こんにちは、神結です。
デュエル・マスターズは秋のGPを終えると、冬には全国大会を懸けた権利戦の時期を迎えます。
が、今年は冬はほぼほぼオフシーズンとなります。自由です。
皆さんも、好きなデッキで大会に行ってみたり、「冬のうちに修行しておこう」と頑張ったり、なんなら別のゲームも遊んで交友関係を広げたり、なんていうのも楽しいと思います。意外と色んな教訓をデュエマに還元出来るかもしれません。
さて、 デュエマの名試合を皆様にお届けするGreat Match of DuelMasters、略してGoD。
今回はGP9thより、3位決定戦の試合をお届けします。
決勝が有名な大会でもあるんですが、この大会は3位決定戦もかなり面白い内容です。まぁ、みんなが知っている試合よりも、こういう試合を取り上げる方がこの記事の本懐的な部分はありますからね。
長らくGPにおいて3位決定戦の役割はほぼありませんでした。3位を決めるのはいいとして、その3位が受ける恩恵はごくごく微少なものだったんですね。
ですがGP8thより3位には全国大会の権利が与えられることとなったため、事情が大きく変わってきます。そしてこのGP9thも、3位決定戦とは全国大会への出場を懸けた勝負だったのですね。
そしてその舞台に挑むのは、一人はアーチーという男。現在はアーチーチャンネルでお馴染み、アー様ですね。
彼の使用は【メルゲドッカンデイヤー】というデッキでした。それはGP9thの環境に向けて極秘に開発された秘匿デッキでした。
対して、もう一つの席に座るのはよしゆき。その使用は【青黒カリヤドネ】。
そしてこちらもまた、GP9thの環境に向けて極秘に開発された、秘匿デッキだったのです。
目次
華やかなるGP9thと、水面下の静かな争い
さて、GP9thはこれまでのGPと比べてかなり華やかな大会だったと言えるでしょう。
もう少し砕いて言うと"派手"という話ですかね。派手も派手、ド派手です。
その要因はなんと言っても、「あらゆるカードが強かった」という点にあります。というのも、このGPの開催日は2019年10月。令和の聖拳編こと「零誕!魔神おこせジョルネード1059‼︎」が発売されたタイミングなんですよね。
このパックは《マリゴルドⅢ》や《天啓 CX-20》などのマナドライブサイクルを始め、《魔導管理室 カリヤドネ》や《生命と大地と轟破の決断》など、数々の強力カードが収録されました。
そしてこれらの豪華絢爛、華やかなカードたちが飛び交ったのがこの大会だったというわけです。
しかしゲーム内容が派手もド派手だったかというと、そこは案外単純ではありませんでした。水面下での静かな争いがありました。
この環境は《BAKUOOON・ミッツァイル》を始め先にGRを大量に開く方法が存在し、それに成功すればほぼほぼそのまま勝ちへと繋がります。それを体現したのが【シータミッツァイル】で、GP9thの環境トップと目されていました。
(殿堂カード) 【 クリーチャー 】
種族 ビートジョッキー / ワンダフォース / 文明 火 / パワー9000 / コスト9
■このクリーチャーを召喚する時、自分のクリーチャーを好きな数破壊してもよい。こうして破壊したクリーチャー1体につき、このクリーチャーの召喚コストを2少なくする。ただし、コストは0以下にならない。
■W・ブレイカー
■このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、このクリーチャーを召喚する時に破壊されたクリーチャー1体につき、GR召喚する。
■自分のクリーチャーすべてに「スピードアタッカー」を与える。
ですので「如何に相手より先にGRを開くか」は当然重要になりますが、一方でそれを指を咥えて見ているわけにもいきません。相手のGR召喚を阻止して、先後手を逆転させる必要があります。
それはつまるところ(GRへの唯一の対抗策とも言える)《「本日のラッキーナンバー!」》をどう上手く使えるか、という戦いになるわけです。
(殿堂カード) 【 ツインパクトカード 】
種族 マジック・コマンド / 文明 水 / パワー6000 / コスト6
■W・ブレイカー
■このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、数字を1つ選ぶ。その数字と同じコストを持つ相手のクリーチャーをすべて、持ち主の手札に戻す。
【呪文】
カード名:「本日のラッキーナンバー!」
文明:水
コスト:3マナ
■数字を1つ選ぶ。次の自分のターンのはじめまで、相手はその数字と同じコストを持つクリーチャーと呪文を召喚したり唱えたりできない。
この《「本日のラッキーナンバー!」》自体は、キャントリップなどもなく、普通に使えば単純に手札を1枚ロスします。
如何に自分が損せずに《「本日のラッキーナンバー!」》を使えるか、というのはとても大事でした。
