ジャシン、退場――

王道W4弾をもって、ジャシンの肉体を巡る『王道』2シリーズ、ひいてはウィン編が幕を下ろした。
本記事では、『王道』の名を冠する2年間がどんなものだったのか、11項目に分けて振り返っていきたい。
目次
本記事について
この記事では、『王道篇』『王道W』2シーズンにおける施策を、主に商品の観点から振り返っていく。
※ブロックマークのない商品も含む/前年度アイテムである『邪神と水晶の華』は除外
もちろんイベントやメディアミックス・背景ストーリー等、商品展開だけでは見えないこともある。
ただ、内容が多岐に渡りすぎること・特にイベントは参加の有無で解像度にばらつきが出てしまうことから、今回は必要に応じて触れる程度に留めたい。
また、それぞれの振り返りは「成果」「課題」に分けて挙げていく。
筆者から見ての成果・課題を述べるため、人によっては「それは違うんじゃない?」と感じる面もあるかもしれない。
その際にはぜひ、ご自身のSNSやブログサービス等で「私の考える成果と課題」を発信していただければ幸いだ。違った視点からの読み物が多く出てくれるなら、それはとても有益なことだと考える。
あと数字に関して示せないことはお察しいただけると幸い
というわけで前置きはここまで。ここからは各商品について、11項目に分けて取り上げていこう。
施策① いきなりつよいデッキ
まずはこの2年間の新たなスタートデッキ・『いきつよ』から振り返っていきたい。

成果
「デュエマは高い」という固定観念を壊した
なんといっても最大の成果はこれだろう。
500円で実績あるデッキとほぼ同等のものが手に入る。定期的に再販され、入手しやすかったのも嬉しいところ。
また、デュエマでは珍しい「非フォイル再録」も良い施策だった。
コスト削減はもちろん、元カードの価値を下げすぎないことにも繋がったと考える。
いきなり強かった
値段だけではない。名前の通り、いきなり強かったことは重要なポイントだ。
特に、人気の《ヘブンズ・ゲート》テーマの入門キットであり【巨大天門】の雛形にもなる『守りの王道』は熱い。初心者ならずとも嬉しいアイテムだったのではないだろうか。
課題
ルールを覚えるには不向きだった
一方で、大きな問題と言えるのがこの点。
特に、タマシードというカードタイプや多重侵略のギミックを要求する『力の王道』は、入門アイテムとしては難しすぎた。
いきなりつよいデッキとは別に、入門向けのアイテムがあれば良かったのだけれど……
わざわざ弱い入門アイテムにお金を払うユーザーは限られているし、なかなか難しいところだ。
他製品との連動には課題が残った
3色アビスの基盤となった『技の王道』を除くと、通常セットとの連動が薄かった点も課題と言えそうだ。
《光開の精霊サイフォゲート》のように明らかな連動カードは存在したものの、通常弾のメインギミックは『いきつよ』と無関係。
このあたり、王道Wでは多少改善されていたことから、次年度以降を楽しみにしたい。
あと、「500円のデッキがこの完成度である」という事実が他の構築済みのハードルを上げているのでは……?という意味でも製品間の連動には不安が残る。
施策② キャラプレミアムデッキ
続いてはキャラプレミアムデッキ。ドラ娘で3つ+『誓いの水晶』と、じわじわバリエーションが増えたアイテム群だ。
成果
キャラクター推し商品の新しい形を示した
ドラ娘にせよクリスタにせよ、美少女イラストのカードから一歩踏み込んで「デッキ全体をキャラクターで染める」というのは良い試みだったと感じる。
キャラクターからデュエマに触れたファンにとって、「知らないキャラクター」はノイズになりかねない。
「どこを切ってもドラ娘」のデッキは、そうした層がデュエマに親しむ導線としてファインプレーだった。
そもそもコレが発売するまで「アニメやってるけど神アートは絶版」状態だったのが歪だったんだけど……
パーツ単位でも優秀だった
いわゆる「パーツ取り」観点で見た場合も、嬉しい内容が並ぶ。
