2019年ヤバイ遊戯王カードBEST10

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2019年ヤバイ遊戯王カードBEST10

目次

はじめに

2019年も残り僅かとなったが、皆様いかがお過ごしだろうか?
遊戯王は今年も多くのパック、カードが発売され刺激に溢れた1年であったが、中には他のカードとは異色のオーラを放つ『ヤバイ』カードも誕生した。

本記事では、2019年に発売されたカードのうち、筆者が特に『ヤバイ』と感じた遊戯王カードを独断と偏見でランキングにして紹介していく。どんなカードがランクインするのか、1年を振り返りながら予想してみて欲しい。

それではさっそくだが第10位から紹介していく。

2019年ヤバイ遊戯王カードランキング!

第10位は《双穹の騎士アストラム》。このカードは 2019年1月12日発売のブースターパック『DARK NEOSTORM』で登場したリンクモンスターだ。

《双穹の騎士アストラム》リンク・効果モンスター リンク4/光属性/サイバース族/攻3000【リンクマーカー:左/右/左下/右下】 EXデッキから特殊召喚されたモンスター2体以上(1):リンク召喚したこのカードがモンスターゾーンに存在する限り、 このカードは相手の効果の対象にならず、相手は他のモンスターを攻撃対象に選択できない。 (2):このカードが特殊召喚されたモンスターと戦闘を行うダメージ計算時に1度、発動できる。 このカードの攻撃力はそのダメージ計算時のみ、その相手モンスターの攻撃力分アップする。 (3):リンク召喚したこのカードが相手によって墓地へ送られた場合に発動できる。 フィールドのカード1枚を選んで持ち主のデッキに戻す。

出典:遊戯王OCGカードデータベース

リンクモンスターは、遊戯王新マスタールールと同時に導入されたエクストラデッキに属するモンスター群だ。
新マスタールールの『融合、シンクロ、エクシーズの旧エクストラモンスターはエクストラゾーン及び、リンクマーカー先にしか出せない』という世界観の書き換えにより、エクストラからの大量展開をするにはリンクモンスターが必須な遊戯王が始まった。

そのため、プレイヤー達の当初のリンクモンスターの認識は『エクストラモンスターを並べるための中継役』だったのだが、リンクモンスターのインフレによりフィニッシャー、妨害効果や耐性を持った置物リンクが発売された。その1枚がこの《双穹の騎士アストラム》だ。

効果の対象にならない耐性は処理手段を制限するため非常に突破されにくい。その上、戦闘での絶対的な強さも併せ持つもんだから、多くのデッキは、メインデッキに対抗手段を持たず、突破は困難を強いられる。このカードはリンク4のためそうそう簡単には出せないのだが、1度出してしまえば環境デッキである【閃刀姫】や【オルターガイスト】等の所謂『ビートダウンデッキ』に対して有利な状況を作ることが可能だ。代表的な処理手段は《星杯戦士ニンギルス》《ヴァレルロード・ドラゴン》等の対象を取らずに除去効果を持つリンクモンスターであるが、リンク数が高く出すのに一苦労する。そもそも解答がリンクモンスターかよ、、と思うかもしれない。そう、リンクモンスターのインフレにはリンクモンスターで対抗するしかないのだ。リンク召喚は他の召喚方法よりも条件が緩く、モンスターを複数並べるだけで出せるものが多い。そんなリンク召喚の緩さが許したモンスター《双穹の騎士アストラム》は汎用性の高さから多くのデッキのリンク4モンスター枠の第一線カードとして高い採用率を誇った。

第9位はつい最近である2019年12月21日『LEGENDARY GOLD BOX』に収録された《超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ》だ。このカードは出たばかりと言うこともあり、まだその強さを実体験したプレイヤーは多くないと思うが今後の影響力を加味してランクインさせてもらった。

