デュエル・マスターズ。
それは多くの人がプレイしている大人気カードゲームである。
プロプレイヤーをはじめとするたくさんのプレイヤーたちが、カードとカードを組み合わせ、強いデッキを作ろうと日夜努力している。
更には全国大会までもが開催され、そこでは多くの熱いバトルが繰り広げられてきた。
デュエル・マスターズ(略してデュエマ)は、カードゲームである。
だから、カードで戦う。
デュエマには多くの“環境デッキ”が存在し、大会などで活躍を見せている。
デュエマの環境の回転というのはとてつもないものである。
Aという新しいデッキが大会で優勝したら、数日後にはそれが環境デッキとなって日本全国で使用されるデッキになるなんてことも珍しくはない。
そのようなことが起きる理由はやはり「“情報”を簡単に手に入れられる」ことにある。
スマートフォン、PCなどが普及し、情報をすばやく、簡単に手に入れることが可能なのだ。
そうなったことで、新・環境デッキが次々と生み出されているわけだ。
そしてもう一つ、情報がすばやく回るようになってある現象が起きている。
それが、「今まで見向きもされなかったカードの急激な高騰」だ。
例を挙げると、《怨念怪人ギャスカ》などが挙がる。
この前までストレージで溢れかえってたカードが、いきなりかなりの価値になるなんてこともよくある。
何が言いたいかと言うと、つまりは「どんなカードでも輝けるチャンスがある」ということだ。
今日あなたがストレージで見たカードが、明日にはとてつもない値段がついて売られているかもしれない。
もう一度言うが、「どんなカードでも輝けるチャンスがある」ということは事実だ。
しかし!
やはり現実は、そんなに甘くなかった。
「輝けるチャンス」すら、今はほとんど皆無に等しいカードたちがいることをご存知だろうか。
聞けばわかるはずだ。もしくは、もうわかっている人もいるだろう。
そう、「プレミアム殿堂入り」したカードたちだ。
彼らはほとんどの場合、プレミアム殿堂入りする“前は”とても輝いていた。
しかし、その輝きも束の間。彼らは「強すぎるカード」として、すぐにプレミアム殿堂、もしくは殿堂からプレミアム殿堂などとなった。
彼らは環境という大舞台での輝きを失い、殿堂ゼロやフリー対戦などでしか“戦える場所”もないという状況に置かれている。
そんな状態で彼らは毎日毎日、また輝きを取り戻せるように願っている。(はず)
そこで、本当にプレミアム殿堂でないといけないのかを見分けるために、ここに第一回全プレ殿総会議の開催を宣言する!
これは、プレミアム殿堂カードたちの「環境に戻りたい」という強い意志から生まれた話である!
目次
準備時間
そこは、騒がしいスタジオであった。たくさんのカメラが設置されていて、いかにも、スタジオという感じだ。これから、ここで総会議が行われる・・・はずなのに、そんな感じは全くしない。
しかし、僕にとってはそんなことどうでもよかった。
僕はこの会議で、司会を担当することとなった。
テレビ番組だから、MCと言ったほうがいいかもしれない。
学校で討論をして司会になったことなら何度かあるけれど、こんな大きな会議で司会をするのはもちろん初めてだ。
あー、緊張する。
そんなことを考えていた。ふいに時計を見たら、もうすぐ始まる時間だ。
僕は襟をただしながら、スタジオへ向かった。
プレ殿総会議、スタート!