ここでの再録によって値段が落ち着いたカードも見られ、「強力ドラゴンを再録しやすい場」としても機能していたことが伺える。
ストーリーや世界観をデッキで表現した
クリスタの歩みを詰め込んだ『誓いの水晶』に、デッキ全体の動きをライブや運動会に見立てた『Jack-Pot-Live』や『青春ワールドカップ』と、デッキにストーリーのイメージを持たせる構成になっていたことも見逃せない。
ドラ娘が単に殴り合うのは、ちょっとイメージに合わない。
「これはライブなんです」「これは運動会なんです」というフレーバー要素が整えられているのは嬉しいところだ。
課題
4~5cドラゴンのバリエーションには限度があった
ドラ娘デッキを3種出す中で、課題となったのはバリエーションだろう。
方向性をかぶせないようデザインされた結果『青春ワールドカップ』はちょっとデコボコしたデッキになってしまった。
そもそもかぶせないよう気を遣われたこと自体が良かった点ともいえるが、ちょっと苦しさが目立ってしまった印象だ。
5人・10人を1デッキに詰め込むべきかは疑問が残った
前項と似た話で、そもそも1デッキに5人を入れるから4~5cになってしまうのではないだろうか。
『ギャイ&メガデッキ VS すず&ゼオスデッキ』みたいな分割構成にして、色を減らす道もあったのかもしれない。
デッキが数種類あれば、「俺こっち!」的に対戦を楽しみやすくもなる……かも。
『誓いの水晶』が浮いてしまった
デッキの強度・水晶マナを使った独自戦略・クリスタというキャラクターへのフォーカス……と、高水準でまとまっていた『誓いの水晶』だけれども、ラインナップ的には中途半端になってしまった。
LOSTキャラクターのデッキはコレ1つだけだし、おそらく来季に増えることもなさそう。
前項と重複するが、対等な立場のデッキ同士で対戦を楽しむ機会が無かったことが惜しまれる。
施策③ エキサイティング・デュエパ・デッキ
続いてはデュエパデッキ。
まぁその……問題児かな……
成果
デュエパーティーを始める際の指針となった
何やかんや、「コレ買ってデュエパを始めよう」と言えたのは大きなメリットだ。
ハイランダー60枚デッキを無から組むのってそれなりに手間だし、まして多人数戦で輝きそうなカードを選ぶとなると大変。
買ってそのまま使うことはもちろん、構築バランスの目安にもなってくれたはずだ。
適度な再録機会となった
ハイランダーという性質もあり、「1枚だけ再録」の良い機会となった。
1枚再録ならば、既存のカード資産への影響は小さい。さらに、通常のパックや構築済みでは再録されづらいカードにもチャンスとなる。
殿堂カードのように、2枚当たると困る……すなわちパック形式での再録が憚られるカードの収録機会でもあった。
課題
新規カードが非常に根深い問題を残した
……前項までで挙げた成果をすべて帳消しにしたうえで、お釣りが出る問題点がこれだ。
2500円×4種アソートのデッキに1枚だけ収録されているカードがどうなるか……もはや言うまでもない。
これ、むしろ活躍して価格も上がったカードは再録機会を得るぶんマシかもしれない。再録機会のないまま後で需要が跳ねるパターンが有り得ると考えると……本当に恐ろしい。
そんな将来の懸念も含めて、根深い問題を残してくれたな……と言ってしまって差し支えないだろう。
デュエパが窮屈になった
もう一つ。
デュエパの元となったマジック:ザ・ギャザリング統率者戦/EDHは、「余ったカード・環境落ちしたカードで遊べる」という面も支持を広げた理由だった。
強力な新規カードを含む構築済みが発売されたことで、「デュエパの基準となるデッキパワー」が定義されてしまった。
プレイレベルの概念があるとはいえ、「余ったカードで遊ぶデュエパ」の肩身が狭くなった面は否定できない。
後知恵ではあるものの、最初は再録カードのみで構成されたデュエパデッキを発売して、デュエパという遊び方そのものを広めた方が望ましかったのではないか。
