はじめに
長かった王来篇第2弾〜クロニクルデッキまでの環境も、そろそろ終わりが近づき、いよいよ今月末には王来篇第3弾「禁断龍VS禁断竜」のリリースが控えています。
王来篇第2弾「禁時王の凶来」リリース時には環境デッキが丸ごと入れ替わるほどの絶大な変化があったわけですから、第3弾にも期待が高まるというものです。
一方の環境はというと、8月初頭のクロニクルデッキ発売から、新商品はつい先日発売されたキングマスタースタートデッキ「ハイドのディスペクターN・EXT」のみ。
1ヶ月の間プールの追加がなかったため、出揃うデッキは煮詰まりに煮詰まっています。
環境終盤戦、「結論」に限りなく近いオリジナル環境の「今」を解説していきます!
目次
「最強」の定義
本記事では最強デッキを「デュエル・マスターズ競技環境での相対的な強さ」と定義します。
Tier1とは「環境内に不利なデッキが少ない、あるいは相性差を覆しやすいデッキであり、大会で持ち込みが一番多いと予想される対策必須のデッキ」です。
Tier2とは「Tier1やTier2のデッキにある程度勝てる見込みがあり、大会でも毎回一定数いると予想されるデッキ」です。
Tier3とは「弱点が多い、デッキパワーが低いなどの理由で使用者は少ないものの、特定のメタゲームでは活躍することができるデッキ」です。
先月からの環境の変化
今回はカードプール追加がなかったので、環境の変化は控えめ。
既存のデッキ内でのパワーバランスの変化としては、【ラッカ天門】が以前よりも少なくなったことが挙げられるでしょうか。
受けデッキとしては最高峰の性能を誇る【ラッカ天門】ですが、【ラッカ鬼羅.Star】や《奇天烈 シャッフ》入りの【シータRX閃】のような、「メタクリ+呪文ロック」の体勢を作って詰めてくるデッキを非常に苦手としています。
役割対象であった【赤緑ボルシャック】も、《モモキング -旅丸-》を採用していたり、そもそもの基盤が《龍騎旋竜ボルシャック・バルガ》+《地封龍 ギャイア》のパッケージを採用した構築に移行していたりと、簡単には勝たせてくれない相手へと変貌。
また、コンボデッキの筆頭である【ジョー星ゼロルピア】も相変わらず活躍中で、総じて立ち位置が悪化したデッキだと言えるでしょう。
このような経緯で受けデッキが減少した結果、【赤単我我我ブランド】はその地位を盤石なものとしています。
新たなデッキとして活躍が見られるのは【デアリガズ墓地ソース】と【ゼーロワンショット】。
アドバンス環境記事の最後に触れた【デアリガズ墓地ソース】は、環境内の墓地メタ減少が追い風。
4ターン目に《暴走龍 5000GT》が着地すれば機能停止するデッキは少なくなく、《ブラキオ龍樹》や《大樹王 ギガンディダノス》と並べることで、多くの相手を詰ませられます。
【ゼーロワンショット】はもっとも苦手とするメタカード、《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》の減少によって再興したデッキだと考えられます。
メタクリーチャーの速度が低下したこともあって、4ターン目にEXwinが発生したり、そこまで行かずとも大量マナ+ブロッカーの多面展開を作れるデッキコンセプトの強さが際立つようになりました。
メタを乗り越えること自体は可能なデッキでしたが、もちろん苦手なカードが少ないに越したことはありません。
どちらも特定のメタに弱いデッキなので環境との噛み合いに左右される部分が大きく、【ラッカ天門】の減少と合わせて、現代デュエル・マスターズにおけるメタカードの重要性がよくわかる環境推移だったと言えるでしょう。
Tier1
【シータRX閃】Tier1
どんな相手にも引けを取らない変幻自在の攻めと高出力のブン回りの両立で、環境初期から今日までオリジナル環境の王者で在り続けるビートダウンデッキです。
長く活躍しているデッキということで、構築の基盤もほぼ固まっていますが、《フェアリーの火の子祭》を《フェアリー・Re:ライフ》と差し替えた構築が一時期流行していたことが一番のトピックでしょうか。
《モモキング -旅丸-》や《ツネキン☆ゲームス》、《奇天烈 シャッフ》といった、コスト4のクリーチャーが多くなった関係で、やや単色枚数の厳しい部分はあるものの2→4のマナカーブを視野に入れられることがメリットとみなされるようになりました。
また、【赤単我我我ブランド】の《我我我ガイアール・ブランド》に対してはG・ストライクがかなり頼れる受け札になってくれるのも嬉しいポイント。
懸念となるハンドキープについても、1ターン目から3ターン目まで連続でタップインしつつ3ターン目に《フェアリー・Re:ライフ》を唱えれば、5マナまでに必要な単色が1枚に収まるのである程度はケアが可能。
現在はまた《フェアリーの火の子祭》が主流に戻っていますが、上記のようなメリットがあることは覚えておきたいですね。
高速ビートダウン、マッハファイターによる盤面制圧、豊富な呪文ロック手段。多角的な攻め手を有した【シータRX閃】を攻略しきるデッキは、ついぞ登場しないまま環境が終わろうとしています。
果たして、次環境での立ち位置やいかに。
【赤単我我我ブランド】Tier1
環境最速=環境最強!
