目次
本題に入る前に、まずはこちらの質問にお答えください。制限時間は5秒です。
Q.アナカラーの「アナ」。元々の意味は何?
はい5秒経ちました。答えを聞きましょうか。
「自然・水・闇文明のこと」と答えた方。不正解です。この記事を読んでください。
「『マジック:ザ・ギャザリング』におけるこの三色のこと」と答えた方。だいぶマシですが不正解です。この記事を読んでください。
「『マジック:ザ・ギャザリング』の三色カード、《アナボルバー》のこと」と答えた方。よく知ってますね。ですがもうちょっと詳しく答えないと不正解です。この記事を読んでください。
「ぶっちゃけわからん」と答えた方。実はあなたが一番正解に近い可能性があります。詳しくはこの記事を読んでください。
はじめに
こんにちは。北白河と申します。今回は歴史の授業をやっていこうと思います。テーマは知ってるようで知らない三色の組み合わせの俗称の由来です。タイトル通り「ドロマー」とか「アナ」とかですね。皆さん何気なく使ってると思いますが、その由来についてはあまり考えたことがないか、「『マジック:ザ・ギャザリング』のなんかのカードでしょ?」くらいに考えてる人が多いのではないのでしょうか。
まず、ここで取り扱う3色の俗称をリストアップしましょう。
友好色:
・自然・光・水→トリーヴァ
・光・水・闇→ドロマー
・水・闇・火→クローシス
・闇・火・自然→デアリガズ
・火・自然・光→リース
対抗色:
・光・闇・自然→ネクラ
・水・火・光→ラッカ
・闇・自然・水→アナ
・火・光・闇→デイガ
・自然・水・火→シータ
以上の10個が、今回の考察対象になるものです。由来が由来なだけに仕方ないのですがこの記事の序盤は「マジック:ザ・ギャザリング」についての言及が多くなります。興味のない方はなんとなく読み飛ばすなり調べながら読むなりしてください。
で、結局由来はなんなの?
ざっくり言うと「マジック:ザ・ギャザリング」の、同じ三色の組み合わせのカード名から来ています。友好色と対抗色で由来のジャンルが違うので、それぞれ説明します。
まず友好色から。これは、2000年にエキスパンション「インベイジョン」に登場したそれぞれの三色を持つ「上古族ドラゴン」のサイクルの名前から来ています。
※画像はカーナベルの「マジック:ザ・ギャザリング」コーナーよりお借りしました
厳密に言えばこのカラーリングのドラゴンのサイクルはこれが最初ではない(《ニコル・ボーラス》を含むエルダー・ドラゴンサイクルがあった)のですが、あちらがあまりに初期のカードなのに加え、こちらは多色推しのエキスパンションで収録されたこともあって名称として定着した感じです。
そして対抗色なのですが……ええと。二回言いたくないので最初に詳しく説明します。2001年にエキスパンション「アポカリプス」で登場した「自身の敵対色の魔法を研究する五つの異端のギルドの名前」です。なんじゃそりゃ、と思われるかもしれませんが、めちゃくちゃ雑にデュエマで例えるとそれぞれの色の「ドレミ団」「ハムカツ団」みたいなものだと思ってください。
「マジックやってるけどそんな設定あったの知らねーぞ!」とおっしゃる方もいるかもしれません。そりゃそうです。ストーリー的な意味でのこれら五種類の単語の意味は、2018年になるまで日本語で紹介されたことがなかったから(2002年に英語の質問記事にて紹介されただけ)です。知る方法がつい最近までなかったから、冒頭の問題で「わからない」と答えるのが正解に一番近かったわけですね。
ちなみに、詳しい方に聞いてみた際に教えていただいた当時の日本の雑誌には 「ギルドが崇める神の名前」という情報もあったりします。これについては原語の情報源がわからないのでアレなんですが、まあそれくらいこの名前についての情報そのものが薄い……ということで。
ちなみにこれらのギルドの名前の語源については「何度か会議をやって適当に各国の言葉をもじったりして決めたもので特に重要な意味はない」そうです。「デイガ」「ラッカ」は完全な意味のない造語ですし、「ネクラ」はギリシャ語で死体を意味する「ネクロス」(ネクロマンサーとかの語源ですね)から、「アナ」はラテン語で魂を意味する「アニムス」から、シータは英語で「クジラ目の」を意味する「セタシアン」から来ています。
ともかくそれぞれのギルドには敵対色をサポートする効果のあるカードがあり、それぞれがサイクル(《アナの信奉者》などの信奉者サイクル、《デイガの聖域》などの聖域サイクル、《ラッカボルバー》などのボルバーサイクル)を為していました。 ちなみにカーナベルの「マジック:ザ・ギャザリング」コーナーには売ってませんでした。カードが古すぎる(18年前だぞ!)のと、今の基準で見ると弱すぎて使われないことがおそらく最大の要因です。画像がないのもそのせいです。
というわけで「マジック:ザ・ギャザリング」にてこの三色を表す(当時の)俗称が、そのままデュエマに伝わってきたということです。デュエマが始まったのが2002年なので、当時向こうで広まりたての用語が渡ってきた感じですね。「デュエマにはまだ色の略称がないし、説明しやすいから便宜上これを使っとこう」といった感じで使われ始めたものと考えられます。
何でこれが広まったの?
