それでもやっぱりジャオウガは辛い
こんにちは。あるいはお久しぶりです。北白河と申します。
いやあ。来てますね、チラ見せ。
各陣営の強力カードがどんどん出てくると同時に、我々の残業時間もモリモリ増えていきます。最新情報、やらないといけませんからね。
個人的にはメカ陣営のアクセルの踏み方がめちゃくちゃ好きで、「シールド回収ギミックとチェンジのための攻撃で両者の盾を3枚以下にし、返しの《 CRYMAX ジャオウガ 》を出されても盾の増減を発生しなくして耐える《 富轟皇 ゴルギーニ・エン・ゲルス 》」という離れ業には驚かされましたね。
開発部、風が吹けば桶屋が儲かるようなシナジーを作るために「桶屋だけ儲かる風を吹かせる」ことができる人材が揃ってますね。
というわけで、今回もやっていきましょうか。
この記事があなたの良い暇潰しになれば、これほど嬉しいことはありません。
それでは、今日のカードはこちら。
《アクア・ドッペル》
【 クリーチャー 】
種族 リキッド・ピープル / 文明 水 / パワー2000 / コスト3
■バトルゾーンにある自分の他の、ホーリー・ソウル、マジック・ソウル、エヴィル・ソウル、カンフー・ソウル、ワイルド・ソウル、またはブラッディ・ソウルクリーチャーすべてのパワーは+1000される。
■ホーリー・ソウル
■マジック・ソウル
■エヴィル・ソウル
■カンフー・ソウル
■ワイルド・ソウル
■ブラッディ・ソウル
DM39で登場した、なんかカードの右の方に異変を感じるリキッド・ピープルです。いやイラストそのものもだいぶ異変を感じるんですが。
この右側の丸いやつは、「ソウル」と呼ばれる特殊なアイコン。
それそのものには意味がないんですが、カードテキストで言及されたりそれぞれのソウル専用の能力があったりで、ゲームにもしっかり影響を及ぼしてきます。
で、このカードは例外的に、全てのソウルを持ち合わせるのが個性というわけです。
おそらくは、「種族」に次ぐカードが所属する新たなカテゴリとして登場したものと思われます。
……実運用上は何もかも種族のほうが優れていたので、覚醒編終了と同時になかったことになりましたが。
同時期に登場した「サイキック・クリーチャー」が今も人気なのと引き替え、こっちはまあ……二度と戻ってこなさそうですね。そもそも収録枠を食い合ってたし。
まあ詳しくはばにら所長の記事をどうぞ。
……というわけで、今回は旧枠時代のマイナー能力振り返り回の最終回。
超次元ゾーンの影で消えていった「ソウル」という新概念に思いを馳せながらやっていきましょうか。
光文明のH・ソウルの持つ能力が、ホーリー・フィールド。
「自分シールド枚数が相手のシールド枚数以上なら発動する」という感じですね。
H・ソウルを持つカードの性質上「シールドを守って防御的に戦う」ことが推奨される能力ですが、別に相手を殴って盾を減らしても発動します。
シールド・フォースの反省を活かしてか、直感的にわかりやすい条件に変更された「シールドの攻防を促進する」ギミックと言えるでしょう。そのぶん一つ一つの効果が地味めに勘案されているのは痛し痒しですね。そもそも9枚しかないし。
直系の子孫としては条件が「より多ければ」になった新章期のラビリンスが存在します。
こちらはメタリカ特有の攻撃曲げと合わせて「攻めながら守る」ことでの発動を狙う感じだったようですが……「もうちょっとうまくできた」と開発部のDeadman氏が語っています。
水文明のM・ソウル持ちクリーチャーが持つのが、連鎖。関連能力として激流連鎖と転生連鎖がありますが、まあやることは原則同じです。
「出た時に山札の上を見て、自身より小さいコストのクリーチャーなら出してもよい」というものです。その名の通り、どんどん連鎖させていけ……というわけですね。
殆どのカードは山札操作が絡まなければ「ただ出すだけ」なんですが、置きドローに化ける《 アクア・ジェスタールーペ 》やシンプルにデカくて2回分のアドが取れる《 サイバー・G・ホーガン 》などはきっちり使われてた覚えがあります。
何にせよ、実際に運任せで連鎖させるよりは「デッキのマナカーブの頂点に据えることでだいたいヒットする」という運用が多かった気もしますが……まあ、腐っても踏み倒しですしね。書いてる通りの仕事ができるだけで万々歳です。
この能力の弱点……というかデザイン上の難点は、「融通の利かなさ」。キーワードででバシッと定義され過ぎて、「上から下へcipで連鎖する」以上のことがなかなかできないんですね。
例えば「連鎖Nを行う」(コストN以下の生物が出る)みたいなキーワード処理にすれば、「条件付きで自分より大きいクリーチャーへのジャンプアップのチャンスがある」とか「離れた時に連鎖」とかさらには「連鎖付きの呪文」みたいなデザインもあったと思うんですよ。
後の踏み倒し能力である革命編の「白単連鎖」や十王篇のマジボンバー、アビス・レボリューションのメクレイドなんかはそこらへんをテキスト側で数字を指定できるようになってますね。
