こんにちは、神結です。
「歴代名作デッキ紹介」と題して、過去の名デッキの紹介をしてきた本シリーズですが、紹介してきたデッキの中には「ちょっと話足りなかったなぁ」というデッキもあるわけです。
まぁ特に自分が拘って使ってたデッキなんかは、もっと紹介出来る話があるんですよ。
ですので今回は「延長戦」ということで、過去に紹介したデッキを更にもう一歩深掘りしていこうと思います。
今回は第13回で紹介した【白刃鬼】の延長戦です。
目次
本日の名作デッキ紹介
というわけで今回は延長戦ということで、【白刃鬼】の話になります。
前提の話として、第13回を見ていただけるとわかりやすいと思います。
今回のリストは、これで。
ビッグマナの唯一無二、《調和と繁栄の罠》
2015年3月、長く白ビマナの防御力を支えていた《超次元ホワイトグリーン・ホール》が殿堂となり、デッキからこのカードを唱えられる《蒼狼の始祖アマテラス》もプレ殿となりました。
【 呪文 】
文明 光/自然 / パワー- / コスト4
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
コスト5以下のサイキック・クリーチャーを1体、自分の超次元ゾーンからバトルゾーンに出す。
このようにして光のサイキック・クリーチャーをバトルゾーンに出した場合、自分の手札を1枚裏向きにして、新しいシールドとして自分のシールドゾーンに加えてもよい。
このようにして自然のサイキック・クリーチャーをバトルゾーンに出した場合、カードを1枚、自分のマナゾーンから手札に戻してもよい。
《超次元ホワイトグリーン・ホール》は《勝利のプリンプリン》と併せて使う事で平然と3~4面止めることが出来るのでかなりビートダウンに対して強いカードですし、そうでなくともマナ回収を兼ねているため腐ることがないんですね。
しかしそんな白ビマナの手足となるカードが殿堂し、以降刃鬼を中心としたビマナは下火になるかと思われましたが、ここでとある1枚のカードが発見されました。
その名は《調和と繁栄の罠》。
生命を終える筈だったビマナの寿命を引き延ばした、唯一無二のカードです。
【 呪文 】
文明 光/自然 / パワー- / コスト5
S・トリガー
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
文明を1つ選ぶ。次の自分のターンのはじめまで、自分はその文明を持つクリーチャーに攻撃されない。
特定の文明の攻撃を1ターンシャットアウトするこのカードですが、アタッカーが赤に寄っている【モルトNEXT】や、革命編で登場した【赤単ガトリング】等に対してかなり刺さるカードです。
一応、黒単ヘルボの攻撃やイメンのガラムタからのフィニッシュを止めることも出来ます。
とはいえ、トリガーでターンを貰うカードなら《反撃のサイレント・スパーク》などのスパーク呪文や《スローリー・チェーン》などの方が強力です。
しかし調和(ちょうわ、エタトラ、両方の略称があった)の優れていた点は、手撃ちからでも機能する点でした。
そしてそれでもなお、これだけであればただのケアすべき1トリガーに過ぎなかったのですが、調和と相性の良すぎるカードが存在していました。
皆さんお馴染み《龍素記号Sr スペルサイクリカ》です。
【 クリーチャー 】
種族 クリスタル・コマンド・ドラゴン / 文明 水 / パワー6000 / コスト7
■このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、コスト7以下の呪文を1枚、自分の墓地からコストを支払わずに唱えてもよい。そうした場合、唱えた後、墓地に置くかわりに自分の手札に加える。
■W・ブレイカー
■このクリーチャーが破壊される時、墓地に置くかわりに自分の山札の一番下に置く。
つまり手から調和を唱え、次のターンにサイクリカで調和、そしてサイクリカで手札に返ってきた調和を撃つ。これだけで3ターン貰えるんですね。
更にサイクリカ自身も《ドンドン吸い込むナウ》で使い回すことが出来ますので、一度パターンに入ってしまうと「ビマナ側のフィニッシャーが着地してゲームが終わるまで、調和を唱え続ける」ということが可能になりました。
しかも白緑と調和は色も良くて、コントロール相手になどに初手のマナ埋めが許されるカラーなんですよね。
