はじめに
サガ最強。
度重なる強化の果てにいよいよ完全体と化したダンタル型【サガループ】の勢いは止まることを知らず、もはや他の追随を許さない領域へと突入しています。
「戦える」デッキはいくつか名前が上がるものの、明確に有利、明確に対抗馬と呼べるデッキはもはや存在しない堂々のトップTier。
だからといって、環境が動きを止めているわけではありません。メタゲームは確かに存在し、少しずつ歩みを進めています。
絶望の神が支配するオリジナル環境の「今」について、今月も徹底的に解説していきたいと思います!
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目次
「最強」の定義
本記事では最強デッキを「デュエル・マスターズ競技環境での相対的な強さ」と定義します。
Tier1とは「環境内に不利なデッキが少ない、あるいは相性差を覆しやすいデッキであり、大会で持ち込みが一番多いと予想される対策必須のデッキ」です。
Tier2とは「Tier1やTier2のデッキにある程度勝てる見込みがあり、大会でも毎回一定数いると予想されるデッキ」です。
Tier3とは「弱点が多い、デッキパワーが低いなどの理由で使用者は少ないものの、特定のメタゲームでは活躍することができるデッキ」です。
Tier0
サガループ【Tier0】
現環境覇者の座をほしいままにする【サガループ】。久しぶりにTier0のランクを引っ張り出さざるをえないほどの、堂々の「最強デッキ」です。
現在圧倒的な多数派となっているのが《蝕王の晩餐》を採用した青黒型の【サガループ】。
《ドアノッカ=ノアドッカ/「…開けるか?」》による受け・メタ除去性能の底上げの影響が特に大きく、《龍素記号 wD サイクルペディア》や《サイバー・K・ウォズレック》にさらなる役割を付与しています。
【サガループ】対策筆頭だった【赤単我我我ブランド】に対して微不利ないしは五分程度に抑え、メタクリーチャーを多用してくるアナカラー基盤のデッキにも不利は取らない程度にまで相性差が改善されているなど、ただでさえ数少ない苦手なデッキですらもはや胸を張って「【サガ】に勝てる」とは言えなくなりつつあります。
そのほかには、前のめりな仕掛けが少ないかわりにリソースを減らさずにマナ加速して2+3の動きを作りやすく、《蒼神龍ヴェール・バビロニア》のおかげで墓地リセットに強い・《絶望神サガ》を使わない勝ち筋も視野に入るなど、メタ耐性に極めて優れたDOOM型の【サガループ】。
《百鬼の邪王門》が高い防御力・カウンター性能を発揮し、細かなカード除去や手札の減らない除去でボード制圧力に優れたクローシス型の【サガループ】などが環境の最前線で活躍しています。
これまでも強いデッキではありましたが、やはり汎用性の高い受けと軽量除去が1つにまとまった《ドアノッカ=ノアドッカ/「…開けるか?」》が加入したことで、デッキとしての強度が一段引き上がった印象。
隙らしい隙がおよそ見当たらないため、当面の間は不動のTier最上位として君臨し続けるでしょう。
Tier1
赤単我我我ブランド【Tier1】
ビートダウンデッキの第一線、【赤単我我我ブランド】。
1ターン目、2ターン目と軽快にクリーチャーを繰り出し、3〜4ターンで各種「ブランド」で火力を出す本筋はそのままに、《烈火大聖 ソンクン》によるボード制圧や《U・S・A・BRELLA》のメタ能力を取り入れたやや重めの形が現在の主流。
重いカードに寄せたぶん、速度の面では以前よりもやや下がっている傾向にあります。しかし、全体的な受け札のカードパワー向上や勝ち損ねれば容易に負けうる速度感の近い対抗馬の増加などから、ギリギリの打点を最速で通しに行くよりも過剰打点をきっちり組むことや個々のカードパワーの高さが重視されるのが現在のオリジナル環境の流れです。
基本的にはサンプル構築で挙げた型か、《パイセン・チュリス》と《こたつむり》を採用してビートジョッキーシナジーを活かすさらに後ろに寄せた構築が一般的。他にも《“罰怒”ブランド》を大胆に減量して《烈火大聖 ソンクン》と《ボルシャック・フォース・ドラゴン》の両立を狙った構築も少数ですが登場しています。
こちらは早いタイミングでの除去が追加されたことで盤面の制圧力に長けており、同型や【メタジャオウガ】、【アナカラーオービーメイカー】のようなデッキに対して強く出やすいアプローチと言えるでしょう。
ビートダウンデッキのライバルといえば、やはり【アポロヌス】。
とはいえ構築の変化から棲み分けが進んでおり、速度がモノを言う環境では【アポロヌス】、器用さと安定性が欲しい環境ではこちらが優先されるでしょう。直近のメタゲームでは噛み合いの良さから【アポロヌス】が大躍進を果たしていますが、総合力ではこちらの方がやや優れている印象です。
