はじめに
王来MAX、本格始動。
四月初頭の「キングマスタースタートデッキ」のリリースを経て、ついに発売された王来MAX第1弾「鬼ヤバ逆襲S-MAX!!」。
既存のどのカードでもロックされない新カードタイプ「タマシード」を携えて、王来篇から続くレクスターズ・スター進化の強化はいよいよクライマックスを迎えます。
20周年イヤーの集大成が近付きつつあるアドバンス環境の「今」について、徹底的に解説していきたいと思います!
目次
「最強」の定義
本記事では最強デッキを「デュエル・マスターズ競技環境での相対的な強さ」と定義します。
Tier1とは「環境内に不利なデッキが少ない、あるいは相性差を覆しやすいデッキであり、大会で持ち込みが一番多いと予想される対策必須のデッキ」です。
Tier2とは「Tier1やTier2のデッキにある程度勝てる見込みがあり、大会でも毎回一定数いると予想されるデッキ」です。
Tier3とは「弱点が多い、デッキパワーが低いなどの理由で使用者は少ないものの、特定のメタゲームでは活躍することができるデッキ」です。
先月からのカードプールの変化
王来MAX第1弾の立ち上がりは今のところ静か。
構築が一変したデッキは登場していませんが、いくつかのカードや新デッキタイプが環境への仲間入りを果たしています。
デッキタイプ単位で新たに誕生したのが、【デイガライオネル.Star】。
キーカードとなるのは、デッキ名にも冠される《「正義星帝」<ライオネル.Star>》。
光のタマシードを展開すると同時に、《アルカディアス・モモキング》や《グーゴル<XENOM.Star>》などの制圧力に優れたレクスターズへと進化。
相手の行動を制限しながらバトルゾーンを掌握し、進化クリーチャー軍団によるビートダウンや、大量の進化元を確保してからの《無限銀河ジ・エンド・オブ・ユニバース》での勝利を目指します。
大量に採用されたトリガータマシードによる受けの堅さがこのデッキ最大のセールスポイントで、構築にもよりますがおおよそ20枚前後のトリガーが採用されます。
受け札としてのタマシードを直接的にケアする手段は現状ほぼなく、呪文ロックや召喚ロックを絡めてシールドを割り切って勝利するデッキさえ苦もなく受け切れるのは独自の強み。
主戦場はオリジナルですが、アドバンスにおいてもビートダウンが多いメタゲームでは活躍が期待できるデッキです。
カード単位で活躍しているものもいくつか存在しますが、特にアドバンス環境ならではの新戦力と呼べるのが《インフェル星樹》です。
バトルゾーンに出た時にクリーチャーではないカードを2枚まで持ち主のマナゾーンに置く能力、自分のカードがバトルゾーンからマナゾーンに置かれた時にドローできる能力を持っています。
ドラグハートが用いられるアドバンスではオリジナル以上にカード除去の需要が高いのはもちろん、アドバンス環境では《禁断 〜封印されしX〜》を採用することでゲーム開始時に封印という「クリーチャーではないカード」を用意可能。
アドバンス環境の《インフェル星樹》は実質的に無条件で2ブースト・2ドローできる、とんでもないアドバンテージメーカーと化します。
本体スペックも良好で、コスト5、単色、ドラゴン、2打点、G・ストライク付きと弱い要素がありません。
《禁断 〜封印されしX〜》を一緒に採用する必要はあるものの、たった5マナで2ブースト・2ドローしつつバトルゾーンに2打点のドラゴンが残るのは、起こっている事象があまりにも強力。
現時点では5→8の動きで《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》まで綺麗に繋がる【ガイアッシュ覇道】での活用例が多いですが、他のデッキでも検討の余地があるパッケージだと筆者は感じています。
Tier1
【4cドラグナー】Tier1
引き続きアドバンス環境の旗手を担う、カードパワーとカウンター性能を両立したミッドレンジデッキ。
爆発的なマナ加速から繰り出される、ドラグハートを活用した多角的な攻めや《ドラゴンズ・サイン》+《龍風混成 ザーディクリカ》による多面展開を武器に、デッキパワーの高さでは他の追随を許しません。
かねてより活躍中の【キングダムJO退化】や【赤単我我我ブランド】に加え、【赤緑アポロヌス】も徐々に勢力を伸ばしてきたアドバンス環境。
豊富なトリガーブロッカーで【赤緑アポロヌス】も受けやすく、ビートダウンに対してカウンターで差し切れる【4cドラグナー】は、環境上の立ち位置も非常に良好です。
【キングダムJO退化】Tier1
ついにTier1の仲間入りを果たした、コンボビートダウンデッキ。
アドバンス環境ではオリジナル環境よりも致命的なメタカードを出してくるデッキが少なく、【赤単我我我ブランド】さえもメタカードを1枚も採用していない構築が主流であるため、非常に通りがよくなっています。
安定性や速度といった基礎出力の高さはもちろんのこと、搦め手のバリエーションも豊富なのは本連載で何度もお伝えしている通り。
