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エッセイ:宇宙ガ、マルゴト、ヤッテキタ、アノ日
このサイトを訪れるようなデュエリスト諸君ならば、遊戯王にはKONAMIのシューティングゲーム「グラディウス」をモチーフとした超時空戦闘機カードが何種類か存在することを知っているだろう。《超時空戦闘機ビック・バイパー》や《ロードブリティッシュ》、《ジェイドナイト》に《ファルシオンβ》……知っている人はこの名前を聞くだけでわくわくするかもしれない。
その中でも私が一際好きなのは、記事のタイトルで挙げている《ビクトリー・バイパーXX03》だ。この機体は本家グラディウスでは未だに出番はなく、その存在が設定集で語られるのみで実際に活躍しているのは遊戯王の中だけである。
《ビクトリー・バイパーXX03》
【 効果モンスター 】
星 4 / 光 / 機械族 / 攻1200 / 守1000
このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊した時、次の効果から1つを選択して発動する。●このカードの攻撃力は400ポイントアップする。●フィールド上に表側表示で存在する魔法または罠カード1枚を破壊する。●自分フィールド上に常にこのカードと同じ種族・属性・レベル・攻撃力・守備力の「オプショントークン」を1体特殊召喚する。
私がこのカードに出会ったいきさつは少し変わっていた。
あれは確かカードショップで光り物のカードが束になっているのをペラペラめくりながら「巨大戦艦」のパーツを探していた時である。ちょうど《巨大戦艦 ブラスター・キャノン・コア》が出てしばらくした頃で、他の者よりやや流行遅れで「巨大戦艦」に惹かれていたのだった。
「巨大戦艦」は、知る人ぞ知る「グラディウス」の敵の機体。ビック・バイパーらを圧倒的な量の弾、レーザー、体当たり等で圧倒しその行く手を遮ってくる宿命のライバルともいえる存在である。つまりは全く逆の立ち位置のカードを探していたわけなのだが、その時に例の《ビクトリー・バイパーXX03》に出会ったのだから面白い。
平成生まれの私は本来であればシューティングゲームとはあまり縁のない年代だった。だが、私の父親はまさにその「世代」の人物。何故か家にあった「グラディウス」「沙羅曼蛇」といった名作シューティングゲームに触れて育った私は、おぼろげながらも「超時空戦闘機」と称される彼ら(?)との再会を果たしたのである(もっともゲームに登場していないビクトリー・バイパーとは初対面だったがその雰囲気は既知の物だった)。
《巨大戦艦 ブラスター・キャノン・コア》
【 効果モンスター 】
星 9 / 地 / 機械族 / 攻2500 / 守3000
このカード名の①の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできない。①:相手フィールドのモンスターの数が自分フィールドのモンスターより多い場合、このカードは手札から特殊召喚できる。②:このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動する。このカードにカウンターを3つ置く。③:このカードは戦闘では破壊されない。④:このカードが戦闘を行ったダメージステップ終了時に発動する。このカードのカウンターを1つ取り除く。取り除けない場合このカードを破壊する。
もし、今この記事を読んでいるあなたの家にビクトリー・バイパーがいるならば、そのカードをもう一度見てみてほしい。できることなら型番が「EOJ-JP011」か「EE04-JP191」のものがいい。何故ならばその二つの型だとイラストが光っているからだ。最近のトーナメントパックにも再録はされたがそちらは光っていない。
巨大戦艦の雄姿を追っていたはずの私は一目見てその美しさに心を奪われてしまった。カードの性能を見れば今の時代から遅れているのは言うまでもないが、そんなことは今は関係ない。とにかくカッコよかった。自分の中で眠っていった子供の心が「これが好きだ」と叫んでいるようだった。
小惑星の中を駆ける一機の超時空戦闘機。
