目次
ごあいさつ
初めましての方へ、初めまして。前回の記事などで知って下さっている方へ、よろしくお願いします。第四回トレカライターコロシアムに参加させて頂く、くすのきと申します。
スタンスは変わらず、コンピュータ練習も兼ねながらのんびり記事を書いていきます。誰かに見て頂けたらそれだけで満足なのですが、折角なので読んでくださる方にとって得るものがある文章を書けたらと思います。
今回の安価の定義について
「安価」の基準の設定
前回の記事をご覧になった方なら分かると思うのですが、とにかく私はデッキを多く作ってしまいがちです。どれか一つに強く入れ込む、というようなデッキは数える程しかありません。
そのため、一つ一つのデッキにかける金額というのが必然的に少額になってきます。そのようにしてデッキを作る内に、安いデッキを作ることが一つの楽しみになっていました。勝ち負けはともかく余り物のカードを一デッキとして成立させることはパズルのようでかなり楽しめますし、特徴的なデッキを使うことで対戦相手にも楽しんで頂けるかもしれません。
そうした経緯から、安価で構築出来るデッキについての記事を書こうと思い至りました。しかし安いデッキという基準でも様々なものがありますし、また価値観や地域のカード価格の差もある以上、参考にならない可能性もあります。
現に私は、仮に一万円あったとしたら大会に持ち込んでそこそこの勝率をたたき出せるデッキを一つ作るより弱くとも10個ほどのデッキを作りたいと考えるような価値観、具体的にはカード一枚辺り百円を越えると購入を少しためらってしまうような金銭感覚です。なので、安さには何らかの基準を設けることが必要だと考えました。
カード販売を行うカーナベルさんやフリマアプリの値段を基準にするのもいいのですが、私のようにコンピュータ嫌い故、通信販売を利用したくない人も中にはいるかもしれません。
そこで今回焦点を当てたのが「コモン」です。カードの右下の方に●だとか[c]と記され区分されている、パックの中でもっとも当たりやすいカードですね。封入率の高さから流通量も多く、ショップによっては一枚10円なんかで買えてしまうところもあるでしょう。誰もが手にしやすいカードであることから、安さと入手のしやすさの基準には申し分ないでしょう。よって、今回はコモンカードのみでデッキを組んでいきます。
コモンカードスペック談義
当たりやすいカードだからといって、「弱い」ことに直結する訳ではありません。古くからコモンカードはデッキの屋台骨として活躍してきました。最初期では《青銅の鎧》《アクア・ハルカス》がその最たる例ですね。互換カードが出た今でも、種族を活かして採用する機会を持てる程には汎用性が高いカードです。
【クリーチャー】
【種族】ビーストフォーク
【文明】自然
【パワー】1000
【コスト】3
■このクリーチャーがバトルゾーンに出たとき、自分の山札の一番上のカードを表にして自分のマナゾーンに置く。
コモンカードは派手な効果を与えられることは少ないですが、その分「デッキを作成するにあたっての基礎パーツ」になる程の堅実な能力を持たされることが多いです。そして、当たりにくいカードの強さを際立たせる役目、カードパワーの指標となる役目もコモンカードには与えられているのだと思います。
そうした目でコモンカードを見ていると、カード一枚一枚の力が本当に変わってきた、という実感が湧いてきます。分かりやすい例を挙げると、《*/肆幻フィッパード/*》ですね。
【オレガ・オーラ】
【種族】トリックス・デリートロン 【文明】水
【パワー】+4000
【コスト】4
■これを付けたクリーチャーに「パワード・ブレイカー」を与える。(「パワード・ブレイカー」を持つクリーチャーは、そのパワー6000ごとにシールドをさらに1つブレイクする)
『超GRスタートデッキ キャップのオレガ・オーラ・デリート』での初登場時点で同期の《*/肆幻モドピトテ/*》の下位互換(墓地利用を考えれば完全下位互換ではないものの、厳しい)と、悲しい宿命を背負ったカードですが、冷静に考えるとこのカードは今までのコモンカードの出力を大きく上回っています。
大体の能力持ちGRクリーチャーのパワーの基本値が2000、これを基準とすると4コストパワー6000のデメリットなしアタッカーが何の苦労もなく用意出来るんですね。更に、GRゾーンの構築次第でその性能を調整することが出来ます。
コモンカードの中にもコスト4、Wブレイカーを出力出来るカード自体は今までにもありました。軽量ドラゴンとして古くから親しまれた《黒神龍ギランド》、素のパワーに難ありな《熱血龍 リトル・ガンフレア》、デッキ構築を限定する《寝ボケまなこのたぬ吉さん》などがありますね。
条件付きカード、デメリット持ちカードであるそれらと比較すると純粋なカードパワーが如何に上がっているかが分かるかと思います。もちろんデメリットをメリットに変える戦法や文明、種族の重要性もあるので優位性は一概には言えませんけれど、純粋なカードパワーの躍進に私は心が震えました。
