はじめに
王来篇第1弾のリリースから1ヶ月が経ち、いよいよ煮詰まってきた感のあるアドバンス環境。
出揃っているデッキはいずれも精鋭ばかりで、今の環境はかなり固定化されてきたと言えるでしょう。
今回はそんなアドバンス環境の「今」について解説してきたいと思います!
目次
「最強」の定義
本記事では最強デッキを「デュエル・マスターズ競技環境での相対的な強さ」と定義します。
Tier1とは「環境内に不利なデッキが少ない、あるいは相性差を覆しやすいデッキであり、大会で持ち込みが一番多いと予想される対策必須のデッキ」です。
Tier2とは「Tier1やTier2のデッキにある程度勝てる見込みがあり、大会でも毎回一定数いると予想されるデッキ」です。
Tier3とは「弱点が多い、デッキパワーが低いなどの理由で使用者は少ないものの、特定のメタゲームでは活躍することができるデッキ」です。
先月との環境の違いについて
注目するべき点は大きく2つ、「【赤白ドギラゴン閃】の台頭」と「『20周年超感謝メモリアルパック 魂の章 名場面BEST』のリリース」が挙げられます。
まずは【赤白ドギラゴン閃】の台頭について。
オリジナル環境の解説記事でも紹介したこのデッキですが、その速度と押し付け性能の高さから、アドバンス環境でも活躍中。グングンと頭角を顕してきています。
具体的な環境への影響は後ほど個別の項目で行いますが、《チャラ・ルピア》を経由した展開ルートの豊富さや、《奇石 ミクセル/ジャミング・チャフ》・《音奏 プーンギ》の存在が大きな強みとなっています。
続いて「20周年超感謝メモリアルパック 魂の章 名場面BEST」のリリースについてですが、こちらは発売から間もないということもあって、まだまだ研究途上。
《革命の絆》や《切札勝太&カツキング -熱血の物語-》を採用した【5cコントロール】が登場してはいますが、まだ定番化したと言えるほどの活躍は見せていません。
現段階での環境への影響は、かなり小さいと言わざるをえないでしょう。
ですが、今弾は独自性が高く、クセの強いテキストをしたカードが非常に多いセット。
今のところはパッとしないカードたちについても、例年通りであれば7月に施行される殿堂入りカード次第では、いくらでも化ける可能性がありそうです。
あっさりとした解説になりましたが、以上のことを踏まえてTierランキングを紹介していきましょう!
Tier1
【5cコントロール】Tier1
圧倒的カードパワー、圧倒的対応力、圧倒的Tier1。
アンフェアデッキが限りなく弱まった現在のアドバンス環境において、【5cコントロール】は完全なる王者として環境を席巻しています。
前基盤の段階では「早期のビートダウンに弱い」という弱点を抱えていましたが、【赤白ドギラゴン閃】の出現以降は、受け札として《ドラゴンズ・サイン》の採用が常態化。
【 呪文 】
文明 光 / コスト5
■S・トリガー(この呪文をシールドゾーンから手札に加える時、コストを支払わずにすぐ唱えてもよい)
■コスト7以下の、進化ではない光のドラゴンを1体、自分の手札からバトルゾーンに出す。次の自分のターンのはじめまで、そのクリーチャーは「ブロッカー」を得る。
防御的なアクションと、5マナで《龍風混成 ザーディクリカ》や《最終龍覇 グレンモルト》を送り込む能動的なアクションを同時に手に入れたことで、現在の【5cコントロール】は非常に隙の小さい構築に仕上がっています。
【青魔導具】が一応の相性有利をつけていますが、これについても《種デスティニー》や《テック団の波壊Go!》といったカード除去を採用することで対策。
《龍風混成 ザーディクリカ》でこれらを使い回し続け、3回も《卍 新世壊 卍》を対処できれば十分に勝ちを狙えます。
また、最近では《希望のジョー星》を採用する派生構築も活躍中。
《希望のジョー星》のメタ性能は多岐に渡り、【赤白ドギラゴン閃】の革命チェンジ系統はもちろん、【5cコントロール】同型の《ドラゴンズ・サイン》や《終焉の禁断 ドルマゲドンX》、《最終龍覇 グレンモルト》を無力化。
自分の《聖魔連結王 ドルファディロム》の除去&ロック性能を高めつつも、《ピクシー・ライフ》や《ゼロの裏技ニヤリー・ゲット》といった無色シナジーまで豊富に採用された、もはや【5cコントロール】というべきか悩ましいリストも登場しています。
このように、仮に今後の環境が変化していったとしても、構築次第で容易に対応できるのは言わずもがな。
果たしてこのデッキの牙城を崩すデッキは現れるのでしょうか。
【5cコントロール】 テーマ解説
【5cコントロール】に有利なデッキ
- 【青魔導具】
【赤白ドギラゴン閃】Tier1
オリジナルの雄、アドバンスに堂々参戦!
