ますばんばん流 1枚のカードから考えるデッキ構築《八俣大蛇》編

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ますばんばん流 1枚のカードから考えるデッキ構築《八俣大蛇》編

目次

ごあいさつ

はじめましての人ははじめまして。そうじゃない人もこんにちは。ますばんばんと申すものです。前回に引き続き2度目の投稿となります。前回が【60列車水晶タランチュラ】の紹介として個別のカードやデッキ内の動きを紹介していく記事だったのに対し、今回は、「ますばんばん流 1枚のカードから考えるデッキ構築 《八俣大蛇》編」と題して、具体的に《八俣大蛇》を軸にしたデッキを例にとって、1枚のカードを軸にデッキを考える際の思考法をみなさんと共有していける記事にできたらと思います。

① 軸にしたいカードの特徴を掴む

1枚のカードを軸に構築を考えるにあたり、まず必要なのは
「軸にするカードの特徴を掴む」ということです。

そもそもの話、軸にしたくなるカードには相応の魅力があります。
言い換えるのなら、「このカードを使いたい」と思うには相応の理由があると思うんです。
たとえば、「効果が派手」「決まったら相手を驚かせられそう」「イラストがかわいい」「自分の思い出のカード」とかそんな具合に。
そのようなカードを軸にしてデッキを考えるには、
カードのことを知ることが必要不可欠です。

たとえば、今回私が軸に据えたのはこのカード

八俣大蛇

【 スピリットモンスター 】 
星 7 / 炎 / ドラゴン族 / 攻2600 / 守3100 

このカードは特殊召喚できない。召喚・リバースしたターンのエンドフェイズに持ち主の手札に戻る。このカードが相手プレイヤーにダメージを与えた場合、手札が5枚になるまでデッキからカードをドローする。 

出典:遊戯王OCG カードデータベース

《八俣大蛇》です。このカードが相手に戦闘ダメージを与えた場合、自分は手札が5枚になるようにドローできます。もう一度言います。5枚になるまでドローです。2枚ドローの《強欲な壺》が禁止のこの時代。(最大)5枚ドローに魅力を感じない人が果たして存在するでしょうか、いや存在しません。(反語表現)

ですがこのカード、派手で魅力的な効果と引き換えに
とんでもない扱いにくさを抱えています。

少し話はそれますが《ラーの翼神竜》というカードがあります。原作ではバトルシティ編のラスボスであるマリクの切り札で、幾度となく墓地から《死者蘇生》でよみがえり、フェニックスモードと化して遊戯や城之内を苦しめてきました。そんな《ラーの翼神竜》ですが、原作終了後しばらくして、《オベリスクの巨神兵》に次ぎ、2体目の「三幻神」としてOCG化を果たします。

ラーの翼神竜

【効果モンスター 】
星10/神属性/幻神獣族/攻 ?/守 ?

このカードは特殊召喚できない。このカードを通常召喚する場合、3体をリリースして召喚しなければならない。①:このカードの召喚は無効化されない。②:このカードの召喚成功時には、このカード以外の魔法・罠・モンスターの効果は発動できない。③:このカードが召喚に成功した時、100LPになるようにLPを払って発動できる。このカードの攻撃力・守備力は払った数値分アップする。④:1000LPを払い、フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを破壊する。

出典:遊戯王OCG カードデータベース

「このカードは特殊召喚できない」

この一文のせいで、《ラーの翼神竜》はあまりにも扱いにくいガッカリカードとして遊戯王OCGの歴史に名を残すことになりました。(ほかにも理由はあるけどね)

話を戻します。かつて神と呼ばれたカードがガッカリカードとして落胆されるようになるほどのデメリット。
それが「このカードは特殊召喚できない」です。

ひるがえって《八俣大蛇》を見てみましょう。「このカードは特殊召喚できない」って書かれてますね。スピリットモンスターである性質上、避けては通れない、しかしあまりに重すぎるデメリットです。(「霊魂鳥」など一部例外アリ。)困りましたね。

特殊召喚できない以上、《八俣大蛇》を場に出すには通常召喚するしかありません。しかし彼のレベルは7。見ての通りの最上級モンスターです。リリース要員が2体必要です。さらにはスピリットモンスターの共通効果で「召喚・リバースしたターンのエンドフェイズに持ち主の手札に戻る」というこれまた重いデメリットを抱えています。つまり継続的に効果を使うには、毎ターン召喚権を余らせつつ2体のモンスターを並べる必要があります。困りましたね。(再掲)