青魔導具【Tier1】
特異な性能を誇るフィールド・《卍 新世壊 卍》を旗頭に、水文明の魔導具呪文を連打して戦うスペルコンボデッキの筆頭。
環境内のデッキでも珍しく、明確に【サガループ】に対して一定の優位を主張できるデッキです。
特に現在主流となっているダンタル型の【サガループ】は一度着地したフィールドへの対処法が限られるため、《DG-パルテノン 〜龍の創り出される地〜》を無理なく採用しつつ墓地リセット手段も複数搭載できる【青魔導具】にとっては比較的戦いやすい相手。
《DG-パルテノン 〜龍の創り出される地〜》の刺さりが甘いDOOM型が数を減らしてダンタル型に移行している現在の傾向は【青魔導具】にとっては望むところでしょう。
少し前までは2枚程度に抑えられていた《DG-パルテノン 〜龍の創り出される地〜》が直近ではまた3〜4枚採用まで戻ってきているなど、ダンタル型【サガループ】に照準を合わせた変化が伺えます。
反面、【赤単我我我ブランド】や【赤緑アポロヌス】のような真っ直ぐなビートダウンは極めて苦手。受け札自体は搭載できなくもありませんが、その分の枠は肝心の【サガループ】を意識したカードを削って捻出せざるをえず、同時に対策するのは難しいのが実情です。
Tier2
5cザーディクリカ【Tier2】
強烈な踏み倒しトリガーから繰り出される高いカウンター性能と、《ロスト・Re:ソウル》に代表される大型ハンデスの押し付けが魅力のコントロールデッキ。
呪文使い回しによる押し付け、EXライフによるシールド追加、毎ターン除去とドローをもたらす置物性能と、スペックマシマシな《龍風混成 ザーディクリカ》のカードパワーを存分に活かすデッキです。
最低限のメタカードや妨害性能があるためある程度は戦えるものの、基本的に中速デッキの常としてコンボデッキは不利。環境上位のデッキでも明確に有利と言える相手はあまりおらず、立ち位置としてはそれほどよくありません。
このデッキ最大の強みは、上手く噛み合った際の有無を言わさぬ破壊力でしょう。相手の仕掛けが間に合わなければ4ターン目に《龍風混成 ザーディクリカ》が手札を全て捨てさせながら1ドローをもたらしてくれますし、ビートダウンが《ナウ・オア・ネバー》を踏めばカウンターで展開が連鎖して瞬く間に盤面を制圧します。
筆者の個人的な感覚ですが、100点の動き同士がぶつかり合えば勝てない相手でも、敵が70点の動きしかできなければ簡単に足元をすくえるデッキ、という印象です。
どんな相手とも展開の噛み合い次第でゲームできる可能性があるという意味では、いかにもカードゲームらしいデッキだと言えるかもしれません。
メタジャオウガ【Tier2】
軽量メタクリーチャーによる妨害で緒戦を制しつつ、その隙に《天災 デドダム》や《極楽鳥》、《Disメイデン》でマナ加速。
これらのカードをデッキトップから2体同時に踏み倒せる《キユリのASMラジオ》や最大1:4交換を見込める《絶望と反魂と滅殺の決断》でアドバンテージ優位を保ちながら、マナと打点が揃い次第《CRYMAX ジャオウガ》で素早くゲームを畳むメタビート気味のミッドレンジデッキです。
《とこしえの超人》や《ボン・キゴマイム》といった幅広い相手に刺さる優秀なメタクリーチャーがこのデッキの要。
これらのメタが有効な環境では強く、逆にあまり影響を受けないデッキが流行する環境では活躍しづらいのはメタカード主体のデッキの常とも言えます。
1ヶ月ほど前まではDOOM型の【サガループ】とビートダウンの双方に有効な《ボン・キゴマイム》を取り入れて大躍進を果たしましたが、ループ後に盤面を全処理してから打点を形成してくるダンタル型の【サガループ】にはさほど有効に働かず、以前と比べれば微妙な立ち位置に。
直近の環境では、墓地リセットできる置きリソース源として【サガループ】に強い《環嵐! ホールインワン・ヘラクレス》や、ダンタル型のカードをほぼ封殺できる《∞龍 ゲンムエンペラー》を採用してメタゲームに適応してきています。
アポロヌス【Tier2】
直近のメタゲームで一気に存在感を強めている、ビートダウンデッキの最右翼。
1ターン目にレクスターズ、2ターン目にサーチやルーターで手札調整、3ターン目に《カチコミ入道<バトライ.鬼>》から《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》ともう1枚の侵略者に侵略して相手のシールドをすべて吹き飛ばしながらそのままダイレクトアタックまで持ち込む、コンボ要素強めのフィニッシュプランを主体としています。