《アルカディアス・モモキング》と《キャンベロ<レッゾ.Star>》によるロックのおかげで雑多なデッキに勝ち切る性能も高く、デッキタイプが多くなりがちな新弾環境でも活躍が見込めるデッキです。
Tier2
【赤単我我我ブランド】Tier2
引き続きとても強力なデッキではあるものの、速度の面で張り合える対抗馬の増加・それに伴う防御的なデッキの地位向上で相対的に独自の強みを見失いつつある【赤単我我我ブランド】。
トリガーからの展開が強力なデッキが増えてきたため、序盤にシールドをブレイクしておく必要のある《GIRIGIRI・チクタック》の存在がリスクになる場面に出くわしやすくなりました。
《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》が有効に働く対面が徐々に増えてきていることもあり、オリジナルに近しい基盤の構築へと回帰するのも一考の余地があるのかもしれません。
【アナカラーダークネス】Tier2
圧倒的なトップTierというわけではなくなったものの、環境を流動させる装置として一定の活躍を見せている【アナカラーダークネス】。
各種マナドライブGR獣と《絶望と反魂と滅殺の決断》による豊富なリソースを背景に、大量のハンデスと《とこしえの超人》で蓋をしてゲームを掌握し、《S級宇宙アダムスキー》によるLOプランでトリガーからの逆転さえも許さないコントロールデッキです。
その性質上、中盤戦以降に主眼を置いたミッドレンジやコントロールを強烈に抑え込める一方で、【キングダムJO退化】や【赤緑アポロヌス】のような序盤の突破力に優れたデッキを苦手としています。
ビートダウンを見て環境に【4cドラグナー】が増えてきた翌週あたりに、その活躍を押さえ込むような形で【アナカラーダークネス】が増加し、その次にはビートダウンが増えて【アナカラーダークネス】が減少し……というような推移が現在のアドバンス環境の大まかな流れです。
得意不得意が非常にはっきりしているため「不動のTier1」にはなりづらいものの、環境上での立ち位置が明確なので定期的に活躍の機会が巡ってくるデッキタイプだと言えるでしょう。
【青魔導具】Tier2
《卍 新世壊 卍》のアンチメタ性能の高さはアドバンス環境でも健在。
呪文ロックやハンデスをものともせずに粛々とコンボに向かっていけるのはこのデッキにしかないセールスポイントです。
また、環境的に《ガル・ラガンザーク》の通りが良くなってきているのも見逃せない変化です。
【キングダムJO退化】や【赤緑アポロヌス】はメタクリーチャー除去を有した高速ビートコンボとして名を馳せていますが、彼らの持つ除去手段が通らないメタクリーチャーが3ターン目に立てば、一気に優位に立てること請け合い。
ブロッカーを持っているためビートプランも許さず、強固な盤面を築き上げられます。
Tier3
【赤緑アポロヌス】Tier3
4月初頭に鮮烈なデビューを飾り、アドバンス・オリジナル問わず活躍している新時代のビートダウンデッキです。
1ターン目に進化元展開→2ターン目にサーチ→3ターン目に《カチコミ入道<バトライ.鬼>》とテンポよくカードをプレイし、そのまま《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》ともう1枚の侵略先を多重侵略。
コスト1+《カチコミ入道<バトライ.鬼>》+もう1枚の侵略先で計3枚になった進化元を《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》のメテオバーンで墓地に送り、シールドを全て叩き割って勝利します。
攻撃中の全ブレイク+選ばれるだけで2ランデスを有する《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》の突破力はアドバンス環境でも健在。
トリガーブロッカーたシールド追加、あるいは《一王二命三眼槍》のような攻撃そのものを中止させる手段がなければマナ2枚は確実に持っていけるため、被害なく受け切れるデッキは非常に限られます。
あまりにもフィニッシュ力が高すぎるため、最速3ターンでのフィニッシュはもちろん4ターン目に走り始める動きでも十分な速度。
豊富なサーチカードでパーツが集まりきらない事故も起こりづらくなっています。
受けに振り切ったデッキが少ないことも含めて基本的には活躍しやすいフィールドではあるものの、Tier1に君臨する【4cドラグナー】がナチュラルにトリガーブロッカーで受けてくるデッキである点には要注意。
【巨大天門】Tier3
《巨大設計図》による莫大なハンドリソースを元手に次々とブロッカーを展開して盤面を固めつつ、《∞龍 ゲンムエンペラー》や《神聖龍 エモーショナル・ハードコア》で相手のキーカードを無力化して勝負を決めるデッキです。
トリガーはたった4枚ということで【天門】系のデッキとしては防御力に不安があるものの、《神聖龍 エモーショナル・ハードコア》の名称指定による対応範囲の広さは圧巻の一言です。
今回はアドバンスならではのカードを採用した構築を使用したプレイヤーがCSで入賞されてため、サンプルリストではそちらをご紹介しています。
