はじめに
新環境、到来。
GP2023-2ndの決勝、劇的な決着を見せた「青黒魔導具」ミラーの余韻も冷めやらぬままリリースされた「デュエキングMAX2023」。
現時点では環境を激変させるほどの影響力を見せていないものの、たくさんの新デッキや既存デッキの基盤レベルでの強化を引き連れて存在感を示しています。
一見変わらないように見えて、着実に変化しつつあるオリジナル環境の「今」について、今月も徹底的に解説していきたいと思います!
2023年9月の環境はこちら!
目次
「最強」の定義
本記事では最強デッキを「デュエル・マスターズ競技環境での相対的な強さ」と定義します。
Tier1とは「環境内に不利なデッキが少ない、あるいは相性差を覆しやすいデッキであり、大会で持ち込みが一番多いと予想される対策必須のデッキ」です。
Tier2とは「Tier1やTier2のデッキにある程度勝てる見込みがあり、大会でも毎回一定数いると予想されるデッキ」です。
Tier3とは「弱点が多い、デッキパワーが低いなどの理由で使用者は少ないものの、特定のメタゲームでは活躍することができるデッキ」です。
Tier1
【アナカラージャオウガ】Tier1
現環境トップの座を維持し続けている【アナカラージャオウガ】。
メタが進み、一時期と比べれば支配的なほどの立ち位置ではなくなったものの、相変わらず「デッキパワー最強」のポジションにいるのがこのデッキであることは間違いありません。
1.マナ加速、2.メタクリーチャーを絡めた盤面展開、3.《母なる星域》+《CRYMAX ジャオウガ》によるフィニッシュ、というわかりやすいゲーム展開を主軸としたミッドレンジデッキ。
最速4ターンでジャスキル+2打点前後を揃えてリーサルを叩き込めるゲーム速度を持ちながら、《天災 デドダム》・《Disジルコン》のリソース力や、除去されたクリーチャーを蘇生する《アーテル・ゴルギーニ》のおかげで長期戦にも十分に対応可能。
《「お茶はいかがですか?」》・《ド浮きの動悸》のトリガー2種に加えて、意外と充実しているブロッカーと《ボン・キゴマイム》をはじめとするメタクリーチャーを駆使してビートダウンにも抗えます。
このデッキの存在によって《飛翔龍 5000VT》を採用したデッキが一気に環境に台頭するなど、環境全体を定義しているデッキだと言えます。
現在のトレンドは《キャディ・ビートル》採用型の構築。GP予選ラウンドで大きく結果を残した形です。
最大の役割は環境に爆増した《飛翔龍 5000VT》へのわかりやすいカウンターパート。現環境では対策の甘くなりがちなコスト軽減に対して強いマナ枚数参照式のメタで、なおかつ登場時能力を使わせない点で非常に有効です。
革命チェンジや侵略を活かして速度で【アナカラージャオウガ】に対抗してくるデッキに対して後手2ターン目に着地させられるメタクリーチャーである点もよく噛み合っており、GPでは上位入賞を逃したものの現在のCS環境では存在感を発揮している1枚です。
一方で、《とこしえの超人》や《若き大長老 アプル》といったトリガーケア手段の枠をこちらに割いているため、トリガーによるカウンターを主軸とした構築にはやや弱くなるのがネック。
軽量クリーチャーが増えればデッキ全体が痩せてしまうことを危惧してか、《キャディ・ビートル》の台頭以降は《同期の妖精》も採用枚数が減少傾向にあるため、以前よりも詰め方は繊細になっています。
【青赤マジック】Tier1
結構な頻度で3ターンキルを見込める環境屈指の速度と、リソースを失わないアクションや豊富なトリガーケア手段に裏打ちされた「タメ」適性の高さが武器の新環境を代表するビートダウンデッキです。
極めて強力なビートダウン性能に加えて、《飛翔龍 5000VT》という環境を定義するクリーチャーを種族シナジーに負担をかけず組み込める点は大きな魅力です。
最初期はやや無駄のあった構築も徐々に研ぎ澄まされ、現在ではデッキの大半がテンプレート化。しかし豊富なドローソースのおかげで山札の回転効率が非常に高いため、残りの数枠を差し替えるだけで構築の方向性を大きく変えられるデッキタイプです。