さらに、ドロー効果を通すには相手に戦闘ダメージを与える必要があります。つまり、相手の場に高打点モンスターや守備表示モンスターなど、《八俣大蛇》が殴ってもダメージが通らないモンスターしかいない場合、ドロー効果が使えません。困りましたね。(再々掲)

もっと言うと、「手札が5枚になるようにドローする」という効果の都合上、
手札にモンスターがダブついてしまった場合、
十分に手札を減らせないままバトルフェイズに入らざるを得ず、
せっかく攻撃を通しても1枚しかドローできない、なんてこともあり得ます。
ですが、そうなることを防ごうとモンスターの枚数を減らすと、今度はリリース確保がままならなくなります。
困りましたね。(再々々掲)

ここまでの話をまとめると、《八俣大蛇》というカードには、①最大で5枚ドローができる②特殊召喚できない③通常召喚してもエンド時に手札に帰ってくる④効果を通すには戦闘を介す必要がある⑤デッキにモンスターが多いと効果を活かしにくいという特徴があるということが見えてきました。①が大きなメリット。②~⑤は残念ながら今のところデメリットです。

このように、
軸にするカードの特徴をしっかり掴むことで
どのようにデッキを組めばいいのかの方向性が定まってきます。


今回の場合は
「毎ターン安定してリリースと召喚権を確保しつつ、デッキ内のモンスターは最小限に、さらには戦闘で相手にダメージを通しやすくする工夫が必要。」
という方向性が見えてきました。(ちょっと課題が多すぎる気もするけどね)

次以降の章では、《八俣大蛇》の話に限らず、軸にするカードを活かして勝つにはどうすればよいのか、という視点で構築について考えていきます。

② 軸のカードを活かす

②-① デッキから手札、墓地に移動させること 

「遊戯王OCG」というカードゲームでは、
基本的にはカードは手札もしくは墓地から使用されます。
なので当然、メインデッキに存在する「軸のカード」を活かすには、
まずはデッキから手札か墓地に移動させる必要があるということになります。
(デッキから直接場に出てくる《/バスター》モンスターなど例外はあります。)
エクストラデッキに軸となるカードが存在する場合も、
「軸となるカードを呼び出すために必要なカード」は
必ずメインデッキに存在するので、
そういったカードを使用するためにも避けては通れない課題です。

《八俣大蛇》を例に見てみましょう。「特殊召喚できない」制約上、墓地からの蘇生は不可能です。よって場に出すためにはまず手札に引き込む必要がありますが、スピリットモンスターには万能サーチカードがあります。

荒魂

【 スピリットモンスター 】 
星 4 / 闇 / 悪魔族 / 攻800 / 守1800 

このカードは特殊召喚できない。
召喚・リバースしたターンのエンドフェイズ時に持ち主の手札に戻る。
このカードが召喚・リバースした時、
デッキから「荒魂」以外のスピリットモンスター1体を手札に加える事ができる。 

出典:遊戯王OCG カードデータベース

《荒魂》は、召喚権を使うという難点はありますが《八俣大蛇》をサーチすることができるカードです。《八俣大蛇》《荒魂》を最大枚数積んでも、合計6枚とまだ少々不安は残りますが 、軸のカードを手札に加えられるようになりました。《荒魂》はスピリットモンスターならなんでもサーチできるカードで、そのうえ「エンドフェイズに手札に戻る」という性質上、使いまわしが容易なので、《八俣大蛇》以外にもなにか有用なカードがサーチできそうです。

軸となるカードを手札や墓地に移動させる方法としては
「名称カテゴリ」「種族」「属性」「レベル」「攻守」などに注目し、
なるべく扱いやすく、範囲が広いものを選ぶようにすると、
後述する
「軸のカードを場に出すこと」や、
「軸のカードで出来ること」をサポートしやすくなります。

具体的には、たとえば《フェンリル》を軸に据えたデッキを考える際には、

フェンリル

【 効果モンスター 】 
星 4 / 水 / 獣族 / 攻1400 / 守1200 

このカードは通常召喚できない。自分の墓地の水属性モンスター2体をゲームから除外して特殊召喚する。このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊した場合、次の相手ターンのドローフェイズをスキップする。

