DMPランキング1位の異世界転生 ~転生した世界では俺しかGR召喚できませんでした~【ゲストライター:イヌ科】

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DMPランキング1位の異世界転生 ~転生した世界では俺しかGR召喚できませんでした~【ゲストライター:イヌ科】

 君のいる世界の全てなんて、どうやったって手に入りっこしないよ。

 たとえ君が世界一喧嘩が強くたって。
 たとえ君がアメリカの大統領になったって。
 たとえ君が1人で世界経済を動かそうったって。

 その全てを手に入れるなんて、誰一人できっこしないんだ。
 だって、君のいる世界は君が思ってる以上に大きいからね。

 だけど僕は、自分の世界を持ってるんだ。

 君のいるところに比べたら少しばかりちっぽけかもしれない。
 でも僕の世界は、僕にとってはこれ以上ないくらい素敵な場所。
 他の誰に褒められなくたって、他の誰にけなされたって。
 僕だけは、この世界を誇りに思ってるよ。

 そうだな、僕みたいになりたいなら。
 まずは僕の世界を見てごらんよ。
 ああ、感想は別にいいよ。とりあえず見て、君に何かを感じてほしい。

 そのあとで、君が世界をどうしたいか決めればいいさ。


―――おかしい。
 俺はかっちCSの決勝戦を戦っていたはずじゃ………

 決勝戦、親友にして最大のライバルである『住良木 槍(スメラギ・ソウ)』との死闘を繰り広げていた最中だったはず。 あいつが《奇天烈 シャッフ》を上手く使って俺の退路を断ったところ。 俺の手札にはずっと握りしめた《BAKUOOON・ミッツァイル》。 そう、こいつが勝負を決めるはず―――

 その直後、俺こと『煌咲 優吏(ギラサキ・ユーリ)』の目の前には突然見たことない景色が広がる。
 ……これは夢か?
 今はただ茫然とするしかなかった。

 少しずつ落ち着いてきた。目に見える情報を整理しよう。
 まず目の前に飛び込んだのはレンガ造りの家々。 露店で賑わう街中、明らかに現代風とは違う装いの人々。
 目鼻立ちがはっきりしているから、東洋人というよりは白人だろうか。

 そこはアニメで見たことがあるような、中世ヨーロッパ風の街並み。

 ……記憶を辿っても、このセンしか思い当たらない。
 これはたぶん……異世界転生ってやつだ。

 どうしてこうなったのか分からない。
 よくある異世界転生じゃあトラックで轢かれて…みたいなのがベタだけど、何の脈略もなくこうなったもんだから手がかりがひとつもない。
 考えても疑問は尽きない。 引き弱すぎるだろ。

 すると、突如怒号が鳴り響いた。

「どうした坊ちゃん、早くそのカードをオレに寄越しなァ!」

 それは路地裏の方から鳴り響く。
 続いて少年の甲高い涙声がこだまする。

「嫌だ! この《ボルメテウス・ホワイト・ドラゴン》は…爺ちゃんにもらった宝物なんだ!」

 なんだ? ここはおっさんが子供を嚇すような世界なのか?
 やれやれ…と思いながらも、とりあえず現場に向かってみる。

 なぜなら、俺とこの世界を結びつける1つの固有名詞。
 しっかりと聞き取ったそれが、俺の耳から離れなかったからだ。

 …《ボルメテウス・ホワイト・ドラゴン》

「オイオイ、テメーはこのユガー様に負けた! オレにそいつを渡さねえ理由はねェんだよ!!」

「クソ……クソ……!!」

 声のする方向に向かって、体が勝手に走り出す。
 最初は気付かなかったが、走ってるうちに1つの異変に気付いた。

 ジャカッ、ジャカッ、ジャカッ……

 一歩一歩踏み出すたび、変な音が腰からする。
 腰に目をやると、使い慣れたデッキケースが俺の腰に巻かれていた。

「おい、やめないか」
「あァ?」

 いかにも、といった人相の男だ。 恰幅のいい体形と威圧的な服装、赤い髪の毛が逆立っている。
 イメージ通りの異世界のゴロツキ。 いささかテンプレートすぎやしないか?

