目次
■ はじめに
こんにちは、神田一です。
遊戯王に限らず、TCGでたまに見かけるのが「ジャッジを呼び、罰則を要求する」という行為。
結論から書くと、これはダメです。
相手が何かミスをした(あるいは違反行為をした)時に、ジャッジを呼ぶのはプレイヤーの権利です。
しかし、罰則を要求するというのは、実はプレイヤーの権利ではありません。
タイトルの「ジャッジ!相手がミスしたので勝ちでいいですよね?」には、ふたつのダメなポイントがあります。
今回は、この言葉のダメなポイントと、ジャッジを呼ぶ際にプレイヤーが何をするべきかについて解説します。
■ 遊戯王には「罰則規定」がある
最初に知っていただきたいのは、負けにならない違反行為があることです。
なんとなく
「ジャッジを呼んだら、相手は負けになる」
あるいは
「相手にジャッジを呼ばれたら、自分は負けてしまう」
……と思い込んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そこで、まずは遊戯王における「罰則」について説明します。
遊戯王(ランキングデュエル)には「罰則規定」が定められています。
これは、対戦中の代表的な反則や違反行為と、それに対する罰則をまとめたものです。
罰則には6つの段階があります。
何か違反行為があったとしても、必ずしも“デュエルの敗北”が適用されるわけではありません。“注意”や“警告”で済む違反も、結構あるのです。
1.罰則の種類
ランキングデュエル - 大会罰則規定
A:注意
注意は、その行為が罰則に違反することをプレイヤーに伝えることを目的とする。
B:警告
警告は、その行為が罰則に違反することをプレイヤーに伝えることを目的とする。(以下略)
C:デュエルの敗北
この罰則が適用された場合、そのプレイヤーは進行中のデュエルに敗北する。
デュエルとデュエルの間に違反した場合は、次のデュエルに適用する。(以下略)
D:マッチの敗北
この罰則が適用された場合、そのプレイヤーは進行中のマッチに敗北する。
マッチとマッチの間に違反した場合や、すでに敗北が決まっているマッチで違反した場合には、ジャッジの判断で次のマッチに適用することかできる。(以下略)
E:失格
この罰則が適用された場合、そのプレイヤーは進行中のマッチに敗北し、大会を失格となる。
プレイヤーが失格前に獲得していた賞は、そのまま受け取ることができる。(以下略)
F:受賞資格を失う失格
この罰則が適用された場合、そのプレイヤーは進行中のマッチに敗北し、大会を失格となる。
プレイヤーが失格前に獲得していた受賞資格も失われる。(以下略)
https://www.yugioh-card.com/japan/event/shop_duel/rules/?penalty
このように、“デュエルの敗北”にならない罰則もあれば、単発の“敗北”では済まない罰則もあります。
反則や違反行為に対してどの程度の罰則が適用されるかは「罰則規定」を基準とし、ジャッジがその状況に応じた判断で決定されるのです。
「ジャッジ!相手がミスしたので勝ちでいいですよね?」のダメポイント1。
相手がミスしたからと言って、罰則が“敗北”とは限らない。
■ “デュエルの敗北”にならない行為の例
では“デュエルの敗北”にならない行為には、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。
「罰則規定」の中から“注意”や“警告”に該当する違反行為を、いくつかピックアップしてみます。
4.ルールに関する違反
ランキングデュエル - 大会罰則規定
故意ではなく、ルールを誤解したプレイをした
罰則:注意
故意ではなく、過剰にカードを引いた
罰則:警告
故意ではなく、過剰にカードを見た
罰則:注意
https://www.yugioh-card.com/japan/event/shop_duel/rules/?penalty
6.裏の状態で区別のつくカードの使用
ランキングデュエル - 大会罰則規定
規則性がない場合
罰則:注意
https://www.yugioh-card.com/japan/event/shop_duel/rules/?penalty
7.不必要に長い時間をかけたプレイ
ランキングデュエル - 大会罰則規定
故意ではなく、不必要に長い時間をかけたプレイをした
罰則:注意
https://www.yugioh-card.com/japan/event/shop_duel/rules/?penalty
結構たくさんあるものです。
これらは「違反行為ではあるものの、故意(わざと)ではないもの」です。
故意でない場合は“注意”や“警告”ですが、故意の場合は“デュエルの敗北”~最上位の“受賞資格を失う失格”となっています。