出典:遊戯王OCG カードデータベース

《クリッター》をサーチカードとして採用することで、《フェンリル》自身の他にも、墓地を肥やして《フェンリル》の特殊召喚をサポートできる《ジェネクス・ウンディーネ》《スクリーチ》《フェンリル》による相手モンスターの戦闘破壊をサポートできる《ラッコアラ》《EMヒックリカエル》、など、広い範囲のカードをサーチできるようになり、戦略に幅を出すことができます。

また、墓地から容易に特殊召喚できる闇属性モンスター(例:《機巧蛇-叢雲遠呂智》)を主軸に据えるなら、

機巧蛇-叢雲遠呂智

【 効果モンスター 】 
星 8 / 闇 / 機械族 / 攻2450 / 守2450 

このカード名の①②の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。①:このカードが手札・墓地に存在する場合、自分のデッキの上からカード8枚を裏側表示で除外して発動できる。このカードを特殊召喚する。この効果は相手ターンでも発動できる。②:自分のEXデッキからカード3枚を裏側表示で除外し、フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを破壊する。 

出典:遊戯王OCG カードデータベース

《終末の騎士》《ダーク・グレファー》を採用することで、《機巧蛇-叢雲遠呂智》の他にも、《ネクロ・ガードナー》《彼岸の悪鬼 ファーファレル》など、防御や巻き返しに使えるカードを能動的に墓地に送れるようになります。

当たり前と言ってしまえば当たり前のことかもしれませんが、デッキ構築において、上記の例の《クリッター》《終末の騎士》のように、「1枚のカードに複数の役割を持たせる」ということは個人的にはとても重要だと考えています。このあたりはまた後述しますね。

②-② 軸のカードを場に出すこと

さて、軸である《八俣大蛇》をデッキから手札に移動させられるようになりました。次は場に出す方法を考えなければなりません。

《荒魂》は、自身を出すために召喚権を使ってしまうため、《八俣大蛇》のリリース素材になることは難しいです。

ここは大人しく、リリース確保のプロフェッショナルと言っても過言ではない《天帝従騎イデア》《冥帝従騎エイドス》をはじめとする《帝王》サポートの力を借りることにしました。

天帝従騎イデア

【 効果モンスター 】 
星 1 / 光 / 戦士族 / 攻800 / 守1000 

「天帝従騎イデア」の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。
デッキから「天帝従騎イデア」以外の攻撃力800/守備力1000のモンスター1体を守備表示で特殊召喚する。
このターン、自分はエクストラデッキからモンスターを特殊召喚できない。
②:このカードが墓地へ送られた場合、除外されている自分の「帝王」魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。
そのカードを手札に加える。 

出典:遊戯王OCG カードデータベース

冥帝従騎エイドス

【 効果モンスター 】 
星 2 / 闇 / 魔法使い族 / 攻800 / 守1000 

「冥帝従騎エイドス」の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動する。
このターン、自分は通常召喚に加えて1度だけ、自分メインフェイズにアドバンス召喚できる。
②:墓地のこのカードを除外し、「冥帝従騎エイドス」以外の自分の墓地の攻撃力800/守備力1000のモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。
このターン、自分はエクストラデッキからモンスターを特殊召喚できない。 

出典:遊戯王OCG カードデータベース

《帝王》サポートには、現代遊戯王最強クラスのドローソースである《汎神の帝王》も含まれています。これによって、《八俣大蛇》《荒魂》をデッキから引き込む手段も増えました。

その他にも、《帝王の烈旋》によって、相手の場のモンスターをリリースしたり、《真源の帝王》で、コストが続く限り墓地から半永久的に湧き続けるリリース要員を調達することができるようになりました。

ですが、リリース要員となるカードがこれだけではいささか不安が残ります。また、《荒魂》を出したターン中に召喚権を追加して《八俣大蛇》を出せるギミックも欲しいところです。そのため、召喚権を増やしながらリリースを確保できる《音響戦士ギータス》《音響戦士マイクス》の2枚を採用しました。

音響戦士ギータス

【 ペンデュラムモンスター 】 
星 3 / 風 / 機械族 / 攻1500 / 守100 

【Pスケール:青7/赤7】
「音響戦士ギータス」のP効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):手札を1枚捨てて発動できる。
デッキから「音響戦士ギータス」以外の「音響戦士」モンスター1体を特殊召喚する。
【モンスター効果】
(1):このカードが召喚に成功した時、自分の墓地の「音響戦士」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。 

