今は昔、アド獲りの翁といふものありけり。
野山にまじりてアドを獲りつつ、よろづのことに使ひけり。
(今となっては昔のことであるが、アド獲りの翁という人がいました。
ショップやイベントを訪れては『プレイヤーの活性化は巡り巡って自分へのアド』と、他人に親切にして過ごしていました。)
さて、このお話は自分よりデュエマに不慣れな相手にアドバイスする時、どう伝えれば誤解やトラブルを避けられるか、そんなヒントとなるお話です。
少しばかり長いですが、お付き合いください。
それでは、はじまりはじまり……
目次
伝わる話し方(1)ごちゃまぜデッキにアドバイス
ある日のことです。
翁が海辺を歩いていると、子供たちがウミガメをいじめていました。デュエマで。
子供A「いえーい!また勝ったー! ウミガメ弱すぎ~」
子供B「ウミガメ涙目w」
子供A「ウミガメ涙目ってライム刻んでんじゃんw」
子供B「コイツもウミガメいつも涙目、泣くのは産卵?カードが散乱」
翁は突然のフリースタイルMCバトルに気を取られていましたが、我に返って止めに入ります。
翁「こらこら少年たち、対戦相手に乱暴なことを言ってはダメじゃよ」
子供たちをたしなめると、翁はウミガメの方に向き直りました。
翁「ウミガメくん、良かったらデッキを見せてくれんかのう?」
ウミガメ「え? いいですけど……」
ウミガメは、翁にデッキを見せました。
《ジョリー・ザ・ジョニー》《魔凰 デ・スザーク》をはじめ、さまざまなカードが入っています。手に入ったカードを詰め込んだのでしょう。
翁はウミガメにデッキを返すと、言いました。
翁「良いカードを持ってるのう。一つだけ教えてもらってもいいかの?」
ウミガメ「え、はい」
翁「キミのデッキの中で、一番の切り札はどれじゃな?」
ウミガメ「ええと……一番を決めるのは難しいけど、《ジョリー・ザ・ジョニー》は初めて当てたマスターカードだから使いたいです。あと《魔凰 デ・スザーク》もカッコ良くて好きです 」
翁「なるほどの、ありがとう。
そうしたら、ワシならこのデッキを《ジョリー・ザ・ジョニー》デッキと、《魔凰 デ・スザーク》デッキの2つに分けてみるんじゃが、どうじゃろ?」
きょとんとするウミガメに、翁は続けます。
翁「たとえば、《ジョリー・ザ・ジョニー》は『ジョーカーズ』が5枚あれば、一番下の『ブロックされず、一撃で勝てる』能力が使えるじゃろ?
だったら、ジョーカーズだらけのデッキの中だと、もっと力を発揮できるはずじゃ。『魔導具』も同じじゃな」
【 クリーチャー 】
種族 ジョーカーズ / 文明 ゼロ / パワー10000 / コスト7
■スピードアタッカー
■マスター・W・ブレイカー(このクリーチャーはシールドを2つブレイクする。このクリーチャーがバトルゾーンに出たターン、各ブレイクの前に、相手のクリーチャーを1体破壊する)
■バトルゾーンまたはマナゾーンに自分のジョーカーズが5枚以上あれば、このクリーチャーはブロックされず、攻撃の後、相手のシールドもクリーチャーもなければ、自分はゲームに勝つ。
ウミガメ「でも、僕あんまりカード持ってなくて……」
翁「そこは無理しないで、お小遣いと相談じゃな。
『ジョーカーズを集めるぞ!』『魔導具を使うぞ!』って決めて、他のカードをお友達と交換しても良いかもしれんの」
翁「ただ、一つだけ。
せっかくの切り札を引けないと悲しいから、切り札を引くカードは優先して集めるといいじゃろうな。ジョーカーズなら《ジョジョジョ・ジョーカーズ》あたりかのう」
ウミガメ「なるほど……やってみます!」
翁の伝え方ポイント①
- 他人のデッキに助言する時は、本人の許可を取るのぢゃ!
- まずは本人のこだわりや思い入れを聞くのぢゃ!
- 抜くカードを伝えるときは、「デッキを分ける」「もしゲットできたら」等の表現を使うと、ネガティブな印象を避けられるぞい!
- 「もし自分だったら」「~してみてもいいかも」と、押し付けがましくない言い回しを意識するのぢゃ!
- ドローやマナブーストなど、基本の重要さを伝えるのが大切ぢゃ!