革命編以前ならデッキの主軸に出来る、なんならスターターデッキの看板カードになっていてもおかしくない程のスペックのカードが、誰もの手に触れるありふれた存在になっている。本のおまけでついてきた《封魔フェルノダロス》のスペックに心奪われていた昔の私が知ったら卒倒するレベルだと思います。
デッキ紹介:自然水オーラジョーカーズ
今回は、こうしたコモンのカードパワー向上を存分に感じられる安価なデッキを一つ紹介します。集めやすさ、カードパワー向上、という面に着目しているうちに意識せぬうちに2ブロック構築になっていました。ではデッキ画像をどうぞ。
自然、水の2色で組んだシンプルなビートダウンです。
超天篇に入って登場した超GRゾーンの強さ、「Jトルネード」という新ギミックをコモンカードという枠の中で遺憾なく発揮することを軸に構築しました。新しいギミックというのは必然的に過去のカードよりも強いもの、またそれを強化するものと想定されて世に出回るのが常なので、ギミックを活かすべくしてしてカードをかき集めれば、コモンだけと言えどもそれなりのデッキが完成することになります。では、各カードの解説を下に書き連ねていきます。
メインデッキ
《*/零幻チュパカル/*》:4枚
オーラ版《ヤッタレ・ピッピー》とも言える、オーラの使用コストを1下げる基本カードです。《The カップラー漢》につくだけでも《ヤッタレマン》のスペックを越え、《ヤッタレロボ》でも捲れれば八面六腑の活躍を誇ります。このデッキでは3ターン目の《*/肆幻フィッパード/*》に繋ぐ役目、軽量オーラの大量展開を支える役目を担います。
《*/肆幻フィッパード/*》:4枚
このデッキのフィニッシャー枠です。コモンカードの中では規格外のスペックで暴れ回りましょう!
《*/弐幻サンドロニア/*》:3枚
コモンカードとは思えない程優秀な手札入れ替えを行い、おまけでそれなりのスペックのクリーチャーが残ります。単純に手札が減らないだけでも《アクア・ハルカス》の役割が持てますし、山札を見れる枚数の多さから状況に合わせフィニッシャー、除去札、と必要な札を選択出来るのが強いですね。……あれ、本当にこれ、コモン……?《トムのゼリー》で手札補充が間に合うと感じたので枚数は3枚にしてありますが、4枚でも問題ないと思います。
《トムのゼリー》:4枚
1マナで出せる軽量ブロッカー、これだけならありふれた一枚ですが、種族と効果が素晴らしいですね。場を離れた時の一枚ドローは何も考えずに使ってもアドバンテージを失いませんし、ジョーカーズという種族のおかげで様々なサポートが受けられます。デザイナーズコンボとして想定されているであろう、Jトルネードを絡ませた時のアドバンテージの稼ぎ方はコモンカード限定構築でも変わりません。
《オケ狭間 寛兵衛》:2枚
GR召喚をするだけのシンプルなクリーチャーですね。単純に一枚が二枚になるので強いです。その上ジョーカーズ種族のおかげで《ヤッタレロボ》の軽減対応、Jトルネードでの使い回し可能、と弱い要素が一切ないですね。安いデッキを作るにはその時々でプッシュされている種族やギミックに乗っかるのが一番手っ取り早い、ということを如実に現した一枚だと思います。《ウォッシャ幾三》とは色の都合で2枚ずつ、4枚採用してあります。
《できんダック》:4枚
攻撃時にJトルネードで相手のパワー6000以下のクリーチャーを戻す。こういったシンプルな強さは、シールド戦のような限られた環境では恐ろしい強さを発揮すると思います。通常の対戦でも、小型クリーチャーを並べる相手を大幅に遅延しながらJトルネードで自分は得をしていく優良クリーチャーです。毎ターン効果を適用出来れば、それは軽い召喚ロックのようなものです。ジョーカーズに乗せた《*/弐幻サンドロニア/*》や《オケ狭間 寛兵衛》を使い回す片手間に除去を繰り返し主導権を握りましょう。
《龍装者 ギアファン》:4枚
ブロッカー、手札戻しで2回分攻撃を止めることが出来るトリガークリーチャーで、コモン版《青寂の精霊龍 カーネル》とも言えるでしょう。攻撃出来ない点は残念ですが、コモンカードで相手のクリーチャーを複数止めることの出来るトリガーはそうそうないので珍しい一枚です。
《στ ボテグッタ》:2枚
軽量オーラということでの採用です。+2000の補正によって、2ターン目にデメリット無しパワー5000のクリーチャーが出てくる可能性があるのは凄まじいですね。《無頼勇騎ゴンタ》もびっくりです。またオーラの性質上重ねることも出来るので、うっかり《くるピカディス君》に乗っかってしまった《*/肆幻フィッパード/*》のパワーを補完してWブレイカーにさせるなど、相手の計算を狂わすことも視野に入れましょう。初動枚数は十分に取れていると感じたので2枚です。
《マシュムリアン・ラプソディ》:4枚
