目次
北白河は激怒した。
必ず、かの邪智暴虐のボルメテウスを除かなければならぬと決意した。
北白河にはメタゲームがわからぬ。
北白河は、奈良の先行体験プレイヤー/βテスターである。
《いけにえの鎖》を吹き、《オブシディアン・ビートル》と遊んで暮して来た。
けれども逆転の可能性を全部摘んだうえでこちらを殺してくるデッキに対しては、人一倍敏感であった。
あと一度使ったネタを使い回すことに対しては、人一倍躊躇がないタイプでもあった。
はじめに
こんにちは。北白河と申します。しかも今回は久しぶりの治安と性格の悪いほうの北白河です。がんばって対戦相手を不快にさせながら敗北をプレゼントし、心の折れる音をジングルベルにして街に響かせていこうと思います(執筆時12月23日)。
ところでデュエルマスターズ・プレイスことデュエプレ、ついに始まりましたね。こちらガチまとめでも攻略記事がワッと更新されており、力の入れようが伺えます。こちらの最速攻略記事を書いた身として、デュエプレの波が広がっていくのはライター冥利に尽きますね。どれどれ、せっかくなので自分も新しく作った5c《オブシディアン・ビートル》ビッグマナでランクマに潜ってみましょうか。
ボルコンばっかしじゃねえか!!!!!
なんとランクマ環境は上から下まで先行登録キャンペーンで配布された《ボルメテウス・ホワイト・ドラゴン》入りのデッキで埋め尽くされていたのです。ゲーム性を否定するカードを配るな!むしろトリガー配れよ! カード1枚の価値が高くトリガーが多い環境にシールド焼却能力がよく刺さることに加え、全体的にSRの生成コストが高い中《ボルメテウス》が2枚あればとりあえず組めるというのも追い風でした。俺も絶対強いと思ってサンプルレシピ作ったし。
ところで、今まで記事を書くときは(投票数に差支えがないように)黙ってたんですが、北白河はドラゴンが嫌いです。この世に存在するどんな生物よりも嫌いです。常日頃から「でかいトカゲに人間の誇りを明け渡すな」「ドラゴンボールを集めて神龍が出てきたら『お前含むドラゴンの絶滅』って願う」「タイムマシンで世界中の神話作家がドラゴンの記述をする瞬間に飛んでは紙をビリビリに破いて去っていきたい」などと考えています。これはあらゆる人間が持ち合わせている、普遍的な感情だと思います。逆説的に、こう思わない者は人間ではないことがわかりますね。人間になりましょう。
というわけで、今回は趣味と実益を兼ねてボルコンを止めに行きます。そのためには、相手のそれを上回る殺意をもってカードを選ばねばなりません。それを上回る悪意をもってカードを積まねばなりません。そして、それを上回る敵意をもってカードを叩き付けなければなりません。これ気に入ってるので治安の悪い方が出てるときは毎回言います。やっていきましょう。
ボルコンを知ろう
やっていく前に、まずは座学です。デュエプレにおけるボルコンは、どんな構築をしているのでしょうか?記憶を頼りに仮想敵を組んでみました。
基本的にはハンデス・ドロー・除去のコントロール三本柱に加えてアンタップキラーの《勇神兵エグゾリウス》で盤面を空にし、《光輪の精霊 ピカリエ》→《聖霊王アルカディアス》による呪文ロックで相手の除去を封じた状態で《ボルメテウス・ホワイト・ドラゴン》で四回殴って勝ちます。もちろんフィニッシャー格のクリーチャーが単独でも強いのでどれか欠けてても普通に勝てる太いデッキです。
以前の型では青黒赤の除去コン型が中心だったのですが、ミラー対策として《聖霊王アルカディアス》で相手の除去呪文を不全にする構築が流行っている感じですね。マジで余計なことしやがって!