《超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ》融合・効果モンスター 星8/闇属性/魔法使い族/攻3000/守2500「ブラック・マジシャン」+「真紅眼の黒竜」またはドラゴン族の効果モンスター(1):このカードは効果の対象にならず、効果では破壊されない。(2):自分メインフェイズに発動できる。 相手フィールドのモンスター1体を選んで破壊し、 その元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。 この効果は1ターン中に、このカードの融合素材とした通常モンスターの数まで使用できる。(3):1ターンに1度、魔法・罠・モンスターの効果が発動した時、手札を1枚捨てて発動できる。 その発動を無効にして破壊し、このカードの攻撃力を1000アップする。

出典:遊戯王OCGカードデータベース

先ほど『リンクモンスターのインフレ』について話したが、インフレしたのはリンクモンスターだけではなかった。

新マスタールールによって召喚を制限されたことでシンクロ、エクシーズ、融合モンスターの登場機会は減少し、多くのエクストラデッキは青に染まって行った。そんな中救済策として『シンクロ、エクシーズ、融合モンスターの単体パワー底上げ』と『出しやすさの緩和』が行われた。融合に関しては従来【シャドール】の十八番であった『デッキ融合』が量産されたり、リンクモンスター《捕食植物ヴェルテ・アナコンダ》による融合魔法の踏み倒しによって一気にテコ入れが行われた。そして、そんなテコ入れを受けた後に作られたのがこの《超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ》である。レッドアイズを融合素材とするこのカードは《真紅眼融合》1枚からの融合召喚が可能であり、《捕食植物ヴェルテ・アナコンダ》の融合魔法踏み倒しを利用することで融合魔法すら素引きする必要が無くなったのだ。要は《捕食植物ヴェルテ・アナコンダ》のリンク素材である『効果モンスター2体』を場に揃えさえすれば出せてしまうのが強みであり、おまけに《真紅眼融合》の制約まで無視できる。

そして肝心の効果であるが『1ターンに1度、手札を捨てれば魔法罠モンスター効果を無効』というこれ以上ない妨害性能である。1妨害程度であれば踏み越えれるのが現代遊戯王であるが、驚くのがもう1つの『効果対象&効果破壊耐性』だ。

対象耐性の強さは先ほどの《双穹の騎士アストラム》で解説したが、このカードは更に『効果破壊耐性』があるためより突破難易度を上げている。そして無効効果と破壊効果、ただ倒しにくいだけの《双穹の騎士アストラム》とはレベルが段違いなのだ。そんなイカレたモンスターがエクストラデッキに《捕食植物ヴェルテ・アナコンダ》、メインデッキに《真紅眼融合》《真紅眼の黒竜》《ブラック・マジシャン》の3枚さえ入れておけば出せてしまう『出張性能の高さ』こそが一番の強みだろう。これからのトーナメントシーンで大暴れすること必至のため、覚悟が必要だ。

第8位はEXTRA PACK2019収録の《冥王結界波》だ。昨今の遊戯王はモンスターのインフレと平行して魔法罠カードの性能も一段と上がっている。遊戯王を『先攻ゲー』と呼ばせる一因が先攻ぶん回しによる盤面制圧であるが、後攻プレイヤーがそれに対抗するための『後手捲りカード』のパワーが特に上がって来ている印象だ。

《冥王結界波》通常魔法このカードの発動に対してモンスターの効果は発動できない。(1):相手フィールドの全ての表側表示モンスターの効果をターン終了時まで無効にする。 このカードの発動後、ターン終了時まで相手が受ける全てのダメージは0になる。

出典:遊戯王OCGカードデータベース

従来の後手捲りのカードと言えば、《拮抗勝負》のような全体除去や《無限泡影》のような無効系、壊獣や《ラーの翼神竜-球体形》のようなリリース除去であったが、どれも一長一短だ。壊獣系は除去できる数が決まっていることから相手の盤面への依存度が高く、《拮抗勝負》のような除去に関しては、そもそも盤面に魔法罠無効系の制圧モンスターがいることが多いので止められて終わりだ。そんな中登場したこのカードは1枚でモンスターによる盤面を白紙にできる。

