目次
おことわり:この記事の半分以上は、デッキ自体には直接関係のない内容で出来上がっています。デッキだけを手っ取り早く見たいという方は、第五章まで飛ばしてお読みください。デッキ解説自体はかなり薄味ですが、ギミックは面白いものであることを保証します。
【第一章:突然の死】
さる2019年12月17日(間違ってたらごめんなさい)。
デュエマ界を揺るがす、大変革があった。そう、殿堂発表である。
まさに晴天の霹靂、WHFを目前に控えておきながらのこの発表生放送は、タカラトミー側に何を押しても制限をかけたいデッキがあるからではないかと騒がれた。
とはいえ、大方の予想はせいぜいこのようなものだったろう。
当時の環境で猛威を振るっていた《BAKUOOON・ミッツァイル》に制限がかかることは確実として、恐らくはそれに伴って《機術士 ディール / 「本日のラッキーナンバー!」》、あるいはGPでの活躍が見られたデッキに採用されていたカードが、今回も旅立つのであろう。
《ブラッディ・クロス》か、はたまた《禁断機関VV-8》か、それとも《蝕王の晩餐》か。
いずれにせよ、このカードが殿堂にかかるだろうとは、世の誰も、もちろん筆者も、予想だにしていなかった。
《BAKUOOON・ミッツァイル》《機術士 ディール / 「本日のラッキーナンバー!」》。よしよし、まあ順当だろう。
《禁断機関 VV-8》《侵革目 パラスラプト》。パラスラプトは意外だな、VV-8も比較的思い切った決断に思える。
《バロン・ゴーヤマ》。ふむ、何ともピンポイントだな、哀れなことだ。
本当に哀れなのは数秒後の自分(及びその後の環境)だというのに、筆者は浮かれていた。憎きミサイルの死が、あまりに待ち望んでいたものだからだろう。
盲目的な感慨に浸っていた筆者を地獄の底に突き落としたのは、画面に映る二人の悪魔の宣告だった。
《Dの牢閣 メメント守神宮》、殿堂入り。
……は? いや、嘘だろう。きっと何かの間違いだ。すがるような思いで見た画面には、間違いなく《メメント》が写っていた。
(※以下、《Dの牢閣 メメント守神宮》は全て《メメント》と略記します)
愛したカード。思いを託してきたカード。それが、こんな無残な姿に……(拡大印刷されてあのプラスチック板みたいなやつに貼られていた)。
ようやく事態を飲み込んだ筆者が感じたのは、タイミングの錯誤感だった。
メメントに制限をかけるならば、前回《轟轟轟ブランド》と共にかけるのが順当だったのではないか。それがなぜこのタイミングで。よくもぬか喜びさせてくれたな、と。
最後のは八つ当たりだが、筆者は本当に絶望していた。『引退』の二文字と共に脳裏をよぎるのは『シノビドルゲーザ』の記憶だった。
このデッキは、筆者が初めて手を出したガチデッキレベルと渡り合えるだけのパワーを持ったデッキだった(このクロニクル発売当初のお話)。
《デスマッチ・ビートル》が抜けたり、《サイバー・チューン》を積んでみたり、《剛撃戦攻ドルゲーザ》が3枚になったり、《時の法皇 ミラダンテⅫ》が入ったり、様々に紆余曲折を経て到達したこのデッキ(ファンデッキ的側面が強いのはご容赦を)。
それを、なぜこのタイミングで砕かれねばならないのか。辛すぎる。
終わった。
心の傷を癒すため、1週間ほど筆者はデュエマに手をつけなかった。しかし、どれだけ見ないふりをしても、結局最後には振り返らずにはいられない。
失ったとあってはリペアしたくなるのがデュエリストの性。《メメント》がなくとも、超防御力と攻撃力を両立したシノビドルゲーザを再誕させてみせる、との決意と共に、地獄の執念で筆者は考察を続けるのだった。
【第二章:そもそもメメントとは】
閑話休題。以降の記事を書くにあたり、《メメント》というカードに対する考察は不可欠であるため、ここで一度整理しよう。
《Dの牢閣 メメント守神宮》
【D2フィールド】
【文明】光
【コスト】4
■S・トリガー(このD2フィールドをシールドゾーンから手札に加える時、コストを支払わずにすぐ展開してもよい)
■自分のクリーチャーすべてに「ブロッカー」を与える。(「ブロッカー」を持つクリーチャーをタップして、相手のクリーチャーの攻撃先をこのクリーチャーに変更してもよい)(他のD2フィールドがバトルゾーンに出た時、このD2フィールドを自分の墓地に置く)
■Dスイッチ:いずれかのプレイヤーが自身のターンに最初のカードを引いた時、このD2フィールドをゲーム中で一度上下逆さまにしてもよい。そうしたら、相手のクリーチャーをすべてタップする。
