こんにちは、神結です。
さる8月27日に超CS京都が無事に終了したことで、計4回にも及んだ超CSⅣも完走となりました。
個人的に印象深いのは、ランキング1位で挑んで優勝を勝ち取ったひんた選手の活躍でしょうか。これは超CS宮城での話ですね。
なんというか、勝ち進んでいく中で不思議と「この人は、今日優勝するんだろうな」くらいの雰囲気がありました。
ところで、「夏のCSで大活躍をしてそのまま超CSも優勝してしまう」というのは実は過去に例があります。
時は2019年8月、舞台は山形。
Great Match of DuelMasters――通称GoD。デュエルマスターズが生んだ珠玉の名試合をお伝えするこの企画。
今回の試合は超CSⅢ準決勝、ミノミー vs. かつんを取り上げます。
目次
最強のデッキ【デッドダムド】
というわけで今回は超CSⅢの話となります。
2019年8月17日、超CSⅢが開催されました。
場所は東方地方の日本海側、山形県。
一般的に東北地方は涼しい印象があるかもしれませんが、フェーン現象もあって山形の夏は酷暑になる日もしばしばです。
2019年は超天篇の年になります。
《BAKUOOON・ミッツァイル》などの活躍が印象深く、この大会も「GR環境」になった……と思っている方もいるかもしれませんが、この時は違いました。
その理由は、開催の約一週間前に発売されたクロニクルデッキ「SSS!! 侵略デッドディザスター」にありました。
このクロニクルデッキにはいまでもお馴染み《天災 デドダム》、《虹速 ザ・ヴェルデ》、《SSS級天災 デッドダムド》といったカードが新規に収録されており、当然これらは発売直後から即座に研究が進めらることになります。
【 進化クリーチャー 】
種族 トリニティ・コマンド / S級侵略者 / 文明 水/闇/自然 / パワー11000 / コスト8
■進化:自分の水、闇、または自然いずれかのクリーチャー1体の上に置く。
■SSS級侵略 [天災]:水、闇、または自然のコマンド(自分の水、闇、または自然のコマンドが攻撃する時、バトルゾーン、自分の手札、墓地、マナゾーンにあるこのカードをその上に重ねてもよい)
■W・ブレイカー
■このクリーチャーを別のクリーチャーの上に重ねた時、相手のクリーチャーを1体選び、持ち主の墓地かマナゾーンに置く、または手札に戻す。
特に《虹速 ザ・ヴェルデ》+《SSS級天災 デッドダムド》のパッケージは当時の環境では特に強力で、「バトルゾーンに小型GRクリーチャーを並べて殴る」という【赤白サンマックス】や【赤緑ミッツァイル】といったGRデッキのコンセプトを否定してしまいます。
また水闇自然の3色、いわゆる"アナカラー"のデッキはの弱点として「初動の不安定さ」というものがありましたが、これも《天災 デドダム》が解決してしまいました。
そして生まれたリストは、だいたいこんな感じ。
《英知と追撃の宝剣》+《魔天降臨》のようなパッケージもありますが、この頃には既に《禁断機関 VV-8》が主流でした。
(殿堂カード) 【 禁断クリーチャー 】
文明 水 / パワー12345 / コスト6
■T・ブレイカー
■このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、自分の山札の上から5枚を見て、その中から2枚を自分の手札に加える。
このクリーチャーに封印を3つ付ける。
■禁断機動:このクリーチャーの封印がすべてなくなった時、このターンの後に自分のターンを追加する。(カードを封印するには、自分の山札の上から1枚目を裏向きのままそのカードの上に置く。コマンドがバトルゾーンに出た時、その持ち主はそれと同じ文明を持つ自身のカードから封印を1つ、墓地に置く。クリーチャーが封印されている間、両プレイヤーはそのクリーチャーを無視する)
他の枠に《超次元リバイヴ・ホール》+《蒼き団長 ドギラゴン剣》であったり、同型に強い《ロスト・ソウル》であったりと、様々なカードの採用が検討されています。
中でもよく見付けたな……というのが《超奇天烈 ギャブル》ですね。
【 進化クリーチャー 】
種族 マジック・コマンド / 侵略者 / 文明 水 / パワー7000 / コスト5
■進化―自分の水のクリーチャー1体の上に置く。
■侵略―水のコマンド(自分の水のコマンドが攻撃する時、自分の手札にあるこのクリーチャーをその上に重ねてもよい)
■W・ブレイカー
■このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、相手は自身の山札の上から5枚を表向きにする。
その中から呪文を1枚選び、その後相手は残りを好きな順序で自分の山札の一番下に置く。
選んだ呪文を自分がコストを支払わずに唱え、相手の墓地に置く。
こちらは青のコマンドで侵略持ちという《禁断機関 VV-8》の禁断機動に役立つカードですが、活躍については後ほど。
そんなデッドダムドですが、登場してすぐに環境を席巻します。
まぁそうですよね。これまで強かったデッキをコンセプトごと否定するわけですから。弱いわけもありません。
現在でもアドバンスでは【アナカラーダークネス】が活躍していますが、この時の傑出度はいまの比ではありません。超CSⅢのTOP128のうち、デッドダムドはなんと脅威の49名! 40%近い割合を叩きだしています。
超CSⅣ福岡のJO退化が21/128だったことを考えると、凄まじい数字です。恐らく今後、デュエマの大型大会でこれを超える数字が出ることはないでしょう。
名実ともに最強だったデッドダムド。
そして使用しているかつんも、高い実力を有していました。
全国大会はエリア予選であと一歩のところで敗北してしまっただけに、懸ける想いは相当のものがあった筈です。
その優勝は間違いないかとも思われましたが、しかし準決勝には刺客も待っていました。
最強の"オレ"と【青魔導具】
2019年夏の話をするにあたって、絶対に外せない男がいます。
ミノミーと【青魔導具】は、この夏の主人公でした。
当時は決して著名なプレイヤーではなかったものの、【青魔導具】を片手にポイントを積み重ね続けていました。
その【青魔導具】でしたが、現代プレイヤーにとっては意外かもしれませんが、世間的な評判は決して高くないデッキでした。
というのも、当時は《ガル・ラガンザーク》もなかったため、ゲームプランは《卍 新世壊 卍》しか存在しないものだと思われていました。
【 無月フィールド 】
文明 水 / コスト2
■自分の魔導具呪文を唱えた時、唱えた後で墓地に置くかわりに、このフィールドの下に置いてカードを1枚引いてもよい。
■自分の魔導具呪文またはドルスザク呪文を唱えられなくする能力を無視する。
■無月の門99:自分のターンの終わりに、このフィールドの下に4枚以上カードがあれば、ゲーム中で一度、水のコスト99以下の呪文を1枚、自分の手札または墓地からコストを支払わずに唱えてもよい。
「青魔導具は2ターン目に《卍 新世壊 卍》を置ければ強い、それ以外は弱い」というのがごく一般的な評価だったんですね。
当然ながら毎試合2ターン目に《卍 新世壊 卍》を引けるわけもなく、特に安定感ある結果を求めるプレイヤーからは指示されないデッキとなりました。
ところが彼は、【青魔導具】に新たなゲームプランを持ち込みます。
それは「4ターン目に《ゴゴゴ・Cho絶・ラッシュ》で盤面を捌いてから、5ターン目に《卍 新世壊 卍》を貼る」という、いわゆる"ゆっくり新世壊"プランでした。
【 呪文 】
文明 火 / コスト4
■S・トリガー(この呪文をシールドゾーンから手札に加える時、コストを支払わずにすぐ唱えてもよい)
■自分の手札を1枚捨てる。相手のクリーチャーを、コストの合計がその捨てた手札のコスト以下になるように好きな数選び、破壊する。
そして実際これはハマりました。
或いは改めてじっくり検討すれば強いプランではないかもしれませんが、初めて対戦する際には気付きにくいものでしょう。
そんなわけで彼は上振れの2ターン《卍 新世壊 卍》と、ゆっくり新世壊を駆使しながら、次々と勝ち星を重ねていきます。
後からの《卍 新世壊 卍》でも勝てるというなら、それは当然事情が変わってきます。実力のあるプレイヤーの中でも、【青魔導具】を使用する人は増えました。
つまり彼は一人で【青魔導具】というデッキそのものの評価を変えてしまったわけです。デッキビルダーが新デッキを開発するのとは別ベクトルで、かなり偉業と言えます。
加えてこのデッキは、【デッドダムド】の盤面干渉能力を戦う必要がないのも大きなポイントでした。このデッキがクリーチャー出してるときはおおよそ勝ってますからね。
そんなわけで、わずかひと夏で上位プレイヤーの仲間入りを果たしたミノミーですが、その旅の終着点はこの超CSⅢでした。
彼は準決勝で、かつんが使うデッドダムドとの真っ向勝負に挑みます。
卍解を奪うか、奪われるか
【青魔導具】vs【アナダムド】ですが、基本的には【青魔導具】が有利とされていました。