そして《拮抗勝負》が抱えていた相手のモンスターによる無効化も『モンスターがチェーンできない』という1文により解決しているのだ。

このカードの登場により展開系デッキに対して後攻プレイヤーが『誘発で止める』だけでなく『捲る』プランを取りやすくなった点が革命的だ。一方で、無効には出来ても相手の場にモンスターは残ったままのため、そのターン中に処理するだけのポテンシャルは求められる。よって【サブテラー】【トリックスター】【オルターガイスト】等の後攻1ターン目の爆発力が乏しいデッキは《超融合》の方が相性がいいため、万能カードでは無い点は注意が必要だ。ただ、このカードの存在によって展開デッキがモンスターだけに頼れなくなったことは大きく、『展開したもん勝ち』な現状を打開したこのカードにより遊戯王はより複雑で面白くなるだろう。

第7位は2019年11月23日発売の『LINK VRAINS PACK3』で登場した《ユニオン・キャリアー》だ。このカードの恐ろしいところは『デッキ内のあらゆるモンスターにアクセスできる』点である。同系統のカードに《ラヴァルバル・チェイン》《サモン・ソーサレス》がいるが、このカードはこれら2種の再来であり調整版と言えよう。ちなみにこれら2種はどちらも禁止カードとなっている。

《ユニオン・キャリアー》リンク・効果モンスター リンク2/光属性/機械族/攻1000 【リンクマーカー:右/下】種族または属性が同じモンスター2体このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。 このカードはリンク召喚されたターンにはリンク素材にできない。(1):自分フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。 元々の種族または元々の属性が対象のモンスターと同じモンスター1体を手札・デッキから選び、 攻撃力1000アップの装備カード扱いとして対象のモンスターに装備する。 この効果でデッキから装備した場合、 ターン終了時まで自分はその装備したモンスターカード及びその同名モンスターを特殊召喚できない。

出典:遊戯王OCGカードデータベース

《ラヴァルバル・チェイン》《サモン・ソーサレス》を使ったことのあるプレイヤーならご存知だろうが、デッキの中のあらゆるカードにアクセス出来るということは『何でも出来てしまうのだ』。先攻ワンキルだろうと無限ループだろうと何でも。さっそく《霞の谷の雷鳥》の無限ループコンボがこのカードによって話題になっていたが、今後カードプールの増加によってこのカードの可能性は無限に膨れ上がるだろう。一方で『自身をこのターンリンク素材にできない』『装備したモンスターをこのターン特殊召喚できない』と《サモン・ソーサレス》には無い制約が付いているため悪用の選択肢を狭める工夫が施されている。

類似カードに《ライトロード・ドミニオンキュリオス》があるが、このカードは発売されて2年経つ今もそこまで危険な使い方はされていないように思える。その理由に『出しにくさ』があり、出しにくいからこれくらい強くても仕方ないという立ち位置だ。しかし、《ユニオン・キャリアー》は『種族または属性の同じモンスター2体』という極めて緩い召喚条件であるため使いやすさが《ライトロード・ドミニオンキュリオス》とは段違いだ。実際、発売されてすぐ環境デッキに組み込まれており、【オルフェゴール】のような制約をすり抜けた利用の仕方や、《破壊剣-ドラゴンバスターブレード》のような装備であることを逆手に取ったコンボが見つかっている。いつ禁止に行ってもおかしくない紛れもなく『ヤバイ』カードと言えよう。

《召命の神弓-アポロウーサ》は2019年4月13日発売の『RISING RAMPAGE』収録のリンクモンスターである。このカードの登場によりリンクモンスターによる『誘発ケア』が容易になったと共に先攻の盤面がより強力になった。