施策④ にじさんじコラボ・マスターズ
お次はここ2年……いや、もしかしたらデュエマ史の中でも最大級のヒット商品・『にじさんじコラボ・マスターズ 異次元の超獣使い』だ。

成果
大量の新規ユーザー獲得に貢献した
いやもう、何よりこれ。
本当に驚くほどの新規ユーザーが流入し、筆者のようなVTuberに疎い人間はただただ驚かされるばかりだった。
後述するけれど、セットとしての完成度が高く遊びやすかったことも、スムーズな参入に貢献していたといえるだろう。
デュエマの世界観とコラボを両立させた
古参おじ&VTuberミリしら勢としてはココも大声で言っておきたい。
発売前はやっぱりこう、なんとなく「デュエマらしくない」……いや、デュエマだからこそ、おふざけめいたコラボカードが数多く登場するのでは?と不安視していたユーザーもいたはずだ。
それが蓋を開けてみれば、デュエマの世界観を残したまま、見事にコラボを達成していた。このアートワークやネーミングにも脱帽だ。
これだけでデッキが組めた
コラボから参入した新規ユーザーが、このパックだけでデッキを組めたことも大きい。
推しライバーのデッキを組むことはもちろん、【夜見れな+花畑チャイカ】のように2人・3人のカードを組み合わせた構築も可能であり、「デッキを組む楽しさ」を知ってもらうのにも最適なアイテムだったといえる。
課題
今後のコラボアイテムの要求水準が上がった
これは贅沢な悩みなのだけれど……
今回が完璧に近いコラボだった以上、以降のコラボ商品もこの水準・あるいはそれ以上が求められることになる。
ブラック・ボックス・パックで散見されたような、トンチキなコラボカードには戻れない……ユーザー的には嬉しい一方で、開発面の負担は高まったといえるだろう。
ライバーごとの拡張性にばらつきがあった
10ライバーに10戦略をあてがうデザインは非常に秀逸だった一方で、それらの戦略が均等に強化されたかと言えば疑問符が残る。
特に「呪文×超次元」をテーマとした月ノ美兎委員長は、方向性に合致するカードが限られる。
グッドスタッフ的な運用はともかく、「委員長デッキ」を練り込みたかったファンは遊びづらかったのではないだろうか。
参入した新規ユーザーの繋ぎ留めが不十分だった
前項ともやや重複するが、各ライバーの戦略が通常弾で強化されたかと言われると怪しい。
安定してお土産を貰えたのは【バイク】くらいだろうか。
そもそも王道Wを通して、2色カードがほとんど登場しなかった。
ゆえに、パッと見で「○○(任意のライバー)デッキに入れてみよう!」と思えるカードが少なかったことは課題だと考える。
あとついでに、ゆったりデュエマの世界に入れるよう、限定大会をもう少し長くやっても良かったのかも……?
施策⑤ 通常セット~王道篇・基本ギミック~
通常セットについてはアイテム数が多いこと、1年目と2年目での変化が大きいことから2つに分けて分析してみたい。
まずここでは、王道篇の基本ギミック―超化獣とハイパー化・逆転撃・ヨビニオン・バラバラエティ・ハイパーエナジーについて取り上げる。
成果
複数のキーワードをまとめ上げた
攻撃させても、超化獣サポートに使ってもOK!というデザインかと思われた「このクリーチャーがタップした時」系能力。
これ、下半期のハイパーエナジーとも組み合わせられたことには大いに驚かされた。
ハイパーエナジーとバラバラエティ、それにヨビニオンも「コスト域を散らす構築」という点で共通しており、逆転撃を除くすべてのキーワードがシナジーし合っているのは非常に鮮やかなデザインだ。
新しいプレイ感を生み出した
「構築時点でコスト域を散らす」という意識を要求されるハイパーエナジーやバラバラエティ、「自軍をタップする」というリスクと引き換えにボーナスを得るハイパー化&ハイパーエナジー。
どちらも、従来のデュエマとは少しだけ違ったプレイ感に繋がっているのも面白いところ。
特にハイパーエナジーは強力な能力ながら、触ってみないと使い心地が伝わりづらい……というかなり変わり種のキーワードだったと言える。