苦手としていた【ラッカ天門】が《モモキング -旅丸-》や《奇天烈 シャッフ》を採用したデッキの流行で数を減らし、いよいよもってその貫通力に磨きがかかっています。
《我我我ガイアール・ブランド》を絡めた3ターンキルは【赤単我我我ブランド】の存在を明確に意識していないデッキを、完全に消し炭にしてしまうほどの高火力。
《“罰怒”ブランド》との合計8ブランドで再現性も非常に高く、《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》や《こたつむり》などのメタクリが安易な逆転を許しません。
【シータRX閃】以上のTier1だと言うプレイヤーも少なくない、デュエマ史上でも最高峰に強力な速攻デッキです。
リソース要員には「英雄戦略パーフェクト20」で登場した《カンゴク入道》を採用するのが現在のトレンドですが、次弾ではG・ストライクを持っており受けとしても役割を持てる《斬斬人形コダマンマ GS》が収録される予定です。
一長一短あるため確実に採用されるとは言えませんが、戦力の増強が予想されるだけでも十分に脅威です。今後も引き続き活躍が見られるのではないでしょうか。
Tier2
【ラッカ鬼羅.Star】Tier2
メタビートの最前線、【ラッカ鬼羅.Star】。
《奇石 ミクセル》を無理なく採用できるのは現環境における明確な利点。
《“龍装”チュリス》や《我我我ガイアール・ブランド》などの、コスト軽減系の能力を持ったクリーチャーに対する貴重な牽制手段です。
最近のトレンドは《正義の煌き オーリリア》の採用。《奇天烈 シャッフ》と合わせることで同時に複数の呪文を牽制できるのが強みとなっています。
ただし、明確な役割対象であった【ラッカ天門】がやや落ち目であるため、今後も定番化するかは悩ましいところ。
【5cコントロール】などには引き続き有力な呪文メタとして活躍してくれることでしょう。
王来篇第3弾「禁断龍VS禁断竜」の事前情報において、《エヴォ・ルピア》の進化先として有力そうなスター進化クリーチャーが複数公開されています。
これからの強化にも期待できる、有望なデッキタイプだと言えるでしょう。
【5cコントロール】Tier2
受けデッキということで圧倒的な母数1位とはいかないものの、引き続き強力なデッキタイプとして活躍中の【5cコントロール】。
《ヘブンズ・ゲート》をフィーチャーした構築も見られますが、なんだかんだと原点回帰の《ドラゴンズ・サイン》軸が今なお主流です。
今回のサンプルリストでは採用されていないものの、《DG-パルテノン 〜龍の創り出される地〜》を採用した構築も一定数見受けられます。
《DG-パルテノン 〜龍の創り出される地〜》の役割対象は、もっぱら【ジョー星ゼロルピア】。
アドバンスと同じように6マナまで伸ばしてから《希望のジョー星》と《ゼロ・ルピア》を同時に揃える構築にシフトしつつあるため、スカされやすいカード除去よりも《「大蛇」の鬼 ジャドク丸》の通らないフィールドが優先されています。
また、しばらくガードの下がっていた墓地コンボが増加傾向にあるため、《とこしえの超人》や《闘争類拳嘩目 ステゴロ・カイザー/お清めシャラップ》の採用数が増えているのも現在の環境の特徴です。
さまざまな選択肢を取り入れながら堅実に結果を残し続けているアーキタイプですが、ブレイクスルーに乏しいのが悩みどころ。
王来篇第3弾で新しい風は吹き込むか。
【ジョー星ゼロルピア】Tier2
アドバンス環境最強のコンボデッキ……ですがオリジナルではややおとなしめ。
あらゆる方面からカード除去が飛んでくるようになった現環境。
オリジナル環境においても、アドバンス環境と同じくマナを伸ばすカードを多く積み、6マナまで伸ばしてから2枚同時に揃える構築がメジャーになりつつあります。
ただし、《解罪 ジェ霊ニー》の抜けた穴は小さいものではありません。
アドバンスと同じように4マナ時に妨害を行うカードとして《解体人形ジェニー》を採用した構築も見受けられましが、妨害とリソース確保を同時に行えない《解体人形ジェニー》では、全く同じ役割は期待できません。
4マナ時の妨害が弱い分、最速《希望のジョー星》着地率が低い欠点が目立ってしまってしまうのが、オリジナルとアドバンスでのTierの差に表れていると考えてよいでしょう。
そのほかのトピックとして、《DG-パルテノン 〜龍の創り出される地〜》を採用するデッキがちらほら見られるようになったため、メタカード除去として《闇鎧亜 ジャック・アルカディアス》を採用した構築が登場しています。
ささやかながら高速ビートダウンには受けとして機能しつつ、《「大蛇」の鬼 ジャドク丸》と違ってタップされているメタクリーチャーも破壊できるのが魅力。
慣れたプレイヤーは当然のように《「大蛇」の鬼 ジャドク丸》ケアとしてメタクリーチャーで攻撃してタップ状態にしてくるので、そこを処理できるのは強みですね。
一方で、素のコストがやや重い点と多色である点は無視できないデメリット。あまり枚数を採用しすぎると序盤の動きが滞ってしまいます。
また、《「大蛇」の鬼 ジャドク丸》は盾落ちを回避しつつ手札を広げられるカードとしても役割を持っています。完全に差し替えるのではなく、あくまで1〜2枚を《闇鎧亜 ジャック・アルカディアス》に割くのがベターでしょう。
【赤緑ボルシャック】Tier2
クロニクルデッキからの刺客、絶賛活躍中!