そこには、全プレミアム殿堂入りカードたちの姿があった。
おっ、《ヴォルグ・サンダー》もいるじゃないか。
なんか、超楽しい会議になりそう。
あっ、そろそろ始まる。スタッフが秒読みを始めた。
それでは開始5秒前、4、3、2、1
「さあ始まりました、プレ殿総会議!」
「この番組は、デュエル・マスターズにおける「プレミアム殿堂入り」カードたちが本気で話し合い、そのカードが本当にプレミアム殿堂にふさわしいカードなのかを議論するという番組です!」
「司会は私、」
「早く始めてくれ」
「わたくし」って言うのになれないな〜と思いながら言っていた途中に、誰かが口を挟んだ。
《スケルトン・バイス》だ。
「わ、分かりました。それでは早速、会議を始めていきたいと思います。」
「それでは皆様、会議資料の2ページをご覧下さい。」
「そういえば、あんた誰だ?」
《ロスト・チャージャー》が言った。
あっ、いけない。そういえば、さっき言えなかったんだ。
「私は、現役中学生DMPのティーと申します。」
「ああ、あのナントカ兄弟の?」
《ロスト・チャージャー》は両手を広げて「T」の字を作った。
「・・・違います!」
そんなわけないだろ。というかあの人たち、Tっていう名前じゃない気が・・・
「じゃあどういう意味だ?」
「えっと、それは・・・」
間違いなく「T」ではないが・・・ここで答えないと、「T」が定着してしまいそうだ。
「お茶の、『tea』です。」
「ああ、お茶の方か。悪い悪い。」
おっと、こんなことしてると一向に会議が始まらない。僕は話を戻した。
「それでは、資料の2ページをご覧下さい。」
僕も、会議資料の2ページを見る。そこには、プレミアム殿堂入りカードの一覧が記されていた。
「このカードたち、つまり皆様は本当にプレミアム殿堂にいるべきなのか?それを今から話し合っていきたいと思います。」
「まずは、この方についてです。」
【議題1】《ヴォルグ・サンダー》
「まず最初は、《ヴォルグ・サンダー》さんについてです。どうぞ、前へ。」
《ヴォルグ・サンダー》は前に出てきて、お辞儀をした。
「おいヴォルグ〜、なんでそんなに礼儀正しいんだよー」
《次元流の豪力》が言っている。
「いや、もしかしたらこの会議次第でプレミアム殿堂解除とかがあるかも、と思って。」
「ああ、なるほど。それじゃ俺も礼儀正しく振る舞わないと。」
「えっと、まずは《ヴォルグ・サンダー》さんがプレミアム殿堂になった日ですが・・・」
「おい、細かいことはいいから、早く始めてくれ!」
またもや《スケルトン・バイス》が言ってきた。とにかく、早く始めたいみたいだ。
あー、シナリオとは違うように進んじゃうよ。まあ、この際いいか。
「では少し飛ばして、早速話し合っていきましょうか。」
「ではまず、《ヴォルグ・サンダー》さんはプレミアム殿堂を解除したほうがいいかどうか聞きましょう。」
「プレミアム殿堂を解除したほうがいいと思う方は解除の札、しないほうがいいと思う方は残留の札を上げて下さい。」
「ありがとうございます。札をおろしてください。」
挙げられていた札が、どんどん下がっていく。
「結果ですが、解除が12人、残留が17人ということになりました。」
「それでは、このことを踏まえて、話し合いを始めていきたいと思います。意見がある方は、挙手をしてください。」
次々と、手が挙げられていく。
「では、《アクア・パトロール》さん、お願いします。」
《アクア・パトロール》「はい。私は《ヴォルグ・サンダー》の殿堂解除に反対します。理由ですが、やはり【ドロマーハンデス】は強力で、《Wave ウェイブ》と合わせたら今まで以上に環境に影響を及ぼすということが挙げられます。」
《ミラクルとミステリーの扉》「でも今どきの環境だったら、ヴォルグを出す前に負けると思うし、解除してもいいんじゃない?キルターンは4〜5ターンが当たり前の環境になってるし。」
《聖鎧亜キング・アルカディアス》「しかし、《MEGATOON・ドッカンデイヤー》などが殿堂になったら、安定したフィニッシュができるデッキが今より減るのでは?次の十王篇の《U・S・A・BRLLA》や《リツイーギョ#桜 #満開》などが登場して、早いデッキが少しは減ると思います。」
《母なる大地》「私も、キングさんに賛成です。しかも現環境の【カリヤドネループ】などに《ヴォルグ・サンダー》を入れたりでもしたら、一瞬で墓地が肥えてしまいますし、別に今解除しなくてもいいのではないですか?」
