【GoD:elementCS準決勝】2018年夏、勝負の風向きを変えよ【Great Match of DuelMasters】

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【GoD:elementCS準決勝】2018年夏、勝負の風向きを変えよ【Great Match of DuelMasters】

こんにちは、神結です。

 

古今東西の名勝負を紹介する「Great Match of DuelMasters」、略してGoD。

ありがたいことに多くの反響に加えてプレイヤーの皆様からもありがたい言葉をいただいております。

まぁ比較的今と東に寄っている気はしていますが、そこは私の生息地の都合ということでご容赦ください。

さて、これまでのGoDでは主に公式大会で私が面白いと感じた試合を(ある程度)時系列に沿いながらお伝えしてきました。

今回は少し視点を変えて「私がカバレージを書いた中」で「特に印象深い試合」を取り上げみようと思います。

元々担当さんから「以前書いていただいた『平成名勝負数え歌』みたいな記事書いてくれませんか?」と依頼されて始まった企画です。

あの試合は本当に現地にいた人しか知らないゲームが展開されていてカバレージにも残っていません。

要するに、「隠れた名勝負」というやつです。

であれば、この企画においても世間的にはあまり知られていない名勝負をお伝えすることこそ本懐……みたいな部分があります。

 

そんなわけで、突然ですが今回は時計の針を2018年の夏まで戻しましょう。

第2回elementCS、それが行われたのは超CSⅡが開催されるわずか1週間前のことでした。

 

目次

CSのカバレージを書くということ

さて、今回はelementCSという大会からのカバレージになります。もちろん、公式大会ではありません。

しかしデュエルマスターズという競技が、店舗と提携しながら開催される数々の個人・店舗CSによって成り立っている、ということはこの記事を読んでいる多くの人がご存じでしょう。

elementCSもその内の1つであり、この時は200人以上の参加者が集って大会は行われました。

主催がじゃんけん大会で数々の高額カード、果てには直前の優勝プロモであった《ボルシャック・ドギラゴン》まで提供するなど中々狂ったCSでしたが。

その中で僕はこの日、一日中カバレージを書き続けています。確か、一日で7本くらい? 記事にして8本だったと思います。 

CSは公式の大型大会に比べて選手とスタッフの距離も近く、選手達にも気軽にインタビューが出来る空間です。

プレイヤーたちの考え方や直後に控えた大型大会への抱負(前述したように、超CSⅡの一週間前に開催されています)、そしてどんなデッキが多いのか……などなど、客観的・俯瞰的に観察することが出来ました(だからライターはCS会場へ行くべきなんだよぉ! 行こうな!)。

現状だとコロナ関連でCS中の立ち歩きが禁止されていることも多く、さらには200人を超える参加者を集めることも無理にはなっていますが……。

もしライターを志望する方がいましたら、CSに参加して一日カバレージを書き続けると色々な発見があると思いますし、勉強になる筈です。

 

そしてこの大会は順調に進行していき、試合は準決勝を迎えていました。

 

2018年夏、過渡期の中で

2018年夏は、環境的にはちょうど過渡期でした。

2018年の6月に発売された「逆襲のギャラクシー 卍・獄・殺」には極めて強力なカードが多数収録されていました。

《卍月 ガ・リュザーク 卍/卍・獄・殺》・《“轟轟轟”ブランド》・《龍装艦 チェンジザ/六奇怪の四 ~土を割る逆瀧~》・《キング・ザ・スロットン7/7777777》・《煌メク聖戦 絶十》

などが上げられると思います。

中でも《卍月 ガ・リュザーク 卍》は【黒単デスザーク】に欲しかった最後詰め札としてすぐに採用され、環境で活躍しました。

一方で《“轟轟轟”ブランド》や《龍装艦 チェンジザ》といったカードは少し活躍が遅れました。

ただ前者に関しては単純に環境の問題もあり、後に適応すると【赤単轟轟轟】や【赤白轟轟轟】で大活躍を見せます。

ところが《龍装艦 チェンジザ》の活躍が遅れたのは別の要因でした。

【 ツインパクトカード 】
種族 ドラゴンギルド / ムートピア / 文明 水 / パワー6000 / コスト6

■W・ブレイカー
■このクリーチャーがバトルゾーンに出た時または攻撃する時、カードを2枚引き、その後、自分の手札を1枚捨てる。
■各ターン、コスト5以下の呪文を自分の手札からはじめて捨てた時、その呪文をコストを支払わずに唱えてもよい。