《召命の神弓-アポロウーサ》リンク・効果モンスター リンク4/風属性/天使族/攻 ? 【リンクマーカー:上/左下/下/右下】トークン以外のカード名が異なるモンスター2体以上(1):「召命の神弓-アポロウーサ」は自分フィールドに1体しか表側表示で存在できない。(2):このカードの元々の攻撃力は、このカードのリンク素材としたモンスターの数×800になる。(3):相手がモンスターの効果を発動した時に発動できる。 このカードの攻撃力を800ダウンし、その発動を無効にする。

出典:遊戯王OCGカードデータベース

リンクモンスターの最大の強みは『出しやすさ』にあるが、このモンスターはその強みを体現した存在だと言えよう。リンク4と言う一見重い召喚条件に見えるが、蓋を開けて見ると『名前の異なるモンスター2体以上』と言うお手軽さ。基本的にモンスターは固有の効果を持っており、相手ターンに効果を持たないものは効果は使い捨てのため、使った後のモンスターは攻撃力守備力を持つだけの存在だ。勿論、シンクロやエクシーズ素材に利用出来ればさらなるモンスター効果に繋がるので無駄が無いが、シンクロ、エクシーズは条件が厳しいため利用出来ずに余ったモンスターがポツンと残ることは珍しくない。しかし、このモンスターの登場により余ったモンスターはリンク4になるように集めて合体させれば相手ターンの妨害手段になってしまう。モンスターの役割が『テキスト』だけでなく場に存在するだけで意味を持つようになった。勿論、これ以外のカードでもリンクモンスターなら通じる話であるが、この《召命の神弓-アポロウーサ》は段違いに便利という話だ。

また、展開デッキに関しては早期にこのカードを出すことによってその後の手札誘発のストレスから解放される。『ウーサ展開』と呼ぶが、自分の本命の動きをする前に《召命の神弓-アポロウーサ》を出してしまうことで本命への《エフェクト・ヴェーラー》《幽鬼うさぎ》、《DDクロウ》等の誘発を無視出来るため、ウーサ展開への信頼度が高くこれを目指した展開を考察するプレイヤーは多い。《召命の神弓-アポロウーサ》で防げない無限泡影や根本的な弱点である《増殖するG》、《召命の神弓-アポロウーサ》が同一チェーン上で複数回効果を使えないことを利用した誘発重ね打ち等、完全に無敵では無いが自分の展開をバックアップしつつ相手ターンの妨害にもなるこのカードは他の誘発ケアカードとはレベルが違うことは明白だ。今後も展開デッキで活用され、驚異となるだろう。

第5位の《星杯の神子イヴ》は2019年1月12日発売の『DARK NEOSTORM』に収録されたシンクロモンスターだ。このカードは公開時より《源竜星-ボウテンコウ》の再来と呼ばれ注目を浴びた。《源竜星-ボウテンコウ》は【恐竜真竜皇竜星】環境で猛威を震い、その後もセフィラ等の展開デッキで活用され制限カードに指定された(現在は無制限)カードであるが、《源竜星-ボウテンコウ》同様にこのカードを展開の道中に経由することで展開にブーストをかけることが出来る『イヴ展開』が流行した。

《星杯の神子イヴ》シンクロ・チューナー・効果モンスター 星5/水属性/魔法使い族/攻1800/守2100 チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上このカードをS召喚する場合、自分フィールドの「星杯」通常モンスター1体をチューナーとして扱う事ができる。 このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。(1):このカードがS召喚に成功した場合に発動できる。 デッキから「星遺物」カード1枚を手札に加える。(2):S召喚したこのカードが墓地へ送られた場合に発動できる。 自分のデッキ・墓地から「星杯の神子イヴ」以外の「星杯」モンスター1体を選んで特殊召喚する。