《転生プログラム》「確かに、それは危険だな〜。しかも、《天使と悪魔の墳墓》と同じように構築の段階からかなりのプレッシャーを与えて来るしね。一時期みんなして《悠久を統べる者 フォーエバー・プリンセス》を入れてたのを覚えてる。」
《天雷王機ジョバンニⅩ世》「やはり構築から影響されるのは大きいですね。いろいろ危険だし、解除するなら今すぐではなくても・・・」
「はい、そろそろ時間ですので、結論を出したいと思います。」
「皆様の意見を踏まえた上で、解除するべきかしないべきかを考えていきます。」
「では皆様、もう一度札を上げて下さい。」
「ありがとうございます。おろしてください。えー、結果は、解除14人、残留15人ということになりました。」
1人差か〜。惜しい。
「ということで、議題1は終了です。ありがとうございました。」
【議題2】《サイバー・ブレイン》
「えー、次は《サイバー・ブレイン》さんです。お願いします。」
僕が呼んだら、《サイバー・ブレイン》は席を立って、前に出てきた。
それではまず、解除が良いか残留が良いか、皆様の考えで札を上げてください。
「・・・はい。ありがとうございます。結果の方ですが、解除が23人、残留が6人ということになりました。」
「それでは、話し合いを始めていきたいと思います。」
《音精ラフルル》「《サイバー・ブレイン》さんは解除してもいいと思います。今解除してもそこまで環境に影響を及ぼすこともないと・・・」
《ソウル・アドバンテージ》「そうだな。それに似たような性能のカードがたくさんあるしな。例えば・・・」
《アクアン》「《ネオ・ブレイン》とか《王立アカデミー・ホウエイル》、《トリプル・ブレイン》とかがあるね。どれも似たよーな性能のカードだ。《サイバー・ブレイン》がプレミアム殿堂なら、《王立アカデミー・ホウエイル》とかは殿堂でもいい気がするね。」
《エンペラー・キリコ》「しかし、【青白スコーラー】などの《次元の嵐・スコーラー》系のデッキに入ったら、かなりのリソースを確保できてS・トリガーまで付いている《サイバー・ブレイン》はかなり強いカードになるのでは?」
《インフェルノ・ゲート》「でも今どきのスコーラーのリソース確保要員は《邪魂転生》で大丈夫とか前にテレビでリリアング君が話してたぞ。4ターン目に3ドローより、2ターン目に最大6ドローの方が強いんじゃないか?」
《奇跡の精霊ミルザム》「確かに・・・スコーラーが大丈夫なら解除してもいいのでは・・・?」
「・・・はい。そろそろ時間ですので、ここまでということでお願いいたします。それでは、結論を出したいと思います。話し合いを踏まえて、もう一度札を上げてください。」
「ありがとうございます。結果は、解除24人、残留5人ということになりました。」
「以上で第一回全プレ殿総会議は終了です。皆様、ありがとうございました。」
自分の中では、結構楽しかった。次も頑張らないとな。
最後に、《緊急プレミアム殿堂》さん、総評をお願いいたします。
総評
「・・・はい。」
「今回のプレ殿総会議は、《ヴォルグ・サンダー》と《サイバー・ブレイン》についてだった。まず《ヴォルグ・サンダー》。結論は『残留』になったが、ここで下を向かず、これからも前を向いて解除のときまで頑張っていてほしい。そして《サイバー・ブレイン》。会議での結論は『解除』になり、私も解除を予想している。しかし油断は禁物。プレミアム殿堂を解除したからと言って、必ず誰しもが輝けるわけではない。いざ解除しても役立たずでは、だんだんと忘れ去られていくだろう。解除したときのことを常に頭に入れ、その日まで努力を惜しまないでほしい。」
《緊急プレミアム殿堂》は大きく息を吸い、言う。
「また輝くその日まで、みんなで頑張ろうじゃないか!」
「以上だ。」
「ありがとうございました。第一回全プレ殿総会議はこれで終わりです。次の第二回も、お楽しみに。それでは、また次回。」
おまけ〜収録後の出来事〜
収録が終わり、僕は楽屋まで向かっている途中だ。
いやー、楽しかったな〜。次回は誰を議題にするのだろう。
でも、僕あんまり話せなかったな。次は直そう。
あっ、そうだ。話し合いにも参加したいから、あとでスタッフさんに言ってみるか。
そんなことを考えているうちに楽屋の目の前に立っていた。僕はドアを開ける。
椅子に座った。そして、やることがなくなった。
そういえば、何して待ってればいいんだろう。
ん?そもそも誰かを待っているのか?
