「――この世界のクリアーは不可能だ」
読者の皆さま、こんにちは。
という訳で今回は、『WORLD PREMIERE PACK 2020』で登場した【海造賊(プランドロール)】を活用した《クリアー・ワールド》を採用した、オリジナルデッキを用意してきました。
属性をコントロールして展開する【海造賊】と、属性によってさまざまなデメリット能力を付与する《クリアー・ワールド》を組み合わせた、【クリアー・ワールドの大航海】デッキの紹介をしていきたいと思います。
どうぞよろしくお願いします。
目次
今回の1枚
《クリアー・ワールド》
【フィールド魔法】
このカードのコントローラーは自分のエンドフェイズ毎に500ライフポイントを払う。または、500ライフポイント払わずにこのカードを破壊する。
お互いは、コントロールしている属性によって以下を適用する。
●光:自分は手札を全て公開し続ける。
●闇:自分フィールド上のモンスターが2体以上の場合、自分は攻撃宣言できない。
●地:自分のスタンバイフェイズ時、自分の表側守備表示モンスター1体を破壊する。
●水:自分のエンドフェイズ時、自分の手札を1枚捨てる。
●炎:自分のエンドフェイズ時、自分は1000ポイントダメージを受ける。
●風:自分は500ライフポイント払わなければ魔法カードを発動できない。
今日の主役となるのは、もちろんこのカード。
アニメ『遊☆戯☆王デュエルモンスターズGX』にも登場したカードで、「属性を持つモンスターをコントロールするプレイヤーに、対応する属性のネガティブエフェクトを与える」という効果を持っています。
言葉だけ聞いても、よくわからないですよね。
ネガティブエフェクトというのは、遊戯王に存在する6属性(光・闇・地・水・炎・風)それぞれの持つ特性に応じた制約(アニメ内では「罰」と表現されている)のことです。
「闇属性はモンスターの展開を得意とする」「水属性は手札に関する(ハンデス)戦術を得意とする」といったような特性を、まるで鏡のようにモンスターをコントロールするプレイヤーにも制約を与える、というようなものとなっています。
そしてもう1枚、《クリアー・ワールド》を語る上で説明しなくてはならないカードが存在します。
……
……
《クリアー・バイス・ドラゴン》
【効果モンスター】
星8/闇/ドラゴン族/攻 ?/守 0
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、このカードのコントローラーに「クリアー・ワールド」の効果は適用されない。このカードが相手モンスターに攻撃する場合、ダメージ計算時のみこのカードの攻撃力は攻撃対象モンスターの攻撃力の倍になる。このカードが相手のカードの効果によって破壊される場合、
代わりに自分の手札を1枚捨てる事ができる。
それがこの《クリアー・バイス・ドラゴン》です。
このカードはただ1枚だけ存在する《クリアー・ワールド》専用のサポートカードで、このモンスターをコントロールしているプレイヤーは、《クリアー・ワールド》によるネガティブエフェクトを受けないという効果を持っています。
また自身が攻撃する場合に攻撃力が相手のモンスターの倍の数値になるという効果と、自身が効果で破壊される場合に手札1枚を捨てることで破壊を免れる効果も内蔵しています。
本来ならこのカードは《クリアー・ワールド》と一緒に使うようにデザインされたはずなのですが、現代の遊戯王では群雄割拠となっているレベル8のドラゴン族の中では控えめな効果であること、そもそも《クリアー・ワールド》自体が使いにくいことなど相まって、ほとんど使われることがない不遇なカードとなっています。
むしろ攻撃力が倍になる効果が珍しいので、そちらを目的とした専用デッキはちらほら見受けられるかと思います。
ですが今回は《クリアー・ワールド》だけでなく、ちゃんとこの《クリアー・バイス・ドラゴン》も使う形のデッキに仕上げてまいりました。
それでは早速、デッキレシピの方へと移っていきしょう。
デッキレシピ紹介
レシピなのか。
今回は《クリアー・ワールド》を活用するということで、属性をコントロールできるカード《海造賊-大航海》の属する【海造賊】を軸に構築してみました。
【海造賊】は水属性・悪魔族・レベル4の下級モンスターを駆使して戦う、コントロール寄りのテーマです。
いくつかの「海造賊」下級モンスターは、相手ターンに相手がコントロールするモンスターの属性に応じてEXデッキから強力な「海造賊」モンスターを出すことができ、それらのモンスターで除去・妨害をしながら相手をコントロールするという戦術を取ります。