出典:遊戯王OCGカードデータベース

とは言え、実際に環境に現れるまでにはタイムラグがあり、5月に【オルフェゴール】デッキに組み込まれたことで話題になったカードだ。

この頃から『イヴ+ハリファイバー』のコンボは注目されており、このコンボは後の【ドラゴンリンク】にも継承されることとなった。『イヴ+ハリファイバー』について簡単に説明すると、言葉の通り《星杯の神子イヴ》をシンクロ召喚して《星遺物の守護竜》《星遺物の導く先》等の蘇生カードをサーチして発動、蘇生したモンスターと《星杯の神子イヴ》《水晶機巧-ハリファイバー》をリンク召喚すれば、《水晶機巧-ハリファイバー》の効果と《星杯の神子イヴ》のリクルート効果でリンク数を一気に4まで伸ばすコンボだ。《トロイメア・マーメイド》がいた頃の【オルフェゴール】は《星杯の守護竜》の効果で相手の無効系誘発をケアしたり、【ドラゴンリンク】では『イヴ+ハリファイバー』から《召命の神弓-アポロウーサ》になり、そこから誘発ケアをしながら最終盤面まで向かうことが出来た。そのためイヴをコンボに組み込んでいるデッキはレベル5シンクロを立てやすいギミックを多数採用しており、対戦相手からすれば『イヴ成立』は絶望以外の何物でも無い。このように『イヴ+ハリファイバー』は非常に強力なコンボであるため、どちらかが禁止になってもおかしくない。しかし、長らくどちらも改訂でスルーされているため、公式としては許容範囲のコンボなのだろう。

第4位はVジャンプ7月号(2019.5.21発売)の付録カード《抹殺の指名者》である。このカードを初めて見たプレイヤーのほとんどが『は?』と思ったことは間違い無いだろう。世間は【オルフェゴール】全盛期、無効系への貫通性能の高い【オルフェゴール】相手に信頼出来るメインデッキの誘発は《増殖するG》くらいだった。しかし、そのカードでさえも《灰流うらら》《墓穴の指名者》に阻まれてしまう。

(墓穴規制しろ..........!!!!)

そんな中刷られたのは《墓穴の指名者》4~6枚目となるこのカードであった。

《抹殺の指名者》速攻魔法このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。(1):カード名を1つ宣言して発動できる。 宣言したカード1枚をデッキから除外する。 ターン終了時まで、この効果で除外したカード及びそのカードと元々のカード名が同じカードの効果は無効化される。

出典:遊戯王OCGカードデータベース

このカードの強み等今さら説明は不要だと思うがそういう記事なので渋々書くと『理論上メインデッキに採用される全てのカードを無効化できる』弱いわけがない。

実際の所問題なのは先ほども書いた《増殖するG》を無効に出来るカードであることだ。このカードが公開されたことで《増殖するG》への信頼度は地の底に落ち、『増Gが通る確率が理論上10%になる』ことに遊戯王プレイヤーは絶望した。

結果、付属カードである《抹殺の指名者》のテキストの強さと応募者全員サービスの企画も相まって多くのプレイヤー及び転売ヤーが書店に問い合わせ、過去稀なる『Vジャンプ予約完売』と言う大事件へと発展した。1冊500円で買えるはずのカードが発売日には1枚1500~2000円近くで取引されたのだ。『このカードがないと遊戯王が出来ない』多くのプレイヤーがそう感じた。

実際はこのカードを採用するのは一部の展開系デッキだけであり、価格も1000円以下と落ち着いた。しかし、強力なカードには変わりない。やっていることは後打ちの禁止令であり、相手の誘発にチェーンして打てる点が何ともインチキ臭い。 このカードの登場によって『抹殺の指名者用に採用する誘発を散らす』ことや『誘発ピン指し』のプランも生まれた。また、《墓穴の指名者》では防げない《無限泡影》の解答になったり、永続カードを無効にしたり、やろうと思えば神の宣告だって無効にできる。

そうやって良いカードのように書いてはみたが、間違いなく良いカードではない。

第3位は10月12日発売の『IGNITION ASSAULT』収録の《ライトニング・ストーム》だ。効果は単純明快、相手の攻撃表示のモンスターか魔法罠カードを破壊するだけだ。