出典:遊戯王OCG カードデータベース

音響戦士マイクス

【 ペンデュラムモンスター 】 
星 5 / 風 / 機械族 / 攻2300 / 守1100 

【P効果 青1/赤1】
①:もう片方の自分のPゾーンに「音響戦士」カードが存在しない場合、このカードのPスケールは4になる。
②:自分エンドフェイズに、除外されている自分の「音響戦士」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを手札に加える。
【モンスター効果】
①:このカードは自分フィールドの音響カウンターを3つ取り除き、手札から特殊召喚できる。
②:このカードが召喚・特殊召喚に成功したターン、自分は通常召喚に加えて1度だけ、自分メインフェイズにモンスター1体を召喚できる。

出典:遊戯王OCG カードデータベース

この2枚を使用することで、手札に《荒魂》《音響戦士ギータス》+コスト1枚があれば、《荒魂》通常召喚、《八俣大蛇》をサーチ→《音響戦士ギータス》P効果、コストを切って《音響戦士マイクス》を特殊召喚→《音響戦士マイクス》で増えた召喚権を行使して《荒魂》《音響戦士マイクス》をリリースして《八俣大蛇》をアドバンス召喚という動きができるようになりました。また、先述した通り《八俣大蛇》は、手札が少なければ少ないほどドローできる枚数が増えるため、(攻撃が通るなら)ギータスのコストすらメリットに転化できます。

ここまでは「特殊召喚できない」というあまりに重い制約を課された《八俣大蛇》についてのお話でしたが、サーチがしやすく、手札からの特殊召喚が可能なモンスターを主軸とするなら、《クロノグラフ・マジシャン》を使用したり、《鎖龍蛇-スカルデット》を使用するのもオススメです。両者とも「軸のモンスターを場に出す」以上の役割がこなせるカードパワーがあり、エクストラデッキから容易にアクセスが可能なため、(《クロノグラフ・マジシャン》《ヘビーメタルフォーゼ・エレクトラム》からの間接的なサーチ→効果の起動まで可能)必要最小限の動きで軸となるカードを展開できます。

変わったところでは、軸となるカードが水属性なら《海晶乙女》をデッキのエンジンに据えることで、《海晶乙女シーホース》(2)の効果での特殊召喚を狙うのもいいでしょう。

海晶乙女シーホース

【 効果モンスター 】 
星 3 / 水 / サイバース族 / 攻1400 / 守1000 

このカード名の、①の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、②の効果は1ターンに1度しか使用できない。①:このカードは「マリンセス」リンクモンスターのリンク先となる自分フィールドに手札から特殊召喚できる。②:墓地のこのカードを除外して発動できる。手札から水属性モンスター1体を「マリンセス」リンクモンスターのリンク先となる自分フィールドに特殊召喚する。この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できない。 

出典:遊戯王OCG カードデータベース

また、墓地からの特殊召喚を狙うなら《死者蘇生》《星遺物を継ぐもの》《戦線復帰》などの汎用カードはもちろんのこと、デッキ内のモンスターの種族、属性が偏っているなら、《黒魔術のヴェール》《デーモンの呼び声》《エアーズロック・サンライズ》《星遺物の守護竜》などのカテゴリ名や種族、属性を活かした蘇生カードを使うのも効果的です。

②-③ 軸のカードでできること

《八俣大蛇》を場に出すところまではなんとなく形になってきました。次は「《八俣大蛇》の効果を通して5枚ドローしたら何ができるのか」を考えていきましょう。

何が言いたいかというと手札を減らしながら《八俣大蛇》の攻撃を通して5枚のカードを引いても、その5枚のカードが「《八俣大蛇》を展開させるまで」のサポートしかできないカード群だったら、《八俣大蛇》を出す、いわゆる「攻め」の動きに偏りすぎていて、あんまり強くなさそうじゃないですか?……というお話です。

では「《八俣大蛇》で引き込むことで強さを発揮するカード」とは何でしょうか?結論から言うと「妨害札」です。

《八俣大蛇》の効果で、豊富な妨害札と次以降の展開札をバランスよく引き込むことで、相手の動きを阻害しつつ次の自分ターンに備える……という動きであれば、攻守のバランスが取れていて強そうです。

ですが実際問題、毎回都合よく
妨害札と展開札をバランスよく引けるわけではありません
ではどんなカードを採用すればこの問題が少しでも良い方向に向かうのか?
例によって少し行を空けておくので考えてみてください。
ヒントは、②-①項の、「1枚のカードに複数の役割を持たせる」という言葉です。











