴッド・ノヴァOMG」についても説明をしてくださる。「その通りだ。」と言いながら、イズモ様の頭をなでるヨミ様の目には愛弟子の成長を喜ぶ師匠の姿があった。

心を失ってもなおイズモをかばった師匠の愛は、DM界の歴史に残る美談として今も語り継がれているとか、いないとか。

出典:デュエル・マスターズ

 「いや、さすがは、ヨミ様にイズモ様。やはり、お二人にはかないませんよ。」

 ヨミ様からの助け舟に救われた形となったジャスティス様も、そんな師弟の様子を見ながらパチパチと両手で拍手を送っている。

 「・・・でも、こんな基本的なことも答えられないなんて。やっぱり、ジャスティスは、環境にも一人でいることが多かったから、僕たちのことなんてどうでもいいと思ってたんだね。」

 調子のいいヨイショをするジャスティス様に対し、イズモ様からなんとも意地の悪い一言が飛んでくる。主神からの思ってもみない一言に、ジャスティス様は顔色を変え、早口で言葉をまくしたてながら懸命に反論する。

 「いやいやいや、何ていうことをおっしゃるんですか、イズモ様。今のは突然質問されたから答えられなかっただけで、「ゴッド・ノヴァ」がどうでもいいなどと思ったことは一度たりともありませんよ。ほら、環境でも《大地と永遠の神門》に助けられましたし、《邪眼右神ニューオーダー》ともリンクして戦いましたから!ゴッド・ノヴァ最高!ヨミ様万歳!イズモ様万歳!」

 ジャスティス様はこのように反論するが、イズモ様がおっしゃったことにも一理ある。それは、ある意味、強力な効果を持つゴッドの宿命、呪いなのかもしれない。

 極神編で初めて登場したゴッドは、ビジュアルの派手さから、登場以降、度々焦点が当てられ、神化編では縦にもリンクできる四体神や六体神が登場するなど、新しさを追求するDMらしさを体現した種族の一つであるといえる。

 そして、そんな神々の中からは、時折環境でも神の名にふさわしい強さを発揮するものたちがあらわれる。特に、DMの歴史上、最初にして最強のラスボス、不亜ザキラ氏が率いるゴッドたちは、幾度も環境に降臨しては暴れまわり、多くのプレイヤーに恐怖を植え付けた。

Mデッキ進化というあってないような進化条件に加え、強力な呪文踏み倒し効果で、殿堂入り後もなお環境を荒らした邪神。

出典:デュエル・マスターズ

 中でも、環境で猛威を振るったのが、軽いマナコストで汎用性の高い除去効果を持つ《龍神ヘヴィ》、同じく軽いマナコストで強力な呪文踏み倒し能力を持った実質スピードアタッカーである《邪神M・ロマノフ》の二柱である。彼らは、ジャスティス様同様、リンクせずとも、単身で強力な能力を有していたため、単体でデッキに採用されることが非常に多かった。

 強力すぎる効果を持ちすぎたが故、G・リンクを意識してデッキを作成するよりも、その神単体に焦点を当ててデッキを作成した方が強くなってしまうという呪い。事実、上述した《邪神M・ロマノフ》は、あまりの単体性能の高さから、リンク先のゴッドがいるにもかかわらずプレミアム殿堂入りとなり、現在「M・R・C」でのG・リンクは不可能となってしまっている。

 「それに、環境入りといっても必ずしも良いことばかりではないですよ。特に、私が活躍したのはループデッキですから。そういう意味では、彼は良い形で環境に受け入れられたのではないですか。」

 イズモ様からの一言を受け、ジャスティス様の口からも思わず本音が飛び出した。

 環境入りしたカードは、良い意味でも悪い意味でもプレイヤーの注目を集める。特に、ループデッキや即死コンボデッキで活躍するカードたちに対しては、そうしたデッキに強い嫌悪感を抱く層からの強烈なヘイトが集まることが多い。主にループデッキで活躍したジャスティス様にも思うところがあったのであろう。

 選ばれし英雄たちのみが立つことを許された環境という舞台。しかし、そうした舞台に立つことが必ずしも幸せとは限らない。ジャスティス様いわく、「良い形で環境に受け入れられた」という自由を追い求めたアウトレイジの代表は、環境という魔境にどう立ち向かったのか。

 