デッキの構成要素が進化元・進化コマンド・サーチ・侵略先の4つで埋め尽くされており、単純な3ターンキル成功率では【赤単我我我ブランド】を容易く上回るほど。
殴る順番とシールドの噛み合いを気にすることもなく、シールドの中に回答がなければ勝ち、返されれば大ピンチという非常にはっきりとしたデッキです。
【サガループ】については《ドアノッカ=ノアドッカ》を基本的に無視でき、《「迷いはない。俺の成すことは決まった」》トリガーと墓地の《絶望神サガ》というそれなりの要求を押し付けられます。《ウォズレックの審問》が厳しいことも加味しておおよそ五分から微有利。
苦手なのはカウンターでの展開をコンセプトに据えている【5cザーディクリカ】や【邪王門】系のデッキですが、相手の引き次第では十分に貫通が見込めますし、そもそもの話としてこれらのデッキは【サガループ】に対してかなり大きな不利が付くため環境上の立ち位置が良くありません。
同じビートダウンである【赤単我我我ブランド】も3ターン目の再現性を考えれば有利を見込めるなど、環境的には非常に恵まれた立ち位置にあるデッキです。
相手のトリガーをケアする手段が基本的になく、デッキの構造上プレイングで補うのも難しいのが最大の弱点でしょう。
どれだけ有利な相手にも有効トリガーが埋まっていれば負けますが、タメを作ったところで横に用意できる打点もたかが知れているため結局のところ走れる時に走るしかありません。
場面場面でプレイが介在する場面自体はあるものの、スキルやプランニングを磨いて勝率を大幅に向上させるのは難しいでしょう。
アナカラーオービーメイカー【Tier2】
ここ1、2週ほどで良好な戦績を残している【アナカラーオービーメイカー】。
マナをアンタップするクリーチャーを大量に積んでいた頃の面影はなく、メタクリーチャーによる妨害を主体としつつも《十番龍 オービーメイカー Par100》という上ブレ、あるいは「必殺技」を取り入れた形が現在の主流です。
盤面に干渉しながら同時に火種となる軽量クリーチャーの展開まで咎めてくる《「敬虔なる警官」》はこのデッキにとっては天敵。【サガループ】における軽量除去の変遷は、こと【アナカラーオービーメイカー】にとってはむしろプラスに働いている印象です。
また、【アナカラージャオウガ】と同じく、こちらも《∞龍 ゲンムエンペラー》をサブフィニッシャーに据えた構築が増加中。
ここの2枠は【アポロヌス】・【赤単我我我ブランド】意識の《B.F.F.モーメント》や汎用性の高い《ボン・キゴマイム》など、水文明のカードが採用される自由枠となっています。
Tier3
【黒単アビス】Tier3
なんとも言えない立ち位置にいる今環境の【黒単アビス】。
墓地リソースを増やしながらメタやハンデスで相手の動きを制限し、隙が生まれたら《アビスベル=ジャシン帝》を1ターン生き残らせてアビスラッシュで勝負を決める、妨害と継戦能力に長けた粘り強いミッドレンジデッキです。
その性質上まっとうにゲームをするいわゆる「フェアデッキ」にはめっぽう強く、コンボに関してもハンデスが通る相手には比較的優位に立ち回れます。
反面、手札干渉があまり通らない墓地主体のコンボデッキには非常に苦しい戦いを強いられます。……つまりは【サガループ】ですね。
少し前までは【サガループ】もあくまで「最強格」にとどまっていたため【黒単アビス】にも付け入る隙がありましたが、現在の【サガループ】は文字通りの「最強」。最も強い相手が最も戦いたくない相手というのは、やはり相対的に厳しいものがあります。
サンプルリストでは最近また増加傾向にあるハンデス型の構築をピックアップ。
《フットレス=トレース/「力が欲しいか?」》は《ドアノッカ=ノアドッカ/「…開けるか?」》に並んでアビスが手に入れた新戦力です。
好きなカードを回収できるため柔軟性の高い動きが可能に。自動的に墓地に行く呪文との相性は抜群で、優秀なツインパクトが増えれば増えるほどこのカードの価値も高まります。
展開と墓地肥やしを同時にこなす《邪侵入》や手札に抱えるだけで仕事できる《秩序の意志》との相性は特に良好。このカードをメインエンジンとしたハンデス軸の【黒単アビス】も登場するなど、じわじわと評価を上げているカードです。
ラッカ鬼羅.Star【Tier3】
優秀なメタクリーチャーを《「正義星帝」<鬼羅.Star>》の展開能力でバックアップする、極めて典型的なメタビート。
採用しうるメタカードの自由度が高く、環境に合わせて好きなようにカスタマイズが効くのは《「正義星帝」<鬼羅.Star>》の懐の深さが為せるワザでしょう。
とにかく大量のメタクリーチャーを詰め込めるため、多少の除去なら物量にモノを言わせて押し込んでしまえるのはこのデッキにしかない明確なメリット。