また今回は【海造賊】のカード以外にも、【焔聖騎士】や【ネオス】といった、【戦士族】関連のカードをいくらか採用しています。
このデッキは《聖騎士の追想 イゾルデ》を初動の展開に使いたかったので、そうした【戦士族】のギミックを採用しました。
《聖騎士の追想 イゾルデ》は装備魔法に関する効果を多く持つ【聖騎士(焔聖騎士)】ギミックと、デッキからフィールド魔法を発動できる《フェイバリット・ヒーロー》を装備できる【ネオス】のどちらにもアクセスできるカードになっているので、装備魔法とフィールド魔法がカギとなるこのデッキの初動として完璧な仕事をこなしてくれます。
ギミック解説
初動となる展開
このデッキの初動は【戦士族】ギミックから《聖騎士の追想 イゾルデ》を出し、《E・HERO ブレイヴ・ネオス》+《フェイバリット・ヒーロー》を出すことを第一に目指していきます。
このデッキで《聖騎士の追想 イゾルデ》を出すには、以下のカードから行うことができます。
・《昇華騎士-エクスパラディン》+《チューン・ナイト》
・戦士族モンスター+《キリビ・レディ》(・炎属性戦士族モンスター+《焔聖騎士-リナルド》)
これらのカードは《増援》《『焔聖剣-デュランダル』》、そして《聖杯の継承》から持ってくることが可能です。
展開例 |
条件:手札に《昇華騎士-エクスパラディン》 |
1.手札から《昇華騎士-エクスパラディン》を召喚し、召喚時の効果でデッキから《チューン・ナイト》を装備 |
2.《チューン・ナイト》の効果を発動し、装備状態の自身をフィールドに特殊召喚(チューナー化の効果は使用しない) |
3.戦士族モンスター2体で《聖騎士の追想 イゾルデ》をリンク召喚し、リンク召喚時の効果でデッキから戦士族モンスター(このデッキでは《巨竜の聖騎士》)を手札に加える |
4.《聖騎士の追想 イゾルデ》の効果でデッキから装備魔法1枚(ここでは《フェイバリット・ヒーロー》)を墓地へ送り、デッキから《焔聖騎士-リナルド》を特殊召喚 |
5.《焔聖騎士-リナルド》の効果で、墓地の《フェイバリット・ヒーロー》を手札に戻す |
6.《聖騎士の追想 イゾルデ》と《焔聖騎士-リナルド》の2体で、《捕食植物ヴェルテ・アナコンダ》をリンク召喚 |
7.2000LPを支払って《捕食植物ヴェルテ・アナコンダ》の効果を発動してデッキから《ネオス・フュージョン》を墓地へ送ってコピーし、デッキから《E・HERO ネオス》とレベル4以下の効果モンスター(ここでは《風来王 ワイルド・ワインド》)を墓地へ送ってEXデッキから《E・HERO ブレイヴ・ネオス》を融合召喚 |
8.手札から《フェイバリット・ヒーロー》を発動し、《E・HERO ブレイヴ・ネオス》に装備する |
これでフィールドに《E・HERO ブレイヴ・ネオス》と《フェイバリット・ヒーロー》が用意できるので、お互いのバトルフェイズ開始時にデッキからフィールド魔法を発動することが可能となります。
また途中で手札に加えた《巨竜の聖騎士》や墓地へ送った《風来王 ワイルド・ワインド》も、後でそれぞれの役割を持っています。
【海造賊】でのコントロール
【海造賊】のギミックは、先ほど墓地へ送った《風来王 ワイルド・ワインド》から始まります。
《風来王 ワイルド・ワインド》は墓地から自身を除外することで、デッキから攻撃力1500以下の悪魔族チューナーモンスターを手札に加えることができるため、【海造賊】ギミックの起点となる《海造賊-白髭の機関士》《海造賊-金髪の訓練生》をサーチすることができます。
そして《E・HERO ブレイヴ・ネオス》が装備している《フェイバリット・ヒーロー》の効果によって、自分・相手のバトルフェイズ開始時に《海造賊-拠点》を発動することが可能です。
《海造賊-白髭の機関士》と《海造賊-拠点》の2枚があれば、【海造賊】ギミックを起動していくことができます。
《海造賊-白髭の機関士》は手札またはモンスターゾーンから墓地へ送られた場合に、デッキから「海造賊」モンスターを特殊召喚できる効果を持っています。
そして《海造賊-拠点》は手札1枚を捨てることで、デッキから「海造賊」カード1枚を手札に加える効果を持っています。
《海造賊-拠点》の効果を使い、《海造賊-白髭の機関士》を捨ててこのデッキのキーカードである《海造賊-大航海》をサーチすることで、属性コントロールの準備を整えます。
