突然ですが、《ライトニング・ボルテックス》というカードがあります。手札1枚をコストに相手の表側表示モンスター全てを破壊する、とても強力なカードです。
【
通常魔法 】
手札を1枚捨てる。相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターを全て破壊する。
正直な話、とても強いカードだと思っています。アドバンテージの面から見ても2体の破壊に成功するだけで2:2交換となり、大量展開が主流の現代ではそれ以上の成果も期待できるため、デッキの汎用枠として充分の性能でしょう。
実際、過去にはインフェルノイドに採用されていた実績もあり、真竜で大会に参加していた知人も愛用していました。もっとも現代では、こうした汎用除去魔法に逆風なため、取りあえず採用する、といったカードにはなりえません。しかしポテンシャルは高く、除去が苦手なデッキには頼れる一枚となるでしょう。
このとおり書いてあることを読み取れば強いのですが、問題点があります。
(制限カード)
【
通常魔法 】
①相手フィールドのモンスターを全て破壊する。
【 通常魔法 】
フィールドに存在する全てのモンスターを破壊する。
まず、このような相互互換の存在。特にこれらは手札コストが不要な分《ライトニング・ボルテックス》よりも使いやすく、裏側モンスターを破壊できる点でも勝っています。
中にはこれを相互互換と呼ぶのに違和感を覚えた方もいるでしょう。上位互換と呼ぶのが適切であるかのようにも思えます。
なにより手札1枚のコストはデッキによっては重く、展開の邪魔をすることも考えられます。
しかし、この手札コストという概念は決して、ただのデメリットではありません。わたしが《ライトニング・ボルテックス》を《サンダー・ボルト》や《ブラック・ホール》の下位互換ではなく相互互換とするのは、それが原因なのです。
遊戯王OCGにおける手札コストという概念は、基本的に強力な効果を発動する際の生け贄、デメリットのような扱いだと思っています。実際、手札を1枚捨てたりしなければ発動できない効果ですし、コストという言い方からしても間違ってはいないでしょう。
とはいえ、わたしも現代遊戯王に携わる身。デメリットをデメリットだけとは考えていません。《銀河戦士》など、手札コストを展開の一部に含み、メリットにしてしまうカードもあり、特に近年はそういったカードが多いように感じられます。
手札コストが手札コストで終わる時代は、いつの間にか過ぎてしまいました。コストとするカード次第でそれはメリットに変わり、またデメリットのまま終わることもあります。いつしか手札コストという単純な要素は、プレイングや構築力を試される要素となっていたのでしょう。
今回は手札コストをよりよく扱うために複数のカードを交えながら、手札コストのメリット・デメリットについて紐解いていきます。
目次
メリット1,手札を指定された場所に送ることができる
手札ではなく墓地にいてほしい、除外されていてほしい、デッキに眠っていてほしい、というようなときは手札コストにしてしまいましょう。
特に墓地に送ることをコストとするカードは多く、墓地で発動する効果も多いため、コンボに繋げやすいです。墓地に送ることで効果を発動する効果や、墓地にあることで意味を持つカードをコストにすることで、手札を無駄にしないどころか、展開の一部に組み込むことが可能なのです。
《ライトニング・ボルテックス》もこれに含まれますね。
【
効果モンスター 】
星
5 /
光 /
機械族 /
攻2000
/
守0
手札の光属性モンスター1体を墓地へ送って発動できる。
このカードを手札から表側守備表示で特殊召喚する。
このカードが特殊召喚に成功した時、
デッキから「ギャラクシー」と名のついたモンスター1体を手札に加える事ができる。
「銀河戦士」のこの効果は1ターンに1度しか使用できない。
例えば先に挙げた《銀河戦士》は手札の光属性をコストにします。光属性ならなんでもコストにできるため、手札に来た光属性モンスターを簡単に埋葬できます。
このカードは様々なコンボを繋ぐことができるため、メリット1はこれを例にして話していきます。
【
効果モンスター 】
星
1 /
光 /
機械族 /
攻100
/
守100
このカード名の②③の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。
①:このカードのカード名は、フィールド・墓地に存在する限り「サイバー・ドラゴン」として扱う。
②:このカードが特殊召喚に成功した場合に発動できる。このカードのレベルをターン終了時まで5にする。この効果の発動後、ターン終了時まで自分は機械族モンスターしか特殊召喚できない。