【呪文】
カード名:六奇怪の四 ~土を割る逆瀧~
文明:水
コスト:4マナ

■次の自分のターンのはじめまで、相手は各ターン1度しか、クリーチャーで攻撃もブロックもできない。

誰もが強力なカードであると認めており、また《時の法皇 ミラダンテXII》との相性の良さにも当然気付いていましたが、このカードを活躍させられるデッキとなると、開発は困難だったのです。

それはダンテとチェンジザを組み合わせると必然的に青白になります。ところがチェンジザの6というコストには、流石に緑のカードが要求されます。

こうなると必然的にトリーヴァカラーのデッキになりますが、トリーヴァカラーはビッグマナ系統のデッキこそあれ、ダンテで殴っていくとなるとどういう配分でデッキを組めばいいのが前例が乏しかったのです。

一方7月には【赤青バスター】から《プラチナ・ワルスラS》《勝利のアパッチ・ウララー》といったカードが殿堂になりました。

更に《ゼロの裏技ニヤリー・ゲット》も殿堂したことで、【ガンバトラージョーカーズ】は大幅な弱体化。ジョーカーズも新たな形を模索していくことになりました。

そしてここからの環境の流れは怒濤の展開を見せることになります。

まず待望されていた《龍装艦 チェンジザ》軸のデッキががようやく形となり、【チェンジザダンテ】がCSで台頭するようになりました。

また【ガンバトラージョーカーズ】の後継として形にはなっていた【ジョラゴンジョーカーズ】が、どうも《ガヨウ神》《ポクチンちん》を軸にループをするらしい、という噂が広がり始めます。

一方で殿堂で弱体化した《蒼き団長 ドギラゴン剣》も環境にしがみついており、《タイム3 シド》などの小型クリーチャーを使った【ラッカドギラゴン剣】はまだまだ勝っていました。

というわけで、改めて当時の環境を整理しておきましょう。

環境上位と目されていたのは、弱体化したものの未だ強力な【ドギラゴン剣】、《卍月 ガ・リュザーク 卍》によって完成した【デスザーク】。

更にそこにループするらしいと噂の【ジョラゴンジョーカーズ】と、遂にデッキの形となりつつあった【チェンジザダンテ】。

その後ろには《“轟轟轟”ブランド》を中心としたアグロデッキも控えています。

【赤青バスター】と【ガンバトラージョーカーズ】の二強期、

そして【ジョラゴンジョーカーズ】【赤白轟轟轟】【チェンジザダンテ】【黒単デスザーク】の四強期……そのちょうど間がこの2018年の夏でした。

これらのデッキで果たしてどれが本当に強いのか……それは当のプレイヤーたちもまだよく分かっていませんでした。己が強いと認めたデッキ、可能性を感じたデッキを、プレイヤーたちは触っていきます。

そして準決勝の舞台にやってきたともきはドギラゴン剣を、にょんは《時の法皇 ミラダンテXII》をそれぞれ携えていました。

 

ともき vs にょん、ドギラゴン剣 vs ミラダンテⅫ

ともきは2017年の全国プレイヤーです。

全国大会のインタビューで「この大会での優勝は、あなたにとってどんな意味がありますか?」に「少し調子に乗っても許される理由」と回答するような若さとユニークさを持っていましたが、その実力はホンモノです。

この時、彼が持ってきたデッキは自身で調整した【ラッカバスター】でした。

ともき使用:【ラッカバスター】


世間的には抜けることの多かった《超次元ムシャ・ホール》などを採用し、《“乱振”舞神 G・W・D》などは不採用としています。

そしてこのデッキを手に確かなプレイで手堅く勝利を重ねつつも、準々決勝では「当たったらよほど勝てない」と思われていた【黒単デスザーク】を3キルで粉砕。ここ一番での引きも噛み合わせています。

 

対して、にょんが持ち込んだのは、新進気鋭の【チェンジザダンテ】。

にょん使用:【チェンジザダンテ】


この時のにょんの構築にはサブプランとしての《龍覇 M・A・S》なども採用されていました。

超次元から繰り出された《最終龍理 Q.E.D.+》は強力で、メタリカが敷くブロッカー盤面を、有無を言わさず貫通していきました。様々な可能性が、このデッキにはあったのです。

こうしてドギラゴン剣とミラダンテⅫはロージアNEXTから続く戦いの中で、デッキを変えてなお対決の時を迎えることになったのです。

 