「お兄さん…お願いがあるんだ……」

 涙ぐんだガキが俺に助けを求める。
 この町にしては身なりがこの町自体は豊かそうだったが、貧民層の子供だろうか。

「爺ちゃんの形見を、デュエマで取り返して!!」

 ……は?

「ははは、そいつァ無駄な話だぜ坊ちゃん」

 ……デュエマで取り返せるのか?

「マキコ区の裏デュエマコロシアム、破竹の10連勝!! 人呼んで《悪魔神ユガー》!!
 このユガー様に勝てるデュエリストなんて、この町にゃあ誰一人存在しねえに決まってんだろ!!」

「デュエマで、いいんだな?」

「は?」

 なんだ、デュエマでいいのか。
 なんで俺がこの世界に召喚されたのか、少しわかった気がする。

「1戦デュエマで勝てば、その《ボルメテウス・ホワイト・ドラゴン》をこのガキに返してやるんだな?」

「やけに強気だなァ、兄ちゃん」

 ユガーは不敵に笑う。

「いいだろう。それがこの世界のルール…裏デュエマコロシアムの王である俺でも、それには逆らえねえ。
 さあ、早くデッキを出しな!」

 ユガーも腰からデッキを出す。俺も腰についていたデッキケースを取り出す。
 すると、突然俺とユガーの間が光り輝き始める。

「……!? なんだこれ…」

「ハッ、それも知らねえのか兄ちゃん! 互いにデッキケースを出せばデュエルの合図、これがこの世界のルールだ!!」

 しばらくすると光が収まり……
 何もなかったはずのそこには、対戦用テーブルがあった。

 このときばかりは自分の適応力の高さに助けられた。
 ……なるほど。理屈はよくわからないがデュエマで何でも決められる……おそらくはそういう世界か。

 それをなんとなく理解した瞬間、口角が思わず上がる。 ニヤニヤしているのを隠すために、手を口で押える。
 ああ、ああ、なんてことだ。

 ここは、俺のための世界か。

「兄ちゃん、もちろん分かってるよな? 俺が《ボルメテウス・ホワイト・ドラゴン》を賭けて戦う以上、お前も相応のモノを賭けて戦わなくちゃいけねェ……」

 突然、ユガーが持っていた《ボルメテウス・ホワイト・ドラゴン》が光り出した。 そして、俺のデッキケースからも一筋の光が。 これは………

 ………《ヤッタレロボ》

「お兄さん…負けたらそのカードがアイツのモノになっちゃうんだ……ホントにいいの……?」

 いや、まあ別にいいけど。
 そんなことを思いながら、俺はデュエルの準備をする。

「……? 兄ちゃん、なんでデッキが2つあるんだ?」


「「デュエマ・スタート!!」」

 先攻はユガーだ。
 どうやらヤツのデッキは【ターボドルバロム】らしい。
 なるほど、《悪魔神ユガー》ってのはそういうことか。

《フェアリー・ライフ》! 悪くねえ初動だ」

《トムのゼリー》召喚」

 俺は初動が引けず、ブロッカーとなる《トムのゼリー》を出すことくらいしかできない。

「ハッ、どうやらお前もただのヘタクソらしいなァ…  俺様のデッキにそんな貧弱なブロッカーは効かねェ!《青銅の鎧》でブーストだァ!」

 ……ふむ。悪くない手札だし、このターンに仕掛けてみるか。

「1コスト、《ザババン・ジョーカーズ》。《フンバルさん》を切って追加ドローします」

「ほゥ、見たこたねェカードだが1マナで手札交換。やるじゃねえか」

「手札を1枚切って2コスト、《“魔神轟怒”万軍投》で。GR召喚を3回します」

「は?」

 出てきたのは《パッパラパーリ騎士》《ツタンメカーネン》2枚。

 《パッパラパーリ騎士》で赤マナを確保する。

《ツタンメカーネン》効果解決、お互いワンドローを2回」

「は?」

 呆気に取られた顔でドローするユガー。
 ん?何かルールミスでもしたかな。 多分大丈夫だから続けるけど。

「あー…でも《夢のジョー星》ないな、4体破壊《BAKUOOON・ミッツァイル》で」

「おい……何してんだよ……」

 4回のGR召喚。《ジェイ-SHOCKER》2体、《The ジョラゴン・ガンマスター》、《全能ゼンノー》

「あードロソないか……まあいいや、《ジェイ-SHOCKER》1点で」