呪文封殺や受け札など自由枠に採用できるカードの候補は多いですが、現環境での主流は《AQsabbath/♪このギター グシャッとすれば グシャッとなる》や《歌舞音愛 ヒメカット/♪蛙の子 遭えるの何処?好きと謂ひて 》などの除去カードを多めに採用する形。
革命チェンジを複数回駆使したうえで《芸魔王将 カクメイジン》の攻撃をプレイヤーに通したい都合上、ブロッカーやメタクリーチャーを除去する手段はいくらあっても困りません。
特に《AQsabbath》はクリーチャー側で確定除去できるため、《ガル・ラガンザーク》や《アルカディアス・モモキング》のように単体でこちらを詰ませてきかねない、呪文の効かない大型ロッククリーチャーに対して唯一解となりうる1枚です。
チェンジ元になるクリーチャーが1体でもバトルゾーンにあればそのターン中にゲームを決め切るのも難しくないため、確定除去としてはコストパフォーマンスに優れるバウンス除去を活かしやすいのも、ある種の強みのうちでしょう。
そもそもは【アナカラージャオウガ】に対して有利がつくところから評価が進んだものの、相手方の対応が洗練されてきたこともあって現在は五分五分といったところ。
反面【青赤マジック】側もプレイや構築の開拓が進み、最速3ターンという理不尽な速度でのリーサルとあの手この手でメタを乗り越えられる対応力の高さから、純粋にデッキとしての強さで現在の立ち位置を維持しています。
【青黒魔導具】Tier1
現環境で最高峰のコントロール・コンボデッキ。
デッキを回転させる魔導具呪文で手札を整えて4ターン目の《堕∞魔 ヴォゲンム》+《「無月」の頂 $スザーク$》の成立を目指しつつ、状況に応じて《堕魔 ドゥポイズ》や《秩序の意志》で相手の盤面に干渉。
高速で着地した《「無月」の頂 $スザーク$》で取り返しのつかないリソース差を押し付けてゲームを優位に進めつつ、最終的に複数体の《「無月」の頂 $スザーク$》を維持して大量ドロー。山札の枚数が残り少なくなったところで《神の試練》を絡めてゲームを決めるのが基本的なゲームプランです。
【青魔導具】と比べて素早くゲームを決着させる手段は採用されていないものの、多めに採用された受け札と闇文明の盤面干渉手段によって時間を稼ぐ性能を向上させ、《「無月」の頂 $スザーク$》を着地させるまでのターンを確保しているのが大きな特徴。
《「無月」の頂 $スザーク$》のアドバンテージ能力に大きく信頼を寄せており、良く言えばこのカードを中心に、悪く言えばこのカードに依存したデッキ構成になっています。
しかし、少なくとも現環境においてこのカードの強さはホンモノ。特にハンデスで相手の選択肢を削る動きは現環境の中心に居座る手札からの踏み倒しギミックに対して有効です。
ハンデスは自分自身を守るうえでも非常に凶悪で、ただでさえ「無月の門・絶」の性質上完全な形での対処が難しいにも関わらず、貴重な回答をランダムで引っこ抜けてしまいます。
大量のドローソースで4ターン目にコンボを成立させることは難しくなく、引き方と墓地の落ち方次第では4ターン目の《堕∞魔 ヴォゲンム》から《「無月」の頂 $スザーク$》2体着地まである上ブレもあり。
対応する側に回りがちなコントロールデッキでありながら、自分の展開を押し付ける力でも環境屈指。
このデッキパワーの高さに加えて、環境で主流なメタカード・《ボン・キゴマイム》と《飛翔龍 5000VT》のどちらも効かないデッキの性質も相まって、良好な立ち位置を確立しています。
メタ傾向に合わせて《飛翔龍 5000VT》を一定数採用した形が一般的ではあるものの、【青黒魔導具】自体は《飛翔龍 5000VT》を採用した他のデッキとは異なり、能動的な横展開やマナ加速、コスト踏み倒し手段といったシナジー要素は0。
そもそも【青黒魔導具】自体が可能な限り不純物を減らしたいデッキということもあり、《飛翔龍 5000VT》というカードが強いことには間違いないものの環境をよく吟味して採用するべき、というのが筆者の見解です。
今回の「デュエキングMAX2023」では《卍月 ガ・リュザーク卍/「すべて見えているぞ!」》を獲得。これまで《卍月 ガ・リュザーク卍/卍・獄・殺》を採用していた枠により汎用性の高い受け札を採用できるようになり、ささやかながら着実な強化を受けました。