《ライトニングストーム》
通常魔法 このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):自分フィールドに表側表示のカードが存在しない場合、 以下の効果から1つを選択して発動できる。 ●相手フィールドの攻撃表示モンスターを全て破壊する。 ●相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する。

出典:遊戯王OCGカードデータベース

2019年は長き期間禁止カードとなっていた《サンダー・ボルト》が制限カードへ緩和されたこともビッグトピックだが、正直サンダーボルトが使われてる所を殆ど見たことがない。だからってどうしてこんなカードが産まれてしまったのか頭が痛くなる。

まさに『小学生が考えたようなテキスト』。小学生でも『このターン特殊召喚できない』だとか『ターン終了時にデュエルに敗北する』のような重めのコストやデメリットを付けるだろう。しかし、 《ライトニング・ストーム》は自分の場に表のカードが無い場合という条件こそあるもののほぼノーリスクの《ハーピィの羽根箒》と《サンダー・ボルト》を足したカードだ。《サンダー・ボルト》は使われてないものの流石に《ハーピィの羽根箒》と同じ効果は強いためサイドカードとしての採用率はそこそこ高い。(それでもそこそこな所が現代遊戯王の恐ろしいところだが、、)

表のカードが無い場合となると後攻1ターン目で使う前提となってくるが【オルターガイスト】や【サブテラー】【メタビート】等の罠デッキ相手は『罠を割れなければ負け』というシンプルなゲームが発生しやすいため羽根箒に加え少しでも伏せ除去カードを初手に引く確率を高めることが勝ちに繋がる。また、メタビート相手には《インスペクト・ボーダー》や結界像等の強力な永続効果持ちの置物に対しても臨機応変に使用できたり、展開デッキはこのカードで捲られるのをケアするためにあえて高い打点のモンスターも守備で構えるといったプレイが絡むカードでもある。とは言え、誰もこのカードが生まれることを望んでいなかったハズであり、そういうデュエルを望んでいないだろう。多くのプレイヤーが望んでいるのは『深みのあるデュエル』であり、引いたものが一方的に有利になる『1枚でデュエルを終わらせる力』ではないハズだ。

第2位は2019年9月14日発売のEXTRA PACK2019収録の《原始生命態ニビル》だ。このカードは海外産だが公開されて早くも日本に上陸したことから大きな話題となった。

《原始生命態ニビル》効果モンスター 星11/光属性/岩石族/攻3000/守 600このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):相手が5体以上のモンスターの召喚・特殊召喚に成功したターンのメインフェイズに発動できる。 自分・相手フィールドの表側表示モンスターを全てリリースし、このカードを手札から特殊召喚する。 その後、相手フィールドに「原始生命態トークン」(岩石族・光・星11・攻/守?)1体を特殊召喚する。 このトークンの攻撃力・守備力は、この効果でリリースしたモンスターの元々の攻撃力・守備力をそれぞれ合計した数値になる。 この効果は相手ターンでも発動できる。

出典:遊戯王OCGカードデータベース

いわゆる『手札誘発』の一種なのだが、従来の手札誘発は《エフェクト・ヴェーラー》《灰流うらら》など1つのカード効果に対して1:1交換で妨害をするものがほとんどだ。昨今の展開系デッキは第8位にあった《冥王結界波》のような捲りのカードが通用するものが珍しく、先攻ワンキルや先攻ハンデス等、実質ターンが返ってこないタイプの戦術を取るものが多い。そのため、手札誘発で止める方法しか後攻プレイヤーが勝つ選択肢が無いのだが、リンク召喚のインフレも相まって1つや2つの妨害は踏み越える手数を持ち合わせていたり、《墓穴の指名者》《抹殺の指名者》で貫通されてしまったり、手札誘発が機能しない悲惨なシーンが頻発している。