過剰ブーストから繰り出される《ボルシャック英雄譚》はまさに必殺の一撃。
一見すれば呪文メタや踏み倒しメタが弱点に見えるものの、《ボルシャック・決闘・ドラゴン》や《ボルシャック・スーパーヒーロー/超英雄タイム》で簡単に突破できるため、簡単には止まりません。
オリジナルでは《ボルシャック・モモキングNEX》型と《龍騎旋竜ボルシャック・バルガ》型の2パターンが存在しますが、現環境では《地封龍 ギャイア》が明確な着地点となるため、噛み合わせの良い《龍騎旋竜ボルシャック・バルガ》型が主流です。
攻め手には何ら不安のないハイパワーなデッキですが、構築の大部分をボルシャックに寄せる必要があるため、どうしても防御力に難を抱えているのが最大の弱点。
環境トップ2種が高速ビートダウンであることも災いし、強力なデッキではあるものの今ひとつ立ち位置に恵まれていないアーキタイプです。
Tier3
【ラッカ天門】Tier3
環境ナンバー1の防御性能がウリの【ラッカ天門】。
速攻デッキの最大手である【赤単我我我ブランド】には有利なものの、《モモキング -旅丸-》や《奇天烈 シャッフ》の流行が大きな痛手となっています。
これら2体はどちらもコスト4かつパワー4000以上なので、《超英雄タイム》や《メッチャ映えタタキ》では対処できません。
というわけで、メタクリ除去としてパワー5000までの範囲を見られる《“乱振”舞神 G・W・D》が採用されるケースが増加しています。
とはいえ、環境の最大母数であることも多い【シータRX閃】はあの手この手で【ラッカ天門】の展開を妨害可能。
天敵とも言える【ラッカ鬼羅.Star】が復権しつつあることもあって、環境上の立ち位置はあまりよくないと言えるでしょう。
【デアリガズ墓地ソース】Tier3
8月半ばに登場し、一定の地位を築いた新基軸の【墓地ソース】。
《暴走龍 5000GT》や《大魔王 ウラギリダムス》など、墓地の枚数に応じてコストが軽くなるクリーチャーを高速で着地させます。
出した後は、それらのクリーチャーをそのまま維持するもよし、各種「フシギバース」のタネにするもよし。
《暴走龍 5000GT》、《ブラキオ龍樹》、《大樹王 ギガンディダノス》と、このデッキに用意された大型獣はどれも強烈に相手の行動を制限するカードです。
ビートダウンプランを取らず、盤面をコントロールすることで勝利を目指す点も、これまでの墓地ソースとは一風変わっています。
これら大型フィニッシャー着地のための高速墓地肥やしに欠かせない存在が《鬼札アバクと鬼札王国》。
3t目に召喚して墓地+6枚。続く4t目に墓地から召喚して墓地+5枚。
3マナ払った段階でもう1マナ残っているはずなので、3ターン目から、《鬼札アバクと鬼札王国》で稼いだ墓地だけで《暴走龍 5000GT》が着地する、というコンボです。
ここしばらく墓地コンボのガードが下がっていたため、そのような環境では活躍が期待できますが、最近は徐々に《お清めシャラップ》を目にする機会が増えています。
ある程度までは《終焉の開闢》などでリソースを貯め込んで耐えられるものの、やはりキーパーツである《鬼札アバクと鬼札王国》を全くプレイしないのは難しく、しかしプレイに合わせて《鬼札アバクと鬼札王国》ごと墓地が山札に返されてしまうと、リソース面での苦戦は避けられません。
現環境ではTier3ですが、他のデッキにはない独自の詰ませ性能を持っているため、今後の環境次第ではランクアップもありうるデッキです。
【ゼーロワンショット】Tier3
今回の「隠れた注目デッキ」枠。
現在は緊急事態宣言の影響でほとんどの地域でCSの開催が止まっていますが、例外的に開催されているのがリモートCS。
そのリモートCSにおいて連日の入賞を果たし、リアルのCSでも少しずつ使われ始めているのが、この【ゼーロワンショット】です。
バトルゾーンと手札に闇のカードを3枚ずつ揃えて《闇王ゼーロ》で墓地に叩き込み、蘇生した《砕慄接続 グレイトフル・ベン》で爆発的にマナブースト。