というわけで以降のビマナ系(刃鬼、トリーヴァ、なんなら5cも)はこの調和+サイクリカのパッケージが標準搭載となりました。特に再録もなかったため、ストレージの奥で眠るカードだった調和は、一時は2000円近い値段が付くカードになりました。
ビマナはこの後、【赤単レッドゾーン】が登場して環境が激変したときもこの調和+サイクリカのパッケージでレッドゾーンに有利を取ったことで環境に留まります。最終的にドギラゴン剣が登場した2016年5月まで、なんだかんだで環境でちらほら見掛けることになりました。
その所以は、別にビマナというデッキ構造が強かったというわけでは決してなく、この調和+サイクリカが強かったからに過ぎません。ビマナの唯一とも言える主張点は、調和+サイクリカのパッケージだったのです。
デッキリストから見る白刃鬼
さて、上記の調和+サイクリカのパッケージを一番有効に使えるのが【白刃鬼】だったのは間違いないでしょう。調和+サイクリカで《「必勝」の頂 カイザー「刃鬼」》を出せるターンまで凌ぐ、というゲームプランが明快で、その上で刃鬼を出せれば勝てるからです。
しかしこれを40枚のリストに収めようとすると、色々な壁にぶつかることになります。
《「必勝」の頂 カイザー「刃鬼」》は召喚に成功すればほぼ勝ち、というカードになります。その代償として、自身を含めて8枠近くをハンターに割くことになります。
【 クリーチャー 】
種族 レッド・コマンド・ドラゴン / ハンター / ゼニス / 文明 ゼロ / パワー14000 / コスト11
このクリーチャーを召喚してバトルゾーンに出した時、相手のシールドを数え、その回数相手とガチンコ・ジャッジする。その後、こうして自分がガチンコ・ジャッジに勝った数、ハンターを1体、自分の墓地、マナゾーン、または手札からバトルゾーンに出す。
T・ブレイカー
エターナルΩ
《不敗のダイハード・リュウセイ》を2枚とかの人もいましたけど、「刃鬼を出したら絶対に勝つ」を遂行するにはダイハードを2体並べたくて、盾落ちのことまで考えると3枚は必要かな……と思っています。
【 クリーチャー 】
種族 レッド・コマンド・ドラゴン / ハンター / 文明 火 / パワー8000 / コスト8
■自分のドラゴンが攻撃する時、相手のシールドを1枚選び、持ち主の墓地に置く。
■W・ブレイカー
■自分がゲームに負ける時、または相手が勝つ時、かわりにこのクリーチャーを破壊する。
■このクリーチャーが破壊された時、そのターン、自分はゲームに負けず、相手は勝てない。
《閃光のメテオライト・リュウセイ》のところは、元々《永遠のリュウセイ・カイザー》を使われることが多かった枠ですね。実際単体カードパワーは圧倒的に永遠の方が高くて、ビートダウンなどを相手に先出しで盤面を制圧する力もあるります。
しかしそもそも永遠が間に合わないケースが増えたことや、永遠自体の場持ちも悪くなり、【黒単ヘルボロフ】などを相手に「刃鬼を出したら絶対に勝つ」を達成することを、全体タップから面を弾いて盾を安全に焼却出来る《閃光のメテオライト・リュウセイ》へと変化してきました。
《ボルバルザーク・エクス》は本当に最強のカードで、《セブンス・タワー》や《ドンドン吸い込むナウ》と併せて、様々な場面で不可能を可能にしてくれます。流石に殿堂カードです。
ちなみに《勝利宣言 鬼丸「覇」》は別に要らないです。刃鬼出せば勝つデッキなので。
となると結局ハンターに8枠とって、ビマナ基本セットである《ピクシー・ライフ》、《フェアリー・ライフ》、《ドンドン吸い込むナウ》、《フェアリー・シャワー》と合わせると既に24枠です。
ここに《セブンス・タワー》や《超次元ホワイトグリーン・ホール》といった殿堂カード、前述の《調和と繁栄の罠》4枚に《龍素記号Sr スペルサイクリカ》3枚を取ると……。
なんとなんと既に33枚。残り7枠しかないんですねぇ。
加えて、中盤から終盤にジャンプアップするビッグブースト系のカードやドローソースは長期戦を前提とするデッキである以上は必須です。
で、それらに3枠ずつ取ると……自由枠と言えるのはもう1枚しかありません。
というようにですね、このデッキはほんっっっっっっっっとうに拡張性がないんですよ。自由枠1て。1てなんだ?