いや、待っていない。
じゃあ、帰るか。そう思って立ち上がったら、扉が開いた。
「あっ、お疲れ様です。」
僕は思わず挨拶する。《サイバー・ブレイン》がそこにいた。
「ああ、お疲れ様。突然で申し訳ないんだけど、今何してた?」
僕は答える。「何もしないで椅子に座っていました。」
「じゃあ、暇ってこと?それじゃあさ、今日夜どっか食べにいかない?ほら、第一回終了記念でさ。」
「えっ、いいんですか?では、お言葉に甘えて・・・」
「よし、そうと決まったら早速行こう!あっ、2人じゃアレだからさ、誰か呼んでいい?」
「もちろん。楽しみです!」
「それでは、無事に第一回全プレ殿総会議終了を祝って、乾杯!」
食事がスタートした。
ちなみに乾杯を言ったのは僕。あっ、僕はまだ中学校だから、お酒じゃないけどね。僕を含めて、何人かは。
《サイバー・ブレイン》「ティー君、今日はお疲れ様。初めてだから、緊張したでしょ。」
「は、はい!でも本番中はそこまで・・・あの、とても楽しかったので。」
《ヴォルグ・サンダー》「さっきより、今の方が緊張してるでしょ。そんな感じがするぞ。」
「実は・・・そうなんですよ。その、こうやって大勢で食事に行くのは初めてなもんで・・・」
《次元流の豪力》「まあ、13人もいるからな。《サイバー・ブレイン》。ちょっと呼び過ぎじゃないか?」
《サイバー・ブレイン》「いや、大勢の方が楽しいかなと。少ないよりはいいだろ?」
《次元流の豪力》「まあ、そうか。そういえばお前、解除の結論になったけど、どう?」
《サイバー・ブレイン》「どうって何だよ。まあ、嬉しいけど・・・でも、これで解除決定ってわけでもないからな。あとはひたすら祈るだけ。」
《アクアン》「まー、そーだよね。プレ殿解除するのはいつになるかこの番組で教えてくれるんじゃないし。昔みたいに輝きたいよ。」
《サイバー・ブレイン》「お前はデュエプレで輝いてるじゃないかよ。【アクアンブラック】が確か一時期環境トップだっただろ。お前はいいよな。輝けて。」
《アクアン》「君は、現実でプレミアム殿堂解除しそうじゃないか。そうしたらまた輝けるはず。僕だって現実で輝きたいよ!デュエプレに関しては《超竜バジュラ》に言ってくれ!」
《サイバー・ブレイン》「解除しても輝くかはわからないじゃないかよ!今だけでもお前はデュエプレで輝いてるじゃないか!」
おっと、ちょっとまずい・・・?
僕は止めに入る。
「まあまあ、お二人さん。いつかは全員輝けますって。だから今はそんなに慌てずに・・・」
《サイバー・ブレイン》「そう、だね。うん。《アクアン》、ちょっと言い過ぎたよ。ごめん。」
《アクアン》「こっちこそ。悪かった。・・・お互い、解除まで頑張ろうよ!『真の輝き』はその向こうにある!そんなことを誰かが言ってたよ。」
《サイバー・ブレイン》「・・・ああ、そうだな!みんな、解除まで頑張ろう!そして、まずはこの食事を楽しもう!」
よかった。でもやっぱりプレミアム殿堂って辛いんだな。改めてそう感じた。
そして、「次回も頑張ろう!」と思えた。