能動的に唱えても強く、シールドが1枚でもあればほぼ確実に1ターンを得られるため、盤面干渉手段の少ないデッキ相手には擬似的な追加ターン呪文として機能することもしばしば。決して軽くはないものの手撃ちも視野に入れられるコスト帯も優秀です。
Tier2
【黒緑アビス】Tier2
最速3ターン目にアビス・メクレイド5から《邪幽 ジャガイスト》・《ア:エヌ:マクア》・《謀遠 テレスコ=テレスト》といった強力な5コスト帯のアビスでリソースとバトルゾーンを制圧していく、コントロール寄りのミッドレンジデッキ。
メクレイドのおかげで3ターン目という早い段階で大きな展開を作りやすく、この手のデッキとしては異例の速度感を有しているのが大きな武器と言えるでしょう。
上ブレた際の破壊力は環境でも屈指で、《邪幽 ジャガイスト》が絡んだゲームでは3ターン目に中量級アビスが4〜5体並ぶこともしばしば。ここまで行ってしまえば余程のことがないかぎりボードの強さだけで相手を圧倒できます。
ただし、初動とメクレイドをセットで引いたうえでメクレイドからある程度強いカードを踏み倒せなければ今ひとつ物足りない出力に収まってしまいがちな不安定さが大きな弱点。
もちろん極力ハズレないようにデッキは構築されているものの、いつでも状況や対面に応じて必要なカードを持って来れるわけではありません。メクレイド自体が常に裏目のあるハイリスクハイリターンな選択肢である以上、【黒緑アビス】にとっては避けられない弱点でもあります。
こういったリスクを緩和しつつ、防御力の向上を図ったのが火文明を加えた【デアリガズ邪王門アビス】。【黒緑アビス】と【黒赤邪王門アビス】を足して2で割ったような構成をしており、両者の強みのエッセンスを抽出した形です。
そもそも4枚採用の《「力が欲しいか?」》がなければ3ターン目に大きな展開は仕掛けられませんでしたが、初動のベースを《鬼寄せの術》に寄せることで速度を担保。
闇か火のクリーチャーにしか軽減を乗せられないため《ア:エヌ:マクア》にこそアクセスできないものの、肝心要の《邪幽 ジャガイスト》や《謀遠 テレスコ=テレス》を3ターン目に出す分には何ら不足はありません。
自分より速いデッキにはやや不安のあった防御面も、《百鬼の邪王門》を採用できるためかなり緩和されています。
マナに落ちても《ア:エヌ:マクア》で、墓地に落ちても《信眼! ジェンゲガーvs.シェケダン》でアクセスできるため手札誘発式の受け札とデッキ単位で相性がいいのも嬉しいポイントです。
アビスの絶対数が少なくなっていること、特に《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》を採用する枠に苦慮するためメクレイドや《邪幽 ジャガイスト》の踏み倒しの破壊力が低くなっていたり、文明が増えることで必然的にハンドキープの難易度が上がっていたりと【黒緑アビス】側にない弱みもあるものの、総合的に見て【デアリガズ邪王門アビス】の方が現環境での扱いやすさに長けている印象です。
【青魔導具】Tier2
純粋なコンボデッキとしては最も定評のある【青魔導具】。
《卍 新世壊 卍》設置後に魔導具呪文を4枚唱え、能力でターン終了時に《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》を踏み倒して複数のドルスザクを展開しながらEXターンを獲得し、一気にゲームを優位に傾けるのがこのデッキの目指すところ。
性質上《卍 新世壊 卍》を排除してくるエレメント除去やカード除去に弱くはあるものの、《卍 新世壊 卍》さえ維持できれば呪文ロックの無視と継続ドローのおかげで一般的なスペルコンボに有効な妨害手段をほとんど無視できる点がこのデッキの強みです。
《好詠音愛 クロカミ》は目下のところ最も有力な自由枠と言えるでしょう。
《卍 新世壊 卍》の存在下で4ターン目のコンボ達成率を大幅に向上させる展開、《卍 新世壊 卍》がない状況下で魔導具呪文を連打して墓地の魔導具6枚を達成し《「無月」の頂 $スザーク$》を出す展開のどちらでも強力。