《エンペラー土偶郎》は登場時に自分のブロッカーの数だけGR召喚し、GRクリーチャー全員にシールド・セイバーを付与する光文明・コスト7のブロッカーです。
これに加えて《八頭龍 ACE-Yamata/神秘の宝剣》を採用して《∞龍 ゲンムエンペラー》をマナに送り込み、確実にマナドライブを達成。
GRゾーンに詰め込まれた《カット 丙-二式》や《ソゲキ 丙-一式》によるハンデス・《クリスマⅢ》や《回収 TE-10》によるマナ・墓地回収で、これまでにない角度からの妨害やリソース確保を行えるようになっています。
特にマナ回収は手札を起点に展開していく【巨大天門】では柔軟性を高めるうえで重要なアクション。
うっかりデッキトップからマナに落ちた《神聖龍 エモーショナル・ハードコア》を後から回収して使い回したり、《神秘の宝剣》で自然文明以外のカードを間接的にサーチできたりと、取れるプランの幅がグッと広くなります。
【ガイアッシュ覇道】Tier3
ドラゴン系デッキの定番ブースト札を活用して自分の動きを進めつつも、相手の踏み倒しに反応して飛び出す《流星のガイアッシュ・カイザー》+《勝利龍装 クラッシュ"覇道"》のコンボを隙あらばねじ込んで勝利を目指すデッキです。
新弾のリリースで新たな選択肢として加わったカードが、先述した《インフェル星樹》。
これまで《超英雄タイム》や《極限龍神メタル》が担っていた相手のカードを除去する役割を引き継ぎつつ、自分から《禁断 〜封印されしX〜》を採用することで、5マナ2ブースト2ドローに2打点のドラゴンまでついてくる超アドバンテージカードとしても運用可能。
5マナから8マナまで綺麗に伸びることで《流星のガイアッシュ・カイザー》に頼らずとも《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》を出せるようになり、その他の大型ドラゴンにもアクセスしやすくなります。
さらに、G・ストライクまで持っている点も「受けてカウンター」を狙いたい【ガイアッシュ覇道】のコンセプトにマッチしており、デッキともよく噛み合った選択肢となっています。
環境のまとめ
今まで
カードパワー・防御力・決定力の全ての面でバランスが良く、幅広い対面に勝ちを狙える【4cドラグナー】は文句なしのTier1。
このデッキに唯一明確な有利を取れる【アナカラーダークネス】や、その【アナカラーダークネス】に有利かつ圧倒的なパワーで多くのデッキの貫通を狙える【キングダムJO退化】・【赤単我我我ブランド】・【赤緑アポロヌス】などの高速ビートダウンデッキがその下で活躍しています。
ただし、環境の中心として流れを作っているのは【4cドラグナー】よりもむしろ対処困難な攻めを繰り出すビートダウンデッキ群です。
これらのデッキは意識すれば対策はそれほど難しくないものの、寄せたデッキを使うと今度は【アナカラーダークネス】や【青魔導具】、【青黒スコーラー】といった「受け殺し」性能の高いデッキに対抗しづらくなってしまいます。
1:3〜4ターンという高速で、生半可な受けでは太刀打ちできない量・質の打点を押し付ける、高速ビートダウン
→【キングダムJO退化】・【赤単我我我ブランド】・【赤緑アポロヌス】
2:攻めるデッキと正面からやりあえる防御力を有しつつも、高いカードパワーを背景とした押し付けとフィニッシュ力も持つカウンター軸ミッドレンジ
→【4cドラグナー】・【ガイアッシュ覇道】
3:受け性能の高いデッキを崩す能力に長けた、ハンデスコントロールやアンフェアデッキ
→【アナカラーダークネス】・【青魔導具】
という3つのカテゴリを中心とした3すくみが、現在のアドバンス環境の基本となっています。
これから
王来MAXがリリースされましたが、今のところ環境の大枠そのものは変わっていません。
まだ見ぬ新デッキが大暴れしない限り、この3すくみ環境は今後も継続していきそうです。
目に見えるインパクトの大きさという面では王来篇第1弾のリリース時に及びませんが、新カードの活躍の萌芽は確実に感じられます。
オリジナル環境で初週から活躍し話題となった【デイガライオネル.Star】も、少しずつですがアドバンス環境に進出中。
先述したように防御力・カウンター性能に優れたデッキで、立ち位置としては先述した3区分の2番に該当します。
タマシードによる受けは【4cドラグナー】の《時の法皇 ミラダンテⅫ》や《音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ》を絡めたフィニッシュにも対抗しやすく、決定力の面にやや懸念はあるものの活躍する素養は十分にあり。
アドバンス環境では刺さりづらいカードを差し替えた独自のチューニングも考えられるため、今後の研究に期待したいですね。
おわりに
というわけで、4月下旬のアドバンス環境について解説いたしました。
使ってみたいデッキは見つかりましたでしょうか?
この記事が皆さんのアドバンス環境に対する理解への一助となれば幸いです。
それでは次回、5月上旬のオリジナル環境解説記事でまたお会いしましょう!