【第1話】DMPランキング1位の異世界転生 ~転生した世界では俺しかGR召喚できませんでした~
【第2話】DMPランキング1位の異世界転生 ~妖精計画の始動~
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──暗い。身体が重い。
頭が思う様に働かない。思考が纏らない。
──此処は、何処だ?
──俺は、何をシテイタンダ?
解らない、分からない、何も、判らない。
……一体、何が起きている?
──混乱の最中、刻々と時間だけが過ぎ去る。時間が過ぎ去る感覚は、在る。取り戻した、とも謂える。
体を動かそうと試みる。……矢張り異様に身体が重い。然し其れは、先程迄感じていた違和感だけでは無い。
──もっと物理的だ。……拘束されている、のか?
兎に角朧気な記憶を、何とか辿る。然れど、益々意識は混濁する許り。
だが僅か乍ら、一瞬だけ脳裏に“何か”浮かび上がった。其れは、抽象的な妄想に近い。
一つは、“蒼”、だった気がする。
一つは、“肆”、だった気がする。
だが、意味は解らない。色、数字。意味は解らない。
口を動かしてみる。然れど、微かに唇が動く許り。喉から声を送り出す事も叶わない。
其れでも、藻掻く。足掻く。何でも善い。手掛かりが欲しい。
呻く様に声を絞り出す。息が絶え掛けた小動物の啼き声が如く、漸と、声が出せた。
「…………ユー、リ……、──」
辛うじて発せられた三音節。其の音の意味を、今は知る由も無い。
【第三話 《超銀河弾 HELL》と謎の男「N」】
某日、ウィザー国地下研究室。
レンガ作りの家々が立ち並ぶウィザー国の街並みからは想像もつかない、巨大な“機械”が、そこにあった。
『超銀河弾 HELL』
時空を裂き、二つの次元の鍵となる砲台は、今まさに、“発動”の刻を迎えるところだった。
「よくぞここまで仕上げてくれました」
仏頂面の元帥は高座から砲台を一瞥し、両手を叩く。
「あなたたちの研究が、このウィザー国を救う唯一の希望なのです。期待していますよ」
元帥の視線の先には、一組の男女。
「はいはいわかってますよ~っと。えっと、あとはこれがこうで、ここの数値を弄って……、」
色白で背が高い方の男は、元帥の言葉を聞き流しつつ、ぶつぶつ呟きながら、機械の周りを右往左往している。良く言えば機械の最終調整に余念が無い、悪く言えば落ち着きが無い。
「本当にあの人にこの国の未来を託しちゃっていいんですかねぇ。なんかすっごくバタバタしてる風に見えますけどぉ」
九魔が不安そうに高座の横で呟く。
「あの人はいつでもあんな感じです。いつも通りですよ」
「えぇ~」
「それに、この研究の成否は彼の人生を左右すると言っても過言ではないですからね。勝利の立役者となるか、敗北の大戦犯となるか。最終調整に余念が無いのは当然です」
「そんなもんなんですかねぇ」
元帥は慣れた様子で二人を見つめる。
「パクさん、そろそろ始められそうですか」
「ええ。彼が落ち着き無いだけで、もうとっくに準備万端よ」
元帥の呼びかけに、白衣の女性が応じる。こちらは慌てふためく男をよそに、余裕の笑みを浮かべていた。
「始めるわよ、クーンさん」
「お、おう。いつでも来い」
クーンとパクが、機械の前に立つ。やけに大きく作られた発射ボタンが、その刻を今か今かと待っていた。
「これより、『妖精計画(フェアリープロジェクト)』、“フェーズⅢ”へ移行!主旨、《超銀河弾 HELL》により、次元の壁を突破する!!」クーンが、高らかに宣言する!
「“フェーズⅢ”への移行を許可する!」元帥もそれに応じる!
「カウントダウン……3、、、2、、、1、、、!!!」平静を装うパクも、この時ばかりは高揚する!
「「「《超銀河弾 HELL》、起動!!!!」」」
ポチッ。
……ゴゴゴ、ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!