4 英雄の力を受け継いで

 

 「エグザイル」と「ドロン・ゴー」の扱いづらさが影響し、環境という表舞台に長らく縁のなかったカツキング氏にもようやく転機がおとずれる。「スーパーデッキMAX カツキングと伝説の秘宝」の発売である。

 幾度となく世界の危機を救ってきた英雄たちの友情の力。そんな英雄たちの不滅の友情が結晶化した伝説の秘宝「レイジクリスタル」をカツドン氏が手に入れ、新たな力を得る。そんなストーリーを表現した本デッキは、過去の英雄たち、《永遠のリュウセイ・カイザー》《ボルバルザーク・エクス》をはじめとする一戦級のカードが数多く再録され、非常に注目を集めた。

「レイジクリスタル」を手に入れ、強力なパワーアップを果たしたカツキング氏。

出典:デュエル・マスターズ

 そして、そんな英雄たちの力を受け継いだカツキング氏も大幅なパワーアップをとげる。《無敵剣カツキングMAX》となった彼は、登場時パワー8000以下のクリーチャーを破壊することができ、相手の小型から主力に至るまで破壊可能な汎用性の高い除去効果を持っていた。さらに、彼は当時非常に珍しい「マナゾーンからクリーチャーを召喚できる」能力を有しており、登場後もシステムクリーチャーとして活躍することができた。

 強力な再録カードと大きな進化を遂げたカツキング氏の収録された本スーパーデッキは、エピソード3限定構築であったエリア代表決定戦にもただならぬ影響を与え、全国を狙うプレイヤーは短い準備期間の中、研究・対策に追われた。

 そんな彼の勢いは、とまらない。

 これまでのうっ憤を晴らすがごとく、彼は通常環境にも活躍の場を広げていった。まさに破竹の勢いで環境進出していった当時のことを、彼はこう振り返る。

 「あのヨミでさえ通用しないような、それこそ神話に語り継がれてるような化け物たちが平然と戦ってんのが環境って場所だ。正直、怖い気持ちがなかったと言えば嘘になる。けど、そんな気持ちよりも、早く戦いてぇ、自分の力がどこまで通用するのか試してみてぇって気持ちの方が強かったな。」

―共に戦った方で、特に印象に残っている方はいますか。

 「そうだなぁ。ヴィルヘルムさん(《偽りの王ヴィルヘルム》)なんかとは、色(文明のこと)も合うし、マナコストも近いってことで、よく一緒に戦ったな。オレからヴィルヘルムさんにつないで、ウェディングさん(《「祝」の頂ウェディング》)につなぐってのが黄金パターンでよ。神話に語られるゼニスとの共闘は、今思い出しても興奮で震えちまうぜ。」

登場以降、強力な効果と3文明を有していることから、多色コントロールの主力として活躍し続ける一枚。

出典:デュエル・マスターズ

 彼が語った通り、《無敵剣カツキングMAX》氏の能力は、マナ加速を多用する一方で、マナ回収手段が限られていた「ビックマナ」と相性がよかった。特に、今なお「ビックマナ」の主力を担っている《偽りの王ヴィルヘルム》氏とは、マナコストや文明の近さからよく一緒に採用され、火自然水闇のビックマナや五色コントロールで共に戦い、勝利に貢献した。

 また、今まで強さを発揮しにくかった「ドロン・ゴー」能力も、本来の開発意図とはややずれるかもしれないが、ここでは一種の破壊耐性として機能し、彼がシステムクリーチャーとしての役割を遂行するのに一役買うこととなった。

 このように、汎用性の高いクリーチャー除去効果、システムクリーチャーとしても強力なマナ召喚効果は、「ドロン・ゴー」との相性も非常によく、火文明と自然文明を採用する「ビックマナ」であれば、彼の採用を一度は検討すべきといっても過言ではないほどの地位を築いた。

 しかし、盛者必衰は世の常である。ゲームスピードの高速化とパワーラインの上昇によって、彼のクリーチャー除去効果は次第に機能しづらくなっていき、より強く相手の盤面などに干渉できるカードが優先されるようになると、彼の環境での居場所は失われることになる。

 

5 未来へのバトン

 

