※この記事は「眠れる巨人サズシン事件」の解決編となります。前記事を見ていなくともデッキ紹介記事としては読めますが、ぜひ事件の内容をご覧になり、推理したうえでご覧ください。
あらすじ
一度、事件を整理しようか。
まず、事件現場はこの山荘「ガチまとめ」。外は激しい吹雪で部外者が立ち寄るのは不可能だ。ある種の密室殺人といったところか。
被害者は「カーナベル大学遊戯王部」に所属している「屋根陸」。かなり口が軽い印象を受けたが、問題は「容疑者の誰とも直接接点がない」という事実。いやまあ同じサークルらしいんだけど。
被害者の死亡時の状況は、「フィールドに置かれた《眠れる巨人ズシン》」。つまり彼は「先攻1ターン目から《眠れる巨人ズシン》を召喚していた」ということが分かっている。
このカードは通常召喚できない。ズシンカウンターが10個置かれた自分のモンスター1体をリリースした場合のみ特殊召喚できる。①:1ターンに1度、手札のこのカードをターン終了時まで相手に見せ、自分フィールドのレベル1通常モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターにズシンカウンターを1つ置く。②:このカードは他のカードの効果を受けない。③:このカードがモンスターと戦闘を行うダメージ計算時に発動する。このカードの攻撃力・守備力はダメージ計算時のみ、そのモンスターの攻撃力+1000の数値になる。
さらに犯行時刻だれもアリバイが無いことも判明しているので全員が容疑者たりえる。
その容疑者というのはこの4人。
同じく「カーナベル大学遊戯王部」に所属している「御園」、「波見」、「日向吾」の三人。そして山荘の管理人「Kムカイ」。
当然全員がデュエリストであり各々の所持デッキは1つずつ。
――つまり、デッキ内容から犯人を推理する必要がある!
それぞれのデッキを見た後・・・
「……これでみなさんのデッキは見終わりましたね。」
日向吾「それで、犯人は分かったんですか!?」
「まあ落ち着いてください。その前にみなさん……。」
正直失敗だった。デッキを取りに戻らせたとき全員で行くべきだった。一人を除いてデッキを改変したようだ。ズシンを倒せるギミックを抜いたようだな。
しかし急いで改造したせいだろう、痕跡が残っている。一人ずつ指摘するか。
「デッキを改造してきましたね?まったく、証拠の隠ぺいはダメでしょう。」
「Kムカイさん、あなたのデッキは【天馬ブラザーズ】を名乗りながら《邪神アバター》が入っていないのはおかしいですね。」
Kムカイ「ちょ、ちょっと手に入らなくて……。」
「レアリティまでこだわっておいてそんなはずがないでしょう!」
Kムカイ「確かに疑われたくないあまり《邪神アバター》を抜いたのは認めます。ですが私は犯人じゃない!」
「分かっていますよ。とにかく注意したかっただけです。確かに《邪神アバター》でズシンを倒すのは簡単です。」
このカードは特殊召喚できない。自分フィールドのモンスター3体をリリースした場合のみ通常召喚できる。①:このカードが召喚に成功した場合に発動する。相手ターンで数えて2ターンの間、相手は魔法・罠カードを発動できない。②:このカードの攻撃力・守備力は、「邪神アバター」以外のフィールドの攻撃力が一番高いモンスターの攻撃力+100の数値になる。
ズシンはダメージ計算時に相手モンスターの攻撃力を上回るが、《邪神アバター》は常時100上回る。ズシンではアバターに勝つことができないのだ。
「日向吾さんはデッキにズシンを倒すギミックが残ったままですね。じゃあなんでデッキを取りに行くとき焦ったの?」
日向吾「何か含みを感じる……。確かにありますが……しかしデッキに2枚ですよ?都合よく引けるわけないでしょう。」
①:このカードは相手フィールドのモンスター1体をリリースし、手札から相手フィールドに攻撃表示で特殊召喚できる。②:相手フィールドに「壊獣」モンスターが存在する場合、このカードは手札から攻撃表示で特殊召喚できる。③:「壊獣」モンスターは自分フィールドに1体しか表側表示で存在できない。④:相手が「海亀壊獣ガメシエル」以外の魔法・罠・モンスターの効果を発動した時、自分・相手フィールドの壊獣カウンターを2つ取り除いて発動できる。その発動を無効にし除外する。
「ズシンは相手の場にモンスターがいないとき何もできません。召喚も何もせずただ【壊獣】をドローするのを待つだけで簡単にリリースできますよ。」
あらゆる効果を受けなくても召喚条件によるリリースには関係ない。
「ただし、犯人は日向吾さんでもありません。」
御園「じゃあ波見!お前か!?そのエクストラ怪しいぞ!」
「確かに波見さんはあのモンスターを抜いていますね。そう《SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング》を。☆4エクシーズが主体のデッキでホープだけピン挿しは明らかに怪しいです。そしてエクストラの枚数は14枚。ライトニングが入っていたとみて妥当でしょう。」
光属性レベル5モンスター×3