轟音が響き渡り、砲台の先端へ出力が集中する!!
「え、これって押したらすぐ起動するんじゃないの????」
「あ、あれ、もともとそのはずだったんだけどな、あれ、なんか間違ったかな……」
「クーンさん?!?!」
今度はパクが慌てだす。様子が変だ!
ガガガ、ギギギギギ、バリバリバリバリ……!!!!!
砲台は更にその音と光を増大させる!
しかし元帥と九魔は、その異変に気付けない。高座からは、二人が慌てている様子が、その音と光に掻き消されて分からなくなっていたのだ!
「ちょっとクーンさん、さっきより音大きくなってない???」
「おかしいなぁ、さっきチェックした時は全部大丈夫そうだったんだけどなぁ」
──コツーン。
二人の周囲に、不吉な音が鳴り響く。
クーンのポケットから、何やら棒状の“部品”が、零れ落ちたのだ。
「え、クーンさん、もしかして、それ……」
「あ、“出力安定装置”だ」
「ウソでしょおおおおおおおおおおおおお」
BAKUOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOON!!!!!!!!!!!!!!!
……計画は、失敗した。
────。
「──というのが、君がここに召喚された顛末さ」
「いやどう考えてもお父さんの粗相じゃないですか!w」
俺は激しくツッコまざるを得なかった。
ポッサに連れられてこの地下研究室?……だった何かに連れてこられたのはいいものの、あまりに建物がボロボロだったので、まずはそのことを尋ねたらこの通りだった。
隣国との戦争のこと、『妖精計画』のこと、……そして《超銀河弾 HELL》が正常に発動しなかったこと。粗方の事情はひとまず把握することができた。
「その事故で超銀河弾は使い物にならなくなり、元帥からは計画の失敗を言い渡され、僕は責任を負って研究から外されたよ」
男は寂しげに呟いた。
「父さん、いつの間に研究外されてたの?!?」ポッサが父にしがみつく。
「ごめんなポッサ。ポッサには言うタイミングを失って、今まで黙っていた」
「父さん……」
「いや普通に最低じゃないですか」
俺は再びツッコんだ。
……オホン、とポッサの父は咳払いをして、こちらを向き直る。
「紹介が遅れた。私の名は『クーン=エンデュラーマアド=ソソーシスキー』。カードの持つ魔力について研究、技術応用をしている者だ」
「長いからクーンさんで良いですか?」
「みんなそう呼んでるよ。それからあれが、元助手で、今はこの研究室の見張り番をしている『朴(パク)』だ」
クーンさんは地下の奥の方で作業をしている女性を指さした。
「なるほど、“番のパク”さん」
「ちょっとぉ、誰が見張り番よぉ!」
パクさんは不服そうに叫び、こちらに来た。え、なんか顔赤くない??