「……オイ、なんで世界に何も止められてねェんだよ……」

「ん? どうかしたか?」

 ユガーは震えながらもシールドを手札に加える。
 横で見ていた少年も、呆気に取られたような表情だった。
 こっちは微妙な回りでイライラしてるところなんだが。

《ジェイ-SHOCKER》《ジェイ-SHOCKER》をバウンスしながら1点」

 瞬間、ユガーの目が見開いた。
 シールドから加えたカードを、勢いよく宣言する。

「ニンジャストライク発動ォ! 《光牙忍ハヤブサマル》!!」

「……! おい、なんでそれをお前が持ってるんだ!!」

 ニヤニヤするユガーに、困惑する少年。
 それを俺が制しようとした瞬間。

 突然、ユガーの体が固まった。

「……は? ニンジャストライクの条件は達成しているはず……」

 瞬間、声が頭の中に鳴り響く。

―――プレイヤー ユガーは3コストのカードをバトルゾーンに出すことができません―――

「!? これは……世界の声……!?」

「ハアァ!? 世界に《光牙忍ハヤブサマル》は認められているはずだぞ!?」

 少年とユガーが驚く。
 つーか、さっきから世界世界うるせえな。
 ここじゃガキもゴロツキも新興宗教みたいなことしか言えねえのか。

 だが、この世界のルールについてはある程度納得した。
 デュエマをするときは空から見てる神様みたいな人がジャッジをやってくれるんだな。
 声は俺の頭にもしっかり響いた。

「オイお前、一体何をした…!?」

「何って……《ジェイ-SHOCKER》の効果を使っただけだが?」

「……なんだと…………」

「あ、じゃあ《BAKUOOON・ミッツァイル》で2点。《全能ゼンノー》で1点」

 ルールミスしたら神様が指摘してくれるんなら、もう憂いはない。 あー、でも《ジェイ-SHOCKER》くらいしかケア要素なかったしトリガーなくて助かった。 もう1ターン待ってもよかったかなあ。

「おい……なんで、まだ3ターン………」

「《The ジョラゴン・ガンマスター》でダイレクト」

「なんなんだよそれは……なんで世界はこんなカードを認めてんだよ……
 おかしいだろォォォ!!!」

「いやーこっちの動きちょっと弱かったんで助かりましたね笑」

―――プレイヤー ユーリの勝利―――

 声が、頭に響いた。


「お兄さん、何あれ……」

 少年がこの世ならざるものを見る目で言ってくる。
 さすがにあそこ無理矢理ツッパはプレミだったかな。

「プレイ弱すぎるって意味だよな。ごめんごめん…」

「いや、なんなのあのデッキ……3ターンでユガーを倒しちゃった……」

「礼には及ばねえって、ホラ、《ボルメテウス・ホワイト・ドラゴン》だ」

「………あの!!」

 《ボルメテウス・ホワイト・ドラゴン》を受け取る前に、少年はひとつ質問をする。

「あの白いもう1つのデッキ、なんなんですか…?」

 俺は親切に答えてあげた。

「ああ、GRゾーンだよ」


「ええっ、異世界から!?」

 行く宛がないと少年に伝えたら、彼の善意で家に招かれた。
 隠しててもしょうがない。そこで俺は事のあらましを説明した。

 元の世界でデュエマをしていたこと。
 わけもわからず転生して、状況が呑み込めていないこと。
 手元にあるのは。元の世界で愛用していた【赤青ジョーカーズミッツァイル】だけだということ。

「もしかすると……父さんなら何か知っているかもしれない」

「いや、お前の親父さんだからって分からないだろ。異世界転生なんて滅多にあることじゃないだろうし……」

「そういうわけでもないんです。もしかしたら、父さんが何か関わっているかもしれない」

「なんでだ……いや、そもそもこの世界はなんなんだ?」

 そう、しきりにユガーが口にしていた"世界"という言葉。
 まるで"世界"を妄信しているかのような口ぶり……町のゴロツキですらそんなに信心深いとこなのか、ここは。

「僕たちの世界は、見ての通りデュエマで争いごとの決着をつけられるんです。
 逆にデュエマ以外で決めることはできません。小さいころに友達と殴り合いのケンカをしたら、急に体が固まって動けなくなりましたし」