こういうところに、「カードデザインの幅を広げる」という開発部の成長や進化を感じます。
ちなみに、元ネタはMTGの能力「続唱」。こちらは自分よりコストが小さいカードがめくれるまで山札をめくり続けることができます。後に調整版として「発見N」という発動タイミングや数値を弄れるようになったものも出ていますね。
なお、両方とも「デッキ内に対象カードが実質1種類しかない状態」を作り出して確定で狙ったカードを使うギミックが暴れ回って大変なことになりました。後者に至っては、この記事を書いてる途中に禁止が出ました。タイムリーすぎる。
闇文明のE・ソウルが持つのが、返霊。こちらも上位能力として地獄返霊と殲滅返霊がありますが、原則は同じです。
「攻撃時に墓地のカードをN枚山札の下に戻すと発動する」効果です。
ここまで直接的に「墓地はリソース」を体現した効果も珍しいですね……。墓地を肥やすわかりやすい動機になりますし、運用もシンプルです。忘れられがちですが、E・ソウルには《 黒神龍 エンド・オブ・ザ・ワールド 》がいますし。
ただ、例によってキーワード能力の時点で「攻撃時」に限定されているのが難点。これもキーワード処理にすれば様々なタイミングで発生させられたのに……と思わなくもありません。
墓地肥やしもセットで行う必要があることから、もし大々的に復活させる場合はそちらもセットにする必要がありそうですね。これはパックの枠を圧迫しそうだ。
これはどちらかというと「墓地を肥やして使うE・ソウル」という戦略の中に「返霊」というギミックが組み込まれているからこそ実装できたんだと思います。今やるなら、さすがに名無しのギミックになるかな……。
火文明のK・ソウルの能力が、マーシャル・タッチ。
「出た時に他のクリーチャーを手札に戻すと発動する」効果です。
普通に使うとデメリットかつどれもコスパはイマイチなんですが、本題は狙ったクリーチャーを手札に戻しての使い回しと、離れた時効果の誘発。
火文明の生物はSA持ちが多いので戻してすぐ出し直してもテンポ損しにくく、継続的に攻めていける……というのが売りのようです。実際、《 ブルース・ガー 》とかもK・ソウルを持っていることから「殴ってターン帰ってきたら回収して使い回せ!」ってことなんでしょうね。
惜しむらくは、ちょっと数が少なくてそれそのものを戦略に組み込めるほどではなかった……というところ。《 大地竜機シロガシラ・ジュカイ》みたいに、うまく活かした生物もいるにはいるんですが。
コンボ前提の能力は、デッキを組みたくなるくらい分かりやすいエサを数・量ともに撒いてあげないとあまり形にならない……という例ですね。
直系の子孫としては、キーワード処理になってタイミングが自由化したJトルネードが挙げられます。こっちはかなり分かりやすく「俺を使い回せ!」って言ってるカードが多かった気がしますね。
自然文明のW・ソウルの第一能力が、マナ爆誕。
「指定されたコストを払って、マナから召喚できる」というものですね。
現代デュエマでもよくあるマナ召喚系効果の源流は、たぶんこの辺になるはず。それ以前は、マナ回収してから召喚するか直接踏み倒すかが主流だったんじゃないですかね。それと比べると直感的で割と画期的だったと思いますよ。
ただ、持ってる生物がほとんど準バニラ+貴重な準バニラじゃないやつの内2体が悪用されて殿堂入りという、「能力はいいのに実装がまずかった」パターンなイメージがありますね。
あとまあ、「マナから召喚する時だけ違うコストが要求される」っていうのも直感的でないかも。
直接的な子孫は、前述の通りマナ召喚系能力全般。「他の生物にマナ召喚権を与える」あるいは「出したくなるようなやつがマナ召喚を持っている」という方面で自然文明の定番になっていますね。
この能力自体はすぐに消えましたが、長い目で見れば大成功だったと言えるんじゃないでしょうか。
W・ソウルの第二能力が、リベンジ・チャンス。なんでお前らだけ二つあるんだよ。
「相手ターンの終わりに、相手が固有の条件を満たしていれば無料で手札から召喚できる」という形ですね。
……はい。お察しの通り、そんなんキーワード化せんでいいやろシリーズです。
「相手の有利に対抗する」というデザインはわかりやすいんですが、あまりにもそれぞれの条件に差がありすぎて能力としての統一感は全くありません。そもそも5種しか存在しませんし。
何より効果が相手依存すぎて、役に立たないときは本当に役に立たないのもネックです。デザインも苦労しただろうなあ。
遠い子孫と言えるのが、侵略ZEROや《 流星のガイアッシュ・カイザー 》等。
時代の変化であらゆるデッキが踏み倒しを扱うようになったことで、相手依存という前提があってもなお活躍できるくらいになってしまったのはちょっと皮肉なもんですね。
闇文明のB・ソウルの能力となるのが、ノー・チョイス。何で闇だけソウル2つあるんだよと思うかもしれませんが、背景ストーリー的には文明内で内部分裂したとかなんとか。