コスト軽減以外の能力も腐るところがなく、ジャストダイバーによる場持ちの良さは言わずもがな。システムクリーチャーである本体と非常に相性が良く、3ターン目にプレイする裏目がほとんどありません。
呪文を唱えるたびに相手クリーチャーの攻撃・ブロックを止められる能力は防御性能の底上げに大きく貢献しており、トリガー魔導具で止められる打点が増えるのはもちろん、空の盤面からリーサルを出せないデッキ相手には呪文を連打するだけで最低限1ターンの猶予をもらえます。
コンボデッキとしては屈指の強さを誇るデッキではあるものの、環境全体の速度感に対して4.5ターンほどのゲームレンジを見据えた【青魔導具】はやや遅め。
追いかける側に回る機会が多いのであれば、軽量除去や受け札の充実で構築の段階から後ろ寄りのゲームを見据えられる【青黒魔導具】の方が動きやすいのは道理です。エレメント除去を気軽に入れやすくなってきているのも【青魔導具】には向かい風。
ただ、「ゲームを決め切る力」については【青魔導具】に軍配が上がるため、よりフィニッシュ力が求められる環境ではまた評価が上がるでしょう。
また、現環境ではやや立ち位置が悪くなっているとはいえ、デッキの構造自体が強力な部類に入るため、一定の評価はされ続けるデッキであることには間違いありません。
【アポロヌス】Tier2
最速3ターン目に攻撃中の全シールドブレイクで一気にゲームを決め切るワンショット要素を主体としたコンボ・ビートダウンデッキ。
3ターン目に侵略を連打してフィニッシュするプランはもちろん、2ターン目から《オンソク童子<ターボ.鬼>》と侵略クリーチャーを駆使してビートダウンしていくアグロプランも有しています。
依然として強力なデッキではあるものの。「3ターンキルを発生させうるビートダウンデッキ」としての立ち位置は【青赤マジック】に譲っている印象です。
一度止められても再展開が容易で、メタカードを置かれても手札を回して除去や《飛翔龍 5000VT》で別軸のゲームを構築して対応できる【青赤マジック】の柔軟性に比べ、どこまでいっても侵略を使ったビートダウンでしかゲームを組み立てられない【アポロヌス】はやや苦戦気味。
ゲーム全体の速度が上昇しつつも各デッキの受け手段も強化されており、【アポロヌス】の優位性が薄れているのもややポジションを落としている理由のひとつでしょう。
なんだかんだと「通れば勝つ」デッキではあるため決して弱くはないものの、《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》の理不尽さは相対的に薄くなってきています。
【5cザーディクリカ】Tier2
一時期は立ち位置が大幅に悪化していたものの、《飛翔龍 5000VT》環境で再度評価されはじめたコントロールデッキの重鎮。
マナ加速+《ブレイン・スラッシュ》の両面で《飛翔龍 5000VT》をバックアップでき、なおかつ自分の動きは《飛翔龍 5000VT》で一切止まらないのが環境における主張点。
枠の都合と環境傾向からトリガーケアをメタクリーチャーやロックではなく単なる過剰打点で補うデッキが環境上位に多いため蘇生トリガーの通りがよく、《飛翔龍 5000VT》や《聖魔連結王 ドルファディロム》で相手の面に干渉すれば大幅に優位を得られます。
再現性の面ではやや心許ないものの、4ターン目に《ナウ・オア・ネバー》+《龍風混成 ザーディクリカ》+《ロスト・Re:ソウル》でゲームの展開を掌握するコンボも健在。
バランスよく様々なデッキと戦えるデッキではあるものの、尖った要素がないため中途半端な立ち位置に留まりがちなのは前環境から引き続き。
盾受けからカウンターするデッキとしては後述する【ブレスラチェイン】が、ハンデスで相手の選択肢を奪ってゲームを制圧してから勝利するコントロールとしては【青黒魔導具】がより良い選択肢として存在します。
このデッキの独自の強みを活かすには、相手の盤面に干渉しつつロックを仕掛けられる大型クリーチャー=《飛翔龍 5000VT》や《聖魔連結王 ドルファディロム》を強く使えることを意識するべきでしょう。
Tier3
【ブレスラチェイン】Tier3
1枚の《ナウ・オア・ネバー》や《ブレイン・スラッシュ》から《龍風混成 ザーディクリカ》や《邪眼教皇ロマノフⅡ世》、《Disアイ・チョイス》へアクセスし、さらに踏み倒し呪文を連鎖させて山札を一気に掘削。