これらの行為が故意かそうでないかは、ジャッジが状況を見て判断することになります。(故意かどうかを見極めるのが難しい状況もありますが……)
ただし、これらの行為も「負けにならないのだから、いくらやっても構わない」というものではありません。
たとえば、あるカードのルールを間違えて覚えていた場合。
1回目は「正しいルールを知らなかった=故意ではない」と判断されて“注意”で済む場合もあるでしょう。
しかし、一度そこで正しいルールを説明されたのに、もう一度同じ間違いをした場合は「知っているのにやった=故意である」となりかねません。
また、同じ違反行為を繰り返した場合は、上位の罰則が適用されると定められています。
“注意”なら“警告”に、そして“警告”なら“デュエルの敗北”が適用されるので、気を付けましょう。
(とはいえ「いくらやっても構わない」と考えている時点で、それは故意なのですが……)
本筋とは少しずれますが、他にも“警告”を受ける違反行為として、以下のようなものもあります。
うっかりやってしまいがちなミスなので、注意したいですね。
10.デュエル中の私語
ランキングデュエル - 大会罰則規定
デュエル中他のプレイヤーまたは観戦者等の第三者にアドバイスを受けたり、ルールを確認した
罰則:警告
デュエル中他のプレイヤーまたは観戦者等の第三者に話しかけた
罰則:警告
https://www.yugioh-card.com/japan/event/shop_duel/rules/?penalty
■ 罰則を要求してはいけない
「ジャッジ!相手がミスしたので勝ちでいいですよね?」の、もうひとつのダメポイントは冒頭に書いたお話です。
ジャッジを呼んだ際に罰則を要求する行為は、実は違反行為で罰則の対象になります。
「罰則規定」には、以下のように定められています。
8.不適切な対戦結果の決定
ランキングデュエル - 大会罰則規定
故意に、自らの対戦結果に対する罰則の適用をジャッジに要求した
罰則:デュエルの敗北
https://www.yugioh-card.com/japan/event/shop_duel/rules/?penalty
「勝ちでいいですよね?」は、対戦結果に対する罰則の適用をジャッジに要求していますね。多くの場合は、故意と判断されるでしょう。
「罰則規定」に則れば“デュエルの敗北”が適用されます。
ジャッジを呼ぶのはプレイヤーの権利ですが、罰則を判断するのはジャッジであり、プレイヤーではないということです。
ちなみに、ランキングデュエルの「大会規定」には以下のような記述があります。
4.禁止事項と大会中のマナー
ランキングデュエル - 大会規定
反則・違反行為について
(中略)参加者はショップデュエル大会規定・罰則規定を利用した判定の申し立てをする、またはそれを誘導してはならない。
https://www.yugioh-card.com/japan/event/shop_duel/rules/?ranking
この記述からは「勝ちでいいですよね?」に限らず、たとえば試合結果に影響しなくとも「警告を与えてください」なども、禁止事項であると読み取れます。
何か違反行為があった場合、プレイヤーがやるべきことは
「手を止めて、カードを動かさず、ジャッジを呼ぶ」
「今起きていることを正しく(偽りや不足なく)ジャッジに伝える」
このふたつです。あとは、ジャッジの判断を待ちましょう。
「ジャッジ!相手がミスしたので勝ちでいいですよね?」のダメポイント2。
罰則を要求してはいけない。
■ おわりに ~ジャッジは「罰則を与える人」ではない~
ここから先は、遊戯王のルールに書いてある話ではなく私の考えです。
しばしば勘違いされていますが、TCGにおけるジャッジは「罰則を与える人」ではありません。
ましてや「プレイヤーを殺す(負けにする)人」でもありません。
ジャッジの役割は、公正で円滑な試合が進められるよう、プレイヤーの手助けをすることです。
それでも、ジャッジが「公正な試合が続行できない」と判断した時には、規定に従って“デュエルの敗北”などの罰則が適用されるというだけです。
その「罰則規定」も、罰を与えることが本命ではありません。
「正しいルールを伝え、同じ間違いをしないようプレイヤーに促すこと」
「不正に対する罰則を定めて不正をしないように促し、公正な試合を維持すること」
……が本命ではないでしょうか。
ジャッジや「罰則規定」は、公正に試合をしたいと考えるプレイヤーの味方だと、私は考えます。
今後、コナミさんには「ジャッジの役割」も整備して、公開していただきたいものです。
そしてできることなら「ジャッジはプレイヤーを殺す(負けにする)人ではない」ことを、しっかり書いていただきたいですね。