「見張り番!?違うわよぉ、コイツが外されたせいでこの研究室の尻拭いさせられてんの!!」
「……え、酔っ払ってます?」
「アタシは飲まないと仕事が捗らないタイプなの!」
いやどんなタイプだよ!と再びツッコみかけたが、その手にしていた酒を見て、その言葉は引っこんだ。
──缶ビールだ。
異世界にはあまりに似つかわしくない……というか、あまりにも見覚えのある銘柄の缶ビールだった。
「一番のヤツ……」
「あぁ、これ???珍しいでしょ~~~~」
パクさんは俺の缶ビールへの視線に気付き、自慢げに掲げる。
「……尻拭いってのは建前よ。実際には、超銀河弾の残滓から、次の研究に繋がるものが無いか探しているのよ。“コレ”も、時空の歪みと共にゲットしたの。……アンタも飲む?」
パクさんは手近にあったアルミ缶をこちらへ放り投げる。そこには“こだわるレモンサワー 檸檬館 神レモン”の表記。
「いや、僕未成年なんで……」
僕は“神レモン”をパクさんに返した。
「あら、残念」
「でも、このお酒は、間違いなく“こちらの世界”のものです……」
「ふうん、やっぱりそうなのね」
パクさんは得意気な顔で缶ビールを飲み干すと、「砂瀑○葬」というわけの分からない単語を発して缶を片手で潰していた。
……オホン。クーンさんは再び咳払いをする。
「……とにかく、だ。ユーリ、君がここに召喚されたということは、《超銀河弾 HELL》はちゃんと発動していたということなんだ!!計画は成功していたんだよ!!!!」
「……僕が急に道端に呼び出されたのは出力が適当だったからってことですね」
「……まぁ、うん、そういうことになるな」
マジでこんな適当なヤツにこの国の未来託して良かったのか?これ、万が一コースト国側に俺が召喚されでもしたら……、
「待ってクーンさん。ユーリが正しく召喚されて、今ここに会いに来てることは、元帥には?」
「あ、やべ!まだ何も言ってなかった!!」
「な、なんでそういうことを事前に済ませておかないの!!もう、早く報告して来なさいよ!!また『妖精計画』に戻れるかもしれないじゃない!!」
「悪いユーリ、ちょっと行ってくる!」
……粗相の塊みたいな人だな、こりゃ。
「なんでこんな抜けてる人が、国の一大計画の重役を?」
「……あら、興味あるの??」
「だって、どう考えてもあの様子じゃ」
「……アタシたちの研究はね、もともと相手にされてなかったのよ」
パクさんは“神レモン”のリングプルを引くと、その事情を説明してくれた。
──。
現在、敵国であるコースト国の主戦力が“超次元呪文”なのは、もう知っているでしょう?その大幅なアップデートが起きた際にね、カードの大量廃棄があったの。もちろん、表沙汰にはなってないけどね。
その時にちょうど大量に廃棄されたのが“ナイト”と呼ばれていたカード。敵国のカードの使用は“世界”に禁止されていたからウィザー国は見向きもしなかったけど、“魔力”を科学するクーンさんにとって、廃棄された大量の“ナイト”は格好の研究対象だったのよ。
そして、クーンさんは《黒騎士ザールフェルドⅡ世》や《邪眼皇アレクサンドルⅢ世》らが持つ“魔力”が“ナイト”を力を増幅させることを突き止めた。その技術を応用して、あらゆる“ナイト”と“ナイト”を繋ぎ、増幅させる【半永久機関(ループ)】を完成させたの。
難しいことはクーンさんにしか分からない……けど、とにかくその【機関】を利用して、大量の“ナイト”という“ナイト”から魔力を抽出し続けた。そうして生まれたのが、最強のナイト呪文、《超銀河弾 HELL》なのよ……!!
……でもね、クーンさんの知的好奇心はそれだけでは留まらなかった。
──《超銀河弾》を【機関】にぶち込んだら、どうなるのか──
最強のナイト呪文はカードの形を失い、代わりに実体を持って私たちの目の前に現れたわ。
こうして生まれた砲台に“次元を引き裂く力”があることは、その後すぐに判明した。それからよ?ウィザー国が私たちの研究を認めて、『妖精計画(フェアリープロジェクト)』が発足したのは。
──。
「“妖精計画”の目的は、俺をここに召喚して“MK”を使わせることだって言ってましたよね?“MK”って何なんです?」
「それは私たちにも聞かされていない……元帥である大妖精しか知らないわ」
しかしどうもおかしい。
話を聞く限り、“MK”はウィザー国の魔導の力を結集して作った最強の武器(カード)のはず。それならばクーンさんの“ナイト”の魔力研究はなぜ軽視されてきたのだろう。魔力を結集させたという意味では、“MK”の開発も、“超銀河弾”の開発も、非常に近い研究のようにも感じるが……。
「“MK”については私たちにも分からない部分が多いの……。それはあなたが大妖精に直接聞くしかないわ」
「わかりました」
「あ、あとそれから、例の爆発事故?には続きがあって──、」
「おーーーーい、ポッサあああああああああ!!!!!」
怒号が会話を遮る。ポッサはその声に反応し、研究室の外へ飛び出す。俺とパクさんも後に続く。
「どうしたの、父さん?」
怒号の主はクーンさんだった。
「今、『ホワイト・オウル』が、これを……」
ホワイト・オウル……?