対面ごとにまとめるとアグロには厚めのトリガーで間に合わせ、ミッドレンジは除去とハンデスで捌き切り、コントロールには10マナから《聖霊王アルカディアス》即進化で蓋ができます。見れば見るほど隙がなくてムカつきますね。
これを超えるために必要な要素をざっくりまとめてみると、こうなります。
- ①ハンデスに強いデッキ構造
- ②相手フィニッシャーの速やかな無力化
- ③確実な勝ち手段
①から見ていきましょう。第一弾環境ではマッドネスはまだ実装されていないので、ハンデスの対策手段は「自分もハンデスを使う」「相手を上回るドローを行う」「ハンデスを食らった後何をトップしてもいいようにカードパワーを優先したり、同じ役割のカードを多く採用して冗長性を持たせたりする」などになります。一個ないし複数は満たしておきたいですね。
②については、ボルコンのフィニッシャー三種(《勇神兵エグゾリウス》《ボルメテウス・ホワイト・ドラゴン》《聖霊王アルカディアス》)がどれも「場に定着して殴り始めるとだいたい負け」という点から「ハンデスで先に落とす」「出たら即除去」「可能な限り受けきれるブロッカーを用意する」ことを徹底することになります。除去を握っていてもハンデスで落とされると痛いので、除去は多ければ多いに越したことはありません。
そして③ですが、ここが最大の難関です。生半可な攻めでは前述のように除去とトリガーに凌がれてしまい、逆に相手のフィニッシャー降臨の起点にされかねません。相手の防御を超えられる絶対的フィニッシャーか、デッキ全体の動きでねじ伏せるようなパワーが欲しいところです。
どれも非常に困難な条件ですが、実はこの三つを併せ持つデッキが存在します。それは……
ボルコンです。
本末転倒じゃねえか!と思われるかもしれませんが、この時点では「ミラーで勝率5割を目指してそれ以外のデッキをできるだけ取る」が最適解と考えていました。そりゃまあ「現環境の太いコントロール向けカード全部入りです!」みたいなデッキだからしょうがないんですが。 なんにせよ現状すべての条件を満たしているのはこれだけなので、とりあえずここからスタートしていきましょう。目指すのはボルコンに勝てて、かつ《ボルメテウス・ホワイト・ドラゴン》を明確な理由をもって採用しない構築の完成です。
英知をもって構築せよ
そんなわけでランクマッチに潜ったわけですが、まあボルコンの多いこと。そうでなくても水文明のドローのないデッキはデッキにあらずという勢いで《アクア・ハルカス》《エナジー・ライト》なんかが採用されています。たまに水文明が絡まないデッキがあっても《光輪の聖霊 ピカリエ》や《青銅の鎧》なんかでとにかくアドバンテージを得なければ勝てない、というような雰囲気が伝わってきます。
そして、そんな環境の体現者であるボルコン同士がかち合うとどうなるでしょうか。お互いが1:1交換とドローを繰り返した結果……フィニッシャーはどかされ続け、打ち所がないハンデスが相手のハンデスで落とされ、お互いにやけくそアタックすらできない(盤面にクリーチャーがいない、あるいは相手に手札を与えて逆転されるから)状況のもと、多くカードを引いた方がライブラリアウトで負けます。 そこにはドラゴンや聖霊王の力は及ばず、ゲームの目的は「相手にダイレクトアタックをすること」から「相手より少ないドロー数で膠着させ続ける」ことへとすり替わります。
ここにパラダイムシフトが発生します。勝ち手段としてデッキにフィニッシャーを用意する必要なんてなかったのです。ただ、ライブラリアウトというデュエマのルールが相手を殺すのです。デッキ40枚に勝ち手段を用意せず、相手より少ないドローで……要するにドローソースを詰まずに全てを処理して勝つ。これはもはやドラゴンや聖霊王に対抗するための「人類の英知」と呼べるのではないでしょうか。
「ドローなしで回るの?」という声もあると思います。ぶっちゃけめっちゃ欲しいです。しかし、このデュエマというゲームにおいて、「英知」はゲーム開始時点で5枚ものアドバンテージを持っています。これを相手が取り返すには《エナジー・ライト》《光輪の精霊 ピカリエ》5枚分の使用(しかもカードを引くたびにライブラリアウトが近付いていく!)が要求されます。
そのアドバンテージとはシールドです。こちらは一切殴る必要がないのに対し、相手は(こちらが《ボルメテウス・ホワイト・ドラゴン》を対処できる限りは)殴ってシールドをブレイクしなければ勝てないのです。相手が本来得るはずのシールドというアドバンテージを、《ボルメテウス・ホワイト・ドラゴン》ではなくそもそもブレイクしないことで無視できる。この非対称性が、「英知」を成立させる原動力です。
ここまで来れば、あとはあっという間でした。サンプルのボルコンからドローやフィニッシャーの枠をすべて切ってハンデスと防衛手段と除去でデッキを満たし、1:1以上の交換のみを繰り返し、デッキ全体を用いて相手のデッキを包み込むのです。かくして、デッキは完成しました。
デッキレシピ:人類の英知
詰めも詰めたりピン除去18枚。基本のハンデス8枚セットとブロッカーで序盤を凌いだら、あとはシールドをとにかく大事にしながらひたすら1:1交換を繰り返していき、20~30ターン耐え切ります。ドロー・マナ加速など山札を消費してアドバンテージを稼がないデッキがほとんど存在しない以上、基本的にはライブラリアウトがこのデッキの唯一の勝ち筋です(ごくまれに相手にドローがなく、トリガー少なめのアーキタイプと踏んだら殴ることもあります)。