ただ前評判的には【チェンジザダンテ】側が有利なカードですし、私もそう考えていました。

それもその筈。

 なんといっても【チェンジザダンテ】は受けるために生まれたデッキ。

《奇石 ミクセル》が、《Dの牢閣 メメント守神宮》が、《怒流牙 佐助の超人》が、そして《龍装艦 チェンジザ》自身も相手の攻撃を許さず、受け流すカードなのです。

そして一度攻守が逆転してしまうと、《時の法皇 ミラダンテXII》によって制圧されてゲームを終わらせることが出来ます。

【ラッカバスター】側としては早期にドギラゴン剣が走る勝ち筋も難しく、長期戦はリソース勝負に負け、その上で強固な防御陣地を突破しないといけません。

そして準決勝は2本先取のルールでした。「引きが良くてたまたま3キルした」で逃げ切ることも困難です。

 

ですが、ともきはこの要塞のようなデッキに対しても自身の勝利へ道筋を確かに描いていました。

それは自身で調整したデッキへの信頼があり、そして全国大会を経て培われた実力もまた、その信頼を後押ししていたのです。

 

風向きを変えよ

ゲームが開始されると予想通りにょんのペースで進みます。

2ターン目のスタートこそ叶わなかったもののバスターの前には《奇石 ミクセル》が立ち、そして続くターンには《フェアリー・シャワー》まで唱えて順調に進めます。

対してともきの盤面には《熱湯グレンニャー》《月光電人オボロカゲロウ》のみ。

これを進化元する《プラチナ・ワルスラS》は、既に殿堂カードとなっていました。

にょんは5ターン目に《龍装艦 チェンジザ》を建てると、《超次元ホワイトグリーン・ホール》を唱えつつ防御陣を築いていきます。

《時の法皇 ミラダンテXII》も手札に加わり、着実に勝利へ足場が固められていく格好です。

ともきはBADなしで《“龍装”チュリス》を召喚し、安易な《時の法皇 ミラダンテXII》からの攻撃には牽制していきます。《奇石 ミクセル》さえ除去出来れば、という状況に持ち込みます。

ただにょんの方もそんな誘いには乗りません。《斬隠蒼頭龍バイケン》を素出しし、着実に打点を組んでいきます。

対してともきは、チャージエンドのみ。

こうなると、いよいよ風はにょんに吹いてきます。

まずは《龍装艦 チェンジザ》が《時の法皇 ミラダンテXII》に革命チェンジ。更に効果で《六奇怪の四 ~土を割る逆瀧~》を唱える攻防一体の技で、シールドへの攻撃を敢行します。

返しのカウンターもなく、ミラダンテのロックも掛かっているこの状況。この展開になってしまうとバスターはまず勝てない、当時の私はそう思っていました。

ですので実際にその場でカバレージを書いているときも「ここで一気に勝負を付けたにょんは」と、にょんの勝利を“先行入力”して書いていました。

なんなら残っているカバレージにも「 逆瀧で攻撃を大きく制限され、ミラダンテの支配下に置かれたともきに手はない。メメント守をスイッチさせてターンをもらうも、続くにょんのプレイはサイクリカ 」と、明らかににょんが勝ちきりそうだと見て文章を書いているのがわかります。

実際【チェンジザダンテ】はまだこの頃は出たばかりのデッキです。

どういった展開が勝ちで、どういった展開なら捲れるのか……そこについては使用者すら正確にわかっていなかったと思います。

 

しかしその使用者すら把握しきれないゲーム展開を、ともきには読み切る力があったようでした。そしてそれは、この3点で《Dの牢閣 メメント守神宮》をトリガーさせたことで、存分に発揮されることとなります。

まず返しのターンにメメントをスイッチさせて凌ぐと、続いて唱えられた逆瀧に対しても、決して焦ることはありませんでした。

ダンテが走り、 逆瀧が二度唱えられようと、なお自分の勝ちを信じていたのです。

そう、ともきはここでマナチャージして8マナ。ミクセルの制限から抜けていました。

まずは《Dの牢閣 メメント守神宮》を貼り替え、そしてダンテの掛かっていないこの一瞬の隙を狙って《単騎連射 マグナム》を盤面に送り込みます。

当時はミラダンテⅫが4枚使えたため、ミラダンテⅫをミラダンテⅫに革命チェンジさせることも容易でした。だからこそ、このミラダンテⅫの掛かっていないこのターンにしかチャンスはなかったのです。