と、その疑問を投げかける前に、その答えは上空に広がっていた。
無数の白い鳥……おそらくフクロウが、上空からビラのようなものをバラまいていたのだ。
「ホワイト・オウルはああやって、たまに広報誌を上空からバラまくんだ。でも適当に撒いてるんじゃなくて、ちゃんと各家庭に届いてるの。ふっしぎ~!」ポッサがこの状況を説明してくれた。
「まぁ広報誌なんて言っても、半分はゴシップみたいなもんだけどね」と軽快に笑いながら、“神レモン”を飲み干したパクさんが付け加えた。
「ユーリ、これを見てくれ……」
俺はクーンさんからその広報誌?を受け取った。右上には、“排魔気(はいまけ)通信”と書かれている。
──“辻デュエマ発生、被害者続出”──
並々ならぬ見出しが、紙面を飾っていた。
「クーンさん、俺ちょっと用事ができました」
「し、しかし……」
「すぐ戻ります。ポッサ、ここに案内してくれるか?」
「わかった!」
二つ返事のポッサに感謝する。
「待ちなさい!!」声を荒げたのはパクさんだった。
「何すか」
「これを」
パクさんは白衣の内側から、箱状のものを俺に手渡した。その箱に入っていたのは、何と“デッキ”だった。
「パクさん、これは一体……」
「これも残滓から見つかったのよ。私は“使えない”けど、あなたは“使える”はずよ」
「……“世界”、っすか」
「ご名答」
……あぁ、やっぱり俺がこの世界に呼ばれた理由が、分かった気がした。
「ありがとうございます、パクさん」
「うん、ちゃんと戻ってきなよ!」
俺はパクさんに深々と頭を下げ、ポッサを連れて先を急ぐことにした。
【辻斬】
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BE%BB%E6%96%AC
辻斬(つじぎり)とは、武士などが街中などで通行人を刀で斬りつける事。
辻斬りをする理由としては、刀の切れ味を実証するため(試し斬り)や、単なる憂さ晴らし、金品目的、自分の武芸の腕を試す為などがある。また、1000人の人を斬る(千人斬り)と悪病も治ると言われる事もあった。
──出典:Wikipedia
辻デュエマ、とはつまりそういうことだろう。被害者が続出しているとなれば、黙っているわけにはいかない。
「ユーリさん、あれ!」
街の外れまで走ってきたところで、まさにその辻デュエマが行われていた。
「ダイレクトアタック!」
「こ、この俺様がぁぁぁあああ……!!!(バタリ」
黒いフードを深々と被った謎の男が、ちょうど対戦相手を負かせているところだった。
あれ、あの対面で【ターボドルバロム】使って負けたおっさん、どっかで見たような……。
「……君が次の相手か?」
謎の男がこちらに気付き、黒いフード越しに睨む。
「探したぞ『N』!お前が民間人を相手に辻デュエマを仕掛けまくってるって聞いてな。俺がそれを止めに来た」
名前は例の広報誌に載っていた。
「ほう……、やってみるか?」
やはり顔はよく見えないが、随分と自信がある様子だった。そしていつでも来いと言わんばかりの様相で、デッキケースを構える。
──互いにデッキケースを出せばデュエルの合図、これがこの世界のルール──
あぁ、そういえばそんな設定だったなと思い出しつつ、俺もNに応える。そして、謎の光と共に、デュエルの準備が整った。
Nがポツリと呟く。
「もう一つの白いデッキ……来たか!」
「「デュエマ・スタート!!」」