直近の環境では、ガチまとめライターとしてもお馴染みのアーチー選手のYouTubeチャンネルでじゃきー選手が紹介した《ダウンフォース・サーキュラー》採用構築が大流行しており、「離れない」メタクリーチャーで相手を強引に押さえ込んで詰め切る展開が意識されています。
デッキパワーの低さは否定できないものの、一強に近い環境はメタビートが活躍するチャンスです。【サガループ】環境では注目度の高いデッキのひとつ。
4c邪王門【Tier3】
【サガループ】の大躍進で肩身が狭い【4c邪王門】。
《百鬼の邪王門》を起点としたカウンターをチラつかせて時間とリソースを稼ぎ、体勢が整ったら自分のシールドを消し飛ばして攻めかかる戦術が基柱となるミッドレンジデッキです。
とにかく受け性能が尋常じゃなく高いためビートダウンにはめっぽう強い反面、殴ってこない相手には苦戦を強いられます。
サンプルリストでは2枚採用が一般的になってきていた《音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ》を増量し、攻めのパターンを強化した構築をご紹介。
ダンタル型の【サガループ】は《超神星DOOM・ドラゲリオン》+《禁断竜王 Vol-Val-8》のような呪文に依存しないフィニッシュプランを持たないため、《音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ》さえ通してしまえばほぼ確実に1ターンはもらえます。
どれだけメタカードで時間を稼いだところで攻める動きが弱ければ結局のところ有利にはなりません。デッキとしての出力を下げずに【サガループ】への勝率をある程度確保するには、《音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ》の増量は合理的なアプローチに思えます。
環境のまとめと今後の展望
今まで
サガ最強。この一言に尽きます。
そもそも極端な不利とは言えなかった【赤単我我我ブランド】に対して、《ドアノッカ=ノアドッカ/「…開けるか?」》の加入でほとんど五分まで相性が改善したのは恐るべき事態でしょう。コンボ<ビートダウン<コントロール<コンボ……、という3すくみの基本構造が根底から覆ってしまいます。
局所的に有利な要素を含んだデッキは少なからず存在しますが、構造のレベルで有利を付けられるデッキはもはやありません。
特定のカードに頼った対策は《ウォズレックの審問》によるハンデスがクリティカルに刺さりますし、そもそも展開次第では長期戦もこなせる【サガループ】に粘り勝ちされてしまいます。
もちろん個々のゲーム単位では勝ち負けが付くものの、総合的な強度やアベレージに目を向ければ、現環境に【サガループ】と張り合えるデッキは存在しません。
メタゲームは【サガループ】を中心に回り、このデッキとそれなりにやりあえる【赤単我我我ブランド】や【アポロヌス】、【青魔導具】といったデッキが上位に進出。反対に【サガループ】が厳しい【5cザーディクリカ】や【4c邪王門】、【黒単アビス】などは立ち位置を下げています。
これから
サガ最強。
とはいえ【サガ】を取り巻くデッキの周りではある程度の勢力争いは巻き起こるでしょう。
【サガループ】一強環境では【サガループ】とそれなりに戦えるデッキと【サガループ】の二極化が進むため、逆に「【サガループ】とそれなりに戦えるデッキ」に勝てるデッキが立ち位置を向上させるのは【サガループ】の登場直後にも見られた流れです。
具体例を挙げれば、しばらく立ち位置を落としていた【4c邪王門】がごく直近でまた活躍の兆しを見せていたりします。
また、6月下旬にはアビス・レボリューション第2弾「忍邪乱武」がリリース予定。
これまで見えている限りでも新弾のカードには有望株が目白押しで、種族デッキはガッチリ強化されていきそうですが、それはそれとして【サガループ】に迫るほどのコンセプトが提示されるかと言われれば相当に厳しいでしょう。
【サガループ】を取り巻くデッキたちの勢力図には影響が出るでしょうが、周囲のデッキたちも相応に強力なことも含め、【サガループ】がTier0の座を降りる未来はどうにも想像しがたいです。
昨年と同じであれば、次の殿堂施行は8月中頃。当面の間は【サガループ】を頂点とした秩序が継続していきそうです。
おわりに
というわけで、6月のオリジナル環境について解説いたしました。
使ってみたいデッキは見つかりましたでしょうか?
この記事が皆さんのオリジナル環境に対する理解への一助となれば幸いです。
それでは次回、6月のアドバンス環境解説記事でまたお会いしましょう!