不死鳥編の世界では、ハイブリッド種族と呼ばれる5種族の戦いが描かれました。グレートメカオーの侵略、ティラノ・ドレイクの災厄、グランド・デビルの密約、ドリームメイトの暗躍……
ちょっとまって!アーク・セラフィム何やってたの!?
はい!というわけで、今回は予告通り番外編です。何かと不評(?)な不死鳥編ですが、実はハイブリッド種族はデュエマの歴史に残る大革命なんです!
……というお話を、種族の概念の振り返りとともにご案内いたします。普段とはちょっと毛色の違う記事となりますが、どうぞお付き合いください!
目次
そもそも種族って何?
まずはハイブリッド種族の話の前に、種族って何なの?という点を確認しておきましょう。
デュエマにおける「種族」の設定は、クリーチャーの所属や分類を表します。当たり前に存在している要素ですが、
①世界観を理解しやすくするフレーバー的な役割
②デッキ構築における指針としての役割
の2つを同時に成り立たせている、とても重要なステータスです。
①=フレーバー的な機能の1つ目は、「大型種族と小型種族」「支配階級と戦闘要員」といった分類を示し、世界観とゲームを結び付けています。
たとえば初期の水文明は、例外も多々あるものの
・リヴァイアサン:大型生物=マナコストが高いがパワーに優れる
・サイバー・ウイルス:小型生物=非力だが低コスト
・サイバーロード:支配階級=トリッキーな戦略を得意とする
・リキッド・ピープル:戦闘員=戦闘に関わる能力に秀でる
……と設定され、種族でゲーム中の役割を把握できるようになっていました。「リヴァイアサン=体がでかく動きは鈍そう=パワーが大きくコストが高い」とイメージすることで、理解を早めつつゲームへの没入感も深められるデザインですね。
フレーバー面でのもう1つの役目が、背景世界における変化の表現です。
・太古の超神龍が復活→ボルケーノ・ドラゴン、アース・ドラゴン、ドラゴン・ゾンビ
・レインボーの力により世界に不思議な影響が→スピリット・クォーツ
・圧倒的な力を持つ桁違いの王→フェニックス、ナーガ、セイント・ペガサス、スターノイド
……などなど、背景ストーリーを知る上で、新種族はカギを握ります。フレーバーテキストのないクリーチャーでも、未知の種族を持っていれば「何か特別な存在なのかも!?」と想像できますからね。
種族のもう一つの役割が②、デッキ構築の指針です。古くは第1弾…よりも前、コロコロに先行収録された《一撃必殺のホーバス》がアーマロイド種族を参照しています。これによって、未知の新ゲーム『デュエル・マスターズ』において、「アーマロイドとやらを集めて同じデッキに入れるといいらしい」という一つの道標が示されました。
こうした種族サポートの代表例はもちろん進化ですね。初登場以降、競技環境での活躍はもちろん、「ガーディアンの進化カード当てたからガーディアンデッキ組む!」といったカジュアルユーザーも多く、指針としての役割をきっちり果たしていました。
その後も特殊種族サバイバー、種族カテゴリ「ドラゴン」のサポート、逆にドラゴン指定の対策カード、《光器ペトローバ》などの種族選択カード……と、種族はさまざまな形で参照され続けました。
聖拳編では多色クリーチャーの登場に伴い、2つの種族を持つクリーチャーが登場。デュアル進化や進化V、シンパシーなど、新たな種族デッキの方向も示されています。
革新、ハイブリッド種族
ところが、デュエマの歴史が続いていくと、2つの問題にぶつかります。
一つが、古いカード手に入らない問題。たとえばリキッド・ピープルの進化クリーチャーはたびたび登場していますが、再録機会に恵まれていなかった《アクア・ハルカス》は長らく入手困難でした。せっかく進化クリーチャーを入手しても、進化元が確保できないケースが増えてきたのです。
そしてもう一つが、種族多すぎてサポートできない問題。1弾から存在するにもかかわらず、マシン・イーターやブレインジャッカー、スターライト・ツリー等は何のサポートカードも作られません。一方で新しい種族は次々に追加され、その種類は増えるばかりです。
これらの問題へのひとまずのアンサーだったのでしょう、転生編では
・新種族であるフェザーノイドやビッグマッスル、ワンダー・トリックの進化が早期に実装・種族を散らす意味を持たせる《口寄の化身》
といったデザインが見られましたが、これらが十分な解決だったとは言えません。
そこで、デュエマ始まって以来の大規模なテコ入れとして登場したのが不死鳥編のハイブリッド種族なのです。前置きがめちゃくちゃ長かったけどここ本題です!!!