 少年は淡々と語る。

「どうしてそうなのかは分かりません。だって僕にとっては生まれたときからそうだから。
 でも世界の言う通りにすること……僕らはそう教えられてます」

「……なるほど」

「それで…父さんと関係があるかもって言ったことについて」

 少しばかり重苦しくなったトーンで、少年は続ける。

「……もうすぐ戦争が起きます。ここ、ウィザー国と、隣のコースト国との間で」

「戦争か……」

「王様は慌ててたんです。この国にコースト国に対抗できるデュエリストはいないのかって。
 それで今、国が対策を練っているところらしいんです」

「ということは、戦争の結果もデュエマで決めるってことだな」

「そうです。"世界"はそれしか許さないから」

 ……どうやら、ここの世界を創った神様は相当なデュエマ好きのようだ。

「それで、お前の親父さんと何の関係があるんだ?」

 少年は重苦しそうに語る。

「……僕の父さんは、国の技術者なんです。
 最近は大きなプロジェクトに関わってるらしく、珍しく家に帰ったらこう言ってたんです。
 『世界を繋げてみせる』なんて……」

「それが、俺がここに来たことと関係があるってことか」

「もしかすると、父さんがユーリさんをここに飛ばしてきたのかもしれません」

 ……ふむ。
 とりあえず、そいつから話を聞いてみる必要がありそうだな。

「僕の名前はポッサといいます。今日は父さんが帰ってこないですし、泊まっていってください。
 ユーリさん、明日一緒に父さんのところに行きましょう」

「オッケー、よろしく頼むな、ポッサ」

 ポッサの善意に甘えて、今日は休むとしよう。
 明日、ポッサの親父に会って話を聞いて……

 ……ダメだ。まだ興奮を抑えろ。
 まだ悟られちゃいけない。俺がぼんやり考えていることを。
 でも口角が上がってしまう。ダメだ、落ち着け……


 俺の名前は『煌咲 優吏(ギラサキ・ユーリ)』。

 俺は元々の世界でデュエル・マスターズをプレイしていた。
 各地の大会で連戦連勝を重ねた。
 そこで稼いだポイントを競う制度、DMPランキング。

 俺が、DMPランキング1位の男だ。

 元の世界にも、そしてこの世界にも。
 俺よりDMPランキングが高いヤツなんて、誰一人存在しない。

 ましてや、【ターボドルバロム】で裏デュエマコロシアム10連勝と粋がっていたレベルの世界?
 今思い返せば、乾いた笑いしか出てこない。その程度、その程度か。

 その程度の相手を倒すだけで上手くいく世界、夢にすら見たことがない。
 そう考えるだけで興奮とにやけが治まらない。このことはまだ悟られちゃいけない……

 上手くいけば、このままこの世界の神にだってなってしまいそうなのだから。

登場キャラ紹介

煌咲 優吏(ギラサキ・ユーリ)

主人公。
かっちCSの決勝を戦っていたところ、異世界へ飛ばされてしまったDMPランキング1位。
GRクリーチャーの使用を「世界」から認められており、異世界に持ち込んだ環境デッキでユガーを粉砕する。
だが、その胸の内には危険な考えが秘められていて……?


【使用デッキ】
赤青ジョーカーズミッツァイル

ポッサ

ウィザー国の少年。ユガーに《ボルメテウス・ホワイト・ドラゴン》を奪われてしまったところ、主人公に取り返してもらう。

父がウィザー国の技術者。

ユガー

マキコ区の裏デュエマコロシアムの王。
裏デュエマコロシアム10連勝と、異世界では相当の実力者だがユーリに瞬殺されてしまう。

【使用デッキ】
ターボドルバロム

ポッサの父

ウィザー国の技術者。
「世界」をつなげるプロジェクトに関わっており、ユーリを異世界に飛ばした関係者かもしれない。

ライター紹介

イヌ科

マラかっちでデュエマして、カバレージ書いて、GP9th優勝して……

その直後、俺こと『イヌ科』はいつの間にかラノベを書いていた。
……これは夢か?
今はただ茫然とするしかなかった。

VTuberの御伽原江良さんを応援しています。


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