こうした新しさの提供は流石という他ない。
後述するが、王道Wは「既存キーワードのリメイク」が多かった。そちらと比較しても、王道篇後期の斬新なプレイ感は印象的だ。
課題
低レアリティが薄味すぎた
ここまで褒めたけれど……低レアリティはいくらなんでも薄味査定すぎるカードが並んでいた。
翌年の王道Wにも続く傾向なのだけれど、「光文明のエンド時アンタップ」「水文明の攻撃ブロック禁止」「火文明のブロッカー破壊」などなど。
微妙なコスト・微妙なサイズのクリーチャーが持っていても嬉しくない能力が、特に低レアリティだと頻繁に現れていた。
もちろん全てのカードを等しく強くするのは不可能だし、上位レアが派手なのは望ましい。
ただ、5枚目以降としての採用候補にすら挙がらない/縛り構築でもお呼びがかからないような、穴埋めめいたコモンカードはなるべく生み出さずに済ませてもらいたいところだ。
テーマの打ち止めが早すぎた
「タップした時」クリーチャーはハイパー化・ハイパーエナジーどちらともシナジーした。
ではハイパー化の持ち主……超化獣を名指しでサポートしていたカード群は?
超化獣が2セットで姿を消したことに加え、一番強い超化獣は超化獣サポートを必要としていないあたりも含め、多数のサポートカード群が割を食ってしまった。
過去のテーマサポートと比べればカードパワーは上がっているだけに、超化獣が早々に不在となったことが惜しまれる。
(もしかして、ハイパー化持ち以外にも超化獣種族を出す予定が中止された……みたいな裏事情があるのかも……?)
施策⑥ 通常セット~王道W・基本ギミック~
通常弾の後半戦。NEO進化とG-NEO進化・超魂X・超魂レイド・D・D・Dにヌル・ブレイカーを取りまとめて振り返る。
キーワードではないが、3色テーマやタマシード、それにセット全体の種族やクリーチャー選出なんかもここに含めたい。
成果
過去ギミックのリメイクを見事に成し遂げた
NEO進化とその強化版であるG-NEO進化、シンカパワーのリベンジともいえる超魂Xや「進化元になる時」カード群、キリフダッシュと侵略をアップデートしたD・D・D……と、過去に調整が難しかったギミックが高水準でリメイクされた。

特に、通年でのテーマとなったNEO進化は、強力なカードも数多く輩出。
新章でフィーチャーされた時のピリッとしない印象を見事に覆した。
友好3色の底上げを果たした
《天災 デドダム》と王来篇のパワーカード群を擁する楔3色に比べ、いわゆる「弧」=友好3色はカードプールで後れを取っていた。
このあたりの格差は大幅に改善され……むしろ《奇跡妖精》《看護妖精》サイクルや無色2コストサイクルのように、友好3色の方が足回りは充実しているのでは?と言えるほどの状況となった。
これはジョー編の頃から続く色の格差の是正として、大きな一歩だったと考えてよいだろう。
漫画連動で完璧なプレビューを実施した
メディアミックスの話でもあるので、ここで取り上げるべきか迷ったものの……漫画『GT』との連動でサプライズ的にデビューした《「GG」-001》《「GT」-002》のお披露目は本当に鮮やかだった。
ワクワクする形でのカード公開は、彼女たちへのポジティブな印象にも繋がる。
実際、このプレビューを通して2人のカードが欲しい!使ってみたい!と思ったユーザーも多いのではないだろうか。
課題
キーワードの増やし方が過剰だった
前年のハイパーモードの打ち止め→ハイパーエナジー・ヨビニオン・バラバラエティ・逆転撃の新能力ラッシュもそうだったのだけれど……
王道Wも、ちょっと新規キーワードを詰め込みすぎではないだろうか。
特に、ヌル・ブレイカーはこう、作られた意図は分かるものの……新キーワードとして定義すべきだったかは疑問が残る。
もちろん、ブレイカー能力ゆえに抜け道を探す楽しさがあるのは認めるのだけれど、基本的にはデメリット。キーワード化が本当に正解だったのだろうか?