また捨てられた《海造賊-白髭の機関士》の効果で、相手ターンに動ける《海造賊-赤髭の航海士》をデッキから特殊召喚することで、相手ターンに【海造賊】の動きで展開することも可能となります。
《海造賊-大航海》
【永続罠】
このカード名の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:属性を1つ宣言し、相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターをターン終了時まで宣言した属性にする。その後、自分の墓地から「海造賊」モンスター1体を選んでデッキに戻すか特殊召喚できる。
②:自分・相手のエンドフェイズに、「海造賊」モンスターが自分フィールドに存在しない場合に発動する。
このカードを墓地へ送る。
この《海造賊-大航海》は、【クリアー・ワールドの大航海】における最重要カードの1枚です。
1ターンに1度、相手モンスターを任意の属性を変更することが可能で、さらに墓地の「海造賊」モンスター1体を特殊召喚する、またはデッキに戻す効果を持っています。
もちろん属性変更はあとで《クリアー・ワールド》を使う際に活用するためのものですが、このデッキでは【海造賊】本来の使い方も行います。
《海造賊-白髭の機関士》や《海造賊-赤髭の航海士》は、相手ターン中に相手モンスターの属性と同じ「海造賊」モンスターをEXデッキから特殊召喚する効果を持っています。(その際に自身は、特殊召喚したモンスターの装備カード扱いとなります)
EXデッキの「海造賊」モンスターは、光属性(モンスター効果無効)、炎属性(魔法・罠除去)、闇属性(モンスター除去)、水属性(1ドロー効果)の4つに対応しています。
いずれも効果を発動するには手札コストとして「海造賊」カードが必要となりますが、「海造賊」カードを装備している場合に相手ターン中でも発動できるので非常に強力です。
これらのギミックを活用し、デュエルの序盤は《海造賊-大航海》の効果で毎ターン「海造賊」モンスターを蘇生しながら耐久して戦っていきます。
手札に「海造賊」カードの余裕がでてきた中盤以降は、EXデッキの「海造賊」モンスターを使って相手をコントロールして戦い、このあとの《クリアー・ワールド》でのコンボを目指して盤面を作っていくこととなります。
クリアーバイスドラゴン降臨
さて、ここからが本題である《クリアー・ワールド》のギミックとなります。
しかしながら、逸る気持ちを抑えてまずは《クリアー・バイス・ドラゴン》を出すように動いていきます。(できるだけ《クリアー・ワールド》のデメリットを受けないようにするため)
このコンボでは、先ほど《聖騎士の追想 イゾルデ》の効果で手札に加えた《巨竜の聖騎士》を使っていきます。
展開例 |
条件:手札に《巨竜の聖騎士》、フィールドに《E・HERO ブレイヴ・ネオス》と《海造賊-赤髭の航海士》、《海造賊-大航海》 |
1.手札から《巨竜の聖騎士》を召喚し、召喚時効果でデッキから《クリアー・バイス・ドラゴン》を自身に装備 |
2.《巨竜の聖騎士》と 《海造賊-赤髭の航海士》 で、《クロシープ》をリンク召喚(リンク先に《E・HERO ブレイヴ・ネオス》が存在するように) |
3.《海造賊-大航海》の効果で、墓地から《海造賊-赤髭の航海士》を《クロシープ》のリンク先に特殊召喚 |
4.《クロシープ》の効果を発動し、墓地の《巨竜の聖騎士》を特殊召喚 |
5.《巨竜の聖騎士》の効果を発動し、自身と《海造賊-赤髭の航海士》をリリースして墓地から《クリアー・バイス・ドラゴン》を特殊召喚 |
こんな感じに《クロシープ》と融合モンスターを使うことで、とても簡単に《クリアー・バイス・ドラゴン》をフィールドに出すことができます。
もし仮に《クリアー・バイス・ドラゴン》が破壊されてしまったとしても、《クロシープ》と融合モンスターを使って墓地から 《巨竜の聖騎士》 を蘇生することで、何度でも蘇らせることが可能です。
クリアーワールドでのコントロール
さて、いよいよ《クリアー・ワールド》を使ってのコントロールとなります。自分フィールドに《クリアー・バイス・ドラゴン》、《海造賊-大航海》が揃えば準備は完了です。
《クリアー・ワールド》自体は、基本的に《フェイバリット・ヒーロー》からアクセスすることになるでしょう。
冒頭でもお話ししたように、《クリアー・ワールド》にはさまざまなネガティブエフェクトを与える効果があります。