一目見て分かる強さである。味方全軍無償ブロッカー付与は、後述するがごく限られたカードによってしかなされないもので、それだけでこのカードを採用する価値があるが、このカードの真価は他に二つある。
一つ目。S・トリガーを持っていること。色の合わないデッキにもタッチで投入されることを可能にした、デュエマの原点にして頂点と言って差し支えない能力である。
そして二つ目。ターン開始時の全タップ。アンタップステップ後のタップのため、実質全軍1ターン行動停止である。ケアしきれない突然のスピードアタッカーにも一つ目の能力で対応できるため、隙のない能力であった。しかも両プレイヤーの開始時に対応しており、柔軟性も恐ろしい。
このカードが採用されてきた経歴を辿れば、やはり印象に残っているのは『ラッカバスター』であろうか。
記憶に新しいものでいくと『ドロマーオーラ』や『シータミッツァイル』にも搭載されていただろう。それほどに汎用性の高い防御札だった、ということだ。
(※以下カード性能に関係ない話を始めますのでご注意)
また、そもそも名前の『メメント』とは以下に示すように『思い出』あるいは「形見』などといった意味がある。
それを『守る』神宮というだけでも洒落たネーミングだが、実はこのフレーズ、掛詞にもなっている。
即ち『メメント・モリ』という音を参照すると、こうなる。
『死を忘れるな』と訳されることが多いだろうか。筆者はこれを、けして後ろ向きな意味でなく、『死はいつか必ず訪れるのだから、今を目一杯楽しめ』という意味で解釈している。
座右の銘にしたくなるような、深いネーミングのカードである。もちろん、『楼閣』と『牢』をかけてくるセンスも好きだ。
性能からネーミングから何から、筆者がこのカードをどれだけ愛していたか伝わっただろうか(趣旨崩壊)。
【第三章:代替カードの検討】
さて、ここまではやたら長い前置きだったが、ここからがいよいよデッキビルダーらしい思考の始まりだ。
筆者がリペアしたいのは『シノビドルゲーザ』である。このデッキにおいて、メメントの抜けた穴をどう埋めるか。全タップ能力に類似する足止めがなくとも、全軍ブロッカー付与効果は是非とも欲しい。
そこで候補に上がったのが以下の二種である。
《時空の不滅 ギャラクシー / 撃滅の覚醒者キング・オブ・ギャラクシー》
(覚醒後)
【サイキック・クリーチャー】
【文明】光
【種族】エンジェル・コマンド
【パワー】11500
【コスト】9
バトルゾーンにある、自分の他のクリーチャーはすべて「ブロッカー」を得る。
W・ブレイカー(このクリーチャーはシールドを2枚ブレイクする)
シノビとこのカードの組み合わせで思い返されるのは、往年の『不滅オロチ』であろうか。表面《時空の不滅 ギャラクシー》の覚醒条件をオロチで満たし、裏面のこのカードにアクセスすることで要塞を作り上げられる。
しかも、現代では『サルトビバイケン』のギミックにおけるバウンスをギャラクシーに当てて覚醒することができ、その時点で二体のブロッカーも生成される。文句なしに強いのだ。
ということで、暫定的に叩き出したレシピがこちら。
同タイミングで殿堂解除された《超次元ドラヴィタ・ホール》を採用したことで、3コストの初動呪文及び《西南の超人 / 断断打つべしナウ》を回収できるようになった。強い。
ただ、どうにもギャラクシーに依存した構築なのが恐ろしい。確定除去一発で沈んでしまう。特に攻撃しながらギャラクシーを処理してくる『デッドダムド』は脅威だ。
一応ギャングパレードが揃ったときにもブロッカー付与は可能であるが、何とも言えない。
うーむ、次。
《セイント・キャッスル》
【城】
【文明】光
【コスト】2
城-自分のシールドをひとつ選び、このカードを付けて要塞化する。その要塞化されたシールドがシールドゾーンから離れた時、このカードを自分の墓地に置く。(「S・トリガー」能力を使う場合は、このカードを墓地に置く前に使う)
バトルゾーンにある自分のクリーチャーすべてのパワーは+1000され、「ブロッカー」を得る。
こちらも古参のカードである。カードタイプはまさかの城。
本来のシノビドルゲーザが活躍していたE1周辺期の防御札はまさにこれである。原点回帰といったところであろうが、どうしてもこのカードではパワー不足感が否めない。