というのもこれは先述したように、ダムドの持ち味が盤面干渉能力だとして、青魔導具は盤面を干渉されないからです。
ダムド側は勝つためには、まずはブーストから《禁断機関 VV-8》まで繋いで、そして禁断機動を達成することです。
ですが魔導具というデッキは、デッドダムドが準備している間に《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》まで辿り着くことが出来てしまいます。2ターン目に《卍 新世壊 卍》が置けてしまえば、なおのことです。
実際この対面を重くみていたかつんは、《龍脈術 落城の計》まで採用しています。
一方、デッドダムド側も増えていた青魔導具を倒す切り札を見付けていました。
それが先ほど紹介した《超奇天烈 ギャブル》です。
このカードの効果は相手の山札を5枚みて、そこにあった呪文を唱えるというもの。これで相手の《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》を奪って、追加ターンを取って勝ってしまおう、というのが狙いです。
なおこの動きを、某大人気漫画の1シーンになぞらえて「卍解を奪う/奪われる」などと表現していました。
余談ですが 「卍解を奪う/奪われる」 シーンも出てくる筈のアニメ新編は、10月より放送開始予定です。
ちなみに卍解を奪えなくとも、《堕呪 エアヴォ》で《卍 新世壊 卍》を剥がすだけでも時間がもらえます。
というわけでダムド側としては如何に《超奇天烈 ギャブル》を通せるか、一方魔導具側はいかに早く準備を整えて《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》に辿り着けるか、という勝負になります。
Game1、Game2
さて、第1ゲームはダムド側のペースになりました。
3ターン目の《天災 デドダム》で動いたあとに、4ターン目に《超次元リバイヴ・ホール》から《時空の喧嘩屋キル》+《時空の英雄アンタッチャブル》を撒き、そしてデトダムで攻撃時に《超奇天烈 ギャブル》を2枚侵略させます。
このいわゆるキルアンタ撒きですが、青魔導具のトリガーに《ゴゴゴ・Cho絶・ラッシュ》があるため、それをケアするための《時空の英雄アンタッチャブル》になります。
この《超奇天烈 ギャブル》2体が《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》を2枚捲ったため、追加2ターンが生じます。
というわけで第1ゲームは卍解を二度奪ったかつんのデッドダムドがあっさり勝利を手にします。
続く第2ゲームは打って変わって青魔導具側のペースとなります。
まず先攻の利を生かしたミノミーが3ターン目に《卍 新世壊 卍》を展開。
かつんも《天災 デドダム》から《超次元リバイヴ・ホール》で《勝利のリュウセイ・カイザー》と追い縋っていくものの、これは《堕呪 カージグリ》によってバウンスされてしまい、大きなテンポロスを余儀なくされます。
この時のダムド側の構築は、基本的には3→5→6のマナカーブを目指したものとなっており、2→4→6からの最速《禁断機関 VV-8》が出来たらかなりの上振れです。
かつんはここで《禁断機関 VV-8》を設置しますが、間に合わないと割り切っているでしょう。
ミノミーが《卍 新世壊 卍》下で呪文を揃えると、《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》を唱えます。後は《凶鬼卍号 メラヴォルガル》によってゲームが終了しました。
というわけでゲームは、お互いがやりたいデュエマを経ての第3ゲームへと持ち込まれるわけです。
そしてこの第3ゲームは、死闘となりました。
決着
ミノミー側が最大の上振れである2ターン目に《卍 新世壊 卍》を設置し、先攻のかつんが3ターン目の《天災 デドダム》で追い掛ける展開に。
ここで《堕呪 カージグリ》があると一気に優勢になりそうな展開でしたが、ミノミーのプレイは《堕呪 バレッドゥ》。かつんはホッとしたことでしょう。
4ターン目、再び《超次元リバイヴ・ホール》からキルアンタを撒くと、デドダムの攻撃時に《超奇天烈 ギャブル》を侵略宣言します。
まるで第1ゲームの再現のようですが、今回のギャブルは1枚。
山札を5枚捲っていきますが、《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》も《堕呪 エアヴォ》もありません。
