はじめまして。あるいはお久しぶりです。北白河と申します。
二回目になりましたこの不定期コラムは、『いわゆるデッキビルダーと呼ばれるたいへんめんどくさい少数派の人種が、どうすれば最低限自分自身を満足させるに足るデッキを組めるようになるのか』についての方法論や心構えについてだらだら語っていくものとなります。
要するに、更新がない日の穴埋めコラムです。
当コラムでは「デッキビルダーたる者、かくあるべし」というテーマを毎回立ててそれについて深掘りするという形で、デッキビルド論……というより、デッキビルドの際の心構えを語っていく予定です。
幸いにも前回の記事にいい反響がありましたので、「当たり前の話」も含め、ネタが続く限りやっていこうと思います。
というわけで、今回のテーマは。
デッキビルダーたる者、言語化をすべし。
前回の「カードに詳しくあるべし」でもちらっと語った概念ですね。今回もやっていきましょう。
目次
「なぜ」言語化をすべきなのか
これについては、二つほど理由がありまして。
「客観的な視点でアイデアやデッキを見直すことができるから」、そして「他者とのスムーズなアイデアの共有ができるようになるから」です。
まず前者の利点としては言わずもがな。いったん頭の中にあるものを後で見返せる形で出力しておくことで、他のアイデアと比較したり修正したりできるんですね。
もちろん、やろうと思えば頭の中だけでできる人もいると思うんですが……原則として人間の脳ってマルチタスクに弱いので、よっぽどでないと絶対なんか見落とすんですよね。特にデッキを考えてるときっておおむね興奮状態なので、自力で立ち返るのはなかなか難しいんですよ。
また、主観というものはどうしても歪んでしまうもの。愛着とかオリジナリティのある選択肢を優先してしまい、正しい答えが導けなかった経験は皆さんも多数あると思います。
こういう時に、いったん客観的な文章の形に整えておくと、あとで読み返して「いやそれはおかしい」「こっちのカードの方がデッキに合ってない?」などより正しい判断が下せるようになるのです。
こうしてデッキを客観的に見れるようになると、「こういうカードが欲しい」「よりよいギミックが必要」みたいな改善点を見つけやなくするんですよね。要するに、やることの焦点が分かりやすくなります。
何にせよ、アイデアを主観から解き放って一度プレーンな目線で眺める行為はデッキの完成度を高める上でとっても重要……というわけです。
また、こうして客観的な形でデッキやアイデアを出力できると、他のプレイヤーに「こんなデッキを組んでるんだけど、こういう要求を満たせるカードはない?」のように具体的な形で共有と質問ができるようになるんですよね。
質問くらい誰でもできるだろ……と思われる方もいるかもしれないんですが、いったん客観的に見れる形での出力を経ていないと「なんか相性のいいカードないですか」みたいなぼんやりした内容になったり、脳内にある大前提(個人のこだわりや、現行のデッキレシピなど)を明言化しないまま質問してしまったりとコミュニケーションエラーが多発するんですよね。具体的にはベルカードの要望欄で多発しています。
他者に協力を仰いで複数人でデッキを考えることは単純計算で二倍以上の思考リソースを使えて大変お得なんですが、この共有と質問のフェイズで躓くとまともな回答が返ってこず完全に時間を無駄にします。それなら、最初の段階でちゃんと言語化して質問内容を練っておいた方がいい……というわけです。
ついでに言うと、こうして言語化しておくと前回語った「検索ツールの利用」も格段にやりやすくなるのは言うまでもありません。検索ツールに入力する情報も、「言語」ですからね。
要するに、言語化は「アイデアや要求を自分自身の主観から解き放ち、客観的に扱うための手段」なのです。
もうちょっと大きく言うと、「自分のこと(=デッキやアイデア)を自分でより深く知る手段」ともいえますね。
「どうすれば」言語化できるのか
で、具体的なやり方なんですが……これはとってもシンプル。
「デッキを組んだり回したりするうえで考えたことを、紙なりメモ帳アプリなりにひたすら記録し」「あとから読み返す」だけです。言語化する媒体は何でもいいので、慣れてるものを使いましょう。