③:このカードが墓地へ送られた場合に発動できる。自分のデッキ・墓地からこのカード以外の「サイバー・ドラゴン」1体を選んで手札に加える。
この《サイバー・ドラゴン・ヘルツ》は墓地に送るだけでサーチ効果を使えます。言い換えれば墓地に送らなければこの効果は使えません。こうした効果を能動的に使用することができるのは手札コストを要するカードのメリットでしょう。
《銀河戦士》と合わせることで2枚のカードをサーチしつつランク5に繋げられるため、非常に相性のいいカードです。こうしたカテゴリを越えた力を生み出せるのも手札コストの強みです。
【
効果モンスター 】
星
8 /
光 /
ドラゴン族 /
攻3000
/
守2500
このカードは自分フィールド上に存在する攻撃力2000以上のモンスター2体をリリースし、手札から特殊召喚する事ができる。このカードが相手モンスターと戦闘を行うバトルステップ時、その相手モンスター1体とこのカードをゲームから除外する事ができる。この効果で除外したモンスターは、バトルフェイズ終了時にフィールド上に戻る。この効果でゲームから除外したモンスターがエクシーズモンスターだった場合、このカードの攻撃力は、そのエクシーズモンスターをゲームから除外した時のエクシーズ素材の数×500ポイントアップする。
【
効果モンスター 】
星
8 /
光 /
戦士族 /
攻2800
/
守2600
自分フィールド上に「フォトン」または「ギャラクシー」と名のついたモンスターが存在する場合、このカードはリリースなしで召喚できる。この方法で召喚に成功した時、このカードの攻撃力はエンドフェイズ時まで1000ポイントダウンし、自分の墓地の「銀河眼の光子竜」1体を選択して表側守備表示で特殊召喚する。
他にも《銀河戦士》は《銀河眼の光子竜》を墓地に送り特殊召喚したあとに《銀河騎士》をサーチし、そのまま召喚することで即座にランク8を作れます。この《銀河戦士》は、一見デメリットでしかない手札コストが展開の要となっているのです。
墓地へ送る以外にも、除外なら《ネクロフェイス》の効果を発動するのに使え、デッキに戻すなら《マシンナーズ・フォース》のようなデッキにいて欲しいカードをデッキに戻すのに使えます。
メリット2,強力な効果を使える
前述した《ライトニング・ボルテックス》のように、手札コストを要するカードには強力な効果を持つカードが多く存在します。
【
速攻魔法 】
①:手札を1枚捨て、フィールドの魔法・罠カードを2枚まで対象として発動できる。
そのカードを破壊する。
例えば、この《ツインツイスター》はわかりやすく強い効果を持っています。《サイクロン》を2枚同時に手札に呼び込むよりも《ツインツイスター》1枚を引く確率の方が高いので、相手の魔法・罠への対処が簡単になりますね。破壊するのが1枚だけでいいのも使い勝手がいいです。
手札1枚を必要とするカードですから、それに見合った力を持つカードが多いのは自明の理ですね。例外はありますが。
メリット3,不要な手札を処理できる
デュエルを勧める都合上どうしても不要になってしまうカードは出てきてしまいます。サーチ先を使い切ったサーチカード、融合先のいなくなった融合素材などが該当しますね。
【
永続魔法 】
「ブリリアント・フュージョン」は1ターンに1枚しか発動できない。
①:このカードの発動時に自分のデッキから「ジェムナイト」融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体を、攻撃力・守備力を0にしてエクストラデッキから融合召喚する。
このカードがフィールドから離れた場合にそのモンスターを破壊する。
②:1ターンに1度、手札の魔法カード1枚を捨てて発動できる。
このカードの効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力・守備力を相手ターン終了時まで元々の数値分アップする。
【
融合モンスター 】
星
5 /
地 /
天使族 /
攻2300
/
守1400
「ジェムナイト」と名のついたモンスター+光属性モンスター
このカードは上記のカードを融合素材にした融合召喚でのみエクストラデッキから特殊召喚できる。このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分のメインフェイズ時に1度だけ、自分は通常召喚に加えてモンスター1体を通常召喚できる。
この2枚を出張採用している人は、初手に《ブリリアント・フュージョン》を引きたいのとデッキにジェムナイトを置きたい関係上、複数枚の《ブリリアント・フュージョン》とジェムナイトモンスターを入れている人も多いでしょう。