このカードは自分フィールドのランク4の「希望皇ホープ」モンスターの上に重ねてX召喚する事もできる。このカードはX召喚の素材にできない。①:このカードが戦闘を行う場合、相手はダメージステップ終了時までカードの効果を発動できない。②:このカードが「希望皇ホープ」モンスターをX素材としている場合、このカードが相手モンスターと戦闘を行うダメージ計算時に、このカードのX素材を2つ取り除いて発動できる。このカードの攻撃力はそのダメージ計算時のみ5000になる。
《SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング》はズシンの効果を①の効果で封殺できる。さらに自身の攻撃力変動効果も合わせると5000をダイレクトに通せるのだ。
一見いちばん現実的だろう。
しかし、
「しかし、波見さんもまた犯人ではありえないのです!」
辺りが静寂に包まれる。
ここまでの3人は犯人でないとすると……。
残る一人に全員が注目する。
「犯人は御園さん、あなたです!」
御園「そんな!違う!俺じゃない!このジャンクデッキにズシンを倒す要素なんてないだろ!?」
「まず他の方が犯人でない理由を説明しましょうか。ヒントは遺体の状況にありました。屋根陸さんのフィールドにはズシンが{残っていた}んです。この状況をつくれるのは他の方では不可能なのです!」
Kムカイ「私のアバターではたった100の戦闘ダメージのあとズシンを破壊してしまう……。」
日向吾「壊獣ではリリースして対処するだけ……。」
波見「ライトニングでは5000以上の戦闘ダメージは与えられない……。」
御園「お、俺だってそうさ。それどころかズシンを倒す手段だって無いんだ!波見みたいにエクストラを抜いたような痕跡だって無いだろう?作りかけだって言ってるじゃないか!」
「確かにエクストラは一見未完成です……が!そもそも【ジャンク】に《ジャンク・ウォリアー》が最初から3枚確定している時点で怪しいですよ。このエクストラデッキ……これで十分なのでしょう?」
容疑者だった人たちが目を剥く。
波見「まさか…、そんな不完全なエクストラでもいいようなデッキなんて……。」
「それにこの【ジャンク】、なんで《ジャンクBOX》が入っているのか説明できますか?」
御園「そ、それは……!」
やはり図星のようだ。となるとやはり、
「ここに入っていた凶器を急いで取り替えたのはもう分かっています。そう、ここには真の凶器、《スクラップ・フィスト》が入っていた!!そうですね?」
①:自分フィールドの「ジャンク・ウォリアー」1体を対象として発動できる。このターン、その自分のモンスターが相手モンスターと戦闘を行う場合、以下の効果を適用する。
●相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠・モンスターの効果を発動できない。
●対象のモンスターが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ相手に戦闘ダメージを与える。
●相手が受ける戦闘ダメージは倍になる。
●対象のモンスターは戦闘では破壊されない。
●戦闘を行った相手モンスターはダメージステップ終了時に破壊される。
《ジャンクBOX》の枠に《スクラップ・フィスト》があったなら全て説明がつく。
《スクラップ・フィスト》の『●相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠・モンスターの効果を発動できない』効果が適用されているとき、ズシンは攻撃力を上げることはできず、攻撃力0の状態でダメージを計算、そして2倍の戦闘ダメージを受けてしまう。
《ドッペル・ウォリアー》のトークンや、《ボルト・ヘッジホッグ》の攻撃力を足せばワンショットキルも簡単というわけだ。
これで場にズシンが残ったままである説明もつく。
そして・・・
御園は一転、静かになってしまっている。
御園「……どうやらお見通しらしい。そうだ。俺が屋根陸を殺したよ。あの憎き屋根陸をな。」
御園「しまったな。攻撃力を上昇させやすい《ハンディ・ギャロップ》や、自分のライフを削るための《破壊竜ガンドラ―ギガ・レイズ》を抜いてもう少し【ジャンド】に近い構築にすべきだったか。エクストラもそうだな。」
「観念したか!神妙にお縄につけ!」
これも言ってみたかった!
御園「古くないか?しかし、刑事さん。取り締まるならヤツを早く捕まえてくれていればこんな事にはならなかっただろうに……。ああ、俺の〈御園デュエルの園〉を小ばかにしやがって……。」
「動機は署でゆっくり話そう。」
~
──これがあの夜の真相だ。
もともと善人である御園を殺人にまで駆り立てたある意味での真犯人は死んだ。
そして、屋根陸の身辺を調べるうちに判明した彼の所属していた闇の組織「グルーズ」。
実は御園があの「DDDT(ダーク・ドキドキ・デュエル・トーナメント)」に参加していたという新事実。
──デュエル刑事の物語はまだ始まったばかりである──
もう書かないぞ