8月某日。
「先生、このデッキ組んでや」
「んー、どのデッキ?」
「これ」
「あー、これね。
気にはなってたんよね」
(会話を聞いて集まってくる常連たち)
「あ、先生これいるん? じゃああげるで」
「私もありますよ」
「あ、じゃあ僕も」
「え?」
バカがっ……!
多すぎるわっ…… こんなもんっ……!
遊戯王は同名カード3枚までっ……!
なのにっ……!
こんなにあって、なんになるんじゃっ……!!
――――……
――……
はい。
という訳で今回は『PHANTOM RAGE』で登場した《ペンギン勇者》を活用したデッキを紹介したいと思います。
《ペンギン勇者》
水族/シンクロ/効果
ATK2400/DEF1200
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
このカード名の①③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードがS召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「ペンギン」モンスター1体を裏側守備表示で特殊召喚する。
②:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分フィールドの裏側守備表示モンスターは相手の効果の対象にならない。
③:相手がモンスターの効果を発動した時に発動できる。自分フィールドの裏側守備表示の水属性モンスター1体を選んで表側守備表示にする。
出典:遊戯王OCGカードデータベース
星6・水属性・水族のシンクロモンスター。
S召喚成功時にデッキから「ペンギン」モンスターを裏側守備表示で特殊召喚する効果と、このカードが存在する限り裏側守備表示のモンスターが相手の効果の対象にならない永続効果、そして相手モンスターの効果発動時に裏側守備表示で存在する自分の水属性モンスターを表側表示に変更できる効果を持っています。
①の効果でデッキから出せる「ペンギン」モンスターには、リバースした時に効果のある《ペンギン・ソルジャー》や《ペンギン・ナイトメア》があります。
いずれも対象に取ったモンスターのバウンス効果を持っていて、《ペンギン勇者》の③の効果で相手ターンに表側表示に変更することで、発動が可能です。
それら以外にも《大皇帝ペンギン》や《小型ペンギン》を出すことで、自分ターンの展開に繋げるといったこともできます。
また③の効果は水属性モンスターを指定しているため、「ペンギン」モンスター以外でも表側表示に変更できます。
リバースした際に除外されている「シャドール」モンスターを特殊召喚できる《影依の巫女 エリアル》や、表側で存在する限りお互いに水属性モンスターしか特殊召喚できなくなる《豪雨の結界像》など、けっこう広い範囲の使い方ができそうな感じがしています。
そういうことで今回は、そんな《ペンギン勇者》を主軸に置いたデッキを持ってまいりました。
このまま続けて、デッキレシピの紹介と参りましょう。
目次
デッキレシピ紹介
レシピなのか。
今回は【シャドール】や【メガリス】やその他さまざまなギミックを採用してみました。なんか「ペンギン」すくなくない?
ご覧の通り、このデッキは「ペンギン」モンスターがメインデッキに4枚しか入っていません。
「こんなの【ペンギン】デッキじゃない!」と思ったそこのアナタ。
ごもっともです。
なぜなら今回のデッキは【ペンギン勇者】デッキですからね。
あ、でもちゃんとこれらの「ペンギン」モンスターでコントロールして戦うデッキなのですよ。
それについてこれから、ゆっくり説明して行きましょう。
採用カード解説
【シャドール】関連
リバース時に効果を持っている水属性モンスターの《影依の巫女 エリアル》を、《ペンギン勇者》の効果で発動させたくて取り入れました。(むしろこのデッキを作った一番の理由)
リバースした際に除外ゾーンから「シャドール」モンスターを特殊召喚できるので、《エルシャドール・ミドラーシュ》などの強力なモンスターを相手ターンに呼び出すことが可能となります。
《影霊の翼 ウェンディ》はデッキの展開の主軸となるカードで、《影依融合》などを使ってデッキから墓地へ送っていきます。
墓地へ送られた際の効果で、デッキから《シャドール・ヘッジホッグ》や《シャドール・ファルコン》を出すことで、さらにモンスターを展開していきます。
《影依の偽典》は毎ターン「シャドール」融合モンスターを出して、相手モンスターを除去しながら《クロシープ》の蘇生効果を起動させる、という使い方をします。
【メガリス】関連
こちらは《聖占術姫タロットレイ》を組み込む際に、儀式召喚のギミックとして採用。
「メガリス」儀式モンスターは自身の効果によって手札の儀式モンスターを儀式召喚できるので、これを使って《聖占術姫タロットレイ》を出すというのがねらいです。
【メガリス】にはデッキから「メガリス」儀式モンスターを儀式召喚できる《メガリス・アンフォームド》、毎ターン墓地から「メガリス」儀式モンスターを蘇生できる《メガリス・エマージョン》といった強力な魔法・罠カードがあるので、それを活用していきます。