結局、このカードのために割く光文明の枠を他のシノビにした方がデッキの回転度は上がるのではないか、と考えたこともある。
シールドを早期に無くされてしまった場合も、《超次元ホワイトグリーン・ホール》くらいでしか対処のしようがないため、これを採用したレシピは考えられなかった。
【第四章:天啓】
前掲したどちらのカードでも、筆者はいまいち納得いくレシピを考えられなかった。
これは本格的にリペアは無理だろうか、と諦めかけたその時。
天啓は降りてきたのだ。
その天啓の正体とは、2020年1月25日(土)に発売された『謎のブラック・ボックス・パック』である。
個人的に嬉しかった『弱キャラ友崎くん』とのコラボである《ガールズ・ジャーニー》や、筆者の尊敬するイラストレーター、出水ぽすかさん(コロコロコミックにトマト人間だったか何か、ホラー漫画の読み切りを載せていたのを覚えている)による《爆走戦鬼 レッド・ライダーズ》など。
様々なコラボカード・再録カードが発表されるなか、筆者はある新規カード二種に目をつけた。それらを使ったギミックの提案と共に、この記事の総まとめへと入ろう。
【第五章:悲しみの向こうへと】
御託は不要。まずはデッキレシピを見ていただこう。こちらだ。
なんだこれは、とお思いの方も多いだろう。これこそが筆者の提案するギミック『そのトミカタウン、可憐につき』略して『可憐タウン』である。
【クリーチャー】
【種族】ヒューマノイド/チルドレン
【文明】光/水/火
【パワー】 3500
【コスト】 3
■自分のコスト4以上のクリーチャー全てに「スピードアタッカー」を与える。
■相手の進化クリーチャーと「スピードアタッカー」または「マッハファイター」を持つ相手のクリーチャーは、タップしてバトルゾーンに出る。
【T2フィールド】
【文明】光/火
【コスト】4
■自分の「スピードアタッカー」を持つクリーチャーはすべて「ブロッカー」を得、ターンの終わりにアンタップする。
特筆すべき能力を右に挙げた。
もうお分かりだろう。この二枚を組み合わせることにより『自分のコスト4以上のクリーチャーはすべてスピードアタッカー、ブロッカーを得、かつターンの終わりにアンタップする』のだ。
これはまさに、《メメント》の代替になり得る防御力を持っているのではないかと筆者は考える。
《トミカタウン》は《メメント》とは違う謎のカードタイプ『T2フィールド』であるため、カード指定除去以外の何によっても除去されない。
また、《その子供、可憐につき》は自身の効果でスピードアタッカーによる奇襲を防ぐことができる。除去耐性に不安はあれど、その前に4コスト以上のジャイアントを並べて殴り倒すというプランをとることが可能になった。ラフルルを奪われて失った殺傷力を、過剰打点によって補おうという考えである。
以上が、新たなデッキ基盤『可憐タウン』の提案と、サンプルレシピ案である。
【終章:思い出を抱いて】
ここからは、「だ、である調」は疲れたので、普段の私に近い口調で書かせていただきます。
まず、ここまで私のくだらないテンションと駄文に付き合ってくださり、ありがとうございます。
半分以上、デッキ紹介に関係ないシノビドルゲーザ構築論みたいになってしまいましたこと、大いに反省しております。
恐らくはこの記事、トレカライターコロシアムの方に出すべきだったのでは、と自分でも思っていますが、一応ほら、新たな基盤の提案ということでね。
また、この記事は4時間+αの突貫工事で出来上がっているのですが、デッキメーカーがどうも私のことを嫌いらしく、デッキIDを永遠に表示してくれなかったので、仕方なくすべてスクリーンショットで対応しています。お許しを。
今回のデッキ(というかギミック)は、自分ではかなり面白いものになっているのではないか、と思っています。
悲しいことに資金が足りないため《その子供、可憐につき》4枚を揃えることもままならず、未だ一度も動かしてみたことはありませんが。
どうかここから先は、読者の皆様の手で開拓していっていただければと思います。
これ以上GRがインフレしなければ私もまだ引退はしないつもりですので、一匹のファンデッカーとして、デュエル・マスターズというカードゲームの向かう先を見届けたいと思います。
最後に、長くなりましたが、お付き合いくださりありがとうございました。魂の叫びを残して、別れの挨拶と代えさせていただきます。
あの、お願いです……
……メメント返して!!!!!!!!!!!