機体と小隕石以外はこざっぱりとしているが、それでもこのカードの「宇宙感」は凄まじい。私の持っているものはほどよくスーパーレアで光っており、最近のアルティメットレアのようなごてごてとしたものはないがそれがいい。ただ、シンプルにカッコいい。気づけば私はそのカードに心酔してしまっていたのだ。
そうなれば、自然とこのような気持ちにもなる。
「こいつで勝ってみたい」と。
ステータスを確認したら分かる通り、このカードの基礎的な攻撃力・守備力は現代の遊戯王と比べたら明らかに後れを取っている。それをカバーするだけの面白い効果はついているが、効果発動のトリガーが戦闘破壊なのもまた前時代的だ。モンスター・魔法による効果破壊が飛び交う今の遊戯王ではとてもではないが活用は難しいだろう。
あるカードの魅力に酔うことは、さながら恋をするようでもある。
恋に落ちた者が好きな相手の苦しみを傍で分かち合おうとするのと同じで、好きなカードが不遇な扱いを受けていたりストレージでひっそり眠っていたりすると居ても立ってもいられなくなる。
障害が大きければ大きいほど恋の炎も燃え上がるように、ハードルが高いほど、多いほど、そのカードを活躍させたいという気持ちが溢れて収まりがつかなくなってしまう。だから私は《ビクトリー・バイパーXX03》でデッキを組んだ。
カードに惹かれた者の宿命として、これを操ることで得られるだろう勝利の美酒を味わうために。
コラム:超時空戦闘機への想い
先程話題にした《巨大戦艦 ブラスター・キャノン・コア》は「巨大戦艦」の新規としてもてはやされたが、それと同パックでやってきた新規カードがある。その名も《ビック・バイパー T301》。かつて「グラディウスⅤ」で登場した主人公機が宇宙の闇を切り裂いて私たちの前に現れたのだった。
《ビック・バイパー T301》
【 効果モンスター 】
星 4 / 光 / 機械族 / 攻1200 / 守800
このカード名の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。①:このカードが手札・墓地に存在し、自分の表側表示モンスターが相手モンスターと戦闘を行う攻撃宣言時に発動できる。このカードを特殊召喚する。この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合に除外される。②:このカード以外の自分フィールドの機械族・光属性モンスターの攻撃力は1200アップする。
フィールドの機械族・光属性モンスターを、つまりは「超時空戦闘機」の攻撃力を1200上昇させる永続効果。しかもフィールドに出る手段は自分のモンスターで攻撃するだけで、手札からでも墓地からでも出てこられる。
運命の出会いよりも前から巨大戦艦と対立する超時空戦闘機のことは知っていた。だが、《安全地帯》など優秀なカードがある中でも、このカードが出るまでは彼らのデッキは「あまりに非現実的なデッキ」と呼ばざるを得ない状況だった。
だからこそ、このカードが登場した時に私は驚いた。もしかしたらいつの日か「超時空戦闘機」VS「巨大戦艦」が実現するかもしれない。ゲーム内でぶつかり合った彼らが今度は遊戯王のフィールドで火花を散らす、そんな光景が現実のものになることを夢見たのだ。
あまりに甘くて、脆い夢だった。
少なくとも、私がビクトリー・バイパーと出会うまでは――
デッキレシピ:それは一筋の流星の如く
【メインデッキ】モンスターカード・3 《ビクトリー・バイパーXX03》・3 《ビック・バイパー T301》・3 《ジェイドナイト》・3 《召喚僧サモンプリースト》・3 《オネスト》・3 《ブリキンギョ》・2 《灰流うらら》・3 《増殖するG》
魔法・罠カード・2 《パワーカプセル》・3 《団結の力》・3 《サイコ・ブレイド》・2 《リミッター解除》・1 《おろかな埋葬》・1 《死者蘇生》・2 《地獄の暴走召喚》・2 《ツインツイスター》・1 《安全地帯》