《“龍装”チュリス》や《チャラ・ルピア》を絡めた強烈な展開力を武器に、3〜4ターンで致死打点を叩き込む《蒼き守護神 ドギラゴン閃》系デッキの急先鋒。
【5cコントロール】に対しても高速打点展開によってトリガーの踏み方次第で貫通を狙いやすく、また《奇石 ミクセル》や《音奏 プーンギ》といった出足を挫くメタクリーチャーをフル投入することで多くのデッキに対応可能。
アドバンスの方がメタクリーチャーの絶対数が少ない分除去を採る必要がなく、その枠がメタクリーチャーに回っているためオリジナル以上に本領を発揮しやすくなっています。
特に《音奏 プーンギ》はGRクリーチャーが入ったことで使い勝手に磨きのかかっている1枚。
【 クリーチャー 】
種族 メタリカ / ワンダフォース / 文明 光 / パワー2500 / コスト2
■相手の呪文を唱えるコストは1多くなる。
■自分のターン中、相手が呪文を唱えた時、GR召喚する。(GR召喚:自分の超GRの上から1枚目を、コストを支払ったものとして召喚する)
《“魔神轟怒”ブランド》や《ソニーソニック》、《マシンガントーク》などの定番打点増強カードはもちろんのこと、【5cコントロール】に採用される《ドラゴンズ・サイン》で踏み倒されたドラゴンは、ブロッカーを付与されているため、《音奏 プーンギ》から《ポッポーポップコー》がめくれれば破壊できてしまいます。
自分のターン中であれば、相手の登場時能力よりもこちらのGR召喚+その登場時能力の方が先に解決されるため、《最終龍覇 グレンモルト》もウェポンを使われる前に破壊できる、というわけですね。
もちろん呪文メタ能力も非常に有用。
2ターン目に置いてしまえば後手からでも【5cコントロール】の《フェアリー・ミラクル》・《ドンドン火噴くナウ》を一手遅らせることが可能。
非常にキルターンの早いこのデッキを相手に、1ターンの遅れは致命傷になりえます。
アドバンス環境に一定数存在する【青魔導具】も呪文コスト増加でコンボ成立を遅らせられるなど、現在の環境に強くマッチした1枚です。
また、最近では環境的に刺さりの薄い《閃光の守護者 ホーリー》を《超次元サプライズ・ホール》に差し替えた派生構築も登場しているようです。
【赤白ドギラゴン閃】に有利なデッキ
- 【ラッカ鬼羅Star】
Tier2
【オカルトアンダケイン】Tier2
やはり新環境で新カードなしは厳しいか。【オカルトアンダケイン】、Tier1陥落。
4ターン前後という高速で全ハンデスやランデスに持ち込む「理不尽の塊」とも言うべきコンボデッキが【オカルトアンダケイン】ですが、直近の環境ではTier1の2デッキと比べると今一つ振るわず。
最大の要因は、Tier1である【5cコントロール】、【赤白ドギラゴン閃】との直接対決が相性不利である点でしょう。
【5cコントロール】は《とこしえの超人》や《お清めシャラップ》での遅延に加えて、《最終龍覇 グレンモルト》によるお手軽高打点生成が非常に不得手。
基本的に受け札のない【オカルトアンダケイン】は、《銀河剣 プロトハート》を絡めてシールドを詰められるだけで非常に苦戦を強いられます。
【 ドラグハート・ウエポン 】
文明 火 / コスト4
■これを装備したクリーチャーが各ターンはじめてタップした時、アンタップする。
■龍解:自分のターンの終わりに、そのターン、これを装備したクリーチャーが2度攻撃していた場合、このドラグハートをクリーチャー側に裏返し、アンタップする。
【赤白ドギラゴン閃】は言わずもがな、高速ビートダウンへの対処法がありません。《奇石 ミクセル》による1ターンのラグもかなり致命的。
もちろんデッキパワー自体が低くなったわけではないため、有象無象のデッキに対しては相変わらず非常に強力です。
上位の2デッキを倒しに行くようなデッキが登場すれば、またTier1に返り咲くことも夢ではないでしょう。
【オカルトアンダケイン】 テーマ解説
【オカルトアンダケイン】に有利なデッキ
- 【5cコントロール】
- 【赤白ドギラゴン閃】
【青魔導具】Tier2
【5c】キラー、未だ健在。
対抗札の登場によって「絶対有利」とまではいかなくなったものの、十分に戦えるデッキとして環境での立ち位置を確立しています。
微妙な構築の変化としては、ミラーに当たる機会も増えているため、希少なカード除去である《堕呪 エアヴォ》の採用枚数はやや多めになっている印象です。
【 呪文 】
種族 魔導具 / 文明 水 / コスト4
■S・トリガー(この呪文をシールドゾーンから手札に加える時、コストを支払わずにすぐ唱えてもよい)
■バトルゾーンにある、コスト7以下のカードを1枚選び、持ち主の手札に戻す。
ビートダウンデッキがあまり存在しないため、《ゴゴゴ・Cho絶・ラッシュ》の枚数が1枚削られていることが多くなっています。