手札に来てしまったジェムナイトと2枚目以降の《ブリリアント・フュージョン》は悪く言えば邪魔になってしまいます。一応リンク素材やアタッカーにはできますが、召喚権の取り合いになるデッキがほとんどだと思います。
この余ったジェムナイトや《ブリリアント・フュージョン》を手札コストにしてしまえば無駄はありません。少なくともデュエルが終わるまで、ずっと手札に抱えておくよりは有意義な使い方だと思います。
メリット4,手札を減らせる
これは果たしてメリットなのか? と疑問に思われる方もいると予想しています。実際、手札が減ることはデメリットですよね。
しかし、これもメリットととして扱えます。手札0で強力な効果が解放されるインフェルニティモンスターが、その代表例ですね。他にも相手の手札を参照するカードの対策、というのは少しピーキーですかね。
広く長い遊戯王界では、手札を減らすことがメリットになることもあるのです。
メリット5,相互互換のカードを開発できる
これは制作者目線ですね。先に挙げたような《ツインツイスター》が良い例です。個人的には《振り出し》の相互互換が欲しいですね。
相互互換のカードが出ると、デッキ構築の個性が広がるので、わたしは好きです。
デメリット1,手札がなければ効果を使用できない
ここからは手札コストのデメリットに切り換えていきます。
やはりコストという単語がついているのですから、デメリットはあって然るべきです。
これは、書いてある通りですね。手札0の状態で引くと、使うことすらできません。
デメリット2,効果を無効にされたときのディスアドバンテージが大きい
わたしはよく《トレード・イン》というカードを使います。
【
通常魔法 】
手札からレベル8のモンスターカードを1枚捨てる。自分のデッキからカードを2枚ドローする。
レベル8に限定した手札交換ですね。墓地にレベル8を送りつつデッキを掘り進めることができるので、重くなりがちなレベル8を多用するデッキには必須級の古き良きカードです。
ただ、このカードを無効にされると(手札にもよりますが)きついです。発動するために《トレード・イン》と手札のレベル8の2枚を使っているので、無効にされると単純に2枚の手札がなくなってしまうのです。
これは手札コストを要する他のカードでも同じことで、見出しの通り、無効にされたときのディスアドバンテージが大きくなります。大いなる力には大いなる責任が伴うってやつですね。
カード効果を無効にする効果は基本的に1:1交換ですが、コストを要するカードを無効にすると1:2交換になるのです。そこで無効にするかどうかは嗜好や実力を試されますが、アドバンテージ差をつけられてしまうのはきついですね。
デメリット3,手札を稼げないデッキだと使いづらい
手札コストを使うと手札が減ります。当然のことですが、重要です。デッキによってはメリット1で前述したような効果を発動できなかったり、そもそも手札が足りなかったりすることがあります。
手札遣いが荒いデッキ、と言い換えてもいいと思います。攻めきるのに手札が多く必要だとか、《融合》を使うために手札が必要だとか。《デビル・ボックス》デッキ辺りが良い例でしょうか。単純に手札が減るのは痛手になります。
とはいえ攻めきるために《ツインツイスター》を採用するデッキも多いと思うので、一概には言えませんね。
まとめ
手札コストという字面だけ見ると悪いイメージしか浮かびませんが、ここで挙げただけでも、多くのメリットに変換できます。そのためデッキによっては、敢えて手札コストを必要とするカードをデッキに入れる、といった構築も有り得るわけですね。
わたしは墓地アドバンテージを重視している節があるので、《サンダー・ボルト》や《ブラック・ホール》より《ライトニング・ボルテックス》を好んで使っています。デッキによっては始動札になったりもして、案外使い勝手がいいんですよ。
特に《ライトニング・ボルテックス》は思い入れの深いカードで、それを紹介したいがために今回の記事を書かせていただきました。
わたしが《ライトニング・ボルテックス》を好きなように、《死者への手向け》や《ブラック・コア》を好んでいる人も多いでしょう。そういう人が、手札コストがあるからと、デッキから外すことなくメリットに気づき、堂々と手札コストを払える手助けになれたらと思います。
今回は除外やデッキに戻すコストについてはあまり触れませんでしたが、こちらも使い方によっては大きなメリットになります。是非探してみてくださいね。
手札コストはメリットにもなりデメリットにもなります。これを機に、手札コストを必要とするカードを使ってくれる人がいたら幸いです。