「手札0枚のプレイヤーがいると強化される」みたいな感じの能力ですね。
闇文明特有のハンデス、あるいは後先考えない攻撃的な展開でどちらかの手札をゼロにせよ……という感じなんですが。
実運用的には「どんなにハンデスを頑張っても相手にターンを返すかブレイクするとオフになる」「こちらの手札を減らすとそれはそれでジリ貧」という二重苦でが待っているのが悲しいですね。
そもそもこの能力持ってるカード4枚しかないんですよね。なんならB・ソウル持ちそのものが全然枚数がないので戦略の全体像も立たないし、「ノー・チョイスデッキ」を組むのは相当困難だったと言えるでしょう。
直系の子孫としては、こちらの手札が1枚以下になると発動するG・G・Gが該当。カードの傾向そのものを全て攻撃的に傾けることで、「後先考えない攻め」に利益を与えるというデザインに成功しています。どっちつかずになっていたノー・チョイスの反省を活かした良能力ですね。
ちなみに、元ネタはおそらくMTGの「暴勇」。こちらの手札がない時に強化される能力なのですが、相手ターンに動いて手札を無くせるゲーム性の都合上見た目よりは使いやすいです。
K・ソウルとW・ソウルを併せ持つカードが持つのが、仁義。
「自分の他のクリーチャーがマナゾーンやバトルゾーンから離れた時に誘発する」効果です。
一見へんてこな条件ですが、これは同じソウルのマーシャル・タッチとマナ爆誕の両方で誘発させるのを前提としています。ソウルで寄せてると勝手に誘発してくれるわけですね。
実質「能力サポート能力」でありながら、一応単体でも仕事をするという面白い調整なのですが……。
これもまた、4枚しか刷られてないんですよね。しかも、複数回誘発させて嬉しいようなやつは《 爆双ブルカノ・フドウ 》くらい。
ソウルという狭いくくりの中で、それらが重なったところというさらに狭いくくりの固有能力……ということで、そもそも数を作れなかったんでしょうね。両方ともシナジーさせるために、誘発条件も歪んでますし。
このあたりに、「ソウル」という概念のちぐはぐさが伺えますね。
長かった紹介記事のラストを飾るのが、H・ソウルとM・ソウルが融合して生まれたフリーズ。
先に言っておくと、北白河個人としては「作られるべきではなかった」とすら思っているキーワード能力です。ぶっちゃけ嫌いなキーワード能力を挙げるとしたら絶対に一位か二位になると思います。
せっかくなので、正式テキスト全文いっときますか。「このクリーチャーが相手プレイヤーを攻撃してブロックされなかった時、バトルゾーンにある相手のクリーチャーを1体選び、タップしてもよい。そのクリーチャーは、次の相手のターンのはじめにアンタップされない。」
見てくださいよこのクッソ醜いテキスト!
今なお使い続けられる「起きないタップ」という汎用的な効果に「それ攻撃誘発でいいだろ」シリーズの最後の生き残りみたいな誘発条件をくっつけてキーワード能力化した結果、二度とこの「起きないタップ」そのものに名前を付けられなくなっちゃったんですよ!
しかも「フリーズ」っていう名前がこの「起きないタップ」のイメージに合ってるのも最悪。目の前に最高のネーミングと効果があるのに、最初の実装がカスだったせいで二度と使えないのもったいなすぎるだろ!
あと、例によってこれ持ってるカード4枚しかないし!M・ソウル要素も特にないし!もう全部ダメです。
これは完全に後知恵なんですが、おそらく正解は「フリーズ」をキーワード処理にすること。これが定着していれば、今でいう「プリン効果」とかにもちゃんとした名前がついてたんじゃないですかね。
「キーワード処理」の概念がこの時代にあれば、こんなことには……はい。
……とまあ長々とやってきましたが、こういう失敗能力や微妙な能力の積み重ねがあって現代デュエマの遊びやすいキーワード能力があるのは忘れてはいけません。
具体的には、「能力を無計画に出し過ぎると全部コケる」という学びがソウル関連からは得られたんじゃないかな……って。
ちなみに嫌いな能力のもう一個は「ハンティング」です
というわけで、《 アクア・ドッペル 》でした。
前段の最後で言及したように、現代デュエマでは覚醒編のような「キーワード能力の粗製乱造」は減っていますね。
なんだかんだ言われてる十王篇でも、「それぞれのキーワードを活かしたデッキ」は全部ちゃんと組めるように作られてますし。
これはおそらく、開発部内での「これはキーワードにしてプッシュした方がいい」「これはしないほうがいい」というラインの見極めが上手くなった結果なんだと思います。
「キーワード」という開発ツールの使い方が上手くなった果てにどんなカードがあるのかを知りたくて、今もデュエマをやっている節は……ちょっとだけあります。
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それでは、次の記事で。北白河でした。