【エクストラデッキ】・1 《ギアギガントX》・1 《No.39 希望皇ホープ》・1 《SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング》・1 《No.41 泥睡魔獣バグースカ》・1 《ガガガガンマン》・1 《鳥銃士カステル》・1 《励輝士 ヴェルズビュート》・1 《ダイガスタ・エメラル》・1 《No.27 弩級戦艦-ドレッドノイド》・1 《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》・1 《No.81 超弩級砲塔列車スペリオル・ドーラ》・1 《超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベ》・1 《ハイパースター》・1 《アンダークロックテイカー》・1 《トロイメア・フェニックス》
このカードが使われるデッキを調べた者の中には「あ、なんだか前に見たような気がする」と思われる方もいるだろうが、様々なデッキレシピを参考にしながら調整を重ねた結果ここに落ち着いたものとして了承してほしい。
戦略としては、《ビック・バイパー T301》《団結の力》《サイコ・ブレイド》《リミッター解除》などで超強化した《ビクトリー・バイパーXX03》で高火力の攻撃を食らわせ、自身の効果で特殊召喚したトークンでさらなる追撃を狙う、というもの。その性質上から条件が整った瞬間からワンショットキルを狙うことになり、このカードを使うデッキにおいては非常にありふれた構築である。
超時空戦闘機は攻撃力の強化カードは頂けたものの、自身に耐性を付与してくれるようなカードは他を探すしかない。だが現状飛び切り相性のいいカードというのはないため、フィールドに維持することはあまり考えず短期決戦を狙うのが筋となる。
だが、それ以外の部分はそこそこに自由が利く。例えばそれは《ジェイドナイト》や《安全地帯》といったカードたちだ。
冒頭でも名前だけが出てきた《ジェイドナイト》は、戦闘破壊された場合にデッキから光属性・機械族――「超時空戦闘機」モンスターを手札に加えることができる。
《ジェイドナイト》
【 効果モンスター 】
星 4 / 光 / 機械族 / 攻1000 / 守1800
このカードが自分フィールド上に表側攻撃表示で存在する限り、自分フィールド上に表側表示で存在する攻撃力1200以下の機械族モンスターは罠カードの効果では破壊されない。フィールド上に表側表示で存在するこのカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分のデッキから光属性・機械族のレベル4モンスター1体を手札に加える事ができる。
デッキからサーチすることに関しては《クリッター》を選ぶことも考えられるが、エースを「超時空戦闘機」とするならばこのカードの方が優先されることだろう。こちらを採用するうえでは《ギアギガントX》のエクシーズ素材になれる、などもっともらしい理由もあるが、一番はやはりこのカード自身も「超時空戦闘機」である点に尽きる。
ゲーム「グラディウス外伝」に登場したこの機体は元々は支援用として開発されていた過去を持つ。破壊時にデッキからサーチする効果、1800と高めの守備力はこの設定によるものだろう。《ジェイドナイト》を入れることでメインデッキの中がより「グラディウス」の世界観に近づき、より一層ワクワクしてしまう。
そしてこちらの《安全地帯》。ゲーム「グラディウスⅡ」のあの名場面が元になった最高のイラストだ。
《安全地帯》
【 永続罠 】
フィールド上に表側攻撃表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。選択したモンスターは相手の効果の対象にならず、戦闘及び相手の効果では破壊されない。また、選択したモンスターは相手プレイヤーに直接攻撃する事はできない。このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。そのモンスターがフィールド上から離れた時このカードを破壊する。
《巨大戦艦 クリスタル・コア》の真正面に陣取るビック・バイパー。ゲーム内ではこの位置にいれば敵の攻撃が当たらない、すなわち「安全地帯」とされている。ビック・バイパーの雄姿を描いた美麗なイラストも勿論、効果も非常に汎用性の高いため罠カードとしてある程度の地位を獲得していた。