Nの先攻。自分の初手を確認すると、とりあえず初動はあって安心する。
「まずはこちらから行かせてもらおう。《闘竜炎霊パイロン》!!」
【ヴァルディビート】か。もはやこちらの世界では化石同然のアーキタイプだが、確かに、このデッキならドルバロムのおっさんくらいは軽く捻ることができるだろう。
「《フェアリー・ライフ》唱えます」
「!!……そのカードは!!」
「え、そんなに驚きます?」
「あぁ。君のことは噂に聞いていたんだが、まさか“僕らでも知っているようなカード”で初動を切るとはね」
確かに。《フェアリー・ライフ》は2003年から現在に至るまで、自然文明を支え続ける唯一無二の呪文。Nのリアクションも納得できた。
「だが遅い!《アクア・ハルカス》召喚!《闘竜炎霊パイロン》でシールドブレイク!」(パリーン
「トリガー無しで」
3ターン目に1枚ブレイクのみで終わるビートダウンの方がよっぽど“遅い”と思うんだけどな……。
「《超GR・チャージャー》で《ジェイ-SHOCKER》をGR召喚」
これは若干渋い。まぁ仕方あるまい。
「ククク……、来たな《ジェイ-SHOCKER》!やはり“観測”した通り!!それが君の切り札であることはわかっているぞ!!!」
「え、いや別に切り札ってわけじゃ……何なら今はいらな」
「だがその切り札も、攻撃さえさせなければ問題ない!!進化!!《永遠のジャック・ヴァルディ》!!!!」
「《ジェイ-SHOCKER》を粉砕!!!!」
「はい」
「そのまま相手の盾を貫け!!」(パリーンパリーン
「トリガー無し」
「《アクア・ハルカス》も攻撃だ!」(パリーン
「トリガー無し」
「……どうした?噂ほどにもない。どうやらトリガー運にも見放されたようだな!この戦況、もはや逆転は叶うまい!!」
……ふむ、これだけ手札もらってマナもあれば問題なさそうだ。最悪捲り弱くても、盤面を捌き切れば十分凌げるな。
「《グレープ・ダール》。2ブーストして《機術士ディール/「本日のラッキーナンバー!」》を墓地へ」
「2ブーストして1枚墓地か。そんな貧弱なカードで何ができる?」
「《グレープ・ダール》で《永遠のジャック・ヴァルディ》を攻撃」
「……は?」
「する時にJチェンジ6で《エモG》」
「は?」
GRは……と、お、これはラッキー!
「《マリゴルドⅢ》をGR召喚。《マリゴルドⅢ》で再び《グレープ・ダール》。お、《バーンメア・ザ・シルバー》がマナに落ちたから、《ムシ無視のんのん/灰になるほどヒート》墓地に置くか」
「待て待て待て!」
Nが慌てた形相で俺を制止する。あれ、何かルールミスとかあったかな?それとも流石に上からの捲りが強すぎたか?
「一体何をしている!?!?」
「何って……《グレープ・ダール》でJチェンジしただけだが???」
「馬鹿な!?自然のクリーチャーがバトルゾーンに出ていきなり攻撃を仕掛けるなんてこと……」
瞬間、例の声がはっきりと聞こえた。
──クリーチャー《グレープ・ダール》は、マッハファイターの能力により、《永遠のジャック・ヴァルディ》を攻撃できます──
「なん、だと……」
相変わらず便利なシステムだ、CSでいうジャッジみたいなもんか?笑
「とりあえず《永遠のジャック・ヴァルディ》はバトルで破壊ね。次に《グレープ・ダール》で《アクア・ハルカス》攻撃する時に、Jチェンジ6で《バーンメア・ザ・シルバー》。捲りは《せんすいカンちゃん》と《無限合体 ダンダルダBB》。《アクア・ハルカス》を破壊」