《黒神龍ブライゼナーガ》や《マーシャル・クロウラー》でシールドも丸裸にしつつ、最終的には《龍風混成 ザーディクリカ》の能力で《神の試練》を唱えて一気にフィニッシュまで持っていくチェインコンボデッキです。
その性質上デッキの多くを踏み倒しトリガーが占めることになるため、必然的に受けが非常に強くなっているのが大きな特徴。《CRYMAX ジャオウガ》のシールド焼却後にも十分な期待値を維持できるほどのカウンター性能はそれだけで一つの武器です。
やや要求値は高いものの《ディスタス・ゲート》+《Disアイ・チョイス》や《ナウ・オア・ネバー》+《邪眼教皇 ロマノフⅡ世》が揃えばチェインの仕方次第では4ターン目にコンボフィニッシュが見えるほどの決定力がありつつ、マナ加速や《ブレイン・スラッシュ》に絡めて《飛翔龍 5000VT》も取り入れる余地があったりと、デッキとしての強度はかなり高め。
【5cザーディクリカ】と同じく苦手な呪文ロックや踏み倒しメタが減少傾向にあることもあり、かなり良好な立ち位置を築いています。
一方で、チェインコンボ特有のルート選択の難しさや、非公開領域に依存する場面が多い関係上裏目のある二択を強いられる場面も少なからず訪れるのは弱点。対面や状況によっては「ネバーザーディロストで勝ち」「ブレスラドルファで勝ち」を押し付けられる【5cザーディクリカ】のシンプルさが恋しくなることも考えられます。
立ち位置としては非常に【5cザーディクリカ】に近いものの、防御力の高さと難解ながらコンボデッキ的な強度の高いフィニッシュに寄せたのが【ブレスラチェイン】。対応力の高さとフィニッシャーの簡単さに寄せたのが【5cザーディクリカ】だと認識しています。
【黒単アビス】Tier3
自然入りのアビスに押されて苦戦気味の【黒単アビス】。
こちらの最大の武器は《ウォズレックの審問》に代表される軽量ハンデスですが、環境の速度が一段階早まって、特に後手でのコスト3以下ピーピングハンデスの価値が相対的に薄まっている印象です。
亜種として水文明の比率を増やし、ハンデスと相性のいい《飛ベル津バサ「曲通風」》やシンプルに環境での通りが良い《飛翔龍 5000VT》を採用した【青黒アビス】も少数ながら活躍中。
ビッグアクションを起こせるターンが4マナの《アビスベル=ジャシン帝》を出した次のターンにようやく、というのもやや苦しいところ。
ライバルが強力な分相対的に厳しい立ち位置に置かれているものの、墓地メタが数を減らしているのは朗報と言えるでしょう。
【ガイアッシュ覇道】Tier3
ランプ系デッキの星、【ガイアッシュ覇道】。
ドラグハート・《禁断 〜封印されしX〜》を使えない都合上アドバンスのそれと構成は大きく異なり、3→5の動きを重視しつつ《五番龍 レイクポーチャー ParZero》や《「爆流秘術、暴龍の大地!」》といったカードアドバンテージを取れるカードの多投が特徴的。
全体としてマナ加速のスピード感よりも相手への対応力を重視した、どっしり構える構成が主体となっています。
「デュエキングMAX2023」で獲得した《MMM-ジョーキング》はこのデッキのカギを握る1枚。
光・自然をマナに用意するハードルこそあるものの、手札誘発式の受け札は《流星のガイアッシュ・カイザー》のカウンター性能や《五番龍 レイクポーチャー ParZero》のサーチと相性抜群です。
うっかり生き残れば革命チェンジ元になることを含めて、デッキの方針と強く噛み合う1枚だと言えるでしょう。
【ラッカ「正義星帝」】Tier3
《「正義星帝」<ライオネル.Star>》と《「正義星帝」<鬼羅.Star>》、《エヴォ・ルピア》を起点にこれら2体の《「正義星帝」》を連鎖させて一気に打点を叩き込む高火力なビートダウンデッキです。
《パンドラの記憶》+《超次元の王家》パッケージの採用で3ターン目までのドローソースが爆発的に強化されたのが最大のトピック。
4ターン目に《エヴォ・ルピア》から動き出したい都合上3ターン目に手札枚数を増やすことの重要性が非常に高いデッキでしたが、《T・T・T》4枚を入れた後に追加で入れたいドローソースが《エナジー・Re:ライト》か《♪なぜ離れ どこへ行くのか 君は今》ぐらいしか選択肢がありませんでした。