シンプルな除去トリガーです。類似品に《チャッチャケ・トラップ》がありますね。手札からの使用も視野に入る標準的な一枚。様々なカードの完全下位互換ではありますが、除去性能自体は一級品なのでシールド戦などの限定された環境ではこうしたカードは常に念頭に置いておく必要があります。
《γζガッドゥーラ》:4枚
自然版《*/肆幻フィッパード/*》です。「同じ役割のカードを8枚積むことが出来れば、それはデッキコンセプトになる」、偉い人の言葉が染み入りますね。
《アツギダルマ》:3枚
マッハファイター持ち、パワー4000、4コスト。そこにジョーカーズ種族とジョーカーズチェンジが加わりました。《いのししとう》がこれを見たら何を思うのでしょう……。コモンカード内ですらスペックインフレの早さを体現していますね。単体での運用はもちろん、《ウォッシャ幾三》へのチェンジでパワー6000までのサイズに対応しつつ、クリーチャーも展開出来るのが強いです。同種族のカードを集めるだけでコンボが成立するのは、デッキ作りへの「難しそう」という印象を払拭してくれるいい方向性だと思います。
《ウォッシャ幾三》:2枚
《オケ狭間 寛兵衛》との選択ですね。こちらはパワーの高さから、より《できんダック》などの保護に向いており、殴り返しも出来ます。
超GRゾーン
《メカドクターGr.》:2枚
3000という高いパワー、おまけで出てくるにしては異様に強い追加ブレイク付与。これもコモンとは思えないスペックをしていますね。《*/肆幻フィッパード/*》との組み合わせで、5ターン目辺りにコモンの束だけでT・ブレイカーを出力するのも現実的な範囲内です。マナドライブ条件を満たすためもあって、今回のデッキはジョーカーズとオーラの折衷型としました。
《ドリルどーる》:2枚
Jトルネードによってパワー5000、ブロックされないクリーチャーになります。《*/肆幻フィッパード/*》が乗っかると、Wブレイクを通しやすくなりますね。メインデッキに足りないJトルネード要員として、また殴り返しから最後の一押しまで、便利な一枚です。
《離脱 DL-20》:2枚
除去された時、その際についていたオーラが手札に戻るクリーチャーです。除去による損失を軽く出来るので、《*/肆幻フィッパード/*》がより雑に攻撃出来るようになります。種族がジョーカーズではないのでJトルネード出来ない点は気になりますが、積極的に攻撃するデッキなので除去に対し強気になれる事を買い、採用しました。
《くるピカディス君》:2枚
コモンの枠内で採用出来るJトルネード持ちクリーチャーとしての採用です。指定した相手を拘束、という相手クリーチャーがいさえすればどのタイミングでも活躍出来る能力の代償としてパワーが1000と低く、《*/肆幻フィッパード/*》をWブレイカーに出来ない点が残念です。しかし、ジョーカーズのコモンGRクリーチャーの中では最高峰のカードパワーなので、外すことは出来ませんでした。
《The カップラー漢》:2枚
能力はなしですが、ジョーカーズ種族持ちなのでオーラをJトルネードの種として運用することが出来ます。より優秀なジョーカーズのコモンGRクリーチャーの登場次第で入れ替え候補ですね。
《ヤッタレロボ》:2枚
ジョーカーズを強力に支援出来るGRクリーチャーです。捲れれば軽量ジョーカーズを大量展開出来ますし、捲れなければオーラを使う、といった戦術面で、GRゾーン特有の運要素を多少はカバー出来ていると思います。
以上がデッキ内容です。《*/肆幻フィッパード/*》を軸に据える、というコンセプトなら《フェアリー・ライフ》や《ア・ストラ・センサー》も採用して特化する構築もいいですね。今回は色々とやってみたかったことを詰め込んだ甘い構築なので、方向性によって組み替えていってください。
終わりに
ここまで読んで頂いた方、ありがとうございました。そうでない方もこのページを開いて頂いたということなので感謝の対象です。
今回は新ギミックの強さを感じ、手軽に楽しむという点からコモンカードを持ち出しました。コモンカードのスペックを知ること、縛りを設けてデッキを構築することはシールド戦でのカード選択やコンボデッキを作る際に視野を広げることの助けになり、またより客観的に「強い」カードを判断出来るようになる目を養う……というのは私一個人の主観です。大会でどういったデッキが強いか、といったことをあまり意識していない一プレイヤーの戯れ言や妄言かもしれません。
ただ、こうした遊び方の紹介だけでも出来たら、と思い綴りました。世間では DMpauper というフォーマットで知られているそうですね。……知られている、とは書きましたけれど、まだ自分以外にこの制限でデッキを組んでいる人にお会いしたことがないので、どうなのでしょう……?
余り物のコモンカードを引っ張り出して眺め、組んでみるだけでも発見があると思うので、皆様もこの折に触れてみては如何でしょうか。