「おいおい」
とりあえず盤面捌いたし、捲り強いからこのまま仕掛けるか。
「《無限合体 ダンダルダBB》でプレイヤー攻撃する時にJトルネードで《バーンメア・ザ・シルバー》戻して墓地の《灰になるほどヒート》。再び《バーンメア・ザ・シルバー》。《全能ゼンノー》と《ダダダチッコ・ダッチー》。《ダダダチッコ・ダッチー》能力は……《スゴ腕プロジューサー》!GRは《無限合体 ダンダルダBB》!」
「は?????」
いや、流石にこれは強すぎるねwわかるよそのリアクション。何ならもうキル打点揃ってるしな。
「トリガーありますか?」(パリーン
「いや、無いが……」
「なら《せんすいカンちゃん》でプレイヤー攻撃する時にJトルネードで《バーンメア・ザ・シルバー》戻してGR2回。《全能ゼンノー》と《ジェイ-SHOCKER》出ます」(パリーン
「ト、トリガー無し……」
「《無限合体 ダンダルダBB》でプレイヤー攻撃する時にJトルネードで《せんすいカンちゃん》戻して墓地の《「本日のラッキーナンバー!」》。宣言「3」で」(パリーン
宣言は正直適当だが、前回の《光牙忍ハヤブサマル》や、無いとは思うが《終末の時計 ザ・クロック》みたいなイレギュラーがあるかもしれない。最悪何か踏んで盤面飛んでも《襲撃者エグゼドライブ》くらいはケアできるだろう。
「《ジェイ-SHOCKER》でプレイヤー攻撃する時にJトルネードで《無限合体 ダンダルダBB》戻します」(パリーン
「おい、嘘だろ」
「《マリゴルドⅢ》でプレイヤー攻撃」(パリーン
「さっきまで、盤面は空だったはず……」
「《ダダダチッコ・ダッチー》でダイレクト」
「こ、こんなことがあってたまるか……!!」
「いやーこっちの動き強すぎたんでターン返りませんでしたね笑」
──プレイヤー ユーリの勝利──
声が、頭に響いた。
「……これで終わりじゃないぜ?」
「……何?」
「お前が襲った民間人は、まさか1人ではないだろう?」
「……ハハ、なるほどな。いいだろう、かかってこい!!!」
────
そうして「N」が白旗を上げたのは、連敗が30を数えた辺りだった。
「少年、君の勝ちだ。もはやこれ以上は無意味だろう」
ぶっちゃけ俺もサンドバッグを殴るのにはだいぶ飽きかけていたところだったので、非常に助かる提案だった。
「じゃあ、お前が民間人から巻き上げたカードを返して……」
「あぁなんだ、そんなことなら……『ホワイト・オウル』!!!」
Nが急にそう叫ぶと、バサバサッ!と無数のホワイト・オウルが上空に現れた。そしてその内の一羽がNの肩に止まった。
「オウル、これをみんなの元へ」
NはNが巻き上げたと思しきカードの束をホワイト・オウルに託すと、ホワイト・オウルはすべてを察したように頷き、空の彼方へ飛び去った。
「今のは……」
「……僕の辻デュエマは無差別じゃない。さっきのゴロツキのように、弱者を相手にアンティ・デュエルを仕掛けるのような無法者が僕のターゲットだ。僕が奪ったカードは、今頃元の持ち主のところに戻っているだろうさ」
「そうだったのか……」
「そもそも、辻デュエマなんて僕の趣味じゃないからさ」
「じゃあ一体、何でこんなことを?」
「“九魔”に依頼されたんだ。騒ぎを起こせば、“君”が現れるはずだってね」
“九魔”……あれ、どっかで聞いたなその名前。
Nは改めてこちらを向き直り、そして告げた。
「君は、“ギラサキ=ユーリ”だね???」
──ビュオオオオォォッ!!