むしろ、セットを通して頻出だった「進化して出た時または進化元になる時」の方が一言にまとめたいフレーズだったのでは?
また、超魂レイドのように「目玉キーワードのようでいて、大して増えずに終わっちゃった……」みたいなケースも惜しまれる。
テーマデッキの指針が分かりにくかった
【ゴルギーオージャー】などのごく一部を除いて、3色陣営のゴールがぼやけていたのも気になるところだ。
一応、「テクノ・サムライはカードを重ねる」「アビスはお馴染み墓地利用」等、陣営ごとに戦略の方向性は定められていたものの、種族サポートなどの分かりやすい基柱は少なかった。
おそらく「陣営を跨いで、いろいろな組み合わせで超魂X×NEO進化の組み合わせを楽しんでね」という意図なのだろう。
ただ結果として、「サムライデッキを組みたい!」「ナイトデッキで遊びたい!」というユーザーには、やや期待外れとなったのではないだろうか。
キャラクターの扱いには疑問が残った
《グラッサ》&《タレット》のお披露目は鮮やかだった……とはいえ、ここまでの世界観を踏まえると異物感というか、唐突な登場だった印象も強い。
さらに、彼らゼノテクソードが存在感を放ったことによって、「じゃあ非ゼノテクソードのテクノ・サムライって何だったの……?」という部分も、なんだか中途半端になってしまった。
他の陣営も、基本的に過去のクリーチャーのガワを借りたキャラクターが多かった点は少し気になるところだ。
効果に元ネタの面影がないカードも多かったし、何より過去クリーチャーのリメイクって、数を絞るからこそ「あのクリーチャーが復活!?」という特別感を演出できると思うのだけれど……
施策⑦ ファンタジーBEST&ヒロインBEST
続いては、すっかり夏の季語の様相を呈してきた『BEST』シリーズの振り返り。
成果
夏の新たな定番アイテムとして定着した
上でもちょびっと書いたように、夏と言えば『BEST』と言わんばかりの存在感を放ち始めた本シリーズ。
アート、カードパワー、再録、いずれも非常に満足度の高いアイテムとなっており、デュエマの年間スケジュールを俯瞰する上で「真ん中の引き締め」として確かな役割を持っている。
むしろ時期の近い通常セット2弾の影を薄くしないか心配になってくる、かも……?
1セットだけでデッキの雛形が組めた
前身の『ビクトリーBEST』から一貫して、「5陣営のデッキがこれだけで(概ね)組める」という仕様が本当に親切。
『異次元の超獣使い』もそうだったけれど、「パックのカードだけでデッキが組める」ことは「パック/ボックスで買う」理由となる。
「○箱・○パック買って、足りないところだけシングル」みたいな組み方がしやすいのだ。
この買い方、「ファイアー・バードのパーツ集めてたらついでにドリメも揃いそう」みたいな遊びの広がりを生んでくれるのもメリット。
言わずもがな、そうして組めたデッキが強いことも重要だ。
ちょっと真面目なことを言うと、未開封商品が売れないことにはデュエマが先細ってしまう。
そういう意味で、パック購入のモチベーションを喚起する本シリーズはデュエマを支える存在、なのかもしれない。ボックス特典もつくしね。
デュエマの世界観と女の子キャラクターを両立させた
ここのバランス感覚の絶妙さも特筆すべきだろう。
美少女カードの人気と、あくまで美少女コンテンツではないデュエマ。
相反する二つの要素を、特に『ファンタジーBEST』において見事に纏め切った手腕は見事という他ない。
「美少女コンテンツに寄せすぎず、けれど可愛い外見」というビジュアル面は、今後のデュエマの道筋を示したともいえそうだ。
課題
環境への影響が大きすぎた
言わずもがな、最大の課題はこれ。
環境解説記事のアイキャッチ、ずっと【ファイアー・バード】【マーシャル】がいたからね……
特に【マーシャル】に関しては、どう考えてもループするのに何故作った……みたいな疑問符は残る。
また、『BEST』シリーズが分かりやすく強いことで、通常弾の存在感が薄まってしまうことも懸念点と言えば懸念点だろう。
陣営のパワーバランスが不安定だった
ここまで「デッキが組める」「強い」とは言ってきたものの、5陣営全てが強いデッキになったかと言われると肯定はしかねる。
いや、フェニックスを強化したら追加ターンかエクストラウィンがすっ飛んでくるのはその通りなんだけど……じゃあ何でフェニックスをテーマにしちゃったの……みたいな……?