- 特にごちゃまぜデッキの子は、いきなりガチデッキを目指すよりは『脱・ごちゃまぜ』から段階的にレベルアップしてもらう方が、本人も構築の楽しみを味わえるぞい
- 「手札補充」「マナ増やし」など、分かりやすい表現を心がけるのぢゃ!
伝わる話し方(2)踏み込んだデッキ診断
翁とウミガメのやりとりを見て、子供たちが声を掛けてきました。
子供A「あの……さっきはごめんなさい」
子供B「言いすぎました」
子供A「それで……俺たちのデッキも見てほしいなって」
翁は子供たちに優しく言いました。
翁「相手がいてこそのデュエマだからのう。どれ、それじゃデッキを見せておくれ」
子供たちは笑顔になると、翁に駆け寄りデッキを取り出します。
子供A「YouTubeで見て、《超特Q ダンガンオー》使ってみたいなって思って組んでみたんだ」
子供B「ダンガンズダンダン」
翁「え? これYouTubeとかある世界観なの?」
デュエマがある世界観なのだから、そのツッコミは今さらです。
翁「じゃあさっそくデッキを見てみようかの。キミの場合は、ジョーカーズで揃えてあるみたいじゃな」
子供A「さっきウミガメに言ってた、《ジョジョジョ・ジョーカーズ》も入れてるよ」
子供B「ジョジョジョ」
翁「そうしたら、第二段階かのう。デッキに入っているカードを順番に並べてみるぞい」
そう言うと、翁は筵を敷き、デッキの中のカードを地面に並べ始めました。
筵というのは、わらを編んで作った敷物です。「ムシロ」と読みます。勉強になる記事ですね。
翁「どう並んでいるかわかるかの?」
子供A「ええと、同じカードがまとめてあるのと…」
子供B「マナ順?」
翁「その通り!よく気が付いたのう。マナコストが少ないものから順番に並べてみたんじゃ。ちなみに、『DECK MAKER』でデッキを作ると、自動的にマナ順に並べ替えてくれるぞい。優れモノじゃな」
子供A「露骨に媚びたぞ」
翁「それで、マナ順に並べると何か気が付かないかの?」
子供B「あ!このデッキ、4マナのカードがない!」
子供A「うわ、マジだ気付かなかった!」
翁「こうやって並べないと、意外と気付かないものじゃろ?
これだと、4ターン目にヒマになったり、マナが余ったりして勿体ないからのう。
5マナ以上のカードと入れ替えで、4マナのカードを少し増やしてみるのがオススメじゃ」
ウミガメ「あの、僕、《サイコロプス》なら持ってるから……交換しませんか?」
子供A「マジで!?」
ウミガメ「いいですよ、僕は火文明は使わないので」
子供A「サンキュー! そしたら、俺はゼロ文明のジョーカーズ何か探すわ!」
すっかり意気投合したウミガメと子供を見て、翁は一安心。
すると、手の空いたもう一人の子が質問してきました。
子供B「ねえねえ。他にはなんか、デッキを強くするヒントないの?」
翁「そうじゃな……ちょっと大変かもしれんが、同じカードは4枚ずつ入れるといいのう」
子供B「そうなの?いろんなカードがあった方が強い気もするけど」
翁「その考え方も分かるんじゃが、同じカードが多ければ、狙ったカードを引きやすくなるからの。『引きが悪い』とガッカリするのはイヤじゃろう?」
子供B「4枚入れれば、ちょっとだけ引きを良くできるってことだね!」
翁「うむ、その通り。飲み込みが早いのう」
子供B「へへへー」
翁の伝え方ポイント②
- アドバイスする場合は、マナコスト順に並べて視覚的に伝えるのがベターぢゃ!
- コスト配分や4積みの推奨は、多くのデッキに共通するアドバイスなので優先的に伝えると良いじゃろうな
- デッキの最適解よりは、汎用性の高い考え方を伝えるのが望ましいのう
- 考え方を伝えるときも、一緒に考えるような話し方を心がけるのぢゃ!
- 相手の良い点を褒めたり、アドバイスに付き合ってくれたことにありがとうを伝えたり、前向きなコミュニケーションを意識するのぢゃ!
エピローグ
ウミガメ「いろいろありがとうございました、翁さん」
翁「いやいや、初心者や子供達の成長はデュエマの盛り上がりに繋がって、ワシにもアドじゃからの。例には及ばんよ」
ウミガメ「いえ!せっかくだから僕の実家にいらしてください!」
翁「実家?」
ウミガメ「はい!」
翁「実家《超宮城 コーラリアン》なの!? ガチじゃな!?
ウミガメ「ガチまとめですから!」
完