マナから《Disアイ・チョイス》を召喚して《天地命動 バラギアラ》のクリーチャー面をプレイし、マナを全て起き上がらせて更なるアドバンテージをとっていくデッキです。
黎明期に開発されていた水闇ベースの構築ではなく、少し後ろに寄せたアナカラーの構築が主流。
最速3ターンでコンボが決まる理不尽さはありませんが、リソースを失わないカードが増えている分メタを対処する余力があり、《絶望と反魂と滅殺の決断》などの強烈な妨害札も持ち合わせています。
デッキの基盤自体は王来篇第2弾「禁時王の凶来」リリース直後から存在したものの、やはり致命的な《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》や《ガル・ラガンザーク》がはびこる環境では活躍しづらいデッキでした。
今環境で主流《モモキング -旅丸-》も苦手なカードではありますが、こちらが先手であれば4ターン目には間に合わず、仮に出されたとしてもある程度テンポロスを抑えて対処できます。
一度動き出してしまえば決着までいかずとも莫大なマナと《Disジルコン》でリソースを稼ぎやすく、コントロールデッキには有利。
ビートダウンデッキに対しても《罪無 ターボ兆》や《Disジルコン》が無限に墓地から蘇るブロッカーとして機能してくれるほか、受け札もある程度の枚数確保できるため、極端な不利がつきにくくなっています。
《闇王ゼーロ》で手札から捨てたカードをそのまま蘇生できるので、墓地メタの影響もほとんど受けません。
最大の弱点である踏み倒しメタさえどうにかできるのであれば……その活躍も納得のいくものだと言えるでしょう。
環境のまとめと今後の展望
6月から約3ヶ月間、最前線を走り続けたキングマスターが2人。
《アルカディアス・モモキング》と《我我我ガイアール・ブランド》はまさしく「環境を定義した」フィニッシャーです。
《アルカディアス・モモキング》は相手を簡単に詰ませるロック能力が対策必須の能力として環境を形作りました。
彼の呪文ロックをすり抜ける光文明の受け札の評価が大幅に上がったりと、周囲のデッキのカードチョイスに大きな影響を及ぼした1枚です。
《我我我ガイアール・ブランド》はトリガーへの耐性とシンプルな打点の高さで「環境最速」を定義しました。
非常に対策されやすい【赤単速攻】が数ヶ月にわたって環境トップに居座り続けるのは過去に例のないことであり、まさに《我我我ガイアール・ブランド》のカードパワーによるものだと言えるでしょう。
様々なアーキタイプが活躍し、混沌を極めた今環境。終わりに近づいてみれば、速度と線の太さに優れるビートダウンが環境を支配していたシーズンでした。
では次弾の環境はどうか、少しだけ考えてみたいと思います。
王来篇第3弾「禁断龍VS禁断竜」の目玉ギミックとして、「侵略」を持つレクスターズが続々と公開されています。
おそらくこの記事を読まれている方はよくお分かりかと思いますが、「侵略」というギミックは非常に攻撃的。コストも全体的に軽めであることから、レクスターズの主戦術は相変わらずビートダウンに偏ることが予想されます。
いくつか非常に強力な侵略レクスターズも公開されていますので、ひとまずはここから環境がスタートするのではないか? と筆者は予想しています。
一方のディスペクター陣営にはわかりやすい目玉ギミックこそありませんが、「ハイドのディスペクターN・EXT」や公開されている新カードを見るに、ディスタスを用いたササゲール戦術を本格的にプッシュしていこうという意図が伺えます。
今のところは環境で目立った活躍を見せていないササゲールテーマですが、新弾リリースを経てどのように強化されていくのか楽しみですね。
おわりに
というわけで、9月上旬のオリジナル環境について解説いたしました。
使ってみたいデッキは見つかりましたでしょうか?
この記事が皆さんのオリジナル環境に対する理解への一助となれば幸いです。
それでは次回、9月下旬のアドバンス環境解説記事でまたお会いしましょう!