3度目のジンクスが首をもたげた
『ブラック・ボックス・パック』然り『デュエキングMAX』シリーズ然り、デュエマの好評だった製品は数を重ねると徐々に妙な方向に転がりがち。
『BEST』シリーズも、前述のフェニックスだったり、「面白いし弱くないが活躍には至らない」レベルで止まってしまったシノビだったり、おそらく想定とは違った形のループを獲得してしまったサイバーだったり、ちょっと雲行きが怪しい面はある。
このあたりは、来シーズンの立て直しに期待だろうか。
施策⑧ デュエキングDreaM/WDreaM
夏がBESTなら秋はデュエキング。こちらもすっかり定番となった『デュエキング』シリーズの2作を振り返ろう。

成果
デュエキングシリーズの立て直しが見られた
一つ前の『デュエキングMAX2023』では、中途半端に裁きの紋章が再録されたり、コメントに困る性能のダイナモが大量収録されたり……と、ちょっと迷走している様子が見られた。《アクア・ガード》と無関係なカードの下半分に張り付けられた《ガード・グリップ》は泣いていい。
翻って直近2セットでは『DreaM』の名の通り、ドリーム・クリーチャーの関連カードというメインテーマが設定され、闇鍋めいた怪しさはいくぶん和らいだ。
王来篇シーズンに発売された『デュエキングMAX』は間違いなく歴代最強クラスのパックであり、そのなを受け継ぐに相応しいアイテムへと戻りつつあるのは喜ばしいことだろう。
アドバンスへのカンフル剤となった
もう一つ、デュエキングといえばアドバンスだ。
2月・7月の特殊セットがセット内で完結したテーマとなったことで、ドラグハートやGRといったギミックの拡張はデュエキングに任された。
少なくともこの2年、アドバンス環境に変化を与えるカードをきっちり送り出してきたことはデュエキングの成果と言えるだろう。
あっという間に規制されたカードもあったような気がするけれど、それはそれ。
課題
実験場としての側面が強すぎた
とまぁ、『2023』よりは立て直した/ドリーム・クリーチャーが軸になった……とは述べたものの、やはりごった煮的な面は残った。
特に、半ばブラック・ボックス・パックめいた実験的デザインを一手に引き受ける羽目になり、結果として”色物パック”というイメージが漂っていた感は否めない。
もちろんユニークなデザインに挑戦することは大歓迎だが、それにしたって使ってみたいと思わせる魅力が少し弱かったように見受けられる。
役割を詰め込みすぎた
実験的なカードに限らず、デュエキングは背負う役割が増えすぎた。
アドバンスへの目配せ、過去ギミックの補完、各種メディアとの連動カード、頂上ディスペクター、上位存在関連キャラクター、既存テーマのリメイク、そして再録……
特にこの2年は、『LOST』連動カードもデュエキングの領分となっていた。
ここにドリーム・クリーチャー関連カードまで詰め込むの、流石に過積載もいいところである。
結果、「強いカードもあるけど、全体的に何がしたいのか分からないパック」と、焦点がぼやけてしまったのは惜しいところだ。
施策⑨ ドリーム英雄譚デッキ/ナイトメア黙示録デッキ
続いては年に2回ずつ、計4回に分けて7アイテムが発売された英雄譚/黙示録デッキ。
成果
レジェンドスーパーデッキを改善した
ドリーム英雄譚デッキ、価格もコンセプトもレジェンドスーパーデッキの後継と言えるアイテムだろう。
流石に強気すぎた価格設定(約8000円)が改められ、かつてのクロニクルデッキを思わせる価格帯へと着地した。
また、デッキ名は目玉クリーチャーの名を冠するものとなり、「花形クリーチャーを推す商品展開」という、デュエマの新しい可能性に挑戦したと言えるだろう。
実はクリーチャー名を冠する構築済みデッキ、意外と少なかったのだ。