バージェストマ・ディノミスクス

【 通常罠 】 

①:フィールドの表側表示のカード1枚を対象として発動できる。
手札を1枚捨て、対象のカードを除外する。
②:罠カードが発動した時、その発動にチェーンしてこの効果を墓地で発動できる。
このカードは通常モンスター(水族・水・星2・攻1200/守0)となり、モンスターゾーンに特殊召喚する(罠カードとしては扱わない)。
この効果で特殊召喚したこのカードはモンスターの効果を受けず、フィールドから離れた場合に除外される。 

出典:遊戯王OCG カードデータベース

私が想定していた答えは
「《バージェストマ》カードのような、展開の補助もできる妨害札」
でした。
「私が想定していた」となんとも含みのある言い方ですが、
この言い方には、「展開の補助もできる妨害札」以外にも
きっと正解がある、というニュアンスを込めました。

話を元に戻します。《バージェストマ》カードは、それぞれが固有の効果に加えて「罠カードの発動にチェーンして墓地から自己再生する」という共通効果を持っています。つまり、「妨害札として使った後はリリース要員にできる」という特性を持っているのです。特にこの《バージェストマ・ディノミスクス》は、幅広いカードに触り、比較的対処しにくい「除外」という除去方法で手札でダブついたモンスターを墓地に落としつつ相手の場の高打点モンスターを処理しながら使い終わったら展開札にもできると、破格の強さです。

①項の最後に触れた、
「八俣大蛇の攻撃を通すためのカードが必要」
「モンスターは少なくしたいけどリリース要員の確保が必要」
という2つの課題を一気に解決してくれました。

このように、

「軸のカードを通した後で何をするのか」
「通した後の動きをサポートするカードは、ほかに何ができるのか」


という目線でカードを選び、複数の役割を持たせることで
無駄なく動けるデッキを作ることができます。

ただ、「軸となるカードの効果を一度でも通せたらほぼ勝ち」といったデッキや
勝ち筋を特殊勝利一本に絞っている【活路エクゾ】のようなデッキに
採用するカードは、
「やりたい動きを通す」という一つの役割に
一点集中させたほうが強かったりするのでそこは臨機応変に。


③ 軸以外のカード同士を噛み合わせる

長々と書いてきましたが正直この記事はここからが本番です。

軸である《八俣大蛇》のサポート体制はほぼ整いました。《荒魂》《八俣大蛇》を引き込み、《帝王》と《音響戦士》でアドバンス召喚をサポートし、《バージェストマ》で効果を使った後の詰めを行う。

ですが、この動きは軸である《八俣大蛇》を中心に回っているだけで、軸以外のカード同士の噛み合いが全く考えられていません。これでは、《八俣大蛇》が引けなかった場合、あるいは《八俣大蛇》を展開した後、まだまだリソースが残っている場合も、デッキ全体の力を十分に活かしきることができませんね。

ではどうすれば軸以外のカード同士が噛み合うのでしょうか?
そのヒントはまたまた
「カードの特徴を掴む」
「複数の役割を持つカードを採用する」
というところに隠れていました。

例えばこちらの2枚のカードをご覧ください。

真源の帝王

【 永続罠 】 

「真源の帝王」の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:1ターンに1度、自分の墓地の「帝王」魔法・罠カード2枚を対象として発動できる。
そのカードをデッキに加えてシャッフルする。
その後、自分はデッキから1枚ドローする。
②:このカードが墓地に存在する場合、このカード以外の自分の墓地の「帝王」魔法・罠カード1枚を除外して発動できる。
このカードは通常モンスター(天使族・光・星5・攻1000/守2400)となり、モンスターゾーンに守備表示で特殊召喚する(罠カードとしては扱わない)。

出典:遊戯王OCG カードデータベース

音響戦士マイクス

【 ペンデュラムモンスター 】 
星 5 / 風 / 機械族 / 攻2300 / 守1100 

【P効果 青1/赤1】
①:もう片方の自分のPゾーンに「音響戦士」カードが存在しない場合、このカードのPスケールは4になる。
②:自分エンドフェイズに、除外されている自分の「音響戦士」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを手札に加える。
【モンスター効果】
①:このカードは自分フィールドの音響カウンターを3つ取り除き、手札から特殊召喚できる。
②:このカードが召喚・特殊召喚に成功したターン、自分は通常召喚に加えて1度だけ、自分メインフェイズにモンスター1体を召喚できる。

出典:遊戯王OCG カードデータベース

こちらの2枚のカードには、共通して「レベル5」という特徴があります。
同じレベルのモンスターが2体……来るぞ遊馬!!