《クリアー・バイス・ドラゴン》で自分だけデメリットを受けない状況をつくりながら、《海造賊-大航海》の効果で相手モンスターの属性を書き換えて相手をじわじわと追いつめていきます。
自分ターン中は、基本的に光属性を宣言します。
光属性は唯一自分・相手ターンに関わらない効果で、光属性のモンスターをコントロールするプレイヤーは手札を公開し続けなければなりません。
これによって相手の手札を把握しながら、次のターンの展開を考えて動いていきます。
相手ターン中は、基本的には闇属性を宣言します。
闇属性のモンスターをコントロールするプレイヤーは、2体以上モンスターが並んでいる場合、攻撃宣言することができなくなります。
これによって《クロシープ》や《クリアー・バイス・ドラゴン》といった、戦闘で破壊されやすいモンスターを守ることができます。
そしてこの【クリアー・ワールドの大航海】には、凶悪なコンボが隠されています。
【海造賊】ギミックは水属性・レベル4のモンスターが中心となっているので、強力な水属性ランク4エクシーズである《バハムート・シャーク》を使うことができます。
《バハムート・シャーク》とよく一緒に採用される《餅カエル》も非常に強力なモンスターですが、このコンボでは水属性・ランク3の《No.30 破滅のアシッド・ゴーレム》を使っていきます。
自分フィールドに《バハムート・シャーク》と相手モンスターとコントロールを入れ替える効果を持つ《転晶のコーディネラル》を出します。
その後《バハムート・シャーク》の効果で《転晶のコーディネラル》のリンク先に《No.30 破滅のアシッド・ゴーレム》を出してコントロールを入れ替えて相手に押し付ける、という訳です。
《バハムート・シャーク》の効果で出した《No.30 破滅のアシッド・ゴーレム》はエクシーズ素材を持たないため、相手は自身のスタンバイフェイズ毎に2000ポイントのダメージを受け続けます。
さらに《No.30 破滅のアシッド・ゴーレム》が存在することで相手はモンスターを特殊召喚できず、エクシーズ素材を持たない《No.30 破滅のアシッド・ゴーレム》は攻撃宣言を行うこともできなくなってしまう、という訳です。
さらにこの状態から、《海造賊-大航海》の効果で《No.30 破滅のアシッド・ゴーレム》を炎属性に変更します。
すると《クリアー・ワールド》の効果によって、相手はエンドフェイズに1000ポイントのダメージを受けることとなります。
こうした強固なロック盤面から《No.30 破滅のアシッド・ゴーレム》と《クリアー・ワールド》の効果で、相手に合計3000のダメージを毎ターン与え続けるが可能となります。
これが【クリアー・ワールドの大航海】における最終目標となる盤面であり、もっとも邪悪な勝ち筋となっています。
おわりに
いかがだったでしょうか。
今回は【海造賊】ギミックを、できるだけメインデッキの枚数を抑えるようにしながら採用してみました。
【海造賊】は純構築で使うことが多いデッキですが、こういう使い方もあるということで、少しは参考にできるものになったかなと思います。
実は《クリアー・ワールド》というカードは、自分の大好きなカードの1つでありながら、ずっと悩み続けていたカードの1つでした。
どうしても「六属性でコントロールして戦いたい!」と思ってデッキを考えていたのですが、《DNA移植手術》や《帝王の轟毅》は使い勝手があまり良くないし、《真竜皇V.F.D.》は強すぎて 《クリアー・ワールド》 が霞んで見えるしと、ほんと2年以上にわたって悩み続けていました。
この《クリアー・ワールド》が収録された『LIMITED EDITION 15』が2009年ということですので、11年の時を経て完成したデッキといっても、過言ではありません。
こうした昔のカードであっても、最新カードを駆使すれば現代でも通用するデッキとして戦えるというのは、ほんと凄いカードゲームだなあと感じ入るばかりです。
個人的に今回のような旧いカードと新しいカードを使ったオリジナルデッキが非常に大好きなので、【クリアー・ワールドの大航海】は使っているときもめちゃくちゃ面白いデッキでした。
これからもこうしたオリジナルデッキを、もっとたくさん作っていきたいですね。
……
……
それでは、今回はこの辺りにしたいと思います。
ここまでのご精読、ありがとうございました。
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