別に取り留めのない内容であってもかまいません。「現時点でのデッキレシピ」「なぜこのカードを採用したのか」「こういうコンボを狙いたい」「実戦でこういうことがあった」など、その場その場で考えたことならなんでもOK。
どちらかというと、「こんなん書かんでええやろ……」というどうでもいいことも残さず書いておくことをおすすめします。
で、後から(可能であれば、翌日などに一回頭をプレーンな状態に戻してからやることをお勧めします)そのメモを読み返して、客観的に評価してやるわけですね。この際「本当に当時の自分が考えていたことは正しいのか?」「よりよい手段はなかったのか?」など、ある程度批判的に眺めてやるとより捗ります。
こうして「言語化した過去の自分自身と問答する」ことで、より思考を深めていけるわけですね。
これの何がうれしいって、ほっとくと絶対忘れる部分とも問答できるんですよ。人間の短期記憶、この世で一番頼りにならないくせに本人だけはめちゃくちゃ頼りにしがちですからね。俺はこれで何度も人に迷惑をかけてきました。
もちろん、こうして考え直した内容も言語化しておけば、さらに未来の自分が考える材料が増えてお得なのは言うまでもありません。再仕込み醤油が旨いのとと同じ理屈ですね。
もっと効果を期待するなら、「言語化したデッキやアイデアを、誰に読んでも伝わる形に成形する」作業もおすすめ。要するに、自分専用のデッキ解説記事のような形にしてしまえばいいんです。
「端的なデッキ概説」「デッキレシピ」「全カードの採用理由や使い方」「デッキの回し方」などの情報を誰かに伝えるつもりで言語化してまとめると、改善案や詰め切れてなかった要素がボロボロ出てくること間違いなし。こうなれば、すぐさまデッキを修正したうえでまた言語化プロセスを回せます。
解説記事って、そのデッキのことを客観的に知り尽くしてないと書けませんからね。なんなら、はじめからデッキ作成と並行して書いてみたり、他のプレイヤーに見てもらって意見を求めたりするのもいいでしょう。
ついでに言うと、ブログやnoteの形にしてそのままネットの世界に公開してみるのも手です。文章って、「自分以外に読まれること」を意識しだすとめちゃくちゃピリッとしてくるんですよね。でも俺が現にこうだから説得力ないな……。
こうして他者の目を意識するとより文章は客観的になり、あとで見返した時に頭に入りやすくなってくるというわけです。なんなら、その記事を読んだ人から追加情報とかもあるかもしれませんし。
あと、これは本題からはちょっとずれるんですが……言語化を行うと、思考の経路において「ここは主観でやってる」「ここは客観的にやってる」という境界線が見えやすくなるんですよね。
実はこの「主観的な部分」って別に他人に見せなくていい部分なんですよ。ここは極論「あなたにとってだけ重要な部分」であり、それを誰かと共有しても効果が薄いですからね。やっぱり言ってる本人のせいで説得力ないな……。
こうして主観的な部分を省いて客観的な部分だけを過不足なく端的に表現できれば、アイデアは自分にも他人にも理解しやすくなりデッキ理解もさらに進むことでしょう。
それなら主観は全く不要なのかと言いますと……これはまあモチベーションに関わる部分なので不要ってわけではないんですね。見せる必要がないだけで。
要するに、主観は車の燃料、客観は車のエンジンや機体そのものと思って下さい。どっちが欠けてもデッキ完成というゴールには辿り着けませんが、修理や改造のために直接弄ったり専門家に見てもらう必要があるのはエンジンや機体の方です。
なんだか同じことを何度も言い続けてるビジネス書みたいになってきたので、本文はこのへんにしておきますか。
結局「何」が言いたいのか
デッキビルダーたる者、言語化により自分とデッキのことを深く知ったうえで、主観と客観の境界線を認識すべし。
まあ、最終的には理想論です。できる範囲でやっていきましょう。
なんなら、主観とか客観とかうだうだ言ってるところを全部忘れて「文章の形にしてまとめることでデッキビルドはやりやすくなる」だけ覚えておいてもらえれば大丈夫です。じゃあ最初からそう言えよ!
思考の中で止まっているもの、どんどん吐き出していきましょう。そのうえで、牛の如く反芻していけるとなおよしです。
というわけで、次回があれば(具体的に言うと最低限の反響があれば)「使わないデッキのことも知るべし」でまたお会いしましょう。北白河でした。