No.61 ヴォルカザウルス

【 エクシーズモンスター 】 
星 5 / 炎 / 恐竜族 / 攻2500 / 守1000 

レベル5モンスター×2
1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。選択した相手モンスターを破壊し、破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。この効果を発動するターン、このカードは相手プレイヤーに直接攻撃できない。 

出典:遊戯王OCG カードデータベース

《真源の帝王》《音響戦士マイクス》《No.61 ヴォルカザウルス》を含む強力なランク5のモンスターがエクシーズ召喚できます。エクシーズモンスターは当然エクストラデッキのモンスターなので、メインデッキの動きを阻害せずに《帝王》と《音響戦士》の間にシナジーを生み出せます。

ところで今回のデッキは軸となるカードが、
メインデッキのモンスターなので
必然的にエクストラデッキの枠が余り気味になります。
そこでこんなカードを採用してみました。

リプロドクス

【 リンクモンスター 】 
星 2 / 地 / 恐竜族 / 攻800 / 

モンスター2体
このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。①:以下の効果から1つを選択して発動できる。
●種族を1つ宣言して発動できる。このカードのリンク先の全ての表側表示モンスターの種族はターン終了時まで宣言した種族になる。
●属性を1つ宣言して発動できる。このカードのリンク先の全ての表側表示モンスターの属性はターン終了時まで宣言した属性になる。 
【LINK-2:上/下】 

出典:遊戯王OCG カードデータベース

イマイチ影が薄い遺伝子組み換え恐竜こと《リプロドクス》くんです。リンク先のモンスターの種族か属性を書き換えることができます。

サイバー・ドラゴン・ノヴァ

【 エクシーズモンスター 】 
星 5 / 光 / 機械族 / 攻2100 / 守1600 

機械族レベル5モンスター×2
1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。
自分の墓地の「サイバー・ドラゴン」1体を選択して特殊召喚する。
また、1ターンに1度、自分の手札・フィールド上の
「サイバー・ドラゴン」1体を除外して発動できる。
このカードの攻撃力はエンドフェイズ時まで、2100ポイントアップする。
この効果は相手ターンでも発動できる。
このカードが相手の効果によって墓地へ送られた場合、
機械族の融合モンスター1体をエクストラデッキから特殊召喚できる。 

出典:遊戯王OCG カードデータベース

サイバー・ドラゴン・インフィニティ

【 エクシーズモンスター 】 
星 6 / 光 / 機械族 / 攻2100 / 守1600 

機械族・光属性レベル6モンスター×3
「サイバー・ドラゴン・インフィニティ」は1ターンに1度、自分フィールドの「サイバー・ドラゴン・ノヴァ」の上に重ねてX召喚する事もできる。
①:このカードの攻撃力は、このカードのX素材の数×200アップする。
②:1ターンに1度、フィールドの表側攻撃表示モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターをこのカードの下に重ねてX素材とする。
③:1ターンに1度、カードの効果が発動した時、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。
その発動を無効にし破壊する。

出典:遊戯王OCG カードデータベース

セイクリッド・プレアデス

【 エクシーズモンスター 】 
星 5 / 光 / 戦士族 / 攻2500 / 守1500 

光属性レベル5モンスター×2
1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除く事で、フィールド上に存在するカード1枚を選択して持ち主の手札に戻す。この効果は相手ターンでも発動する事ができる。 

出典:遊戯王OCG カードデータベース

《真源の帝王》の種族を「機械族」に変更することで《サイバー・ドラゴン・ノヴァ》《サイバー・ドラゴン・インフィニティ》に繋がり、《音響戦士マイクス》の属性を「光属性」に変更することで《セイクリッド・プレアデス》をエクシーズ召喚できるようになりました。

これによって、《真源の帝王》《音響戦士マイクス》は、《八俣大蛇》のリリース要員という役割の他に強力なランク5エクシーズモンスターの素材という2つ目の役割を手に入れました。1枚のカードに複数の役割を持たせることで軸以外のカードが噛み合ったのがおわかりいただけたかと思います。