そこで登場した革命的な手札誘発が《原始生命態ニビル》だ。相手がモンスターを5回、召喚、特殊召喚したターン手札で発動することで相手の場を更地にすることが出来る。言うならば相手ターンに出せる《ラーの翼神竜-球体形》なのだ。いくら手数が多いとは言え、このカードを直撃した後に展開力を残すデッキは多くない。よって2019年、遊戯王プレイヤーは《増殖するG》と同等以上の信頼できる手札誘発を獲得した。いやむしろ、《墓穴の指名者》で無効化されないことを考えると《増殖するG》以上の信頼度だと言える。

このカードの登場で『展開系デッキの終了』とも騒がれたが、そんなことはなかった。展開デッキは《アポロウーサ》や《アザトート》を早期に着地させることで《ニビル》ものとも誘発を無力化させる展開ルートを開拓したり、《抹殺の使命者》用に展開系自ら《ニビル》を採用したり対策を行った。また、【オルフェゴール】や【転生炎獣】等の展開系ビートダウンデッキは《ニビル》を受けない、もしくは受けても妨害盤面を作れる『ニビルケア展開』を開拓した。

結果起きてしまったのは『展開系の終了』ではなく『対応力の無い展開系の淘汰』でしかなかった。

しかしながら、このカードの存在が遊戯王プレイヤーにとっての希望であることに違いない。『特殊召喚何回ですか?』というワードは、対戦シーンで実際に耳にしたことは無いものの今年遊戯王プレイヤーの間で流行したワードと言っても過言ではない。

相手が展開している最中に特殊召喚の回数をカウントする、なんて小細工が生まれたのも『安全な特殊召喚は5回まで』という新たな概念をこのカードが産み出したおかげだろう。

このカードは来年も廃れることなく遊戯王の第一線で活躍してくれるだろう。

這えある(?)1位は2019年1月12日発売の『DARK NEOSTORM』収録の《魔鍾洞》だ。このカードだが、2019年7月のリミットレギュレーションで準制限となり、その後10月に制限カードに指定されている。お気づきだろうが今回のランキングにランクインしているカードの中で唯一制限されたカードである。つまりは、公式も認める『ヤバイ』カードというワケだ。

《魔鍾洞》フィールド魔法(1):相手フィールドのモンスターの数が自分フィールドのモンスターより多い場合、 相手はモンスターの効果を発動できず、攻撃宣言もできない。(2):自分フィールドのモンスターの数が相手フィールドのモンスターより多い場合、 自分はモンスターの効果を発動できず、攻撃宣言もできない。(3):自分・相手のエンドフェイズに、お互いのフィールドのモンスターの数が同じ場合に発動する。 このカードを破壊する。

出典:遊戯王OCGカードデータベース

《魔鍾洞》の恐ろしい所を大きく分けて3つ。

①『ロック性能の高さ』②『破壊の困難さ』そして、③『特殊勝利への悪用』だ。

①『ロック性能の高さ』

このカードにより、モンスターの数が相手よりも多いプレイヤーはフィールド墓地手札含め一切のモンスター効果の発動が出来ない。さらには攻撃も封じられてしまうもんだから遊戯王の基本である『モンスターによる勝利』が不可能となる。このカードの発動が通ってしまった時点で相手プレイヤーは『魔鐘洞を破壊しなければ勝てないゲーム』に陥ってしまうのだ。

そのため、【閃刀姫】や【オルターガイスト】のような中速のコントロールデッキですら採用し、初動の遅れや不利な状況に『待った』をかけゲーム状況を一変させる『魔鐘洞ゲー』が定着してしまったのだ。それほどまでに1枚でゲームを掌握するパワーがこのカードにはあった。

②『破壊の困難さ』

現代遊戯王の展開デッキはリンクモンスターの性能の向上により、モンスターを並べることが出来れば様々な状況に対応することができた。攻撃力の高いモンスター、耐性持ちモンスター、面倒な効果を持つ永続カードなど、メインデッキでは太刀打ち出来なくてもリンクモンスターによって『詰み』は起こりにくくなったのだ。しかし、このカードはモンスターカードを全否定する効果を持っており『モンスターで突破できない妨害』だ。メインデッキに魔法罠カードを破壊する魔法罠がなければその時点で『詰み』となってしまう。《魔鐘洞》このカードの『存在』が多くのプレイヤーの構築、プレイに影響を与えたのだ。