ただし、最近数を増やしている【赤白ドギラゴン閃】を意識するなら《ゴゴゴ・Cho絶・ラッシュ》はあまり枚数を減らしたくない1枚。
革命チェンジを主軸とするこのデッキにはバウンストリガーがあまり有効ではないうえ、《音奏 プーンギ》などで魔導具呪文のコストを上げられると《卍 新世壊 卍》を着地させていても相手の速度に間に合わない展開もありえます。
絶対不利とまでは言えませんが、ある程度不利なデッキであることには間違いないでしょう。
【青魔導具】 テーマ解説
【青魔導具】に有利なデッキ
- 【赤白ドギラゴン閃】
- 【ラッカ鬼羅Star】
Tier3
【ラッカ鬼羅Star】Tier3
アドバンスでも少数ながら活躍する、いわゆる「メタビート」の代表格。
【赤白ドギラゴン閃】と同じく《奇石ミクセル》と《音奏 プーンギ》を各4枚フル採用可能なのが最大の強みです。
【青魔導具】と【赤白ドギラゴン閃】に対しては、これらのメタクリーチャーの存在によって比較的立ち回りやすい部類。
《龍風混成 ザーディクリカ》でこまめに盤面を処理してくる【5c】系のデッキはやや苦手ですが、《奇天烈 シャッフ》を絡めた呪文ロックワンショットまで持ち込めば安全なフィニッシュを狙えます。
爆発力が光る【ラッカ鬼羅Star】ですが、安定性の面でやや難を抱えている点と、基本的なキルターンが遅めである点がネック。
4ターン目に《「正義星帝」<鬼羅.Star>》を出せる展開は、
・4t《エヴォ・ルピア》+《「正義星帝」<鬼羅.Star>》
・3t《「正義星帝」》→4t《「正義星帝」<鬼羅.Star>》
の2パターン。
このうち《エヴォ・ルピア》を絡めた展開は3ターン目に《ネ申・マニフェスト》を絡める余地があるものの、《「正義星帝」》から展開するパターンはドローサポートを挟めず、必要なカードを素引きで揃える必要があります。
仮にこれらのカードを綺麗に引き切ったとしても、《「正義星帝」<鬼羅.Star>》を出したターンに安定して決着を狙えるわけではないのもやや難しいところです。
想定されるキルターンは概ね5〜6ターンと、豊富なメタクリーチャーで遅延できることを加味しても、現在の基準ではやや遅めに分類されてしまうでしょう。
理想的に回れば環境に適したアクションが取れるため、一発の力には期待できますが、安定した戦績を残すのは難しいデッキタイプだと言えそうです。
【ラッカ鬼羅Star】 テーマ解説
【ラッカ鬼羅Star】に有利なデッキ
- 【5cコントロール】
環境のまとめ
今回紹介するデッキは5つのみとかなり少なめですが、それほどまでに煮詰まった環境であるということで何卒ご容赦ください。
現在の環境の中心は【5cコントロール】と、それに食らいつく【赤白ドギラゴン閃】。
特に超高速ビートダウンである【赤白ドギラゴン閃】の躍進が環境に与えた影響は非常に大きく、このデッキの速度に対して回答を持たないデッキタイプは、ほぼことごとく駆逐されているのが現状です。
さらには、【赤白ドギラゴン閃】を凌ぎ切ったうえで、それ以上に存在する【5c】にも勝てるデッキを……となればその数が一気に減るのは想像に難くないでしょう。
【オカルトアンダケイン】はデッキパワーの高さで、【青魔導具】は上ブレの出力の高さと【5c】に対する優位で地位を保っていますが、それぐらいの水準でなければまずスタートラインにも立てない、という裏返しでもあります。
かなり固定化されてきた現在のアドバンス環境。もちろんこのような環境である以上、多くのプレイヤーが打破に向けて研究を進めています。
「トリガーが強く、【5c】に対しても戦えるデッキ」の代表例として、ネット大会では《ドンドン火噴くナウ》などのメインカラーを阻害しない火の受け札を採用した【デッドダムド】が活躍しています。
また、「トリガーの強いコンボデッキ」というのが一つの到達点として挙げられそうなので、有力なのは《ナウ・オア・ネバー》を使ったコンボ。
こちらを試しているプレイヤーも一定数が存在しますが、この手のコンボデッキは多くの場合で安定性に難アリ。
まだ実績を残す段階には至っていないようです。
おわりに
というわけで、5月期のアドバンス環境について解説していきました。
1ヶ月が経って細かい部分に動きはありながらも、徐々に円熟が近づいている現在のアドバンス環境。
かなり窮屈な状況であることは否めませんが、いまだ実力未知数な「20周年超感謝メモリアルパック 魂の章 名場面BEST」に加えて、来月末には早くも王来篇第2弾「禁時王の凶来」がリリース予定。
例年通りであれば殿堂発表もそう遠くないうちに来るため、環境にはドンドン新しい風が吹きそうです。
今の環境を楽しめるのは今だけ! ということで、ぜひこの記事を参考にしてデッキを組んだり、Tier上位のデッキの対策を考えたりしてみてください。
それでは次回、6月のオリジナル環境解説記事にてお会いしましょう!