特に《メガリス・アンフォームド》による儀式召喚は手札・フィールドのモンスターを効果で墓地へ送るため、「シャドール」モンスターのカード効果によって墓地へ送られた際の効果のトリガーとして使うこともできます。
これによって《メガリス・フール》をデッキから儀式召喚しながら、《シャドール・リザード》の効果を起動して「シャドール」カードを墓地へ送る、といった動き方も可能となっています。
【クローラー】関連
リバースモンスターを使うデッキで鍵となる《星遺物の傀儡》を活かすために採用。
《星遺物の傀儡》は裏側表示のモンスターを表側表示に変更するだけでなく、墓地の「クローラー」モンスターをデッキに戻すことでフィールドのモンスターを裏側表示に変更できる効果も持っています。
《星遺物の傀儡》は、《星遺物-『星鎧』》や《星遺物-『星杯』》の効果でサーチすることができます。
特に《星遺物-『星鎧』》は【シャドール】のギミックを使うことから、反転召喚を行う機会も多いので、非常に使いやすくなっています。
《クローラー・デンドライト》は、効果でデッキからモンスターを墓地へ送れるため【シャドール】と相性が良く、さらにレベル2なのでシンクロ召喚のレベル調整にも使いやすいモンスターです。
【ペンギン】関連
採用している他にも「ペンギン」モンスターには強力なものがいるのですが、リバースモンスターは《ペンギン・ソルジャー》だけでした。
《聖占術姫タロットレイ》の自分・相手エンドフェイズに発動できる蘇生効果はリバースモンスターしか対応していないので、今回は最低限のものだけを採用しました。
《影依融合》で《エルシャドール・アノマリリス》を出す際に、デッキから「シャドール」モンスターと《否定ペンギン》を送ることで、【ペンギン】ギミックの下準備を整えていきます。
《レスキューフェレット》の効果を《クロシープ》などのリンク2モンスターがいる状態で使えば、レベル3である《否定ペンギン》と《極氷獣ポーラ・ペンギン》をデッキから特殊召喚して《ペンギン勇者》をシンクロ召喚することで、すぐさま【ペンギン】ギミックを用意することができます。
【獣族】関連
《メルフィー・キャシィ》は「メルフィー」モンスターでありながら【獣族】で使える汎用モンスターの1体で、相手のモンスターの召喚・特殊召喚された、または攻撃対象にされた場合に手札に戻ることで、デッキから獣族モンスターをサーチすることができます。
サーチ先としては、相手ターンに手札から特殊召喚して効果によってシンクロ召喚が可能な《ホップ・イヤー飛行隊》、自身をフィールドからデッキに戻すことでリンク先にモンスターをデッキから特殊召喚できる《レスキューフェレット》、自身の効果で手札から特殊召喚可能な3000打点モンスターの《未界域のビッグフット》といった獣族モンスターを採用しています。
特に《ホップ・イヤー飛行隊》は《シャドール・リザード》などを対象に発動してシンクロ召喚することで、《ペンギン勇者》をシンクロ召喚しながら《シャドール・リザード》の効果を起動する、という使い方ができるので優先的に手札に持ってきたいカードです。
その他のカード
・《サイコウィールダー》星3モンスターが自分フィールドにいれば、手札から特殊召喚できる星3チューナー。
このデッキでは展開の都合上レベル3モンスターである《影霊の翼 ウェンディ》をフィールドに出すことが多いので、このカードが腐ることは少ないです。またシンクロ素材になると、攻撃力参照によるモンスター破壊も発動できます。
・《虹光の宣告者》
《聖占術姫タロットレイ》を手札に加えるために採用しています。効果を使い終わった《クローラー・デンドライト》や《メガリス・フール》などに星2チューナーを使ってシンクロして出します。地味に無効効果を持っているので、最初に立てておくと相手が難しい顔をしてくれます。
デッキの回し方
実はこのデッキ、特定のルートみたいなものはありません。
しかし最終的にどこを目指していくかは決まっていて、それまでの準備に使う小さなギミックは多彩にあります。
基本的には【シャドール】の動き方をしながら、相手の攻撃を受けていきます。
【シャドール】自体がかなり持久力の高いテーマなので、何度もリクルートや蘇生を使いながら耐え忍び、地道にアドバンテージを稼いでいきます。
いくらか相手を疲弊させるor自分フィールドのモンスターが揃ってきたところで、《ペンギン勇者》を出して相手を封じ込めていきます。
・《ペンギン勇者》の出し方
レベル2チューナーの《シャドール・ファルコン》《ホップ・イヤー飛行隊》+レベル4モンスターか、レベル3チューナーの《サイコ・ウィールダー》《極氷獣ポーラ・ペンギン》+レベル3モンスターで出します。
採用しているチューナーモンスターはレベル3以下なので、《水晶機巧-ハリファイバー》の効果でデッキから出すことができます。