理由は二つあります。「当時マジック・デュエマ通して見てもそれしかこの三色を呼ぶ名前がなかったから」、そして「デュエマにいつまでたってもこの三色の強力なサイクルが出なかったから」です。
前者についてはデュエマそのものとマジックの略称が近い時期に生まれているので当然ではあります。実際、マジックのほうでこれ以外の(より整備された)3色の略称が生まれるのは友好色が2008年、敵対色に至っては2014年まで待たなければなりません。これらの新しく整備された3色略称がマジックに浸透した頃には、デュエマではすでに現在の略称ががっちり根を張っていました。
ちなみにこのマジックの新略称は背景ストーリーや性能面での個性と強力に結びついており、一瞬で以前の「ドロマー」や「アナ」を駆逐してしまいました。今マジックプレイヤーにデュエマの略称を使うと「昭和から来た人か……?」みたいな顔をされるので気を付けましょう。
そして後者の実例として、初めてデュエマで3色カードが登場したDM-25において収録された友好色9枚・敵対色5枚のカードを見るとSR4:VR4:UC6というどうやってもサイクルを為せない割り振り方をされていました。その後も3色カードは(敵対色の「希望の守り手」サイクルなど地味なやつはありましたが)目玉となるサイクルを為すことなく今まで来ています。
これらが複合した結果、本来便宜上使っているはずだった3色略称は、マジックで完全に廃れた後もデュエマで生き残り続けているのです。
もしデュエマ由来の略称を作るなら?
ここまで書いて、北白河の脳裏に一つの考えがよぎりました。「今ここで俺がデュエマ由来のわかりやすい略称作って広めれば天下取れるのでは?」思いついちゃったらやらないわけにはいかないのが北白河です。しばらく考えて、一つアイデアが浮かびました。
別にサイクルを為していなくとも、《SSS級天災 デッドダムド》や《ニコル・ボーラス》、《怒流牙 サイゾウミスト》など3色で有名・特徴的なカードはたくさんあります。そこから持ってきて、「ダムドカラー」「ニコルカラー」のように呼んでみるのはどうでしょうか。これならばデュエマ由来のまま略称が作れます。よしやってみるかと思ってカード検索をしていると。
水・火・光の3色クリーチャー、まさかの3体のみ。
え、このどう見てもパッとしないやつらから代表を選ぶの……?正気……?それ以前に「ハカイ・デストロイヤーカラー」とかダサすぎません?これを言うくらいなら「ラッカカラー」のほうがまだマシだわ……
こうして、ひとつの夢が儚く散ると同時に、なんでデュエマ由来の略称が存在しないのかという理由の一つがわかりました。「そもそも3色カードが足りない」。そりゃまともな略称作れないよなあ……
おわりに
というわけで、三色略称でした。当初の予定では前半の説明部分だけだったんですが、やっぱりなんか無謀なことに挑戦して失敗する方がスタイルに合ってますね。
北白河は復帰したての頃に「なんでこいつらはデュエマ由来ですらない20年近く昔のカードが元ネタの謎の略称を当然のように使っているんだ……!?」と思って以来これらの3色略称を使うのにどうしても抵抗があり、律儀に色を並べた名前で呼んでいます。実際この略称、初心者が「この言葉はこういう意味です」って言うのを知る手段がなくて不親切だと思うんですよ。タカラトミーとウィザーズにはなんとかしてこの状態を解決してもらいたいなーと思ってますが……道は遠そうですね。あ、謎BBPで《復活させるものトリーヴァ》と《ネクラボルバー》のサイクルをデュエマに輸入すれば完璧なのでは?
次回は今度こそクソデッキを作れたらいいなと思っていますが、おそらくそろそろデュエプレがサービス開始するのでそっちの記事を書くことになるかもしれません。それでは、次の記事で。
参考文献・情報提供者
Ask Wizards(米ウィザーズ社) https://magic.wizards.com/en/articles/archive/ask-wizards-august-2002-2002-08-01
デュエリスト・ジャパン第15号(ホビージャパン)
若月繭子氏(@aishawakatsuki)