《堕呪 ゴンパドゥ》で手札を整えますが、かつんとして渋い展開。逆に今度はミノミーがホッとした筈です。
ミノミーはここで《ゴゴゴ・Cho絶・ラッシュ》を唱えて、かつんの盤面を破壊しにいきます。結果、かつんの盤面には《時空の英雄アンタッチャブル》だけが残ることに。
かつんは《禁断機関 VV-8》を出して、プレッシャーをかけにいきます。対してミノミーは《堕呪 カージグリ》の空撃ちでドローと《卍 新世壊 卍》のカウントを進めていきます。
本来であれば、続くターンで一気に禁断機動が見えて、ダムド側が大きく優勢が取れます。
しかし対青魔導具は何度もいうように盤面にクリーチャーが置かれません。
基本的に《虹速 ザ・ヴェルデ》+複数の《SSS級天災 デッドダムド》で封印を外しにかかるので、場に《天災 デドダム》などがいないこの状況だと、一気に封印を取ることが難しいのです。
そんなわけでかつんの選択は《テック団の波壊Go!》。
カウントが残り2となっていた《卍 新世壊 卍》を盤面から退かします。
返しのミノミーは再度《卍 新世壊 卍》から《堕呪 バレッドゥ》→《堕呪 ウキドゥ》と呪文を連打してカウントを進めます。
このとき《堕呪 ウキドゥ》見た自身シールドを、迷わずそのままにしたことでかつんは苦しむこととなります。その動きから察するに、あのカードは間違いなくトリガーです。
カウント的にもこのターン中に勝負を決めたいかつん。
彼の取った選択は《禁断機関 VV-8》からの追加ターンを諦めて、《超次元リバイヴ・ホール》から《蒼き団長 ドギラゴン剣》で攻め込むというものでした。
当時のダムドはこうした奇襲性能を評価して、また《超次元リバイヴ・ホール》との相性を評価して《蒼き団長 ドギラゴン剣》を採用しておりました。
実際効果で《天災 デドダム》2体を出すことも出来るので、ドギラゴン剣から禁断機動を狙うことも可能だったのです。
突如ゲームを終わらせにきた《蒼き団長 ドギラゴン剣》。
《堕呪 ギャプドゥ》はともかくとして、これならば《ゴゴゴ・Cho絶・ラッシュ》を踏んでしまっても《時空の英雄アンタッチャブル》が残ります。
そして実際、ミノミーのシールドからは《ゴゴゴ・Cho絶・ラッシュ》が飛び出します。だがこれは、かつんの想定通り。
《時空の英雄アンタッチャブル》がダイレクトアタックを宣言して勝ち――
……とはなりませんでした。
ミノミーはなんと、ニンジャストライク《光牙忍ハヤブサマル》を宣言!
手撃ちの呪文、トリガーの呪文、そしてニンジャストライク。
3段階の防御手段を備えていたミノミーの青魔導具が、その真価を見事に発揮しました。
そしてターンを凌いだということは、あとはそういうことです。
互いに手を尽くした試合の勝敗を決めるのは、勝利の女神に他なりません。
《超奇天烈 ギャブル》がせめて《堕呪 エアヴォ》でも捲っていてくれたら、《悪魔妖精ベラドンナ》が《光牙忍ハヤブサマル》を落としていれば、そもそも《光牙忍ハヤブサマル》さえなければ――
様々な "if" はありました。
しかし勝利の女神は、この日はミノミーを選んだのでした。
名勝負後始末
ミノミーはこのまま優勝を果たし、自身の夏の旅に花を添えることになります。
この夏の勝利や、彼が築き上げた【青魔導具】の偉業を鑑みると、その勝利は必然のように思えてきます。
冒頭にも述べた「今日はこのまま優勝するんだろうな」という雰囲気は、その時の彼にはあったと記憶しています。
一方でかつんもまた、この雪辱を果たすことになります。2019年のエリア予選で優勝し、見事全国大会の切符を掴んだのです。
2018エリア予選、そして超CSⅢと青魔導具に行く手を阻まれましたが、エリア2019では青魔導具を撃破しての優勝でした。
なおかつんについてですが、この時のインタビューで「全国大会に出るまでは選手をやめられない」といった旨の発言をしていました。
全国大会出場を経た今夏――超CSⅣで全国を飛び回るかつんの姿が、各地で目撃されています。
おわりに
というわけで今回は超CSⅢでの一戦を取り上げました。
超CSは諸々の都合上配信はなくカバレージのみが戦いを記録しています。そのため、中々勝負の行方が伝わりにくいのですが……。
こうした振り返ってみることで、改めてどんな大会だったのかを伝えていければと思っています。
それでは次回の記事でお会いしましょう。
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