過去の戦略を現代型にアップデートした
【RX】、【無色ジョーカーズ】あたりに顕著なのだけれど、人気がありつつも徐々にフェードアウトしていったアーキタイプにお土産が配られた。
通常セットでは強化の機会に恵まれないテーマだけに、当該テーマのファンには嬉しい施策だったのではないだろうか。
課題
「受け皿」が求められているかは疑問が残った
ドリーム英雄譚デッキ、「このセットにはドリームレアは収録されておりません」の注意書きが添えられていたわけだけれど……これは流石にどう考えても悪手だった。
「ドリームレアと相性抜群」を謳ってはいたけれど、ドリームレアは3箱に1枚出るか出ないか・英雄譚デッキは約5000円。
当たるかどうかわからんカードと、5000円の受け皿。ちょっとコンセプトそのものが歪んでいたのではないだろうか。
価格に見合った内容とは言い難かった
5000円で受け皿=つまり未完成のデッキというだけでもだいぶくらくらしてくるのだけれど、この2年間は『いきなりつよいデッキ』が発売されていた。
500円でほぼ完成形のデッキ VS 5000円で未完成のデッキ。
これもまた、コンセプトの歪みを感じる部分ではある。
もちろんFOIL加工などのコストはあるけれど、じゃあ全カードが光ることが購入のモチベーションに繋がるかと言われると……?
むしろ光るカードが減ってもデッキ全体の価格が下がれば、複数買いするユーザーも増えたのではないだろうか。
施策⑩ デュエナマイトパック
シーズン終わりに登場した、変則パックについても振り返っていこう。
成果
再録問題を大きく改善した
最大の功績はシンプルに、手厚い再録だろう。
新製品が次々発売される中で、スーパーレアそれぞれの流通量がちょっと少ない(十分に流通する前に次のアイテムが出てしまう)のでは……?という懸念はあった。
特殊セットで再録しても、今度は特殊セットの新カードが品薄になってしまう……
そんなジレンマに対するアンサーとして、「再録カードのみの豪華パック」は素晴らしい施策だったといえるだろう。
超刺激パックをアップデートした
GoA・ARevで発売された『超刺激パック』の後継アイテムであるデュエナマイト。
超刺激パックもスーパーレアの流通問題にはアンサーとなっていた。
一方で「特定セットと同時発売の豪華版」「セットごとに出たり出なかったり」という仕様は、ちょっと課題でもあった。
通年の基本セットの「まとめ」的に発売されるデュエナマイトは、そのあたりのバランス感をうまく改善した商品となってくれた。
課題
単価と入荷量の問題があった
豪華な内容とはいえ、1パック1000円越えはなかなかの迫力だ。
いつでも買える商品ではないので、「次の給料入ったら買うか~」みたいな待ち方もできない。
単価の影響はユーザーだけではない。
デュエマに詳しくない量販店なんかだと顕著なのだけれど、高額商品の入荷量は渋られることも多いのだ。
結果として、スーパーレアを手に入れやすくするチャンスのはずが、そもそもパックが手に入らない……という、何とも勿体ない状況を招いた面はある。
生産量の調整が難しかった
入荷量の話にも関連するのだけれど、そもそもの生産量が限られていた……というのも課題といえそうだ。
専門店・量販・通販問わず、多くのお店で発売当日にはボックス在庫が枯渇した。
「発売翌日時点で既に買えない」というのは、望ましい状況とは呼べないだろう。
施策⑪ ドリーム・クリーチャーとドリームレア
そして最後に、王道2年間を象徴する存在・ドリームレアの話。

成果
過去クリーチャーの新しいプッシュの形を示した
古くは転生編、近年ならばスター進化やディスペクター、さらにはカイザの切り札として再定義されたボルシャック……と、様々な形で人気クリーチャーをリメイクする試みは行われてきた。