ちなみに【シータミッツァイル】はラッキーナンバー→《Wave ウェイブ》で使い回しからのGR召喚が狙えるため、比較的使える方です。
一方でそんな環境の中で、GRを採用しつつもGRを阻止するやりとりに参加しなくてすんだり、GRを使いつつもデッキエンジンとして全く違う一撃必殺コンボが大会会場に突如現れました。
それが【青黒カリヤドネ】や、《生命と大地と轟破の決断》を使った【メルゲドッカンデイヤー】だったのです。
そして彼らは出会ったが……
【メルゲドッカンデイヤー】は《生命と大地と轟破の決断》を使った即死コンボデッキです。
(殿堂カード) 【 呪文 】
文明 自然 / コスト5
■この呪文を自分のマナゾーンから唱えてもよい。そうしたら、唱えた後、墓地に置くかわりに自分の山札の一番下に置く。
■次の中から2回選ぶ。(同じものを選んでもよい)
→自分の山札の上から1枚目を、タップしてマナゾーンに置く。
→コスト5以下のクリーチャーを1体、自分のマナゾーンからバトルゾーンに出す。
→このターン、自分のクリーチャー1体はパワーを+3000され、タップまたはアンタップしているクリーチャーを攻撃できる。
《アクア・メルゲ》をマナに置いて、5マナで《逆転のオーロラ》から《生命と大地と轟破の決断》を撃ち、盤面に《アクア・メルゲ》と《MEGATOON・ドッカンデイヤー》を起動開始。
メルゲのクリーチャー召喚時に手札を捨てる効果と、デイヤーの手札を捨てた時にGR召喚出来る効果が噛み合って無限にGR召喚出来るので、まぁ細かいことはともかくループして相手が死にます。
制作者の栁くんは「デイヤーが出たときに《夜露死苦 キャロル》を絡めてメルゲでGR召喚するデッキで遊んでたんだけど、《生命と大地と轟破の決断》が出てビックリした」といったニュアンスのことを言っていたので、何が強いデッキを生むかわからないものです。
一方【青黒カリヤドネ】は、上記で言うところの《「本日のラッキーナンバー!」》を一番上手く使えるデッキでしょう。
(殿堂カード) 【 ツインパクトカード 】
種族 ムートピア / 文明 光/水 / パワー10500 / コスト14
■シンパシー:自分の墓地にある呪文(このクリーチャーを召喚する時支払うコストは、自分の墓地にある呪文1枚につき1少なくなる。ただしコストは0以下にならない)
■このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、コスト3以下の呪文を3枚まで、自分の墓地からコストを支払わずに唱えてもよい。こうして唱えた呪文は、唱えた後、墓地に置くかわりに山札の一番下に置く。
■W・ブレイカー
【呪文】
カード名:ハーミット・サークル
文明:光
コスト:3マナ
■S・トリガー
■相手のクリーチャーを1体選び、タップする。次の相手のターンのはじめに、そのクリーチャーはアンタップしない。
墓地の呪文の枚数を参照するカリヤドネのお陰で、ラッキーナンバーが実質的な《フェアリー・ライフ》になっており、追加ターン+ブーストみたいかことが出来ます。
加えてカリヤドネ自身の効果でラッキーナンバーを使えるのも大きく、自身はそこまでラッキーナンバーが激痛にならないのも大きいですね。
もちろん最後はカリヤドネから即死ループを決めて勝つ、という点はご存じの方が多いでしょう。仮にループが上手くいかなくても、《次元の嵐スコーラー》とラッキーナンバーを絡めたビートプランで勝つことも出来ます。
これだけの強さを持ったデッキが、秘匿された状態で世に出たら、それはもう勝つに決まってます。
GP9thの凄い点は、こうした秘匿デッキが会場でばったり出くわした点にあるでしょう。
【メルゲドッカンデイヤー】を使用していたアーチーは、準決勝で【青黒カリヤドネ】を使用するイヌ科と遭遇し、1-2で敗北。途中祈るアーチーの姿がありましたが、残念ながら最終的な勝利には届きませんでした。
それでもGP9thは3位までに全国大会の権利が与えられます。3位と4位では、雲泥の差があるのです。
だからこそアーチーも、気を取り直して3位決定戦へと挑もうとした筈です。
しかしそこで待っていたのが再び【青黒カリヤドネ】であったことは、彼にとっても想定外だったでしょう。
二つの答え、一つの勝利
この3位決定戦は、個人的には決勝以上にGP9thをよく象徴している一戦だと思っています。
【青黒カリヤドネ】も【メルゲドッカンデイヤー】も、当日まで秘匿されたデッキでした。強力な新カードを使った秘匿デッキ、というのはGP9thのテーマの一つです。
しかしこの両者の対決は、その一歩先に到達しています。つまり、秘匿デッキ同士の戦いはどうなるのか? というテーマです。
そしてこのテーマを考えたとき……一番最初に説明したGP9thの環境の話へと回帰します。
はい、《「本日のラッキーナンバー!」》ですね。
このカードがGRに対する唯一といっていい対抗策であることは書きましたが、このカードは本来そこまで想定していなかった筈のカードへの対抗策にもなったんです。