【サガループ】全盛期ならともかく、現環境では墓地メタだけだと今ひとつ押しが弱かったのも事実。《エナジー・Re:ライト》もG・ストライクは腐りづらいとはいえ能動的な動きを強化してくれるわけでもなし……と懊悩していたところに、超新星のごとく現れたのが《パンドラの記憶》。
3ドローしてから1枚を実質ディスカードと単体でも《「伝説のサイバーパワー!」》と同等以上の働きを期待できますが、《超次元の王家》を超次元ゾーンに置けばさらに2ドロー1ディスカードを追加で獲得。山札を5枚掘り進めたうえで差し引き2枚分手札が増える異次元のドローソースへと変貌します。
《奇天烈 シャッフ》や《アルカディアス・モモキング》といった取り回しのいい呪文ロックをナチュラルに採用できる点も現環境では評価点。呪文ロックが少ない環境であることを前提としたデッキがいくつか見受けられるため、フィニッシュ力の向上に大きく貢献してくれます。
強化のされ方がコンボ達成後の出力バリエーション増加ではなく基盤の安定化に傾いているため、デッキのベース部分の強度が大幅に向上している印象。今後の躍進に期待したいデッキのひとつです。
環境のまとめと今後の展望
今まで
GP2023-2ndの結果や「デュエキングMAX2023」のリリースを受け、着実に変化を続けるオリジナル環境。
大枠としては依然として《飛翔龍 5000VT》-《ボン・キゴマイム》環境。
【アナカラージャオウガ】が頂点にいるのは変わらないものの、GP2023-2ndでも目覚ましい活躍を見せた【青赤マジック】や【青黒魔導具】の評価が確固たるものになってきた形です。
環境に与えた影響として大きいもので言えば、GP2023-2ndで見られた《飛翔龍 5000VT》、あるいは《ボン・キゴマイム》に対抗する手段の普及でしょう。
【アナカラージャオウガ】での採用数が大きく増えている《キャディ・ビートル》はその最たるもので、わかりやすく《飛翔龍 5000VT》ミラーを出し抜く一手です。
一方で、盤面をめぐるやりとりに各デッキが注力しはじめた結果「魔覇革命」直後は過熱していたゲームスピードの向上にはブレーキがかかり、環境全体がやや低速化。
デッキの枠を除去などに割く傾向が強くなった分、踏み倒しメタや呪文ロックにまで手が回らないデッキが多く、結果として【5cザーディクリカ】や【ブレスラチェイン】といったやや遅めの受け主体デッキも復権しています。
これから
「デュエキングMAX2023」のリリースはアドバンス向けのカードが多かったこともあってか、ことオリジナルに関しては絶大なインパクト、というほどの影響はありませんでした。
しかし、基盤カードからデッキコンセプトレベルのカードまで幅広く追加されたこともあり、デッキの選択肢という意味では大きく広がった印象です。
【アカシック3ループ】や【ラッカマナ退化】、【青緑G-ジョラゴン】に【ラッカゾージア】、【ヘブンズ・ゲート】や【サバキZ】……。
現状の母数を鑑みて今回のランキングからは選外としたものの、十分にトーナメントシーンを戦い抜けるデッキがたくさん登場しています。
全体の傾向としては、強力ながら大味なフィニッシャーや強力なコスト踏み倒し手段が追加されたことで、【サガループ】以降【青魔導具】(とコンセプト次第では【ブレスラチェイン】)以外にまともな選択肢が提示されていなかったコンボデッキに光が当たっている印象です。
概ね4ターンでのリーサルを見据えつつ、受けを直接的に封殺・あるいは無視して勝てるデッキが環境に参入し、オリジナル環境はより多様性を増しつつあります。
これまでにないテキストのカードが多く、まだまだ構築も研究され尽くしていない「デュエキングMAX2023」の新カードたち。これからどう発展していくのか、非常に楽しみです。
おわりに
というわけで、10月のオリジナル環境について解説いたしました。
使ってみたいデッキは見つかりましたでしょうか?
この記事が皆さんのオリジナル環境に対する理解への一助となれば幸いです。
それでは次回、10月のアドバンス環境解説記事でまたお会いしましょう!