また、次は《帝王》と《バージェストマ》についても見てみましょう。こちらも同じように《冥帝従騎エイドス》と《バージェストマ》が、モンスターとしては共にレベル2という共通点があるためランク2のエクシーズモンスターに繋げられます。先ほどの《リプロドクス》を使用し、《冥帝従騎エイドス》を「水族」に書き換えることで極悪非道の最強エクシーズモンスター《餅カエル》にもアクセスできます。

餅カエル

【 エクシーズモンスター 】 
星 2 / 水 / 水族 / 攻2200 / 守0 

水族レベル2モンスター×2
①:自分・相手のスタンバイフェイズにこのカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。
デッキから「ガエル」モンスター1体を特殊召喚する。
②:1ターンに1度、相手がモンスターの効果・魔法・罠カードを発動した時、自分の手札・フィールドの水族モンスター1体を墓地へ送って発動できる。
その発動を無効にし破壊する。その後、破壊したカードを自分フィールドにセットできる。
③:このカードが墓地へ送られた場合、自分の墓地の水属性モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを手札に加える。 

出典:遊戯王OCG カードデータベース

残念ながら今回は(1)の効果は活かせませんでしたが、
それでも種類を問わずに相手のカードを1回止めて
ついでのように奪い去る動きはあまりにも強いです。

また、《帝王》と《バージェストマ》の結びつきを強める、
こんなカードもあります。

トゥルース・リインフォース

【 通常罠 】 

自分のデッキからレベル2以下の戦士族モンスター1体を特殊召喚する。このカードを発動するターン、自分はバトルフェイズを行う事ができない。 

出典:遊戯王OCG カードデータベース

相手エンドフェイズに、《トゥルース・リインフォース》を発動。そこにチェーンして墓地の《バージェストマ》を自己再生。《トゥルース・リインフォース》効果で《天帝従騎イデア》を特殊召喚《天帝従騎イデア》効果で《冥帝従騎エイドス》特殊召喚と、連鎖的にランク2の素材をそろえることができます。

《トゥルース・リインフォース》は、単純に《帝王》ギミックのパーツとみても十分な強さを持っており、《バージェストマ》とのコンボを決められなくても腐りにくいため非常に扱いやすく、デッキパワーを下げることなく爆発力を増強できます。

最後に《荒魂》と《音響戦士》についてですが、今回採用した《音響戦士》が2枚ともペンデュラムモンスターであることに注目しました。《荒魂》はスピリットモンスター全般をサーチできるのでペンデュラムと相性のいいスピリットモンスターがいれば1枚挿しておくことで《荒魂》と《音響戦士》の仲を取り持ってくれそうですですが「特殊召喚できない」制約を共通効果として持っているスピリットモンスターの中にペンデュラムと相性がいいカードなんて……

スモウ魂 YOKO-ZUNA

【 ペンデュラムモンスター 】 
星 5 / 風 / 戦士族 / 攻2400 / 守1000 

①:このカードが召喚に成功した時に発動できる。自分のPゾーンのカードと同じ縦列の相手のモンスターを全て墓地へ送る。②:このカードが召喚・リバースしたターンのエンドフェイズに発動する。このカードを持ち主の手札に戻す。 
【P効果 青1/赤1】
①:フィールドにモンスターがP召喚された場合に発動する。Pゾーンのこのカードを持ち主の手札に戻す。 

出典:遊戯王OCG カードデータベース

「どすこい」

いました。ペンデュラムかつスピリットの《スモウ魂 YOKO-ZUNA》です。このデッキは《音響戦士マイクス》がスケールに残ることが多かったのでスケール1の《スモウ魂 YOKO-ZUNA》と組み合わせることでリリース要員として使われた《音響戦士マイクス》をペンデュラム召喚で再利用できるようになりました。

このように、軸以外のカード同士を噛み合わせることで
デッキ全体のパワーを底上げしつつ、
動きに柔軟性を持たせることができます。
今回は《帝王》や《音響戦士》、《バージェストマ》といった
拡張性の高いテーマを採用したため
すんなりと噛み合ってくれました。

また、今回使用した《リプロドクス》のほか、《落消しのパズロミノ》《ミス・ケープ・バーバ》といったエクストラデッキから簡単に出せて戦略に幅を持たせられるカードは、構築の際に頭の片隅に入れておくと思わぬところで役に立ってくれることもあります。