非チューナーのレベル4には《シャドール・ドラゴン》《シャドール・リザード》《影依の巫女 エリアル》、《メガリス・オク》、《レスキューフェレット》、そして《黒き森のウィッチ》を採用しており、非チューナーのレベル3には《影霊の翼 ウェンディ》《シャドール・ヘッジホッグ》、《否定ペンギン》を採用しています。
【シャドール】で回していると、ここら辺のモンスターが自然とフィールドにならぶので、意識して回せばすぐに《ペンギン勇者》を出すことができます。
・《聖占術姫タロットレイ》の出し方
《虹光の宣告者》の効果を使ってデッキからサーチする、もしくは《鎖龍蛇-スカルデット》の効果で手札に引き込んできます。
《影依融合》で《エルシャドール・ネフィリム》を出す際に素材として墓地へ送り、《メガリス・フール》の効果で回収する、という方法もあります。
手札に加えた後は、「メガリス」儀式モンスターの効果で、手札から儀式召喚します。
《メガリス・オク》《メガリス・ハギト》の効果を発動し、レベル5以上のモンスターを併せてリリースすることで出します。
《影依の偽典》の効果で出てきた「シャドール」融合モンスターは直接攻撃できないので、儀式召喚の素材としてリリースしてやると無駄も少ないです。
目指す盤面
場:《ペンギン勇者》+《聖占術姫タロットレイ》墓地:《ペンギン・ソルジャー》
この盤面までたどり着くと、なかなかいやらしい盤面になっています。
毎ターンのエンドフェイズに《聖占術姫タロットレイ》が墓地の《ペンギン・ソルジャー》を蘇生し、相手が何か動こうものなら《ペンギン勇者》が表側表示に変更して《ペンギン・ソルジャー》のバウンス効果を発動させる、というサイクルが完成します。
状況に応じて《ペンギン・ソルジャー》を《影依の巫女 エリアル》などの「シャドール」モンスターにしたり、《クローラー・デンドライト》にしたりすることもできます。
さらにさらに、レベル6の《ペンギン勇者》にレベル2チューナーを使って《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》や《魔救の奇跡-ドラガイト》をシンクロ召喚することも可能です。
《エルシャドール・シェキナーガ》なども併せて出すことで、モンスター効果や魔法・罠の発動を無効化できる大型モンスターを複数体ならべることもできます。
デュエルハイライト
対【捕食ディストピア】
《闇黒世界-シャドウ・ディストピア-》や《捕食計画》といった強力な魔法・罠カードを発動されて序盤は苦しい展開を強いられるも、《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》や《捕食植物トリフィオヴェルトゥム》といった強力な融合モンスターを《ペンギン・ソルジャー》でバウンスして状況を突破。
最終的には《ペンギン勇者》を出した上で《ペンギン・ソルジャー》《影依の巫女 エリアル》を裏側で並べ、相手を完全に封じ込みました。
対【メルフィー戦線】
《鉄獣戦線 凶鳥のシュライグ》や《獣王アルファ》といった、最新弾の強力な獣族モンスターを並べられて苦戦を強いられる。
とくに《獣王アルファ》は手札に戻っても何度も出てきてしまうため《ペンギン・ソルジャー》と相性が悪く、デュエルは終盤までもつれ込んでいく。(しかも《否定ペンギン》を除外されていた)
しかし最後は《聖占術姫タロットレイ》を出して《獣王アルファ》が出た瞬間に裏側にして処理し、物量で押し込んで勝利しました。いえーい。
おわりに
いかがだったでしょうか。
今回は【ペンギン】デッキとは名ばかりの【ペンギン勇者】デッキの紹介でした。
【シャドール】や【メガリス】、【ペンギン】に【獣族】とさまざまな要素を混ぜ込んだ闇鍋構築ではありましたが、なかなか面白く仕上がったのではないかと自負しています。
これだけ混沌とした構築であっても、回してみれば以外にきちんと回ってくれるものだったりします。
実際、フリー対戦で何度も対戦してみましたが、対戦相手からも「なんで負けたかわからない」「気づいたときには負けていた」などの評価をたくさんいただきました。それでいいのか……?
これで実際、勝率7割くらいなんですよ。(初見殺し込みで)
自分でも予想以上に勝てていたのでビックリしました。
【シャドール】が強いだけのデッキかと思われがちですが、ちゃんと最後は《ペンギン勇者》と《ペンギン・ソルジャー》のコントロールで抑えきってますしね。
前回の【六霊使い】や前々回の【火霊使い】でもそうですが、やはりオリジナルデッキを回しのはとても楽しいものですね。
という訳で、そんな可愛らしくも強力な効果を持った【ペンギン勇者】デッキ、読者の皆さまも一度、組んでみてはいかがでしょうか。
使っている側も使われている側も楽しめるデッキ(当社比)になってますので、是非とも使ってみていただければと思います。
――――……
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ここまでのご精読、ありがとうございました。
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