それこそが【メルゲドッカンデイヤー】の始動カードとなる《生命と大地と轟破の決断》です。
このデッキの明確な弱点の一つとして、ラッキーナンバー「5」宣言がありました。これを撃たれてしまうと、本当に1ターン機能停止してしまうのです。
【メルゲドッカンデイヤー】の大きな主張点として「シータミッツァイルより速いこと」が挙げられます。シータは結局4ターン目に展開した後に5ターン目くらいに相手を倒すデッキですが、メルゲは4ターンで破壊します。
シータ側がこれを止めるためにラッキーナンバーを撃っても、次に《Wave ウェイブ》などを持っていないと大抵の場合はナンバーを打ち続けられないので、ナンバーが切れるのを待ってから倒すことも出来るんです。
しかし【青黒カリヤドネ】はそうはいきません。あのデッキはラッキーナンバーを打ち続けることが出来ます。3ターンナンバーからの始動はちょっと厳しいですが、4ターンナンバーであれば5ターン目にはだいたい勝てちゃいますね。
カリヤドネはラッキーナンバーを使う事で相手のキルターンを遅くし、そこでターンを入れ替えて勝つデッキです。
ラッキーナンバーというカードそのものよりも、カリヤドネから打ち出されるラッキーナンバーというカードが、メルゲにはまぁ辛かったんです。
この点を考えると、メルゲ側は流石にヤドネには不利が付いていると言ってよかったでしょう。
GP9thは秘匿デッキ同士の影なる戦いの舞台でした。そしてそこには、秘匿デッキによる2つの答えはありました。
しかし秘匿デッキ同士に相性があったのは、それはメルゲ側からしたら知ったこっちゃない話でしょう。
デッキの持ち込みに正解不正解はあって、その観点でいえばメルゲもカリヤドネもどっちも正解なんです。
しかし、正解同士の中では、ヤドネが強かった。勝利は一つしか用意されていないのです。
これはメルゲ側からしたら、本当に運が悪かったとしか言い様がないと思っています。
「いや、カリヤドネが優勝しているんだから、カリヤドネ以外に正解はなくない?」と考える方もいるかもしれませんが、それは結構違うと考えています。
大会が始まる時点で存在しないデッキのことは、考えようがないからです。
この辺りの考え方をもっと知りたい方は、まつがん先生のあのクソ第2回渡辺雄也回を読んでみることをオススメします。
とはいえ、この時は超天篇であることを忘れてはいけません。デッキの強さはどれもピカイチなんです。
【メルゲドッカンデイヤー】もちゃんと強いデッキではあるため、不利といえども先攻で4ターンで回せば普通に勝ちます。20-80とかの不利ではなく、45-55とかの不利ですね。
さて、いつもならここで試合内容の詳細について書くところですが、今回は敢えて端的に説明しましょう。
1戦目は、先攻を持ったアーチーが下準備を整え、《生命と大地と轟破の決断》を引ければ勝ちという状況を用意します。しかしアーチーの動きから《生命と大地と轟破の決断》を持っていないを判断したよしゆきは自分のリソースの拡張を優先。
《ブラッディ・クロス》でネイチャーが墓地に落とされてしまう不運もあり4ターン目にループに入れなかったアーチーは、そこからのターンを《「本日のラッキーナンバー!」》によって封じ続けられ敗北します。
2戦目は、再び先攻を持って4ターン目にループに入ったアーチーが勝利。
そして1-1で迎えた最終戦は、4ターン目、5ターン目とラッキーナンバー5宣言で相手を縛りつづけて《魔導管理室 カリヤドネ》に入ったよしゆきが勝利、というものです。
本当に、説明すればそれだけです。こっちの方が、デッキの相性がよくわかるのではないでしょうか。
しかしアーチーも準決勝と3位決定戦のいずれもストレートでは負けていないように、先攻ならば結構な割合で勝てます。
この辺は流石に超天篇の一流デッキの一角なだけはあります。
ただ上振れられる要素がヤドネ側にはあるけどメルゲ側にはない点(どう頑張ってもメルゲ側はキルターンを早められない)、ラッキーナンバーの有無といった要素があり、これが一つしか用意されていない勝利を決定してしまったのでしょう。
よしゆきは見事、全国大会の切符を掴みました。
おわりに
というわけで今回のGoDはGP9thの3位決定戦をお伝えしました。
少しこれまでと違った趣向の読み物だったと思いますが、如何でしょうか?
試合内容については、背景を知っていると「そうですね」というものなんですが、改めてこの試合の立ち位置を考えて振り返ってみると、まぁ面白い要素が詰まっているな、と。
その辺りが伝わってくれると、私としても嬉しいですね。
ちなみに歴史の妙というのは確かにあって、この3位決定戦で敗れたアーチーは自身を破ったカリヤドネを相棒にランキングを走って全国大会を決めた、というのは筋書きのなさそうでありそうなドラマです。
それではまた次回の記事で。
感想などは、是非Twitterで#デュエマGoDをつけてお願い致します。