③『特殊勝利への悪用』

このカードを突破する方法は破壊するだけではなく『エンドフェイズにお互いの場のモンスターの数を揃える』ことで自壊を狙えるのだが、このカード1枚の制圧力の高さから特殊なデッキタイプが生まれてしまう。

『魔鐘洞バーン』

モンスターを場に残さないことで《魔鐘洞》の突破をより困難にし、《波動キャノン》等のバーンカードで勝利するデッキだ。このデッキタイプは当時無制限カードだった《メタバース》《悪魔嬢リリス》によって《魔鐘洞》成立の確率を高め、《魔鐘洞》を破壊から守るカードとバーンカードで勝利を目指す。メインデッキに解答を持たないもの、《ハーピィの羽根箒》しかないデッキではまず勝ち目がない地雷デッキとしてプレイヤーを苦しめることとなった。

また、《魔鐘洞》によって起きた最も恐ろしい問題が

ゲーム遅延 と

1本目でのゲームセット だ。

先ほども話したが、このカードは1度発動を通してしまうと詰んでしまうデッキが多い。解答を引かない限り突破できない相手はドローゴーを繰り返すことしか出来ず、その間に制限時間がどんどん消化されていく。【魔鐘洞バーン】以外にも《魔鐘洞》を利用するデッキが多数あったため、このカードの存在がゲームと大会進行に大きく影響を与えてしまっていた。

そして、ゲーム遅延の結果1本目で制限時間が来てしまい《魔鐘洞》によって動きを止められたプレイヤーはライフの差で敗北してしまう。

この問題対して、多くの人は『勝ち目が薄いのに続けようとするのが悪い、さっさとサレンダーをしてサイドチェンジで対策すればいいじゃないか』と思うだろうが、ここにルールの落とし穴があった。

公式ルールでは『サレンダー』が認められないのだ。

非公認大会では大会独自のルールによりサレンダー行為を認めている大会がほとんどであるが、公認大会では『サレンダーが認められない』というよりも『サレンダーという概念自体が存在』しなかった。

何故ここまで公認大会でのルールが騒がれるかと言うと、《魔鐘洞》全盛期は不幸なことに2019年度の世界大会の店舗予選大会の時期と被っており各地でサレンダー不可能による敗北が続出していたのだった。

このように、《魔鐘洞》は単純なパワーカード以上にプレイヤーの驚異、遊戯王の驚異として歴史に残る1枚と言えよう。

さいごに


以上、2019年の『ヤバイカード』10枚を紹介したが皆さんの予想したカードは入っていただろうか?

こんなことを最後に言うのもなんだが、『ヤバイカード』というざっくりとした表現であるが、これらのカードは大きく2つの分類出来ると思っている。

・ヤバイカードAタイプ
⇒パワーが高く強いカードだが、ゲームに深みを与えたり面白くする

・ヤバイカードBタイプ
⇒何故作られたか理解に苦しむカード。

Bタイプは今回のランキングでは《抹殺の使命者》《ライトニング・ストーム》《魔鐘洞》の3枚だ。『辛い食べ物が好きなんですよ』という人は『辛くて美味いもの』が好きなのであって『ただアホみたいに辛くしている食べ物』が好きでは無いはずだ。強力な効果を持ったカードはプレイヤーの刺激になるため必要なのだが、ゲームの面白さを損なわない『辛ウマ』レベルでお願いしたい。

そんなこんなで『ヤバイカード』もあって盛り上がった2019年の遊戯王であるが、来年2020年は第11期への突入と新マスタールールの施行によりカードの価値や環境に大きく変化が訪れることが予想できる。

来年も『ヤバイ』カードで飽きの来ない遊戯王に期待したい。


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