相手の盤面はできれば常に空っぽにしておき、相手のフィニッシャーには非進化なら返しに《デス・スモーク》、進化なら《地獄の門番 デスモーリー》《死の宣告》を速やかにぶつけることを意識します。《聖霊王アルカディアス》には《地獄の門番 デスモーリー》と《腐食虫スワンプワーム》をぶつけるしかないので、出てきそうだなと思ったら事前に場を掃除しておきましょう。というか《腐食虫スワンプワーム》については《聖霊王アルカディアス》対策ピンポイント起用です。
こうしていくと相手の手札にそのうち無駄牌が溜まって何もせずにターンが返ってくるので、その隙にハンデスを行ったり《暁の守護者ファル・イーガ》で次の除去を装填したり防御の要である《天空の守護者グラン・ギューレ》を展開していくといいでしょう。自分も採用時は半信半疑だったのですが、《ボルメテウス・ホワイト・ドラゴン》を立ち往生させ《大勇者「ふたつ牙」》《アクア・ランサー》を殴り返せる9000というパワーが本当に偉いです。
デッキのクリーチャーのパワーラインが3000~4000と比較的高めのため、こちらの盤面が並んでいれば《ホーリー・スパーク》によるタップキルはこのデッキ唯一の複数除去になります。ブロッカーで止まっている《アクア・ハルカス》なんかをプチプチ潰していきましょう。
このデッキを使う上で重要なのは、マナ管理です。1枚でも多くカードを使いたいこのデッキにおいては、主要除去が使えるようになる4マナ目以降常にマナチャージのパスという選択肢が生まれます。戦術的には全てのカードにリーチできる6マナ止めか4マナ除去の連打が可能になる8マナ止めが理想的と思われます。
実際のプレイにおいては、相手がこんなデッキと当たることをまず想定していないこともあって遅いデッキにはかなり勝てます。こっちがキツくても相手が勝手に「こんなデッキと付き合ってられるか!」とばかりにリタイアしてくれることもありますし。アグロ相手には基本的にトリガー勝負になりますが、ブロッカー展開が間に合えば目があります。ただ、その場合もSA打点で予定が狂わされることを前提で動きましょう。どうしても耐えられなさそうならこちらから殴っていくのも一つの手ではあります。
逆にキツいのが、ブロッカー対策とアンブロ進化クリーチャーを擁する【青単リキッドピープル】ですね。《アングラー・クラスター》で殴り返しが制限されることに加えてこちらのブロッカーが事実上無駄牌になるので、除去しきれず手数で押し切られたりトップデッキ《クリスタル・ランサー》で見かけの打点が2点伸びて負け、とかは本当によくあります。
改造のための採用圏内カードとしましては、このデッキでは延命兼トリガー除去の踏み倒しである《ホーリー・メール》や重いものの貴重な複数確定除去の《いけにえの鎖》、追加のハンデスとして《飛行男》《卵胞虫ゼリー・ワーム》なんかがあります。もちろん《ファントム・バイツ》のような軽量除去もよいですね。トリガー性能を期待するなら、色こそ合わないものの容易に一体多交換が取れる《バースト・ショット》も候補に挙がります。また、山札枚数の管理に自信があるのであれば《光輪の精霊 ピカリエ》や色を足して《エナジー・ライト》といったドローソースを採用してもよいでしょう。
ここからは自分でも未検証なのですが、アドバンテージ源として《ギガルゴン》、全体除去としての《妖姫シルフィ》、タップキル用の《予言者コロン》《ムーンライト・フラッシュ》、さらには先置きできて一定のサイズがあるスレイヤーブロッカーとしての《ギガボアー》が大真面目に採用可能なのではないか?とすら考えています。タップキル勢は前述の追加のハンデスクリーチャーを十全に活躍させることが可能(タップで攻撃先を作ることで能動的に能力が使える)で、《ギガボアー》はこのデッキで《聖霊王アルカディアス》を倒せる唯一のブロッカーです。
あまり考えたくないことですがミラーマッチが発生した場合は先手ならとにかく耐えてLO狙い、後手ならブロッカーを優先的に除去して殴りまくることになります。もしこのデッキが隆盛し、ミラーのことを考える必要が出てくれば前述の《いけにえの鎖》《ギガルゴン》の重要性は増してくることでしょう。 そしてこの「人類の英知」がミラーを考えなければならないほど環境を取った暁には……
冒頭の5c《オブシディアン・ビートル》ビッグマナが火を噴くという寸法です。
マナに後続がいる限り死なない《オブシディアン・ビートル》とかいう昭和の《不滅の精霊パーフェクト・ギャラクシー》と、SAで相手の計算を狂わせる《ツインキャノン・ワイバーン》とかいう昭和の《勝利龍装 クラッシュ"覇道"》のおかげで「人類の英知」のような除去コンには強く出ることができます。やはり「人類の英知」を超えるのは昆虫の生命力であることがわかりましたね。除去がほぼ呪文なので《聖霊王アルカディアス》に勝てないこのデッキを十全に使える環境が訪れるよう、ぜひみなさん頑張ってください。
おわりに
というわけで、人類の英知でした。相手にストレスを与え続けることだけを追求した(自分だけが)楽しいデッキに仕上がり、それなりに満足しております。検証の過程でドラゴンもいっぱい殺せて楽しかったし。とはいえ、メタの回転が速いDTCGゆえに何がこの先流行るかはわかりません。明日のトップメタデッキを作るのはこの記事を読んでいるあなたかもしれませんね。あ、あんな感じの紹介ですが《オブシディアン・ビートル》はマジで強いです。どんどん使ってください。
次回の予定ですが、紙のデュエマに戻りましてつい最近発売された超天篇第四弾からちょっといくつか見繕ってクソデッキをやっていこうと思います。あと前回の知識回の評判が良かったので、なんか面白そうなネタが見つかったら不可彫りしてみようとも考えてます。うまくいくといいですね。それでは、次の記事で。よいお年を。