その時、突風が二人を襲った!そのはずみに、僅かだが、Nのフードがはだけた。
「あ、あぁ……!!」
と、その顔を見て目の色を変えたのはポッサだった。
「どうしたポッサ?」
「ぬ、ぬろ様……!!」
「ぬ、ぬろ??」
「『Nuro』様だよ!!5年前、ウィザー国とコースト国がまだ対立する前に開かれた“デュエリンピック”で、各部門のタイトルを総なめにした伝説のデュエリストだよ!!!!」
「……まぁ、過去の話さ」
「Nuro様はそれから一躍有名人となるはずだった。それなのに、デュエリンピックが終わった直後に失踪。ずっと行方不明だったんだ!……まさかこんなところで会えるなんて!!!」
ポッサはすっかり感激していた。そんなヤツが一体どうして辻デュエマをしていたのか、どうして“俺”を探していたのか。問い詰める必要がありそうだ。
「まぁ正直、君の“超GRゾーン”を見た時点で、君がギラサキ=ユーリだってことは、気付いてたよ」
「え、じゃあそもそも連戦なんてする必要なかったんじゃ……」
「……久々に血が騒いだっていうのかな、はは」
「そうですか」
「……そしてユーリ君、突然で申し訳ないんだが、頼みを聞いてもらえるか……?」
「えぇ、それはいいですけど……」
……。
……うっかり聞き逃すところだったが、やはりNuroからは何か大きな違和感を感じる。
──Nuroは、“超GRゾーン”という名前を知っている──
──コイツは一体どこまで知っているんだ……???──
得体の知れない違和感が、俺をひたすらに蝕んでいく────。
──
「行っちゃったわね」
「行かせてよかったのか、パク」
「『N』は元帥の刺客よ。心配ないわ」
「え、そうなの??」
「はぁ、クーンさん本当に何も聞いてないのね」
「当たり前だろ、俺は“外された”んだ」
「……とはいえ、すっかり話しそびれちゃったわ」
── 例 の 爆 発 事 故 に は 続 き が あ る ──
「《魔弾ソウル・キャッチャー》や《魔弾オープン・ブレイン》を知っているわね?」
「もちろん。“ナイト”デッキの根幹を支えた、【ナイト・マジック】呪文だ」
「出力が制御されないまま暴走した【機関】は、“ナイト”の魔力を吸い上げすぎてしまったのね」
「あぁ、それこそが最大の誤算だった。だからその結果、次元の壁を破る《超銀河弾 HELL》は、本来持っていないはずの能力を、“発動”してしまった」
【 ナ イ ト ・ マ ジ ッ ク 】
── こ の 呪 文 の 能 力 を も う 一 度 使 っ て も よ い ──
to be continued……
登場人物紹介
クーン=エンデュラーマアド=ソソーシスキー
ポッサの父。
デュエルマスターズのカードが持つ魔力についての研究をしていたが、かつてはウィザー国に相手にされていなかった。 しかし“ナイト”の魔力を抽出する研究から《超銀河弾 HELL》を完成させ、『妖精計画』の技術面全般を任されることになる。
《超銀河弾 HELL》の出力ミスにより研究室が爆発。その責任を負い『妖精計画』から外されてしまうが、ポッサを通してユーリと出会ったことで、次元の突破には成功していたことを確信する。
落ち着きがなく何かと粗相しがち。
イラストレーター: ぽんみれ(@supponponmire11)
朴(パク)さん
クーンさんの元助手の女性で、現在は《超銀河弾 HELL》爆発事故の後始末を担当している。 また爆発の残滓から今後の『妖精計画』に利用できるものが無いか探している。
酒と麻雀が好き。
イラストレーター: ぽんみれ(@supponponmire11)
ホワイト・オウル
“排魔気(はいまけ)通信”という広報誌……もといゴシップをバラまく白いフクロウ。
イラストレーター: ぽんみれ(@supponponmire11)
Nuro
『N』を名乗り、街の人々に辻デュエマを仕掛けていた男。九魔の差し金の内の一人。
話を聞きつけたユーリにボコボコにされるも、その正体はかつてウィザー国・コースト国のタイトルを総なめにしたという伝説のプレイヤー【Nuro】であった。
長い間行方を眩ませていたが、今回はユーリやユーリの持つカードを見たいという思惑から九魔の依頼を引き受けたようだ。
しかし“GRゾーン”などの存在を認知していたり、『ホワイト・オウル』を自在に操ったりなど、まだまだ謎の多い人物で今後も目が離せない。
イラストレーター: ぽんみれ(@supponponmire11)