最近の遊戯王では罠カードは不遇な扱いをされていた。カードを伏せても《ツインツイスター》や《コズミック・サイクロン》、さらに言えば《ハーピィの羽根箒》や《トロイメア・フェニックス》で簡単に除去されてしまう。だからこそ近頃は手札から発動できたり強力な効果を持っていたりするわけなのだが、それほどに昔の罠カードは通用しなくなっている。
もしかしたらこのカードよりも「よいカード」は探せばそれなりに出てくるだろうし、なんならそちらを採用した方がいいかもしれない。しかし、モンスターではないにしろこのカードも「超時空戦闘機」の仲間だ。わかりやすいサポート効果はないが、イラストがそうであることや、《ビクトリー・バイパーXX03》と相性がいいことからこのカードも1枚採用させてもらった。
――何はともあれ、このデッキは想像以上に「遊び」の領域がある。
それで勝利の可能性を追求するのも良いし、浪漫を求めるのも悪くはない。
ストラテジー:ワンショットキルでゲームクリアを目指せ
ストラテジー、すなわち戦略に関して言えることは多くない。というのもこの「ビクトリー・バイパー」デッキはワンショットキルを行うデッキの中では非常に分かりやすい方法を使う。「打点上げて殴って勝つ」だ。
《パワーカプセル》
【 通常魔法 】
自分フィールド上に表側表示で存在する「ビクトリー・バイパー XX03」1体を選択して発動する。「ビクトリー・バイパー XX03」の効果から1つを選択し、このカードの効果として適用する。
もし選べるならば後攻でスタートしよう。最初は手札やフィールドに《ビクトリー・バイパーXX03》を出すことを考える。ここで役立つのが先程の《ジェイドナイト》だったり、汎用機械族エクシーズモンスターの《ギアギガントX》、汎用レベル4モンスター《召喚僧サモンプリースト》だったりする。
そうやって場に出した後は、ビクトリー・バイパーを《団結の力》《サイコ・ブレイド》といった装備魔法で強化する。もし手札に《パワーカプセル》があるならば、打点不足の時は攻撃力上昇、足りそうなら《オプショントークン》を呼び出すとよい。《パワーカプセル》は魔法カードでもあるため、初手があまり良くなければサモンプリーストのコストにしても問題ない。
メインフェイズでやれることが終わったならばバトルフェイズに突入する。目標は相手フィールド上のモンスター。攻撃力を上げておいた《ビクトリー・バイパーXX03》で攻撃を行い、《ビック・バイパー T301》《オネスト》《リミッター解除》とできること「全て」を行ってビクトリー・バイパーの力を文字通り限界まで引き出しにかかる。
モンスターを戦闘破壊できたなら《ビクトリー・バイパーXX03》の効果を発動だ。ここで《オプショントークン》を呼び出し、超火力を得たトークンで追撃をかける。他にモンスターがいればそれらも攻撃を行い、相手のライフポイントを削り切って勝利を収めよう。
――万が一、動けそうにないなら《ジェイドナイト》をセットしたりエクシーズモンスター等でその場を凌いだりして相手の動きを封じよう。このデッキは攻撃のタイミングが全てのカギを握る。
ファンレター:または銀河級のラブコール
カードゲーマーならば一目見た瞬間にそのカードに惚れ込んでしまう「運命の出会い」を経験したことはないだろうか。イラストの可愛さや美しさで魅了してくるアイドル的カードは勿論、カッコよさや大きな浪漫で惹きつけるヒロイックなカード、人によって嵌るものは様々で、それが個性の一つにもなる。
《ビクトリー・バイパーXX03》は、あの日から私にとっての特別になった。勿論、このカード以外にも好きなカードは沢山ある。《フィッシュボーグ-プランター》や《荒野の女戦士》、《真炎の爆発》に《月光舞豹姫》。そのどれもが私に遊戯王の楽しさを教えてくれたし、デッキ作りで「凝る」ことの喜びを知るきっかけをくれた。
不幸なことに、私の周りには遊戯王を嗜む仲間がほとんどいない。だから好きになって比較的日が浅いビクトリー・バイパーとはまだそこまでの時を共有できていないが、これからも私のエースカードの一つとして活躍してくれることだろう。そうして私は「超時空戦闘機」の強化を待ちわびるファンの一人となり、いつか実現してほしい「超時空戦闘機」VS「巨大戦艦」の対決を夢見ながらデュエリストとしての日々を送ることになる。
この記事はある意味ではビクトリー・バイパーへのファンレターだ。
長い時を過ごすことになるだろう相棒への最初の手紙である。