 環境という表舞台で大きな活躍を果たしたカツキング氏。

 しかし、それは英雄たちの力を受け継いで《無敵剣カツキングMAX》となった彼が、単体として非常に強力だったというだけで、残念ながら「エグザイル」たちが環境入りを果たしたとは言い難い。それは、ちょうど「ゴッド・ノヴァ」でありながらも、単体としての運用が前提とされていた《聖霊左神ジャスティス》様の立ち位置とよく似ていた。

 そんな彼らを不憫に思ってか、エピソード3終了からしばらく経過した後、「エグザイル」と「ゴッド・ノヴァ」たちに大幅な強化がなされる。

名前も効果もやりたい放題なジョークパックである「超ブラック・ボックス・パック」収録も納得の一枚。

出典:デュエル・マスターズ

 まず、「超ブラック・ボックス・パック」にて、「エグザイル」の強化カードであり、DM史上最も長いカード名を誇る《超法無敵宇宙合金武闘鼓笛魔槍絶頂百仙閻魔神拳銃極太陽友情暴剣R・M・Gチーム・エグザイル〜カツドンと仲間たち〜》が登場する。

 このカードは、ほとんどすべての「エグザイル」の「ドロン・ゴー」に対応しているだけではなく、手札及び場にあるだけで「エグザイル」の持つ強烈なデメリット効果を無視するというとんでもない効果を持つ、従来の「エグザイル」の欠点を一枚でカバーするハイパーカードである。

 「エグザイル」のデメリット効果を無視するというやや乱暴なテキストは、穿った見方をすれば、事実上、公式が開発ミスを認めたようにも思えるが、このカードの登場により「エグザイル」を中心としたデッキが機能しやすくなったことは間違いない。

 そして、それから約9か月後「輝け!デュエデミー賞パック」において、ゴッドデッキを支えてきたゴッド専用踏み倒しカード《プロジェクト・ゴッド》のテキストが変更される。

歴代イズモシリーズが全員集合した見ているだけで癒される一枚。

出典:デュエル・マスターズ

 一体までしか踏み倒すことのできなかった従来のテキストが変更され、場にあるゴッドとリンクできるのであれば、複数体のゴッドをバトルゾーンに出せるようになったのである。

 これまでも、コストの重い中央神を踏み倒す手段として利用されてきた《プロジェクト・ゴッド》だが、このテキスト変更により一気に三神合体をすることも可能となり、三神合体時に強力な効果を発揮する中央神の効果がさらに使いやすくなった。

 そして、彼らが環境で振るわなかった反省を生かしてか、エピソード3以降のシリーズにおいて、物語のキーとなる能力は非常に強力にデザインされている。

 中でも、漫画やアニメでもカツドン氏とのつながりが意識的に描かれた革命ファイナル編では、「ドロン・ゴー」能力をリメイクして「革命チェンジ」能力がデザインされ、今もなお環境で活躍し続ける非常に強力な能力となっている。

 「黒歴史だなんだって、言われることもあるけどよ。息子や成長した勝太の姿を見てると、オレたちの存在も決して無駄なんかじゃなかったって思うぜ。たしかにオレたち「エグザイル」もヨミたちゴッドも、環境では活躍できなかったかもしれない。でも、それがすべてじゃねぇ。」

彼らの思いは、しっかりと次代にいきている。

出典:デュエル・マスターズ

 かつて、オメガの力を得たイズモに敗れ、レイジクリスタルを奪われた彼が、仲間との絆の力でイズモを打ち破ったように、敗戦や失敗から学ぶこともある。そんな彼の言葉をあらわすように彼の息子《武闘世代カツキングJr》は、「革命チェンジ」能力を手に入れ、「赤単革命チェンジ」や「モルトNEXT」デッキに採用されるなど、環境での活躍を果たした。

 

 私は、彼らの存在を失敗などというつもりは毛頭ない。

 しかし、彼らの存在があったからこそ、挑戦があったからこそ、次代の英雄たちが環境という表舞台でものびのびと活躍できる今のDMがあるのではないかと思わずにはいられない。

 黒歴史などという不名誉な呼ばれ方をされつつも、懸命に戦い抜き、未来へのバトンを繋いだ彼らに敬意を表したい。

※本記事は、アニメ版DMを参考に執筆したものです。したがって、漫画原作とは異なる部分があるかもしれません。

また、前回同様、本記事の感想や取り上げてほしいカードのリクエスト等がございましたら、コメントいただけるとありがたいです。

文責:一番ぼし


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