色バランスも相当ギリギリで、白8赤6です。赤はともかくとして、白8はエタトラを回す上で本当にギリギリです。《メガ・マナロック・ドラゴン》とかポイって投げられると余裕で止まります。
これは本当に構造的な欠陥に他なりません。ビマナに対する何かしらのメタを向けられたときに、それに対応出来るカードを積むことが出来ないんですし、「このプランを通すために、ドロソを厚くしたい」みたいな願いを叶えることも出来ません。
というわけで枠的な話をすると、刃鬼は個性を出すデッキにはならないですね。
一応採用するドロソとブースト軸で個性は出る……のか? それもフェアホを《爆進イントゥ・ザ・ワイルド》にしたり、くらいの変化ですが。
ちなみにドロソの採用しない構築もありますが、これは《パクリオ》や《解体人形ジェニー》でサイクリカを抜かれた瞬間ゲームが終わります。
というわけで全体的にデッキとして細いというか、勝つまでにかなり危険な橋を渡っています。手札が事故ったときのリカバリーが利かないですし、頼れるものが調和+サイクリカしかないので、これが通用しない相手には常に苦しいです。
上で「ビマナというデッキ構造が強かったというわけでは決してなく」と書きましたが、構造の段階でまずハンデを背負っているので環境とかの話は二の次なんですよね。
ちなみにトリーヴァは枠に比較的余裕があって、線を太く出来る部分が増えます。
まぁトリーヴァはトリーヴァで、使いこなすにはクロックパーミッションに対する相応の理解が必要となったり、構造上の問題で刃鬼に不利が付いたりと、これもこれで扱うのが難しいんですけどね。
せっかくなので、【トリーヴァMAS】もいずれこのシリーズで紹介します。
使う理由、本当にあったか?
ちなみに最初に「唯一とも言える主張点」というような言葉を書いたのには、それなりに理由があります。
というわけで最後になりますが、 その根拠を示すべく2015年~GP2ndまでの刃鬼について、各対面の相性について簡単に書いておきます。ゲートボールなどで遊ぶ際に、参考にしてください。
【イメンループ】……本当に勝てない。詰みに近い対面。ブーストパクリオでほぼ負け。こちらの刃鬼が11マナなのに対して、あちらの《邪帝遺跡 ボアロパゴス》は7マナで建つ。勝つわけがない。
【黒単ヘルボロフ】……少なくとも微不利以下ではある。対刃鬼を知っているヘルボ使いは《停滞の影タイム・トリッパー》から《解体人形ジェニー》を投げて1点刻んで、更に《復讐 ブラックサイコ》を出して2点殴ってきます。これで刃鬼は死にます。
逆に相手が頑張ってコントロールしようとすると、MASが強かったりトップのサイクリカや調和で粘りながら刃鬼を出すチャンスが出てきます。
【天門ループ】……不利。《焦土と開拓の天変》のようなカードを積んでない限り速度負けします。ちなみに上記に書いた通りそんなカードを積むと構築の何処かに欠陥を抱えることになるので、他のデッキに勝てなくなります。
【モルトNEXT】……五分。基本的に調和が刺さる対面だけど、《メガ・マナロック・ドラゴン》が優秀でこちらの白マナを止めてくるので、調和が撃てずに負ける瞬間があります。
ちなみに対刃鬼を知っているNEXTは一旦戦略的ハートバーンで顔に突っ込んで、トリガーで止まった後にマナロや悠久で蓋をしてきます。これでまぁまぁ刃鬼は苦しいです。
【赤単レッドゾーン】……微有利くらい。これも調和が刺さる対面だけど、対刃鬼を知っているレッドゾーンは一旦溜めてバイクを並走させてくるので、《ドンドン吸い込むナウ》を引けているか、素のトリガー勝負になりがち。《熱き侵略 レッドゾーンZ》でトリガーを抜かれると結構簡単に負ける瞬間があります。
【アナカラデッドゾーン】……微不利から不利くらい。これもヘルボと同じで、対刃鬼を知っているアナデッゾはフォアホから《タイタンの大地ジオ・ザ・マン》とかは出さずに、《勝利のガイアール・カイザー》からサイコデッドゾーンで顔に来ます。これで刃鬼は死にます。
逆にコントロールプランを取ってくれると調和青宣言で意外と盤面が止まるので、その間に刃鬼をツモれるチャンスが巡ってきます。
【緑単サソリス】……限りなく詰みに近い。イメンに勝てないんだから、コイツに勝てる道理がないんだよな。
……本当にこのデッキ、使う理由あったか?
おわりに
「DM歴代名作デッキ」、第21回は延長戦と題して私の大好きな【白刃鬼】の話を深掘りさせていただきました。
しかし改めて考えてみると、本当に調和+サイクリカが強かっただけのデッキに見えてきましたね……。
まぁよく使っていた分、デッキの悪いところもよ~~~~く知っているということでここは一つ。
私自身はこのデッキを弄り倒していたことに一切の後悔はなくて、ビマナのデッキ構造についての理解をかなり深めることが出来たと思ってます。後に色々なビマナを触ることにはなりますが、刃鬼で苦しんだ経験は確実に生きていますね。
いまはね……ビマナも基盤が強くなりましたよね……。《ボルシャック・栄光・ルピア》、本当にありがとう。
というわけで今回はここまで。また延長戦も書けたらと思います。
「このデッキを紹介して欲しい」といったリクエストも受け付けておりますので、#DM歴代名作デッキでご感想をお待ちしております。
それではまた来週会いましょう。