ただ、「2年間に渡り」「新規レアリティを用意し」「セットの目玉として次々と登場する」という施策は流石に前代未聞。
ギラギラ光る専用加工と、「2体以上出ない」というルールによる特別感も相まって「歴代のスターが前線に帰ってきた」感を演出することに成功したと言えそうだ。
トレジャー再録の口実を作った
これ、特に《ボルシャック》関連は賛否あったのだけれど……少なくとも、ジョーカーズのように単発では再録しづらいカード群に再録機会を与えたこと自体は良かったのかな・と考える。
いやまぁ、《メイプル超もみ人》を再録するなら《モモダチ モンキッド》だろう、と言われたらその通りなのだけれど……
《ボルシャック》関連も含め、「再録機会を用意したのは良かった」「ただし選出内容の吟味が不足していた」くらいの評価が適切かな・と考える。
課題
高レアリティの強カードは時代錯誤だった
ここに関しては本当に……ドラゴン・サーガにおいて、ダブルビクトリーの入手性の悪さがいわゆる「資産ゲー」を招いたこと・その反省からLEGENDやマスター&キングマスター、オーバーレアは確定封入になったことはご存知の通り。
いわば《レッドゾーン》も《ジョニー》も《モモキング》も、「みんなが手に入れられる切り札」だったことが愛された理由の一つだろう。
なんでそこを逆行してしまったのだろう。
いや、もちろんスーパーレアだって狙ったカードをピンポイントで当てようとしたら3箱くらい買う羽目にはなる。
ただ、関連カードにせよ英雄譚デッキにせよ、「ドリームレアありき」のカードや商品が存在するのが始末に悪かったのではないだろうか。
あくまで「2種類目のオーバーレア」くらいの位置づけとし、希少性を売りにするのは絵違いで良かったのでは?と考えてしまう。
セットの焦点がブレた
ドリーム・クリーチャーが王道篇の世界観と合致しないことで、セット全体が歪んだことも問題だったと言える。
ジョーカーズやデモニオは明らかにセット内でイレギュラーな存在だったし、比較的セットに馴染んでいた《レッドゾーン》関連カードも、冷静に考えると《ヴリドガルド》関連カードの枠を奪っていた感が残る。
さらに言うならば、本来はセットの顔を務めるはずのオーバーレアの存在感もちょっぴり薄まってしまった。
総括
ここまで、11項目にわたって王道2シリーズを振り返ってきた。
商品のデザインやコンセプトの観点を中心に語ってきたけれど、少し補足するならば競技環境はかなり整っていた――特に『ファンタジーBEST』組にメスが入って以降は、いくつか突出したデッキはあれど良環境が続いていた・と言えるのではないだろうか。
ただ一方で、超化獣や3色陣営のデザイナーズデッキを組もうとすると、ピリッとしないまま終わってしまった面もある。
総合的に見ると、「競技視点では比較的良い環境だった」「テーマデッキ・デザイナーズデッキで遊ぼうとすると課題が残った」みたいなシーズンだったとまとめられそうだ。
これは元ガチまとめライターのみすみ氏が超天篇を総括して述べた「ゲームとしては成功したが、おもちゃとしては失敗した面もある」という言葉にも置き換えられる。
当該の記事はこの言葉を受け、以下のように続いている。
「どちらが重要といった話ではなく、トーナメントシーンとカジュアルシーンの両方が、デュエル・マスターズに欠かせないものだ。
両立が難しいことは百も承知だが、ここから上手く軌道修正が行われていくことを期待しよう。」
超天篇から6年が過ぎた王道W。少しずつ軌道修正が行われつつも、まだ道半ばということなのだろう。
来シーズン、そしてその先の未来で、より幅広いファンが楽しめるデュエル・マスターズが訪れることを願い、本記事を締めくくりたい。











