加えて、この《単騎連射 マグナム》を処理することが困難なことも察知しています。トリーヴァカラーのこのデッキは、単体除去を要求される盤面に非常に弱いのです。

当時のインタビューでは、次のようなことを言っています。

「相手の次元にレッドゥルがなかったのでミラダンテチェンジの動きはなく、カウンターはバイケンのみだろうと予測してたのですが、こちらが8マナの時点で単騎マグナムを持っていたので、勝てそうだなと思いました」

気付けば攻守は入れ替わっていました。

風向きは、変わりました。いや、自ら変えたのです。

盤面を次々と並べていくともきに対し、にょんは守りの逆瀧を使わざるを得なくなります。

そしてそれは、いつかは途絶えるもの。逆瀧の効果が止まった時、それはドギラゴン剣が10数体にも及ぶ優秀な部下達とともに総攻撃を仕掛ける合図でした。

幾らチェンジザと言えど、これを止める術はありません。

こうして鮮やかとも言える手法で逆転勝ちをしたともきが、第1ゲームを制します。

 

踏み越えて、いま

第2ゲームも同じような展開になります。

《勝利のアパッチ・ウララー》を引けていたともきは打点を横に並べ、対してにょんも同じくチャンジザや盤面に強力なクリーチャーたちを投入していきます。

しかしこの時は盤面の質でともきは勝っていました。盤面にはアパッチ、パンツァー、そしてオニカマスを含む6打点以上を構えられていたのです。

対してにょんはオニカマスにやや手こずり、またメタカードも並べられていませんでした。それでも《龍装艦 チェンジザ》はしっかり引き込んでおり、《斬隠蒼頭龍バイケン》と《巨人の覚醒者セツダン》を並べてまだまだこれからの試合に見えました。

ところがこのゲームはもう間もなく終了を迎え、そしてそれは実に鮮やかなものでした。

ともきはにょんの盤面を確認すると、《時の法皇 ミラダンテXII》が飛び込んでくるわずか前に《Dの牢閣 メメント守神宮》を起動。これによってにょんの動きを止めます。

そしてその返しのターン、《時の法皇 ミラダンテXII》の効果がないこと確認すると、《単騎連射 マグナム》を召喚。

 

そして突如《月光電人オボロカゲロウ》《音精 ラフルル》へと革命チェンジしたのです。

完全に奇襲とも言える単騎ラフルルに、にょんは一瞬ニンジャ宣言をしそうになったほど。もちろん、場には単騎連射がいます。

かくしてそのまま打点は通り、ゲームは突然の終幕となりともきは勝利を手にします。チェンジザダンテの要塞を踏み越えていったのです。

 

終幕

さて、改めて振り返ってみると、彼の優れていた点は「予想されるゲーム展開と自身の勝ち筋を数ターン先までかなり正確に把握していた」ことでしょう。

第1ゲームはチャージエンドするだけのターンが数ターンありましたが、それは全て8マナ到達への布石。

余計なカードを使わないことで手札と盤面を維持しながら相手に脅威を与え続け、そして気付けば攻守を入れ替え鮮やかな勝利を魅せます。

この世に「岡目八目」という言葉がある通り、カバレージライターは比較的先の展開が見えやすく、どちらが優勢なのかといった点も把握しやすかったりします。

仮にトリガーで逆転するような試合であっても、「返るとしたらトリガーだよな」みたいな予想も出来るんですよね。

そして前述した通り、試合展開を追いながらにょんの勝ちを“入れ込んで”いました。当時の私は、明らかにそうなるゲーム展開だと思ったからです。

ですがこの試合のともきは、岡目八目視点の予想である私の予想を上回ってきました。

私はこの試合が終わった直後に思わずともきに対して「お前すげぇな」と言ったらしいですが(知り合いではあったので、こういう言葉遣いになっています)、正直なところ私はよく覚えていません。

ただ、まぁ全然言っててもおかしくないよな~と思うくらいには、当時の私は衝撃を受けています。

 

その後ともきは決勝でRunoに敗れて準優勝となったものの、この準決勝の戦いぶりは彼のデュエマ人生に燦然と輝いていて――くれていたら嬉しいなぁ、と思うくらいには会心のゲームだったのではないでしょうか。

 

終わりに

というわけで今回のGoDは私が担当したカバレージの中から、特に印象深い試合を選ばせていただきました。

コロナ下のCSでは中々カバレージを書くこと自体にリスクを伴ってしまうのですが、いつしかまたCSにも大型大会にもカバレージが返ってきて欲しいものですね。

というわけで今回のGoDは如何だったでしょうか?

感想などは、是非Twitterで#デュエマGoDをつけてお願い致します。

それではまた次回の記事でお会いしましょう。

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