落消しのパズロミノ

【 リンクモンスター 】 
星 2 / 光 / 魔法使い族 / 攻1300 / 

レベルが異なるモンスター2体
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。①:このカードが既にモンスターゾーンに存在する状態で、このカードのリンク先にモンスターが表側表示で特殊召喚された場合、1~8までの任意のレベルを宣言して発動できる。そのモンスターはターン終了時まで宣言したレベルになる。②:自分と相手のフィールドから、同じレベルのモンスターを1体ずつ対象として発動できる。そのモンスターを破壊する。 

【LINK-2:下/右】 

出典:遊戯王OCG カードデータベース

ミス・ケープ・バーバ

【 リンクモンスター 】 
星 2 / 闇 / 悪魔族 / 攻200 / 

モンスター2体
このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。①:自分・相手のバトルフェイズ開始時に、このカードまたはこのカードのリンク先のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターをエンドフェイズまで除外する。 

【LINK-2:左/下】 

出典:遊戯王OCG カードデータベース

④ 完成

以上の過程を踏まえて
完成したデッキレシピがこちらになります。

メイン 40モンスター《八俣大蛇》 3《ダイナレスラー・パンクラトプス》 1《スモウ魂 YOKO-ZUNA》 1《音響戦士マイクス》 2《音響戦士ギータス》 3《荒魂》 3《天帝従騎イデア》 3《冥帝従騎エイドス》 2魔法《汎神の帝王》 3《帝王の烈旋》 3《簡易融合》 2《おろかな副葬》 2《ワン・フォー・ワン》 1 罠《真源の帝王》 2《バージェストマ・ディノミスクス》 3《バージェストマ・ハルキゲニア》 1《バージェストマ・オレノイデス》 1《トゥルース・リインフォース》 2《鳳翼の爆風》 1《貪欲な瓶》 1エクストラデッキ《サイバー・ドラゴン・インフィニティ》 1《サイバー・ドラゴン・ノヴァ》 1《迅雷の騎士ガイアドラグーン》 1《No.61 ヴォルカザウルス》 1《セイクリッド・プレアデス》 1《シャーク・フォートレス》 1《聖光の宣告者》 1《バージェストマ・オパビニア》 1《餅カエル》 1《重装機甲 パンツァードラゴン》 1《サウザンド・アイズ・サクリファイス》 1《ヴァレルロード・ドラゴン》 1《リプロドクス》 1《リンクリボー》 1

ここからは書いていなかったカードについて軽く補足

《ダイナレスラー・パンクラトプス》は、後攻スタートが多いこのデッキでは特殊召喚しやすく、《八俣大蛇》のリリース要員としても使える強力なフリーチェーン除去として1枚だけ採用しました。

《簡易融合》は、エクストラデッキに余裕があり、《音響戦士ギータス》と同時に引いてくることで《重装機甲 パンツァードラゴン》《音響戦士マイクス》《サイバー・ドラゴン・インフィニティ》まで繋げられるうえ、《サウザンド・アイズ・サクリファイス》を出すことで相手モンスターを除去しながらリリースの確保ができるため、2枚ほど採用しました。

《貪欲な壺》は、《音響戦士ギータス》《天帝従騎イデア》などデッキ内からリソースを引っ張ってくるカードが多いので、そういったカードのサポートをしつつ《バージェストマ》のトリガーになれますが初手に引いてもあまりうれしくないカードなので1枚だけ採用しました。

《八俣大蛇》を軸に、他のカード同士も有機的に絡み合ってあらゆる方法でお互いをサポートし、極力無駄なく動けるので、個人的にはかなりお気に入りなデッキの一つです。

ひとつだけ追記するなら、
このデッキは、実際には
ひな型を作ってから
友人たちに調整に付き合ってもらって
現在の形に落ち着いたものです。
机上論で満足せずに
実際に戦うことで、
気づかなかった問題点や
カード同士の思わぬ噛み合いに気づくことができます。

おわりに

いかがでしたでしょうか。
前回の記事が相当長くなってしまったため
今回はあっさりめにするつもりでしたが
思考の過程を詳しく書いているうちに
気づいたら前回より長くなってしまいました。
「1枚のカードを軸にする構築」については
自分の中にあるものは
だいたい書ききれたと思います。

次回は気になるカードの個別解説記事でも書きますかね
(それだったら短めにまとめられそうですし)

ではではまたどこかでお会いしましょう。


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