不死鳥編では、主要種族を5つのハイブリッド種族とそのサポート、計10種族に整理しました。たとえば光・自然文明はアーク・セラフィムとそのサポート種族セイント・ヘッドが担当。闇・火文明はティラノ・ドレイクと、サポートのブレイブ・スピリット……といった具合ですね。
さらに、ティラノ・ドレイク内でも、
・幼体のドレイクは人型でパワーが低い
・中間形態は半竜半人の姿、パワーは少し上昇
・成体になると完全な竜の姿に、高パワーを誇る
……とサイズに応じて外見が変化します。
このデザインによって、「大型種族と小型種族」という区分けが取り払われ、種族を揃えたデッキがグッと組みやすくなりました。
つまり、種族の数が絞り込まれ、プレイヤー的には集めやすく、開発側としてはサポートしやすくなったのが不死鳥編のデザインなのです。これ、かなり画期的ですよね!
……しかしご存知の通り、残念ながら不死鳥編は売り上げがとんでもなく低迷しました。原因はカードパワーやメディアミックスなどいろいろ挙げられますが、旧種族との互換切りも一因との説があります。慣れ親しんだ旧種族がいなくなってしまったことは、古参ユーザーにとってマイナスだったのでしょう。
この反省からか、以降は戦極編のサムライ&ナイトやエピソード1のハンター&エイリアン、革命ファイナルの革命軍「団」や十王篇の「チーム」など、旧種族を維持しつつ陣営を示す複合種族が多く登場しました。変わったところでは、覚醒編における「ソウル」も近い性質を持ちますね。これらの礎になったと考えると、ハイブリッド種族のデザインからデュエマが得たものは大きかったのではないでしょうか。
また、不死鳥編における「主要5種族とサポート5種族」構成は、後のドラゴン・サーガにも受け継がれています。サポート種族側も人気種族の派生であるリキッドピープル閃やビーストフォーク號が選ばれているあたり、ハイブリッド種族の反省を感じますね。
不死鳥編やドラゴン・サーガでの種族デザイン路線の系譜の集大成と言えるのが、新章デュエル・マスターズでの5大種族=メタリカ、ムートピア、マフィ・ギャング、ビートジョッキー、そしてグランセクトでしょう。たとえばビートジョッキーは小型のチュリス、中型の猿人、そして大型戦車の3階級に分類されています。不死鳥編やドラゴン・サーガを経て、「そもそもサポート種族っているの?」という反省から生まれたデザインですね。
このように、種族の発展において不死鳥編は一つの特異点であり、デュエマ史に大きな影響を残しているのです。
さいごに
そういえば、アーク・セラフィムは結局どうしたのっていうお話が残っていましたね。ぶっちゃけ、ストーリー的に良いところが無かったのは事実です。
……が! 能力としてはもっとも一貫したテーマを与えられ(※)、種族デッキを楽しむというゲームデザイン上の大役を全うしたのがアーク・セラフィムです。
(※マナゾーン操作に特化。グレートメカオーとドリームメイトはダイナモが空中分解、グランド・デビルは初登場時点で強かったものの以降の路線がややチグハグ、ティラノ・ドレイクはうん……ね……)
というわけで、当時のデッキをご紹介。
《霊騎ラグマール》をマナから何度も回収する、いわゆるラグマールループのプロトタイプです。《霊騎ラーゼ・ミケランジェ》でクリーチャーを3体踏み倒し→踏み倒した中に《ラーゼ》の2体目がいればさらに展開……といった大量展開を得意としています。
《聖帝ソルダリオス》《霊騎サンダール》《霊騎プリウスライザ》など、デッキ全体がシナジーを形成した美しいデザイナーズデッキではないでしょうか。
と、そんな感じで今回は、背景ストーリーと昔話・デザイン論・ついでにデッキ紹介……と混ぜ合わせてお送りしました。ハイブリッドだけに。
なお、お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、今月から連載ペースをちょっとだけ変更させていただいております。この機会に「もっと○○の話題が読みたい!」というご要望があればコメントをお寄せいただければ幸いです。(というのも見本市みたいな記事だった理由です)
すべてにお応えできるわけではありませんが、今後の参考にいたします!